悪の組織の下っ端ですが、魔法少女を拾いました   作:ひぶうさぎ

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本日2話目


第二十三話 前兆と幸せな時間

「うーん、最近私たち周辺で生まれる怪人の数が明らかに多いね」

 

「やっぱりそうですよね」

 

「うん、仲がそれなりにいいちょっと離れたところでボスをやってる子達と確認したんだけれど、やっぱりここだけ異常だ」

 

 

 

 ミラーから今までの黒幕のことについて教えられてから数日。

 俺は、まだ黒幕が最初の魔法少女だとボスに明かせていない。

 

 相手が俺一人でなんとかなる相手ではないのはわかりきっている。

 ただ、だからといって迂闊にもらすわけにはいかないというのもあるのだ。

 

 あの後俺なりに色々と調べてみると、最初の魔法少女には姿も名前も知らないのに熱狂的なファン、いや信者がかなりの数いるという事が分かった。

 

 流石にボスはその類ではないだろうが、おそらく組織の中にも一定数ボスより最初の魔法少女への思いが強い人間がいるはず。

 

 ボスが信頼を寄せている相手がそういう人間だったとき、俺にはどうすることも出来ない。

 それで言うか悩んでいたら、いつの間にか時間がいつも過ぎていく。

 

 

 

 そんな日々を過ごしている中、俺は今日ボスに呼び出されていた。

 いつも通りボスの謎の人脈に驚かされているが、今日はそれどころではない。

 

 組織の構成員で怪我をする人間が多くなっていると思っていたら、発生している怪人の量が異常だというのだ。

 

 それは、これまでのようなゆっくりとした増え方なんかではなくここ一日二日で何倍にも増えているという何かが絡んでいるとしか考えられない増え方。

 どう考えても最初の魔法少女関連だろう。

 

 言うとしたら、今が一番良い。

 だが、最初の魔法少女の手駒がどこに隠れているか分からないのが怖すぎる。

 

 だから、まだ言わないでおく。

 本当に必要な時に、ボスだけにこの俺が持ってきた中でもとびっきりの厄ネタを伝えられるように。

 

 

 

「あ、そうだ。多分裕樹はミラーワイトから何個か情報をもらってるかもしれないけれど、それは私に言わなくていいよ。もうわかってるし」

 

「……え」

 

「相手が()()()()なら私たちみたいな悪の組織の出番でしょ」

 

 

 

 しかし、既にもうボスは黒幕の正体をつかんでいたらしい。

 俺はミラーに言われないと分からなかったっていうのに、やっぱりこの人おかしいだろ。

 

 まあ、でもそれなら俺の心配は杞憂で済むな。

 ここまでつかんでいるってことは最初の魔法少女に味方が結構いるだろうってことも分かっているだろうし。

 

 そうなると、俺の役目はまた黒ローブが俺達の組織を狙ってきたときに頑張って対処するだけだな。

 戦闘くらいしか取り柄がない人間として頑張ろう。

 

 

 

「それじゃあ、失礼します」

 

「うん、頑張ってね」

 

 

 

 そうして、俺は頼もしいボスの笑顔を見ながら、部屋を出た。

 

 それにしてもどんあ情報網を使って掴んだんだろうか。

 ボスの情報網がえげつない広さをしているのは知ってんだが、こんな出にくい情報もつかむなんて。

 

 改めてボスの凄さを感じたよ。

 マジでどこから掴んだのかが分からな過ぎて怖い。

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 表に人がいない時を本見計らって本部から店に出ると、やっぱり繁盛しているっていうのが分かる。

 

 それにしても出口の所だけ大した品物を置かないことによってここに人が来づらくしてるのマジで頭いいな。

 ここからちょっと出ればそれなりに人がいるっていうのに。

 

 そして、そのまま今も店員をやっている知り合いを横目に店を出る。

 

 この前黒ローブが散々荒らした大通りは……まだ封鎖されてるみたいだ。

 ここがまた通れるようになれば知り合いも店員の仕事から解放されるのにな。

 

 

 

 ところで、玲衣が目の前にいるのは気のせいだよ……な?

 

 

 

「やあ、裕樹。ちょっと外の風に当たりたいと思って遠出をしたら()()()()会う事になったみたいだね」

 

 

 

 クソ、幻覚でも何でもない本物の玲衣じゃねえか。

 相変わらずまるで偶然と言いたげにいい感じの所にいるし、なんなんだよ、お前じゃなかったら偶然って言われても違和感すら持てねぇよ。

 

 それにしても、俺の知り合いっていうのはまずとぼけるところから始める奴ばっかりだな。

 いや、この前はミラーもとぼけてはいたが、思い返せばとぼけてるのは大体玲衣だ。

 

 これが刷り込みってやつか……。

 

 そんなことを考えていたら、玲衣が不満そうに顔を近づけてきた。

 

 

 

「どうせまたボクに対して失礼なことを考えてたよね」

 

「まあ、玲衣と一緒にいるとロクな目に合わないっていうことが証明されてるからな」

 

「ぐえっ、そこを指摘されるとちょっとボクも言いづらいな……」

 

 

 

 ていうか自分がトラブルメーカーに片足突っ込んでいるっていう自覚あったんだな。

 どっちかというと俺の方がトラブルを持ち込んでいる気がするが、まあいい。

 

 この前例の穴に連れていかれたときに怪人が大量発生していたのとかは俺のせいじゃねえし、それはあっちの責任だろう……多分。

 

 まあどちらにせよ俺も玲衣も巻き込まれ体質……? っぽい感じっていうのは変わらねえぇはず。

 

 

 

「ところで……玲衣はなんでここまで来たんだ?」

 

「あ、それなんだけど、ミラーとの話聞いちゃったっていう、ね」 

 

「まぁ、そりゃちょっと騒がしくしてたら起きちまうよな……あ、となると咲も会話を聞いてたのか」

 

「そうそう。それだけ言っておくかって思って」

 

 

 

 どうやら、俺のミラーとの内緒話(笑)はその場にいた全員に聞かれていたらしい。

 

 別に二人きりって言っても隣に玲衣たちがいる状態だったから最初からミラーは二人に聞かせるつもりだったんだろうけどな。

 

 玲衣から伝えられなかったらどうせ聞いてるだろとかいうスタンスでいこうかと思ってたが、言われたならそれ前提で行くか。

 

 

 

「いや~、でも聞いたときは寝たふりをしないでもう起きようかと思ったよ」

 

「なるほど、だからあの後すぐ起きてきたのか。もうちょい寝てても良かったって感じてたんだが」

 

「あれを聞いちゃうとね、さすがに脳が完全に起きちゃって。それで、ボクもそれなりには情報を持ってたりするけど……必要?」

 

 

 

 あ、そうか。

 ミラーより玲衣の方がトップって言われ続けている時間が長いんだわ。

 

 なんならダメダメな姿をずっと見ているから忘れそうになるだけで今も世間からは完璧な王子様風の魔法少女って呼ばれているんだったわ。

 

 ていうか、玲衣ってその理屈で言ったらつい最近も会ったことが会ったりするんじゃねえか?

 

 

 

「今気づいたんだけどさ、最近会ったこととかは……」

 

「あ、そこは心配しなくても大丈夫だよ。最後に会ったのとかは本当に二、三年くらい前だしね」

 

「ああ、もうちょい会ってるかと思ってたんだが、そうでもないんだな」

 

「そうそう。でも魔力とかはやっぱり凄かったね、うん。文字通り格の違いを感じちゃうくらいだった」

 

 

 

 なるほど、玲衣でもそう感じるレベルか。

 

 あの後ミラーにちょっと聞いた感じでも普通の人間の一生じゃたどり着けない魔力の持ち主って言ってたし。

 

 マジで聞けば聞くほどなんでそんな相手が俺達にちょっかいをかけてくるんだって話だ。

 

 あくまで俺の妄想なんだが、長く生きすぎたことで楽しみがなくなって日本を攻めようとかそんな理由だったりするんじゃねえかな。

 

 ……これ、結構ありえそうだな。

 

 まあ、そんなことは置いておいてどうせならトラブルに巻き込まれないことをしたい。

 

 

 

「帰る途中でアイスとか買っていくか?」

 

「え、いいの!?」

 

「昼飯を食ってねえんだったらなんか奢るから」

 

「ゆ、裕樹がそんな優しいことを言ってくれるなんて……もしかして、偽物?」

 

「そんなことを言う奴には何もやらねえぞ」

 

 

 

 たまには、玲衣と街を歩くのもいいだろう。

 こんなに目立つ容姿をしていてもスノウクリスタルだとは何故か気づかれないし。

 

 いや、マジでなんでこんな変身前と変身後が大して変わらないコイツが街中を歩いてもスノウってバレないんだ?

 

 魔法少女って、やっぱりよく分からねえ。

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 裕樹達が嵐の前の静けさで楽しんでいる中、敵陣営では何人もの人間が次々に組織を壊滅させるため名乗りを挙げていた。

 

 その人間の殆どは、最初の魔法少女に直接自身を強化してもらったばかりの者。

 早く力を誰でもいいからぶつけたいのだ。

 

 そんな者達を見つめる最初の魔法少女の表情もこの前より幾分か柔らかい。

 

 

 

「うんうん、この調子だったらあんなちっぽけな組織くらいすぐに無に帰せるね」

 

「しかし、あんな小さな組織と街であれば二人もいれば充分だと思いますが……」

 

 

 

 そして、そんな笑顔の彼女にとある側近が声をかける。

 

 周りにいる数少ない常識人はその光景にデジャブを感じ縮こまったが、今日の彼女はいつもにも増して上機嫌なようで何も意に介さない。

 

 

 

「いいや、たとえあんな小さな所でも何人も出しておくのは大事だよ。こんなにいたら油断しても勝てると思うけど」

 

「なるほど、私ごときでは考えもつかないことでした。申し訳ございません」

 

「別に良いよ、結局は今回任せた彼が決めることだし。まあ、こんなに人数がいて、それでも負けるって言うなら彼の処分はとびきりのにしてあげないとね」

 

 

 

 そう言って、最初の魔法少女は、内心で同僚たちを見下している執事風の男の顔を思い浮かべてニヤリと笑う。

 

 だが、その例の彼は今この場にいない。

 

 その男は、決して彼女の期待を裏切らないように、と別の場所で確実に裕樹達の息の根を止めようと息巻いているのだから。

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