悪の組織の下っ端ですが、魔法少女を拾いました   作:ひぶうさぎ

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今日から1日4話更新


第二十四話 終わりの始まり

「クソ、どうして俺がこんなことをしないといけねえんだ。悪いのは全部しくじったアイツだろうのに……」

 

 

 

 場所は変わって、執事風の男がいる建物。

 最初の魔法少女と接している時とは違い、男は服装に似合わない汚い言葉を何個も吐いている。

 

 ただ、それもそのはず、彼は元々執事などではないのだから。

 

 初めこそ、最初の魔法少女に近づきたい一心でそれらしい服装と言葉を心がけてはいた。

 

 だが、自分の主が知的でも何でもなくただ力を持った子供のような人物だと知ってからは恐ろしくて仕方がない。

 

 そのため、今まで以上に取り入って決して自分が逆鱗に触れることのないように立ち回ってきたのだが、今回は……失敗した。

 

 

 

「調べてみた感じでは、どこにでもある乱立された悪の組織の一つっぽいから流石にヘマをすることはないだろうが……どうしてこんな目に」

 

 

 

 そうやって、男は何回目かも分からない後悔を始める。

 だからといって、自分の置かれている状況が変わるわけではないのだが。

 

 だから、あくまでも、これは自分を落ち着かせるための暗示のようなものだ。

 

 男の周りにいる部下たちは、すっかり最初の魔法少女に心酔しきってしまっていて、今回の任務の危険性には一つも気づいていない。

 

 仮に失敗したとしても自分達は何もされない。

 そう心から信じている者達なのだ。

 

 しかし、当然失敗などすればあの黒ローブのような酷い目に遭う。

 

 その恐ろしさを身近で何度も何度も実感している男にとって、この任務は絶対失敗することの出来ない大事な任務である。

 

 

 

(弱い奴を反撃される心配もなくいじめられるっていうから入ったのによ、クソッタレ!)

 

 

 

 勿論、純粋な理由でもなんでもなく邪悪な目的を持って最初の魔法少女に取り入った彼が今この危機に晒されているのは、ある意味必然ではあるのだろう。

 

 

 

「明日、明日だ。その時にあの街、そして下手な抵抗をしやがったあの組織を潰す」

 

 

 

 そして、男は今までで一番の覚悟を決めた。

 

 裕樹達に、今まで以上の危険が迫る日は、もうすぐそこまで迫っている。

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 あれから、発生する怪人は増える一方だ。

 それでも、うちの組織の人間にはまだ重傷者すら出ていない。

 

 まあ増えているとはいえ格段に強くなったとかそういうわけではないしな。

 俺らの組織の構成員がそんな簡単に負ける訳はない。

 

 とはいえ、日に日に危険度が上がっているというのは紛れもない事実だ。

 ということで、今日は後輩と特に怪人が多くなってきている地域に来ている。

 

 おちゃらけていることの多い後輩だが、最近は真剣な顔つきが崩れることすらあまりない。

 

 それなりに付き合いがあっても知らない一面っていうのはまだまだ出てくるもんなんだな。

 

 あいつはもう少しおちゃらけながらも本当に大事な一場面だけ気を引き締めるようなタイプだと思っていたよ。

 

 まあ、これくらい変わるとその真剣さがこっちにも伝わってきて逆にこっちも気が引き締まってくるし。

 

 

 

「魔法は、使えない。けれど、魔力量は成りたての魔法少女並み……」

 

 

 

 そして、後輩の横にはブツブツと何かを呟きながらうろちょろしているミラー。

 

 時々聞こえるひとりごとから察するに後輩の実力を探っている感じだろう。

 

 ついさっきまでは後輩もそれを無視しながら進んでいたがもう流石に我慢できないらしい。

 

 

 

「あの、先輩。どうしてミラーワイトが俺に興味を示しているんですかね……」

 

「裕樹はもう大体実力も分かる。だから次は貴方」

 

 

 

 助けて欲しそうな顔をされても、残念ながらそりゃ無理だな。

 ソイツは気になったものは地平線を先まで追うくらい執着心が強いんだよ。

 

 とりあえずドンマイとは声をかけてやろう。

 それくらいしか俺にはできないし。

 

 ドンマイ、お前は運が悪かったんだ。

 

 

 

 

 

 

「調べれば調べるほど、なんで貴方が魔法を使えないか分からない」

 

「使えないもんは使えないんすよ」

 

「今度時間があったら手伝う」

 

「そ、そこまで言うんだったらまた挑戦してみますけれど……」

 

 

 

 ただ、数分もすれば仲良くなれるらしく、気づいたらミラーと後輩は親しげに話していた。

 

 もしかしたらそこまで親しくはなってないのかもしれないが、よく分からない約束をしているくらいだし、きっと仲良くなっているはず。

 

 ミラーの足りない言葉を埋めれる奴は大体仲が良いと俺の持論も言っているしな。

 

 ……おっと。

 

 そんなことを考えていると、目的地の方からどう考えても怪人がいるであろう禍々しいオーラが流れてきていた。

 

 それを共有しようかと後輩とミラーの方を見ると、既にもう警戒を始めていた様子。

 

 なんだよ、俺が一番最後に気づいたんじゃねえか。

 

 

 

「ッ! こりゃ中々の数だ」

 

「ん、多い」

 

「この前先輩と行動した時は役立たずでしたからね。やってやりますよ」

 

 

 

 しかも、後輩にいたってはもう既にモードに入りかけている。

 その証拠に、雰囲気が一気に変わった。

 

 ……なんであれで魔法が使えねえんだろ。

 後輩が魔法を使えたら俺なんかけちょんけちょんに出来るだろうのに。

 

 ま、どちらにせよ今は迫って来てる怪人を一人一人倒すだけか。

 

 ぶっちゃけ、ミラーがいるとなればこんくらいの強さの怪人がいくらこようと負ける未来すら見えねえ。

 

 なんなら俺だっているし後輩だっているから問題はねえだろうけど。

 

 

 

「よし、言葉は通じねえだろうが早くかかって来い」

 

 

 

 俺は、迫り来る怪人達に目を向ける。

 動き的にあれは元々人間()()()怪人。

 

 最初の魔法少女はこんなことをして何をしたいんだかって話だよ。

 

 

 

 怪人になった人間は、決して元に戻ることはない。

 その常識がある以上、俺達はここで早くコイツらをさっさと楽にする必要がある。

 

 怪人になった人間は、討伐されるまで半永久的に次元の狭間で苦しみ続けるって言われてるしな。

 

 そんじゃ、やるとしよう。

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「意外と、あっさり終わったか」

 

「二十人もいなかった」

 

「もしかして、相手はこれくらいの怪人で俺らを潰せると勘違いしているのか?」

 

 

 

 俺は、この前相手から奪って刀を改造して作った剣をしまいながらミラー達とこう話す。

 

 この前の方がよっぽど怪人が多かった。

 それに、強さとしては生前の彼ら彼女には失礼だが時間稼ぎにもならないレベル。

 

 敵は一体何を考えてここ近辺で怪人を増やしているんだ。

 ここに申し訳程度の怪人を配置する理由が分からねぇ。

 

 人を怪人にしておいて意味のないことに使わせるんだったら自分がそこまで来やがれ。

 マジでふざけんなよ。

 

 

 

「なぁ、ミラー、本命じゃなくてもいいから生身の敵が近くにいたりするか?」

 

「ん、それは玲衣の得意分野。……でもやってみる」

 

「すまん、ありがとう。探知は俺からっきしで」

 

「ならワタシの腕の見せ所だね」

 

 

 

 ……絶対に一人くらいは怪人を発生させた人間はここに残っているはずだ。

 じゃないと、この前よりかは少ないとはいえこんな人数の怪人は普通生まれない。

 

 コソコソするんじゃねえよ。

 表に出てきて戦え。

 

 自分でもこの辺の魔力を探ってみるが、いつも通り一人も探知することが出来ない。

 

 俺が探知することが出来たら直ぐにでもその場に行ってやれるのに。

 

 そんなことを考えていると、ミラーをこっちの方を見て敵の場所を知らせてくる。

 

 

 

「裕樹、こっちの方に行けば何人かが息をひそめてる」

 

「強さとしてはどんくらいだ?」

 

「それなりには強いけれど、こいつらもやっぱり使い捨て」

 

「これを仕組んだ奴ではなさそうか……まあ、叩き潰すだけだな」

 

 

 

 場所は、分かった。

 

 もちろん最初の魔法少女ではないし、魔法少女から指示されてこの状況を作ったであろう奴でもない。

 

 残念ではあるが、そんなのは関係なくやってやるよ。

 

 どうか油断しながら待っていてくれ。

 その方が俺がお前たちを狙うときに心苦しくなくて済むから、な。

 

 

 

 

 

 

「よう、初めまして。名前は覚えなくていいしこっちからは言わねえけど」

 

「ッなんだお前は!? 一体どこから……ぐあッ」

 

「だから何も知らなくて良いって言ってんだろ」

 

 

 

 とりあえず、一番俺の近くにいた男を蹴り飛ばしておく。

 あの時の黒ローブみたいなふざけた服を着ているが、強さは格下中の格下だ。

 

 対峙したときに感じるヒリヒリさの欠片もないし、本当にコイツらは下っ端ってことがよく分かるよ。

 

 おっと、よく分かんねぇ部屋でコソコソやってたみたいだけどここからは逃げさせねえよ。

 

 こんな密室に隠れているのが悪いんだからな、そっちにはミラーと後輩が待ち構えている。

 

 

 

「ここからは、絶対に逃げさせない」

 

「これ以上動くんだったら鎌で切りますよ〜」

 

「ヒ、ヒィ!?」

 

 

 

 これでここにいた人間のうち二人はやった。

 後は、そこで怯えている一人だけ。

 

 何かしらの反撃はしてくると思っていたのに、何もしてこない。

 所詮使い捨ての、一般人に毛が生えたくらいの奴らか。

 

 

 

「おい、持ってる情報を全部吐け」

 

「お、オレ達は何も知らない! これは全部仕組まれたこと「黙れ」……で……」

 

「裕樹、こいつらは何も持ってない」

 

 

 

 徹底的に情報を渡してもらおうとしたが、ミラーはめぼしいものは持っていないと言う。

 

 となると、力は勿論、情報すら持たされない程度の連中ってことかよ……。

 ……はぁ。

 

 不満がないと言ったら嘘になる。

 けれど、心を読めるミラーがそう言うのであれば本当にそうなんだろう。

 

 チッ、これじゃ何も成果は得られねえな。

 まあでも元々怪人を倒すことだけが目的だったから仕方がねえ。

 

 そんじゃ、一応コイツらを連れて帰ることにするか。

 そして、俺は本部の方を向きながら、これからについてボーッと考える。

 

 

 

 --そんな時。

 爆発音が、本部の方から響いてきた。




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