悪の組織の下っ端ですが、魔法少女を拾いました   作:ひぶうさぎ

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本日3話目


第二十六話 いつか達成させる目標

 知らねぇ部屋かと思って飛び起きたら、普通に俺の部屋だった。

 危ねぇ、久しぶりにここで寝たせいで、もしかしてどっかに連れ去られたのかと思ったわ。

 

 時間は……ってもう夕方じゃねぇかよ。

 俺らが帰って来たのって、一応まだ朝って呼べるような時間帯じゃなかったか?

 

 思ったよりも経つの早い時間にビビりながらも、なんとかまだ眠い体を叩き起こす。

 

 すると、足元に見覚えのある黒い髪が。

 ……おいちょっとまて、ここって俺の部屋で鍵もちゃんとかけてたはずなんだけどなぁ。

 

 

 

「どうしてお前は平然と床に寝っ転がって寝てるんだ、ミラー」

 

「あ、裕樹起きた?」

 

「起きたじゃねぇだろ。ほんの数秒前まで幸せそうな寝息をたててたくせに」

 

 

 

 相変わらず最初はそういうスタンスで入ってくるし。

 それにお前はどうやって鍵をかけたこの部屋に入ってきた。

 

 そう思っていると、ミラーは自分の体を影のようにして、ドアを通って外に行ったかと思いきやそのまま戻ってくる。

 

 ……なるほど、侵入してきた方法は分かったがお前いつの間にそんなことが出来るようになってんだ。

 

 そんな照れたような顔されても、別に全く褒めてないからな?

 俺の顔を見ろよ、どう見ても呆れているだろうが。

 

 

 

「そんなに褒めても、なにも出てこない」

 

「はいはい」

 

「むう、もう少し優しくしてもいいのに」

 

「もしかしてその表情、後輩から教えられてたりしねぇだろうな」

 

 

 

 ていうか、いつもにも増してミラーのアピールが激しい。

 しかも、なんかどこぞの後輩みたいな語彙ばかりを使っている気がする。

 

 その俺の心の声を読んだのか、これまた相変わらずぶいぶい言ってやがるし……全く。

 それなりにヤバい状況だっていうのにのんびりした奴だな。

 

 後輩ですら今日の行きとかは真面目な顔つきをしてたんだからお前もそれを見てそれ通りに行動してくれ。

 って、こいつによく分からねぇアピールを教えたっていうのは後輩じゃねえか。

 

 野郎、後であったら一発何かしらはお見舞いしてやるよ。

 

 ……そういや、咲と玲衣は家で何をしてるんだろうか。

 なんだかんだ言って今日もそれなりに帰りが遅くなりそうだし、玲衣が抑えてくれそうではあるものの、帰ったときの咲が……。

 

 まあ、今はあんまり考えないようにしておくか。

 とりあえずはまた来るであろう最初の魔法少女からの刺客に備える準備をしていかねえと。

 

 爆発音までして何が起こったかとビビったが、相手にとっちゃ偵察隊みたいな扱いだったんだろう。

 

 次のは多分やべぇのが来る。

 もちろん、ただの俺の予想でしかないけど。

 

 こういう時っていうのは大抵二回目が一番本気を出してくるもんだ。

 

 相手が一回目で戦力を使い果たしたって可能性もかいわけじゃないが、最初の魔法少女、もしくはその手下がそんな弱いわけはないしな。

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 そして、執事風の男が正真正銘自らの命をかけた戦いの準備をしていた頃。

 

 裕樹の家の中では玲衣と咲がどこから見ても楽しそうとは言えない表情で話し合っていた。

 

 玲衣の方は多少慣れているため、そこまで深刻そうな顔はしていないが、咲の顔色はとてもじゃないが良くはない。

 

 

 

「スノウさん、私はここにいるだけで何も出来ないんですか……?」

 

「うーん、裕樹から来いって言われてないしボク達がいないといけないってわけではないね」

 

「でも! 朝の爆発音はここまで届いて来ましたよ!?」

 

 

 

 玲衣は焦る咲を宥めようとするが、咲はそれでも今すぐにでも裕樹の元に行こうとしている。

 

 だが、だからといって裕樹が心配でないというわけではない。

 

 落ち着こうとしているだけで、彼女もまた裕樹の身を咲と同じ、いやそれ以上に案じていた。

 

 咲は焦りによりちゃんと玲衣の顔を見れていない。

 それでも、良く見れば玲衣の目の奥も揺らいでいて、本当に行かないままで良いのか迷っている。

 

 なんだかんだ言って、二人とも裕樹のことを何かしら思っているのだ。

 二人とも裕樹に恩がある上、抱えている感情もそれなりに重いのだし。

 

 

 

「何かあったら裕樹もきっと頼ってくれるから、ね?」

 

「スノウさんがそういうなら、大丈夫だとは思うんですけれどもう裕樹さんが隣にいないと心配で心配で……」

 

「うんうん、その気持ちはボクも分かるからさ。裕樹が帰ってきたら思いっきりぶちまけなって」

 

 

 

 ただ、やはり玲衣の方は大人と言うべきか。

 

 裕樹に言いたいことは、今までの分も合わせて咲の何倍何十倍もあるはずなのに、咲のことまで気を回せている。

 

 その時、開けていた窓から強い風が吹いてきた。

 

 それによって咲のピンクがかかったツインテール、そして玲衣の水色の前髪も揺れる。

 

 その風を感じながら、玲衣は今日、絶対に何かが起こるという根拠のない確信を得ていた。

 

 

 

(やだなぁ、嫌な予感がするよ。……まあその時は咲ちゃんを連れて裕樹の元にあるのもありか)

 

 

 

 それに。

 

 咲よりも裕樹に想いを寄せている時間が長い玲衣は他人が思っている数倍はしたたかなのだ。

 

 

 

(いい感じのところで私達がこれば、多分裕樹からの好感度も上がるし、なんてね)

 

 

 

 そのまま玲衣はそういたずらっぽく笑って。

 先ほどまでの暗い顔なんて全くなかったかのように。

 

 玲衣は咲にどうやって裕樹の元に現れるかという相談をし始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふへっきゅしょんッ。やべ変な声出た」

 

「裕樹、何そのくしゃみらしいくしゃみ」

 

「マジで自分でも驚いてる、誰か俺の噂でもしてんのか?」

 

「迷信じゃないの、それ」

 

 

 

 しばらくミラーと駄弁っていたら、自分でもわけ分からねぇくしゃみが出てきた。

 

 なんだよ今の。

 あんなに綺麗なくしゃみをしたのは初めてなんだがってくらい綺麗に言ったぞ。

 

 そんなことを考えながら、ふとミラーの顔を見る。

 

 いつも通りの無表情で何を考えてるかなんてわからないようで分かる不思議な奴。

 

 俺は、最初の魔法少女がいなければこうやってこいつと会う事もなかったんだろうな。

 

 もしかしたら玲衣が魔法少女だなんてことは一生知らないまま、なんだかんだ言ってずっと仲良くやれたかもしれねぇのか。

 

 それに、咲だって本人の口からは聞いてねえけど多分こいつも最初の魔法少女がらみであの時倒れてたんだろうし。

 

 そう思うと、俺の周りの人間って、最初の魔法少女の所為(おかげ)で会えたようなもんか。

 

 おもしれぇな。

 今の俺達にとっての一番の敵が俺達が出会えるようにしてきた(くれた)なんて。

 こんなこと中々ねえよ。

 

 さっきミラーからそれとなく言われた情報じゃ最初の魔法少女は今回の襲撃に関して何も計画してなさそうな感じだが、んなことどうでもいい。

 

 決めた、ちょっと今から目標でも立てるか。

 

 いつか最初の魔法少女をぎゃふんって言わせてやるわ。

 まずはその前に今回の首謀者、もしくはまた来るかもしれない黒ローブに一から最初の魔法少女について吐いてもらおう。

 

 ……と、ここにミラーがいるのを完全に忘れていた。

 隣を見ると、案の定と言うべきか俺にジト目を向けているミラーの姿が。

 

 なんか、すまん。

 変な独り言ってか心の声を垂れ流しちまってたよ。

 

 

 

「ううん、面白そうだった」

 

「ごめんよ」

 

「良かったらそれ、ワタシも参加していい?」

 

「本当にごめ……ってえ? それマジで言ってる?」

 

「ぶいぶい。裕樹のこの突拍子もないところ、嫌いじゃない」

 

「そうか、ならまあ嬉しいわ」

 

 

 

 なんか、思ったよりミラーには好評だったみたいだ。

 いや、心からなんでこんなしょうもねぇ目標に対してこんな目を輝かせているのかは分からねぇんだけど。

 

 ミラーが楽しそうなら別にいいか。

 まずは、最初の魔法少女より目の前のことだ。

 

 ミラーの話を聞いてなんとなくあっちが好きそうなことも分かったしな。

 それをボスに言ってから、俺も店の前に行って本部を守ることに参加しねぇと。

 

 咲と玲衣は……呼ばなくても来る気がするしとりあえずいいや。

 

 俺は今日の朝任務に行った時くらいの集中力を取り戻さなくちゃな。

 

 

 

 

 

 

「裕樹、なるべくその情報を有効活用するから! ありがとうね!」

 

「それじゃあ、俺は表に出て備えますんで」

 

「本当にありがとうね、外の任務に今日はもう行ってもらってるのに」

 

「下っ端ですからね、いくらでもこき使ってくださいな」

 

 

 

 ボスには、あまり時間をかけないようにして情報を渡してっと。

 後はあの旧友と共に店の方に行ってこの本部に誰も入れさせねぇだけだ。

 

 俺の予感だと、そろそろ来るような気がする。

 のんびりなんかしている場合じゃねぇ、早くあいつの負担を減らすんだ。

 

 ボスに聞いたところだと、まだ一人で表にいるらしい。

 らしいと言えばらしが、何もそんな無理をする必要はねぇっていうのにさぁ。

 

 ああ、もう。

 こんなことを考えている間にも敵は迫っているかもしれねぇのに。

 いつもならすぐにつく出口までに道が地味に長い。

 

 

 

 そして、いつもの出口を出て昼にあいつがいたところまで移動した……が。

 

 

 

「あー、うめぇ〜」

 

 

 

 そこには別に何かと対峙しているわけでもなく、ただ、まるで一仕事が終わったかのように休憩する旧友の姿があった。




シリアス寄りになってきているので、たまにはギャグもね?
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