悪の組織の下っ端ですが、魔法少女を拾いました   作:ひぶうさぎ

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サブタイトル全般ミスっていたので直しました


第三十話 決着、そして

「裕樹さんは殺させない!」

 

「なっ!? ……手元が狂ったじゃないか」

 

 

 

 しかし、最初の魔法少女の攻撃は。

 俺には当たらず顔の真横にすり抜けていった。

 

 理由は、単純。

 当たる直前で、咲が俺と最初の魔法少女の間に入り込んできたからだ。

 

 頬には、当たってもいないのに傷がついている。

 あれが当たっていたら、確実に死んでいたのは確実だろう。

 

 

 

「ありがとうな、咲」

 

「い、いやいや! いつも私が迷惑をかけてばっかりなので……」

 

 

 

 少しだけ、俺達の雰囲気は柔らかいものになる。

 しかし、まだ最初の魔法少女を倒せたわけではない。

 

 現に今も、俺のこと、そして相手からすれば邪魔をした相手である咲のことを睨んでいる。

 

 

 

「はぁ、ほんっとうに君達は面倒くさい奴らだね」

 

 

 

 ていうか、あのステッキ。

 魔法を使う用じゃなくて人を殴るようなのかよ。

 

 仮にも魔法少女だろ?

 魔法を使え、魔法を。

 

 ……一応、咲からもらったバフはまだ続いているかのか。

 さっきから全然気配がしないミラーが、きっと何かを準備してくれているんだろうが……。

 

 今は、まだ。

 俺達でなんとかするしかない。

 

 

 

「咲、俺は後どれくらい強化されたままで戦える?」

 

「それは……あと、一分もないくらいだと……」

 

「分かった、なんとかするわ」

 

「何コソコソ話してるの、叩き潰すよ?」

 

 

 

 

 咲の言い方からして、もう相当限界に近いはず。

 一分とは言っていたが、もうほんの数秒で終わる可能性も捨てきれない。

 

 最初の魔法少女は、俺が思っていたよりもよっぽど子供っぽかった。

 少し傷がついただけで意味分からねえくらいにキレ散らかすしな。

 

 それでも、やはり力だけは無駄にある。

 力がなかったらただの小物でも、力を持てばもうそれは心が小物だろうと関係ない。

 

 こりゃ、捨て身の特攻でもするしかねえ。

 

 

 

 ーーしかし、俺がそう決心して一歩を踏み出した瞬間。

 

 

 

「ゴホッゴホゴホッ……!?」

 

 

 

 突然、俺の口から咳と、ついでに血が垂れてきた。

 

 

 

「ゆ、裕樹さん!? え、えっと……これはあの身体強化の魔法の副作用が……」

 

「あはははは! なんだ、あんなに強がっておいてもう限界なんじゃないか!」

 

「おいおい……やっべぇ……ゴホッゴホッ」

 

 

 

 どうやら、強化魔法の反動がもう来ているらしい。

 

 ついさっきまでは今なら何でも出来る、と思うほどの力を感じていたのに、今では立っていることすら精一杯だ。

 

 クソ、こんなんじゃ相手の思い通りで全部終わっちまうじゃねえか。

 

 勿論、やる気はまだまだあるさ。

 けれど、体がもう言うことを聞いちゃくれない。

 

 直前に咲に助けてもらったばかりって言うのに。

 こりゃ、今度こそ死ぬかもしれねえ……。

 

 冗談でもなんでもなく、俺はまた死を覚悟する。

 

 ……しかし、そう言う時に助けてくれるのが、俺の仲間だ。

 

 

 

「ん、裕樹。ここからは、任せて。……それと、ありがとう」

 

「ボクだっているんだからね!? 咲ちゃん、ちょっとここからは先輩面するから、良く見てて」

 

「今さら君たちに何が……は?」

 

 

 

 ほら、やっぱり。

 こういう時でも、やっぱりこいつらは正義の魔法少女なんだよ。

 

 この空間に飛ばされる前は、全然効かなかった玲衣達の一撃。

 

 それは、今。

 確かに最初の魔法少女の体に俺がしたものよりよっぽど強いダメージを与えている。

 

 

 

「ほんと、何なんだよ。イレギュラーにも程があるでしょ……チッ、傷も治らないしさぁ!」

 

「魔法少女のことは、魔法少女自身が一番分かってる」

 

「それに、ボクらにその辺のことを教えてくれたのは、『最初の魔法少女』貴女なんだから」

 

 

 

 一番良いところで、格好つけやがってさぁ。

 本当に、頼もしいったらありゃしない。

 

 ーー最後に女児向けの、マイルドに描かれた魔法少女のアニメを見たのはいつだったか。

 あれでは、いつも魔法少女が勝っていた。

 

 今考えりゃもう怪人が倒されていく様はコメディでしかなかったが、昔の俺もあれにハマってはいた。

 

 一度だけ見に行った映画版では、そんな『最強』の魔法少女達でも苦戦する敵が現れて。

 子供ながらに、がんばれ、と心で声援を送ったりもした。

 

 今回も、それと同じなのかもな。

 結局、『悪』と呼ばれる人間はかませ犬でしかなくて、魔法少女の引き立て役。

 

 悪の組織の人間は、現実でもラスボスを倒すとまでにはいかないみてぇだ。

 

 でも。

 本当にそれでいいのか?

 

 今も玲衣達は最初の魔法少女を押している。

 それこそ、俺がいなくたって押しきれるくらいに。

 

 けれど、どうせなら。

 俺自身の手で最初の魔法少女に一泡吹かせてやりてぇ。

 

 だからさ、一人くらい。

 敵にも強い奴がいたっていいだろ?

 

 ……よし、もう少し頑張ってやるよ。

 魔法少女達()()の舞台にはさせねぇぞ。

 

 

 

「咲、もっかいかけられるか?」

 

「かけれはしますけれど……そしたら裕樹さんの体が……「いい」……いいんですか?」

 

「大丈夫だ、きっとなんとかなる」

 

「……こ、今回だけですよ! これが終わったら今度こそ家に縛りつけますから!」

 

 

 

 最後の不穏な言葉は、気にしないとして。

 体がぶっ壊れそうになったからなのか、心なしかさっきより自分が強くなった気がする。

 

 支援か得意とは聞いていたが、ここまでだとは思わなかったからなぁ。

 まあ、それはさておきさっさとあの戦いに乗り込みにいくぞ。

 

 とりあえず、相手の意識の外から乱入するところからだ。

 

 

 

「ほら、見なよ。あっちでは君たちが好きな男が……何処に行った」

 

「ここだよッ馬鹿野郎が!」

 

「裕樹!?」

 

「チッ、何だよ、本当に……。でももう君の死に体じゃ何もできないでしょ」

 

 

 

 ああ、勿論。

 今度こそ効果が切れたら俺はしばらく動けないようになるだろう。

 

 ただ、お前をやるって決めたんだ。

 畳みかけさせてもらうよ。

 

 一発一発に魂を込めるくらいで行かせてもらうからな。

 

 

 

「ああ、もう! うざったいな……」

 

「玲衣、ミラー、援護を頼む」

 

「……うん」

 

「りょーかい!」

 

 

 

 とにかく、後のことはどうでもいい。

 今は奴に、俺の全力を何発も何発も叩き込むんだ。

 

 遠くから魔法でちょっかいをかけるだけじゃない。

 直接、拳で、足で。

 

 一つ一つ、泥臭く相手を追い込みにいく。

 

 そうすりゃ……ほら。

 何故か回復能力を失っている最初の魔法少女にも、傷が増えている。

 

 

 

「なんなんだよ、なんなんだよ! さっきまで君は倒れてただろ!」

 

「うるせぇ、黙って俺に付き合え!」

 

「……ここ」

 

「どうしてさぁ、そんなに合わせられるの……ねえ!」

 

 

 

 相手のイライラが溜まっているのが分かる。

 けれど、まだ、まだだ。

 

 まだ、最後の一撃を叩き込むところじゃない。

 

 もっと、相手の集中を削れ。

 そして、最後に決めろ。

 

 また一つ、攻撃が防がれる。

 また一つ、攻撃が相手に通る。

 

 それでも、ここじゃない。

 今の状態じゃ、防がれてしまう。

 

 

 

「違う、ここじゃない」

 

「でも、どうせすぐ君は尽きるんでしょ? ほらほら」

 

「……ここだ、玲衣! ミラー! 咲! 全力のを頼む!」

 

 

 

 玲衣は、特大の氷のつらら。

 ミラーは、相手全体を覆う闇。

 咲は、俺達にバフを、相手にデバフを。

 

 ここまでお膳立てされて、決めないわけにはいかない。

 

 俺は咲の魔法で動きが鈍っている最初の魔法少女に。

 

 全力の、炎を纏った拳を叩き込んだ。

 

 

 

「ざまぁ、見やがれ」

 

 

 

 そして、目の前には倒れた最初の魔法少女。

 前のように急に傷が治り立ち上がることもない。

 

 自分でも、自分のやったことが信じられない。

 それでも、俺に駆け寄ってくれる咲達の反応からして、これは本当のことなのだろう。

 

 一拍置いて実感が急に湧いてくる。

 俺は、最初の魔法少女を、倒したんだ。

 

 すると、その途端視界が黒く染まってーー

 

 

 

「裕樹! 裕樹!?」

 

「裕樹さん、起きてください!」

 

「まだ、ダメ、行かないで、裕樹」

 

 

 

 そのまま俺は。

 

 意識を、失った。

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 裕樹さんが倒れた。

 

 その事実が受け止められなくて、一瞬。

 近寄ろうとした足が止まってしまう。

 

 けれど、その裕樹さんに真っ先に近寄ったスノウさんの大丈夫というジェスチャーで、少し安心した。

 

 きっと、裕樹さんの今の状態には私の支援魔法によるものが大きいだろうから。

 

 この人の行動は、いつも私をヒヤヒヤさせてくる。

 

 

 

「よかった……」

 

「裕樹は一時的に意識を失ってるだけっぽいね。もうちょっとだけ休ませておこっか」

 

「ていうか、玲衣。ワタシ達、どうやって帰るの」

 

「うーん……それはボクにもさっぱり」

 

 

 

 そう、裕樹さんは大丈夫そうなのは良いことなのだけれど、私達はここからどうやって帰ればいいのだろう。

 

 この空間に連れてきた最初の魔法少女は確かに倒した。

 しかし、なのにも関わらず私達はこの空間から今だに抜け出せていない。

 

 だから、何か手掛かりがないかと倒れている最初の魔法少女の元に向かう。

 

 --すると、そこには。

 

 

 

『うーん、まさか分身とはいえ私が倒されるなんて……』

 

 

 

 裕樹さんが倒したはずの、相手が。

 つい先程までついていた傷なんか無かったかのように立ち上がっている姿を見せていた。

 

 

 

「ッ!?」

 

 

 

 思わず後退りすらしてしまう。

 しかし、何かがおかしい。

 

 スノウさん達も異常に気づいたのかこっちの方を警戒しているが、それも戦っていた時ほどではない。

 

 ……ああ、そういえば。

 裕樹さんが仕掛ける前に、ここに本物はいないとか、そういうことを言っていたような……。

 

 

 

『そう。だから今の私は、一種の残留思念のようなものだね』

 

「私の心を……読んだ?」

 

『本部にいるのも面倒くさかったから私と同じように作った奴だったんだよ。でも、最近はちょっと操作がし辛くて。まあ、ても今回は君達の勝ちってことでいいよ』

 

 

 

 目の前で語る彼女の姿は、何か人間臭さのようなものが感じられて私達が戦っていたものよりよっぽど人間らしい気がする。

 

 そのまま、それに続いて彼女は。

 

 

 

『まあ、多分また会うだろうから。その時もよろしく』

 

 

 

 そう何か確信したような言葉を残して、彼女は跡形もなく姿を消す。

 

 そして、それと同時に私達がいた暗い空間も消え去っていった。




最初の魔法少女(の分身)が油断をしなかったら、普通に負けもありました

明日は、12時7分に第一章最終話です
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