悪の組織の下っ端ですが、魔法少女を拾いました   作:ひぶうさぎ

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1話目です


第四話 後輩との怪人討伐

 今だに名前もわからない少女が俺の家に住むようになって、遂に今日で一週間。

 

 連れてきたのは俺なのだが、なぜか気づいたらすっかり家に馴染みやがった。

 

 今のところ俺の家に意味もなく遊びにくる奴はいないし、まだ良いは良い。

 

 ただ、誰かが来たとしたら真っ先にアイツとの関係性を詳しく聞かれそうで本当に嫌だ。

 

 まあ、聞かれたら聞かれたで拾ったと言えばいいだけなのだが。

 

 

 

「先輩、そういや一週間くらい前に俺が持ち帰ろうとした人間、今どうしてます?」

 

「人間……?? ああ、あいつか」

 

「はいはい。で、どうなんです?」

 

「どうって言われてもな……ほどほどに《拷問》したりしてるに決まってるだろ」

 

 

 

 ただ、家にはこなくてもこうやって任務途中にうるさく聞いてくる後輩みたいなのもいるわけで。

 

 これがかなり迷惑なのだ。

 

 しかもこれ、何をしているかと聞かれても拷問をちょくちょくしているとしか答えられないクソ質問で答えるのが本当にめんどくさい。

 

 ていうかこの類の質問を最近ちょくちょく聞かれるんだよ。

 もしかしなくても後輩が何人かに情報を漏らしただろ。

 

 俺が拷問するとは言ったけどさぁ、人の好きにさせてくれねえかなぁ……。

 

 

 

「そういやこの地区の魔法少女、いなくなったんですね」

 

「ああ、どうせ何かの工作だろうがニュースにもなっていたな」

 

 

 

 結局、あの後でこの地区を担当しているという魔法少女についての追加情報は全く入ってきていない。

 

 いつもならこの段階で何かしらは入ってきているので、これはかなり珍しいことだ。

 

 俺個人の感情として、まだ高校も卒業してないような奴らのことなので一応大人としては心配っちゃ心配ではある。

 

 まあ、もう二十の後半だからな。

 一応、ちゃんと大人をやってるんだよ。

 

 

 

「さて、今日の目的は元々組織の下っ端だった怪人をぶっ倒すってことだったよな?」

 

「そうっすね、まあ雰囲気が禍々しくなってきましたしこの辺にいるんでしょうよ」

 

「能力が地味に強かったはずだから油断はするなよ」

 

「勿論ですって」

 

 

 

 そうこうしているうちに、今日の目的の場所につく。

 用事としては……まあ、後始末みたいなもんだ。

 

 怪人は放っておくといつのまにか危険性が増大して大変なことになる。

 それは、元がどれだけ弱い人間だったとしても変わらない。

 といわけで怪人は、なるべくすぐ対処する必要があるのだ。

 

 今回の怪人は元々組織にいて、少し前に問題行動をして組織から除名された奴。

 

 どうせ、それがきっかけで怪人化したとかそんなところだろう。

 

 それだけ組織に並々ならぬ思いがあったと言えば聞こえはいいが、コイツは少しはヘマをしても隠蔽してくれる組織が好きだっただけだ。

 

 別に忠誠心とかそんなものは欠片も持ち合わせていなかった。

 だから俺達は何も気にする必要がない。

 

 

 

「見えた、あれだな」

 

「そうっすね。うわ、空飛んでやがる」

 

 

 

 濃い禍々しい霧の中に、人のような黒い靄が見える。

 もちろん、それは討伐対象の怪人。

 

 だが、怪人にしては珍しく霧状だ。

 殆どの怪人は人間の形をしているだけの黒いナニカだから燃やせばすぐに終わる。

 

 それが今回は霧状の相手って言うわけだ。

 

 後輩は、少しだけ心配そうに俺の方を向いて言ってくる。

 

 

 

「これはちっとキツそうですか?」

 

「……なんだ、ネタか。本気かと思ったよ。まあ、流石に発生してから間もない怪人って感じだな」

 

「そうっちゃそうですけど。自分が役に立たないんですよ、今回」

 

「そりゃな、お前はしっかり触れる相手じゃないと駄目だろ」

 

 

 

 ただ、その後輩の心配そうな表情はただの演技だ。

 あいつも、少し特殊って言うだけの怪人に負けるとは考えちゃいない。

 

 だが、後輩の持っている武器は、鎌。

 姿形を自由に変えれそうな今回の相手に対してはおそらく何も出来ない。

 

 とはいえ、目の前のやつは意思が殆どない怪人だ。

 こいつもちゃんと焼けるに決まっている。

 

 お、やっとこっちを見てきたな。

 俺たちに気づくのがおせえんだよ。

 

 こういう周りに人がいても気づかないところとかもしっかり再現されてるのな。

 流石に意思はなさそうだから、発生したばかりでまだ元が濃く残っているってところか。

 

 

 

「UGGGGGGGGGG」

 

「組織にいたときと、全然変わんねぇ姿だな」

 

「そうっすね、もうちょい変わっているかと思ったんですけど」

 

 

 

 空中から怪人が迫ってきているが、俺達には余裕がある。

 なんなら、軽口だってまだ言ってられる。

 

 何故なら。

 

 

 

「ほら、燃えやがれ」

 

「GUGAGAGA……GA!?!?!?」

 

 

 

 これくらいの敵に負ける訳がないからな。

 たとえ、少し普通の怪人にはない特性があったとしても。

 

 悪の組織の下っ端ともいえども、こうやってわざわざ後始末を任されている以上それなりの実力は持っているに決まっている。

 

 俺が放ったのは、ただのなんでもない火球。

 魔法が使えない後輩に投げたって、鎌を一振りされるだけで消える貧弱なものだ。

 

 でも、発生してから時間が経っていない怪人相手だとこんな技でも普通に倒せる。

 

 怪人っていうのは、どれだけ最終的に強くなろうと、最初はただの弱いナニカでしかねぇんだ。

 それこそ、今強い風が吹いていたとしたら、そのまま流れて死んだ可能性もあるくらいに。

 

 

 

「思っていたより弱かったですね」

 

「だな、最近見ないタイプの怪人だったからほんのちょっとだけ期待はしてたんだけど、こんなもんか」

 

「今度軽く報告するくらいにしておきましょう」

 

「了解、一応ボスに報告するときに触れておく」

 

 

 

 ……怪人討伐の時は、よっぽどじゃない限りいつもこんな感じだ。

 もしかしたら本当に強い個体かもしれないと警戒しつつ、結局いつも成り立て。

 

 一般人なら巻き込まれるかもしれないが、ほとんどの怪人は、都合良く発生した場所の周りに人がいることもなく弱体化して勝手に消滅する。

 

 それじゃ、このまま家に帰るとするか。

 今日のは異変っちゃ異変だったが、戦闘能力が強化されてたわけじゃなかったな。

 

 

 

 そのまま、俺はいつも通り帰ろうとする。

 しかし、いつもなら大抵別方面に行く後輩がついてきていた。

 

 

 

「おい、何の用だ」

 

「少し、先輩の家でどう過ごさしているかっていうのが気になっててですね?」

 

「いやだよ、お前を連れて行ったらろくなことにならねぇじゃん」

 

 

 

 どうやら、家にいる少女の様子が確認したいらしい。

 確認してどうすんだという話だから、当然即拒否だ。

 

 別に何もしないで帰るんだとは思うが、いかんせんこいつが関わるのは普通に嫌というのもある。

 

 一度だけ、一度だけ後輩を家にあげたことがあるんだよな。

 結局何もしなかったからいいものの、絶対何かしようとしていたよ。

 

 どうせ俺がいない間とかを狙ってくるんだろ。

 じゃあ無理って話だ。

 

 

 

「そんなに怖い顔しないでくださいよ、冗談ですってば」

 

「お前のせいだろ……」

 

 

 

 ここまでは、いつも通りの軽口。

 

 だが、いつの間にか後輩の雰囲気がいつものおちゃらけた感じでは無くなっている。

 

 今日は()()()()いつもとは違う会話になるかもしれない。

 

 

 

「……それより、自分はなんで積極的に動かない先輩があの少女をかばったのが分かんないんです」

 

 

 

 なんだ、ちゃんと言いたいことがあるのか。

 そんなに真剣になって聞くことでもないだろうに。

 

 別に後輩になら少し話すくらいは良い。

 ただ、いくら付き合いが結構あるからと言って自分の弱みを見せたくはねぇよなぁ。

 

 こいつは、余程のことがない限り組織を裏切ったりはしないだろう。

 それに、裏切ったところでこいつを扱える人間がそうそういるとは思えない。

 

 でもなぁ……。

 

 

 

「もしかして、言うのが難しい感じですか?」

 

「……そうだな、ちょっと言いにくいかもしれねぇ」

 

「それじゃぁ、これはまた次の機会ってことで」

 

「良いのか? いつになく真面目じゃねえか」

 

「聞きたくないって言ったら嘘になりますけど、先輩が嫌なら深堀はしませんよ」

 

 

 

 うんうん悩んでいたら、後輩に助け舟を出されちまった。

 

 一応の先輩としてはちょっと情けない気がするが、ここは乗っておく。

 いや、せっかくの好意なのだから乗るべき、と言った方が正しいか。

 

 どちらにせよ、こいつの思惑通りに動かされてしまったことには変わりないが。

 

 

 

「これで貸し一つってとこか?」

 

「まあ、そんなところです。貸しってほどでもないですけどね」

 

 

 

 そう言って、ニヤリと笑顔を浮かべてから後輩は俺の行く方向とは逆方面へ足を進めた。

 

 参った、俺に何かしらの負い目を感じている出来事があるってことがバレちまった。

 

 弱みを見せたくないとか言って、結局弱みを見せてしまうなんとんだ道化だ。

 

 全く、次会う時は覚えてろよ。

 

 そうだ、物理攻撃が効きにくい霧状の怪人の任務をどんどん増やしてもらうようにボスに行っておこう。

 

 これを貸しにカウントしてやっても良いんだからな。

 

 暴れ足りないといつも言っているあいつには多少苦戦する相手を用意するくらいでちょうど良いんだろ?

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