悪の組織の下っ端ですが、魔法少女を拾いました   作:ひぶうさぎ

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今日も1日2話投稿
本日1話目です


第六話 魔法少女を本部に連れて行く

 少女が魔法少女で、咲って言う名前だってことが分かった。

 とはいえ、別にそれが分かったからと言って何かが変わったわけではない。

 

 結局あの日も初日同様いつものベッドで寝させたし、俺は相変わらずソファで寝ている。

 

 流石に体が痛いから、そろそろどっかに突っ込まれてるだろう布団を取り出して別の部屋で寝る予定ではあるが。

 

 それより、ここ数日は少女が初日以上にビビっていて大変だった。

 

 ただ何日かすれば流石に慣れたようで……。

 

 

 

 

 

 

「おはようございます!」

 

「朝からテンション高えよ……」

 

 

 

 ここ最近は朝からテンションが高いコイツに振り回されっぱなしだ。

 それこそ、数日前までのビビり様はどこに行ったのかと思うくらいに。

 

 まあ、テンションは低いより高い方が良い。

 

 だからと言って家にこんなテンションが高い奴が常時いるのは疲れるんだ。

 ずっと浮かない顔をしていた初めの頃は勿論心配だったが、やっぱりこっちの方が辛えわ。

 

 そんなことを思いながら、俺はついさっき食べ終わった朝飯の片付けをしようとする。

 

 その時、少女、改め咲が何かを思い出したように話しかけてきた。

 

 

 

「裕樹さん、今日は私をどこかに連れて行くって言ってませんでしたっけ」

 

「ん……? あ、そういやそんなこと言ってたな」

 

「忘れてません?」

 

「忘れてない、忘れてない」

 

 

 

 っぶねえ、完全に忘れてた。

 言われてみればそんなこと少し前に言った気がする。

 

 えーっと、それでどこに連れて行くっつったんだっけな。

 ……思い出した、本部に連れて行こうとしてたんだ。

 

 

 

「忘れてますよね?」

 

「いやいや、組織の本部に連れて行くってやつだろ? 覚えてるよ」

 

「そうですよ! ……え?」

 

 

 

 思い出したらこっちの勝ちだ。

 忘れていたことは隠して、多分この前言ったであろうことを伝えた。

 

 すると、今度は逆に咲が混乱し始める。

 おいおい、何でお前がそうなってるんだよ。

 

 

 

「あ、あの本部ってその……本拠地ですよね?」

 

「そうだな」

 

「私、魔法少女なんですけど……」

 

 

 

 もしかして()()に行くってことはまだ言ってなかったのか?

 

 だとしても、別に本部に行くからって何だって話だと思うんだが……あ。

 分かった、魔法少女()なのに入って良いのかってことを心配してんだな。

 

 ただ、それくらいのことなら別に心配する必要はないはずだ。

 

 

 

「いや、道中で変身する訳じゃねえんだしそもそもバレねえだろ」

 

「え……」

 

「それに会うのはボスだけだ。ちゃんと話が通じるから安心しろよ」

 

「そういうものなんですか……?」

 

「俺だって言われるまで気づかなかっただろ、そういうもんだよ」

 

 

 

 ただ、分かるやつはこいつ発動させてる魔法で分かるかもしれない。

 言ったら言ったで面倒くさいことになりそうだから言わないが。

 

 そいつらにさえ気をつければこれと言った問題はないだろ。

 しかも別にそいつらも直ぐに襲いかかってくる訳じゃえねしな。

 

 ……いや、何人かは後輩と同じくらいバトルジャンキーだからワンチャンあるかもしれないか。

 

 

 

「それなら……大丈夫ですね」

 

「多分な」

 

「急に心配になってきましたけど……」

 

 

 

 とはいえ流石に本部で争いごとは起こさないはず。

 

 でも絡まれても大丈夫だろ。

 こいつだって魔法少女なんだしな。

 

 実力はよく分かんねえけど、魔法をずっと体の周りに発動させれてる時点で普通じゃねえんだから、なんとかなるに決まってる。

 

 

 

「そんじゃ行くか、用意とか終わってるか?」

 

「あ、ちょっと待っててください!」

 

「ああ、まだ終わってねえのか。それじゃ暫く待っておくわ」

 

「いや、準備は終わってるんですけれど、心の準備が……」

 

「心の準備? んなもん必要ねえよ。ほら、行くぞ」

 

 

 

 わざわざ心の準備なんてしていくとこじゃねえんだ。

 もっと気楽に行こうぜ。

 

 見た目は怖いが中身はめちゃくちゃ優しい奴とか、そういう組織の良心的ポジションだっているしな。

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本部って、こんな感じなんですか……」

 

「魔法少女の本部みたいにドデカく作ったら怪しまれるだろうが」

 

「もうちょっと秘密基地みたいなのをイメージしてたんですけど」

 

「ロマンを堅実に持ち込むんじゃねえよ。中は意外と広いし良いもんなんだ」

 

 

 

 着いて早々裏道にある本部の入り口を見た咲に文句を言われる。

 

 人の組織の本部にケチつけんなよ……。

 これでもだいぶ頑張ってる方なんだ。

 

 他の組織は女児向けアニメに出てくるようなボロアパートが本部だったりするんだぞ?

 

 一度魔法少女の本部を見たことがあるから、あれと比較する気持ちも分かるけどさ、な?

 

 国が運営してるやつの規模に俺らみたいなちょっと大きいくらいの組織が勝てるわけねえだろ。

 

 ただ、中はもうちょいマシというか普通に広いんだよ。

 先に言うとつまんねえからちょっとだけ反応を待ってみるか。

 

 

 

「でも、ここどうやって入るんですか?」

 

「それはな、ここをこうやって……」

 

「開いた!? これは凄いですね……」

 

 

 

 今更だが、こういう組織の重要なことをバンバンコイツに見せてるけど大丈夫なのか……?

 コイツのリアクションは面白いけど、普通に俺今やべえことしてんじゃねえかな。

 

 ていうかこれ、初め入り方が分かんなくて馬鹿苦労したんだよ。

 だからセキュリティの面では安心ではあるんだが、その分今でもたまに忘れかけるんだ。

 

 魔法使える組は魔力認証みたいなので良い気がするんだよなぁ。

 そうしてくれねえかな……。

 

 

 

「中、結構広くないですか!?」

 

「もっと狭いと思ってただろ?」

 

「はい……」

 

「見栄えはともかく意外と機能的で良いところなんだよ」

 

 

 

 それにしても、百点満点のリアクションだよな。

 こんなに人がしっかり驚いてるの久しぶりに見たよ。

 

 そういや、後輩が初めてここに来た時もこんな反応してたような気がする。

 

 あれもあれで良く驚くもんだなって思った思い出だが、やっぱり入り口だけで狭いって判断されちまってるんだよな。

 

 俺は好きなんだよ、秘密基地感があって。

 

 でも、初見の奴からしたらやっぱり狭く見えるんだろうなぁ。

 

 ちょうど今日ボスにも会うし、周りからバレない程度にもう少し入り口を大きく出来ないか聞いてみるか。

 

 

 

「あの人私のこと見てきてますって……」

 

「気のせいだろ、もうちょい我慢しろ」

 

「絶対見てますって……!」

 

 

 

 それはそれとしてなんでこいつは視線だけでビビってんだ。

 こいつが指を指している人間のほとんどはこっちに注目してないってのに。

 

 あ、今通りかかった奴は二度見してたな。

 誰だあれ、多分俺の知り合いだとは思うんだが。

 

 二度見してからまた元の方向を向くまでが早いんだよ。

 

 

 

 

「ほら! 今の人なんか振り返ってましたよ!?」

 

「静かに騒いでくれるのはありがたいんだが、俺の鼓膜が持ちそうにないからやめてくれ」

 

 

 

 ……ちょっと待て。

 おい、そこの端っこでコソコソしてる奴ら。

 別に俺に彼女ができたとかじゃねえからな!

 

 

 

「ついにアイツにも春が来たのか……」

 

「抜け駆けされた気がするなぁ……なぁ!」

 

「今度家に爆弾持って行っていこうぜ!」

 

 

 

 しかも、全員それなりに知ってる奴らだ。

 一人目二人目はまだ良いとして、三人目の奴の目がガンギまっている。

 

 あれは、マジで送りつけようとしている目だ。

 割と洒落にならねぇ、住所が漏れたその瞬間に家に仕掛けられる気しかしない。

 

 

 

「さっさと行くぞ、スピード上げろよ」

 

「そ、そんな急にですか」

 

「いいから来い、このままだといらない噂を立てられる」

 

「え、ええっ!?」

 

 

 

 後でどうにか弁明しよう。

 じゃねえと俺の家が冗談抜きで吹き飛ぶことになる。

 

 なまじ全員実力がある奴らだから結託なんてされた日には……想像をしただけで恐ろしい。

 

 これも一応ボスに言っておくか……。

 もし家が無くなった時に色々手配してもらわねえと俺一人でだとキツイわ。

 

 おっと、そうこうしているうちにボスの部屋の前に着いちまった。

 

 

 

「ここ、ですか?」

 

「そうだ、危害は加えられないと思うが、念の為気をつけておいてな」

 

 

 

 そして、俺がドアを開ける。

 

 その途端、俺たちに向かって飛んでくる魔法弾。

 

 ッ危ねえ!

 ……咄嗟に魔法展開してなかったら蜂の巣にされるところだったぞ。

 

 俺、後ろに逸らしてないよな?

 後ろにいたかもしれねえ組織の連中に弾が当たってたりしてないよな?

 

 一瞬だけ、そんな想像が頭をよぎったが、後ろからは誰の悲鳴も上がってない。

 多分、大丈夫だろう。

 大丈夫、だよな……?

 

 

 

「あ、弟くんか〜」

 

「すみません、来る部屋を間違えました」

 

「え!? ち、ちょっとしたドッキリじゃ」

 

 

 

 何か弁解しようとしているらしいが、とりあえずドアを閉める。

 なんでいるのがボスじゃなくてこの悪戯好きの人なんだ。

 

 割と危ねえんだけど。

 割とってか普通に危ねえんだけど。

 

 何より俺達以外の誰かに当たる可能性があったっていうのが一番怖いんだが。

 

 

 

「あの……今の人が……ボス?」

 

「いや、あれはただの悪戯好きの幹部だ」

 

「危なく……ない?」

 

「ああ、めちゃくちゃ危ない」

 

 

 

 この時ばっかりは、こいつが困惑するのも仕方がないと思う。

 初対面でこんなことをされるなんてこと、中々ないだろうし。

 

 なんとなくあの人がどういう人間なのか分かっている俺でも、これは少し引いた。

 フォローしたいところだが、ちょっとこれはどうしようもない。

 

 そして、この会話を最後に、俺達の間にはなんとも言えない沈黙が広がるのだった。

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