悪の組織の下っ端ですが、魔法少女を拾いました   作:ひぶうさぎ

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本日2話目です


第七話 魔法少女の実力

「いやー、ごめんごめん。ちょっと驚かそうとしただけなんだよ」

 

「その割には命の危険を感じるものだったんですがそれは」

 

「いやー、だって魔法少女を連れてくるだなんて前代未聞なんだもん。……まあ、見たところ本物っぽいから何もする必要なかったけれど」

 

 

 

 洒落にならないドッキリから少し経って、俺達は部屋の中で綾乃さんと話をしていた。

 

 咲は、まださっきのことを根に持っているようで。

 不満しかないと言いたげに頬を膨らませて綾乃さんから少し離れたところに座っている。

 

 ただ、初手であんなのをやられたらそういう気持ちにもなるだろう。

 

 もう少し手加減をしてくれたら良かったんだが、あんなのをぶっ放されたらそりゃそうなる。

 

 まあ、どっちかというと俺の方が死にかけたんだが。

 全部咲じゃなくて俺の方に飛んできたからな。

 

 

 

「この子、魔法というか障壁みたいなのを常に展開してんでしょ? バケモノかな?」

 

「まあ、それは」

 

「魔力も凄いね〜、ちょっと近づいていい?」

 

「……近づかないでください」

 

 

 

 流石の綾乃さんにもやらかした自覚はあるらしく咲との距離を詰めようとするが、当然咲はこんな反応をする。

 

 初対面がバッドコミュニケーションだとこうなるんだな。

 

 綾乃さんは悲しそうな顔してるけども、全部自分でまいた種だから援護はできない。

 

 好感度を自分で取り戻すしかない。

 俺は手伝わないから一人で頑張ってくれ。

 

 それにしても俺達が会いにきたボスはどこに行ったんだ。

 

 そんな中、綾乃さんは何かを思い出したようで、ハッとした顔でこう言ってきた。

 

 

 

「あ、そうだそうだ。ユカから訓練所に連れてけって言われてるんだった」

 

「……それ、魔力弾ぶっ放す前に言えば良かったんじゃないですかねぇ」

 

「そっか!」

 

 

 

 ……そうしていたらこうも警戒されることなかっただろうのに。

 魔力弾をぶっ放してでも実力を測りたいって気持ちは分からなくもないが、今回はちょっと手段がアレだった。

 

 初対面で貰うのが挨拶どころか攻撃だなんて最悪すぎるだろ……。

 

 ……はぁ、この人をこれ以上咲と一緒にさせるのは危険だ。

 俺が連れてくか……。

 

 

 

「綾乃さん、こいつは、俺が訓練所まで連れて行きます」

 

「え、いいの?」

 

「綾乃さんに連れて行かせたらまたなんかやらかすでしょう」

 

「それ、ユカにも言われたんだけど」

 

「……でしょうねぇ」

 

 

 

 

 

 

 そんなわけで、咲は俺が連れて行くことになった。

 咲は怒りがおさまっていなのか、まだ怒ったような顔のまま。

 

 ちなみに名前呼びになった理由としては、自分の苗字は好きじゃないから名前だけで読んでくれと咲が言ったからだ。

 

 俺は別に苗字でも構わねえと思うんだけど。

 苗字はまだ教えられていないから、相当嫌な思い出があるのだろう。

 

 

 

「おいおい、幸せそうな奴らがいるじゃねえか」

 

「シッ! やめろ、男の方はめちゃくちゃ怖いやつだ」

 

「何言ってんだ、あんな優男なんか何も苦労しなくたって倒せるだろ?」

 

「お前、知らないのか!? あの人は幹部とも張り合える戦闘能力の持ち主だぞ!」

 

「な、何ィ!?」

 

 

 

 廊下では相変わらず愉快な組織の連中が騒ぎ合っている。

 片方が新人で、片方がこの前ボコした奴か。

 

 ボコしたとは言っても、久しぶりに大分マジになって戦ったが。

 重力を操るとかいうチートみたいな魔法を使う奴で本当に苦労した。

 

 

 

「あの人、重力魔法が使えるんですか……?」

 

「お、よく分かったな。魔力の流れでも見たのか?」

 

「そうですけど……こんなところにも重力魔法を使える人がいるんですね」

 

「うちには色んな人間がいるからたまにああいう逸材もいるんだよ」

 

 

 

 この組織には色々助けてもらった奴らが良く入ってくる。

 そういうのが積み重なって、この組織は大きくなっていったらしい。

 

 現に俺だって、昔は姉がいる組織を散々馬鹿にしてたが、命を救われてからは組織に入って色々動いているクチだ。

 

 さて、訓練所はこっちの方向だったはず。

 俺はまあまあ忘れっぽいが、訓練所に関しては結界が張られてるから忘れてもどこなのか分からなくなるってのが基本ない。

 

 そういや、訓練所の結界とかもこの組織に拾われた人がしてるんだったか。

 

 そう思うと、この組織はやっぱり健全な成長の仕方をしている気がするわ。

 

 別の組織だと構成員はボスにそこまで忠誠を誓ってない上、構成員が他の組織に引き抜かれることもザラにあるらしい。

 

 それに対して、この組織ではそんなことは滅多にないが。

 

 ああ、でもこの前の怪人になった奴は別の組織からオファーが届いていたとは聞いている。

 実際本人も好意的な反応を示していたとか。

 

 ただ、ああいうのは例外中の例外だろう。

 少なくとも俺が良く接している奴らは全員この組織が好きだしな。

 

 おっと、もう訓練場だ。

 ボスが準備運動らしきことをしながら待ち構えてるよ。

 

 

 

「裕樹、連れてきてくれたか。綾乃は……分かってはいたがまたやらかしたんだ?」

 

「そういう、ことですね」

 

「はぁ……綾乃のコミュニケーション能力を上げるつもりで任せてみたんだけどなぁ」

 

 

 

 まあ、ボスの代わりに綾乃さんがあの部屋にいたってことはそういうことだったのだろう。

 悲しいことに、見事なバッドコミュニケーションをかました訳なのだが。

 

 繰り返しになるが、決して悪い人ではない。

 ただ、少しズレていて、たまにこういうことをするだけなのだ。

 

 それにしても、咲は訓練場についてからずっとボスの顔を見つめ続けてるな。

 何か気になることでもあったのだろうか?

 

 

 

「髪……少し青いんですね」

 

「あ、髪? そうなんだよ、魔法の使いすぎで魔力の色に髪が染まっちゃってね」

 

「その髪の色ということは……氷魔法ですか……?」

 

「そう、多分君が想像している魔法少女とほとんど同じ魔法」

 

 

 

 ……ああ、なるほど。

 ボスの髪色が気になっていたのか。

 

 氷魔法を使う人間はあんまり多くないからな。

 俺も結構珍しい色だと思うわ。

 

 さて、こっから咲は大変だぞ。

 これからお前はボスと戦う羽目になるはずだからな。

 

 口調とかはさっきの奴らと比べて全然優しけれどそういう奴らをまとめ上げているだけあってボスもちゃんとバトルジャンキーなんだよ。

 

 

 

「じゃあ、早速だけど手合わせしようか」

 

「え、今ですか?」

 

「そう、せっかく訓練所まで呼んだんだからね。魔法少女の強さとか知りたいし」

 

 

 

 ほらな、やっぱりこうなる。

 こういう組織にいる奴っていうのは、どうしても常に誰かと戦っていたいっていう人間ばっかり。

 

 もちろんボスも、一般人から見れば俺だって、そういう人種だ。

 

 

 

「ルールはどっちかが戦闘不能になるまでって言いたいけど……一撃をくらったらにしよう」

 

「障壁に当たるのはカウントしないんですね」

 

「だって君の得意魔法って治癒だし、多少の怪我はなんとかなるでしょ?」

 

「……分かってましたか」

 

「あ、裕樹は審判よろしく」

 

 

 

 そう言って、ボスはこっちを見つめてきた。

 逃げるなよ、というボスの言いたいことが瞳越しにひしひしと伝わってくる。

 

 ……はあ、正直なところここから逃げ出したいっていうのが本音だったんだがな。

 

 どうせ審判と言ってもどっちが勝ったかとかその辺はセルフジャッジになるだろうし、始まりの合図をするだけになるだろうのに。

 

 ただ、言われた以上はやらないといけない。

 

 任された仕事は貧乏くじでも最後までやり通す。

 それが下っ端としての役目だ。

 

 

 

「それじゃ……始め!」

 

「……行くよ」

 

 

 

 合図と同時に魔法を打ち始めるのは、ボス。

 得意の氷魔法、その物量で押し切るつもりだ。

 

 ただ、咲は魔法少女。

 殆どの構成員なら捌ききれない物量でも難なく防いでしまう。

 

 

 

「やるね、流石魔法少女だ」

 

「何から何まであの人とそっくりですね…….」

 

「褒め言葉として受け取っておくよ」

 

 

 

 単純な魔力量なら、おそらく咲の方が多い。

 だが、ボスの方が圧倒的に低燃費かつ高い威力を持った魔法を使える。

 

 どこまでの量なら受け止められるか。

 それがこの戦いのキーになりそうだ。

 

 そして、今度は咲からの攻撃。

 魔法少女特有の馬鹿みたいに多い魔力量を活かして、こちらもごり押そうとしている。

 

 技量はボスの方が上だと思ったのだろう。

 一気にギアをあ上げてきた。

 

 ……だが。

 

 

 

「それは悪手だよ」

 

「ッ!?」

 

 

 

 ごり押し度合いが酷いボスに、物量で勝とうとするのは、得策じゃない。

 むしろ、そこを狙われることになる。

 

 

 

「魔力量で勝てると思ったでしょ? 残念!」

 

「なんですか……この量はッ」

 

「努力の賜物だよ」

 

 

 

 そのまま、ボスの量のごり押しカウンター攻撃が決まり、咲の障壁を破る。

 障壁の張り直しは……間に合わない。

 

 これで、勝負はついた。

 

 

 

「はぁ……はぁ……強いですね……」

 

「思ったよりやるね。あの大きさの魔力弾はちょっとびっくりしたよ」

 

「全く気にしてなかったじゃないですか」

 

「あはは! 私は顔に出にくいからね、あれでも内心では結構ビビってるんだ」

 

 

 

 そういや、咲の魔法少女姿を見るのはこれが初めてだな。

 かなり王道の魔法少女っぽい格好をしてるのか。

 

 ピンク髪でツインテール、それにふんわりとしたスカートとか、あまりにも王道中の王道を貫いている。

 

 今はボスの攻撃でところどころ破けているが、そのうち直るだろう。

 魔法少女の服は、魔力がある限り元の状態に戻るからな。

 

 

 

「実力は……どうだろう、少なくとも裕樹はこの子に勝てると思うけど」

 

「……なんで急に話をふるんですか」

 

「裕樹さん、後で手合わせしましょう」

 

「えぇ……」

 

 

 

 勝負がついたということで、さっさとこの場から離れようとしたのだが、また巻き込まれてしまった。

 

 直ぐに俺と咲が戦うことになっていて、ここから入ることのできる保険はなさそうな様子。

 

 

 

「……やれば良いんでしょう?」

 

 

 

 まあ、たまには本気でやってみても良い。

 そう思わないこともないし、俺はそれを引き受けることにした。

 

 こういう点ではやっぱり俺も闘争を求めているのかもしれないな。

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……負けました」

 

 

 

 まあ、ちゃんと勝ったけどな。

 魔法少女は脅威だが、攻撃魔法が専門じゃない奴には俺でも勝てないことはないみたいだ。

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