加速少年の英雄希望 作:月面旅行BD
保須市での一件から数日後。
職場体験も終わって雄英高校へと帰還した俺達は其々の実習内容で盛り上がっていた。
…爆豪の七三分け見た時は爆笑したけど。直ぐに爆発頭に戻っちゃったのは残念だ。是非とも続けて欲しかった。
「エンデヴァーさんの所はどうだったの?」
「勉強になったよ…色々と」
葉隠さんと話すのも久々な気がする。
実習ね…得られた教訓と実戦経験は得難いものだったけど公に出来ないのが多すぎて話す内容に困る。
「葉隠さんはどうだったの?」
「やっぱり現場に出ると色々想像と違うね!」
身振り手振りで実習であった事を話してくれる。
楽しかったようで何よりである。
「…っていうかさ、保須にも行ったんでしょ?大丈夫だった?」
ふと気がついた様に聞いてくる。
ステイン逮捕のニュースは全国で報道されたし、捕縛したのはエンデヴァーって事になってるから俺も居たのは明白だもんね。
「大丈夫大丈夫。普段と違う状況でどう動くのか、ヒーローの底力を見せられたって感じ」
話せる範囲だとこんな感想になっちまうよ…
「保須って言ったらよ、あの動画見たか?」
上鳴くんが話に参加してきた。
動画…ステインのアレか。
「ステインの逮捕前の奴?…一応見たけど」
イカれた思想主義者が最後に大見得きってたな。
あの迫力だと感化されるヴィランが多く出そうで不安だわ。
「犯罪者だけどさ…一理あるって思っちまったよ俺は」
おおぅ…仮にもヒーロー目指してる奴がヴィランの言葉に感化されてら。まぁそれは別に良いんだけどさ…
「上鳴くん、それはちょっと頂けないね」
即座に反論する。コレがクラスに広がるのは勘弁して欲しい。
「ヒーロー殺しの被害者の目の前で同じ事が言える?お前は真のヒーローじゃ無いから殺されても当然だったって」
それでなくても飯田くんの身内が被害に遭ってんだから、こんな所で言う事じゃないよ。
「賛同するのは自由だけどさ。被害者の目の前で言えないなら軽率に口に出すのは止めといた方が良いと思うよ」
そう話を結ぶと周囲の喧騒が静まっているのに気づいた。
気まずい。雑談続けててくれよ…
「…ゴメン飯田!配慮に欠けてた…!」
飯田くんに謝罪する上鳴くん。根はまともな良い奴だから直ぐに謝れるのは素晴らしい。
「いや…ステインは信念のある男だった。そう思うのも無理はないと思う」
飯田くんも少し思う所がある様子。
信念、ね…殆ど執念と言うか怨念に近い物を感じたけどな。
「しかし奴は粛清と言う手段を取った…それだけは誰が何と言おうと間違いなんだ。だから俺は、これ以上俺のような存在を増やさないためにもヒーローを目指して邁進する!」
いつものロボットみたいな手振りと共に宣言した。
…俺はステインみたいな奴より飯田くんの方がカッコ良いと思う。
「さぁ、そろそろ授業が始まる!全員席に着くんだ!」
少しは吹っ切れたようで何よりだ。
「すみませんでした…」
上鳴くんも反省してるみたいだし、これで一件落着かな。
「意外と…って言ったら失礼だけど色々考えてるんだね?」
「そりゃまあ、ヒーロー目指してるしね?」
葉隠さんの言葉に返事をした辺りで先生が教室に入ってきた。
ヒーロー目指してるなら自分の行動が対外的にどう見られるか、どんな印象を与えるかってのは常に考えてるもんだと思ってたけどな…ま、その辺は追々か。
午前の授業を終えて、午後からはヒーロー基礎学だ。
指定された通りコスチュームに着替えて演習場にやって来た。…相変わらず凄いセットだな…
「わーたーしーがー普通に来た!!」
午後のヒーロー基礎学は久々にオールマイトが担当している。
「今日はね、救助訓練を行ってもらうよ。この入り組んだ工業地帯セットの中で私が救難信号を出す。5人…または6人組でスタートして誰が1番最初に私の下にたどり着くか競ってもらう!」
ランダムゴールの障害物競走だな。ぶっちゃけ距離によっては無双するぞこれ。
「建物に必要以上の被害を出さない事!また今回は妨害禁止とする!」
被害の下りで爆豪を見るオールマイト。
「何でこっち見んだよ」
当たり前なんだよなぁ…お前の個性が一番ぶっ壊しそうだもん。
「じゃあ、クジで班を分けるぞ!」
…最初の組み分けは緑谷くん、瀬呂くん、芦戸さん、飯田くんに尾白くんか。
「じゃあ早速配置についてもらおう!開始の合図が上がったらスタートだ!」
其々が指定された場所に着く。
「なあなあ、誰が一番になると思う?」
「飯田くんじゃないかしら?」
「芦戸も運動神経半端ないぜ?」
「入り組んだ所なら瀬呂が強いと思う」
クラスメートで1位を想像して話し合っているが…緑谷くんの名前は挙がらないな。まぁ今までのを見てると当然だけど…
「端場は誰だと思う?」
切島くんが聞いてくる。
「尾白くんか…緑谷くんかな?」
尾白くんの個性と身体能力は体育祭で把握済みだ。
こんな感じの入り組んだ所なら尻尾を利用して飛び回れるだけの身体能力があると思う。
緑谷くんはステイン戦の時に爆豪みたいな感じで戦ってたし。平坦な道ならまだしも立体的な所なら加速する為の足場には困らないだろう。
「緑谷?なんでまた…」
『START!!』
そうこうしてる内に訓練が開始した。
全員モニターに目が釘付けになる。
瀬呂くんの個性、始めてちゃんと見たけど使い勝手が良いな。アレなら都市部での高速移動はお手の物だな。
「瀬呂すげーな!障害物をものともしてねーぞ!」
…その後ろから緑谷くんが追従してきてるな。まるでピンボールみたいに足場から足場へと跳ねてってら。
「緑谷!?いつの間にあんな速く…!?」
身体の使い方は上手いけど足元確認が甘くね?あれだといつか踏み外すぞ…あ、落ちた。
「あー…残念…」
復帰手段がないのが仇になったな。下を走り始めたけど他の連中に後れを取っちまってる。
『GOAL!!』
瀬呂くんの独壇場だったか。尾白くんも頑張ってたけど瀬呂くんの高速移動には及ばず、飯田くんは加速する距離を稼げなくて不完全燃焼気味、芦戸さんは周囲の破壊不可が響いた感じか。
「…なんでだ」
爆豪がすげー顔して緑谷くんを睨んでる。
因縁有りそうな2人だし、何かあるんだろうけど…
「単に努力した結果じゃね?」
呟く様に答えると此方を睨んできた。
「職場体験で劇的に伸びたってだけだろ」
ステイン戦でも思ったが相当良い師匠に巡り合ったと見える。
暫く睨み合った後、不機嫌そうなまま目を逸らす爆豪。
…何で緑谷くんを目の敵にしてんだろなコイツは。
まだまだ粗削りも良いところだし、爆豪との差は歴然だろうに。
「それじゃ、次の組に行くぞ!!」
オールマイトの言葉で我に帰って組み分けを確認する。
轟くん、常闇くん、八百万さん、耳郎さんに…俺か。
「各自位置についたら合図と同時にスタートだ!」
良し。本気でレコード叩き出してやるぜ!
「…端場、負けねえぞ」
「悪いけどこの条件なら俺が勝つよ」
轟くんと開始前に話すが…このルールなら負ける方が難しい。
開始から終了まで加速しっぱなしでも問題ない距離、他者への妨害禁止、建物の破壊不可。負ける要素がないね!
『START!!』
救助信号の位置を確認…そんなに遠くないな。
全速力で走り出す…着いてこれてる奴は居ないな。
入り組んだ障害物を難なく避け、時折足場にして跳んで行く。
…見つけた。
オールマイトの目の前に着地して
『GOAL!!』
ん、大体4秒位か?
「速すぎんだろ…」
「こういう形だと端場の独壇場だな…」
周りからの感想も大体想像通り。
妨害有り、建物破壊有りなら判らないけどただ走るだけなら距離次第では無双出来る個性だし当然か。
「流石だな端場少年!」
「ありがとうございます」
その後少し待ってると轟くん達がゴールした。
「…負けた」
「そりゃそうでしょ。妨害無しのかけっこだもの」
少し残念そうだけど戦闘だと逆転するんだから一長一短だろうに。
「次は負けねえ…」
「楽しみにしてるよ」
多分次は戦闘訓練だろうし…それだと負けそうだな。
何か作戦考えとくか…
「じゃあ、次の組み分けに行こう!」
オールマイトの言葉で次の組に進む。
そこから暫く見学してると全員の訓練が終了した。
職場体験を終えて見違える程個性の使い方に慣れたようだ。
元々個性の扱いに熟練してた人達はそれ程って感じではあったがようやく全員の差が縮まった感じでこれからの訓練が楽しみだな。
「では今回の訓練はここまで!この調子で期末試験まで鍛えて準備を進めて行こう!お疲れ様でした!!」
そんなオールマイトの言葉で授業は終了した。
期末試験か。どんな事やるんだろう?
ヒーロー科だし、実技試験があるのは知ってるけど内容は秘密なんだよなぁ…入試の時みたいなロボットハンティングみたいなのだと楽なんだけど。
雄英がそんな安直な試験を課すとは思えないし…どんな試験か今からワクワクドキドキだわ。