加速少年の英雄希望   作:月面旅行BD

2 / 28
合格通知、或いは分岐路

 

 

試験から暫くして。自分の家でダラダラ過ごしていると雄英高校から何か小包が届いた。

 

「じゃ、此処に判子かサインをお願いします」

 

「あいよ…これでいい?」

 

馴染みの配達員さんから荷物を受け取る。

…通知書にしちゃやけに膨らんでんな?

部屋に戻って中身を確認すると中から丸っこい機械が出て来た。

これ、送り先か内容物間違えてんじゃねーの?

 

…送り先を確認しても俺ん家で間違ってないし、ぶっちゃけ間違いで送って来てたとしてもこれが何なのか気になる…適当にいじってみよう。何かあったら雄英高校に連絡して送り返せば良いだろ!

 

適当に触ってるとホログラムで誰かが投影された。スゲー技術力だなぁ…

 

「わーたーしーがー投影された!」

 

お、オールマイト!?すげー!本物じゃん!…ホログラムだけど!

 

「やぁ端場少年!」

 

「こんにちは!オールマイト!」

 

オールマイトと話せるなんて夢みたいだ!と浮かれて元気よく返事をしたものの

 

「え?時間がない?…押してる?しょうがない、巻きでいこうか…ンンッ改めて端場少年!」

 

どうやら録画だったらしい。1人で恥ずかしさに悶絶していると録画のオールマイトが話を続ける。

 

「ヴィランポイントもさることながら最後に大型に戦いを挑む勇気、他の受験者を助けた君は文句無しの合格だ!」

 

おお…合格したよ俺!最後のあの子…葉隠ちゃんだっけ?も合格してるといいんだけど…連絡先とか知らねーし、学校で会ったらで良いな。

 

「え?もう時間切れ?…端場少年!君の入学を心待ちにしているぞ!」

 

そう言って映像が途切れた。ホントにこれだけの為に出演したのかオールマイト…すげぇ豪華だけどすげぇ無駄遣いだなこのホログラム…

 

宝物として棚に飾っておく前に母さんに報告しなきゃな!

 

「母さん、俺雄英高校に合格だってさ。凄くない?倍率300倍だぜ?…母さんの希望通りじゃないかもだけど。俺、これからは自分のやりたい事やって行きたいんだ」

 

仏壇に手を合わせながら報告する。…あ、線香あげなきゃいかんわな。

 

「一流企業に入る事は無いだろうけど、一流のヒーローになって見せるから!…それで満足してくれよ」

 

線香をあげながら続けて話す。勿論返事が返ってくる事は無かったが、心は少し軽く成った気がした。

 

よし!取り敢えず入学手続き済ませちまおう!んでもって今日は外食でパーっと派手に祝っちまうとするか!

 

テンションを上げて書類を書き上げ、投函した後に一人焼肉で豪遊(食べ放題)し、眠りに着いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うーん、入学試験の時に来たけどやっぱ印象違うな」

 

数カ月後。今、俺は雄英高校の制服に身を包んで校門前に居る。

デカい門だ。それこそ身長の3倍はあるし、幅に至っては何人並んで通れるのかパッと見わかんね。

 

入学案内じゃA組だったから…こっちか?

広すぎる学校内で少し迷いながらも漸くたどり着いた部屋も大分デカいドアだった。昨今の異形型個性だと最大でビル位までデカくなるって話だし、こうなるのも宜なるかな。

 

数人の話し声が聞こえるから一番乗りでは無さそうだが、それが逆に緊張させてくれる…

意を決して扉を開けて中に入ると、思った以上に音が響いてクラス中の注目を浴びることになってしまった。

 

「おはよーございまーす」

 

適当に挨拶して自分に割り当てられた席に着く。

此方を見ていた何人かは挨拶を返してくれた。…いい人達だな、覚えとこ。

 

「ねぇねぇ端場くん!」

 

前の席の子が話しかけて来た。…あ、この子…

 

「葉隠さんじゃん。合格おめでとう」

 

試験の時に話した葉隠透さんだった。合格してたのか…目出度いな!初見じゃない子が居るだけで少し気が楽になったわ。

 

「そっちこそ合格おめでとう!」

 

にこやか?に答えてくれる葉隠さん。…やっば顔見えないな。常時発動型か?

 

「きっと合格してるだろうなとは思ってたけど同じクラスだったんだね!」

 

袖口の動きから察するにボディランゲージが豊かなんだろうなぁ…

全身が見えないから推察するしかないけども。

 

「ほんとにね。知り合いが居てくれてホッとしてるよ」

 

俺、人見知りだしさ。と続けると

 

「またまたぁ!試験の時はそんな感じしなかったよ?」

 

「あん時は切羽詰まってたから」

 

普段はこんな感じよ。考えてる半分も口に出せてないと自負しているレベル。

 

「ん~?でも私とはもう喋れてるじゃん」

 

「そりゃ1回話した事あるじゃん?完全初見だと地蔵だよ俺は」

 

自虐気味に話すとケラケラ笑って続ける

 

「あれでもうこれだけ話せるなら大丈夫だよ!…話すのが苦手なら今度は私が端場くんを助けてあげようか?」

 

気を使わせてしまった。中学時代にあまり人と喋ってこなかった弊害だなこれは。

 

「助けてくれると有り難いけど…無理しなくて良いよ?」

 

別に1人でも困らないし。と続けて言うと

 

「無理じゃないから手助けするね!…まずはあの子とお話してみようよ!」

 

指を指す(袖口を指す?)方を見ると黒髪の綺麗な女の子が居た。

 

「いきなり女子はハードル高くない?」

 

「何言ってるの!皆クラスメートなんだから早めに仲良くなった方が良いって!」

 

グイグイ来るな葉隠さん…俺、惚れちゃいそうだよ。

 

「こんにちは〜!」

 

「!おはようございます」

 

いきなり話しかけに行ったからかその子は少し驚いてから返事を返して来る。

 

「ほら、端場くんも」

 

「おはよーございます」

 

無難に挨拶した。葉隠さんから少し呆れた視線を感じるが気のせいだろ、多分…見えないし。

 

「私、葉隠透!これからよろしくね!」

 

「端場走です。よろしく」

 

自己紹介?をすると黒髪の子も返してくれた。

 

「八百万百と申します。こちらこそよろしくお願いしますね」

 

うわぁ…荒坂中のお嬢様みたいな子だぁ…

 

「八百万?…間違ってたら申し訳ないけどあの八百万であってる?」

 

八百万家。荒坂中でも時折耳にした名前だ。通う学校は違えど取引先が云々の自慢話で聞いたことがある。

なにやら資産家だとか、財閥だとかそんなんだった気がする。

 

「えぇ…恐らくその八百万ですわ」

 

少し強張った声で応えた八百万さん。やべ、変な地雷踏んだかな?

 

「あーっと…ごめん、あんま喋るの得意じゃなくて。変な事聞いてごめんね」

 

「いえ、大丈夫ですわ」

 

葉隠さんから肘打ちをもらった。見えないから奇襲気味に入って地味に痛い。

 

「…荒坂中で何回か聞いた名前だったからつい…ホント、他意は無いんだ」

 

荒坂中の名前を聞いて少し目を見開いた八百万さん。

少し考え込んでから口を開いた。

 

「端場さん、でしたよね?」

 

「?そうだけど…」

 

あぁ、荒坂中は上流階級の坊っちゃんばっかだから知らない名前で困惑してるのか。

 

「俺の家は一般家庭だから知らなくて当然だよ?」

 

一応訂正しておく。寧ろ貧乏まであるからな…

 

「そうでしたの…すみません、聞き慣れないお名前でしたので…」

 

謝られた。そんなん謝る事じゃないでしょうに。

 

「気にしないで…俺がイレギュラーだったのは3年間で骨身に染みてるから」

 

マジで別世界なんだよなあそこ。価値観が合わないと仲良くなることは難しいと学べただけ良かったが。

 

葉隠さんから2度目の肘打ちが飛んできた。甘いわ!同じ攻撃を2度食らうものかよ!しれっと個性を発動して掌で肘打ちをガードする。

…何かすごい目で見られてんな?

 

「今、何をどうしましたの?」

 

……やべ、個性使っちまった。

 

「…勘で肘打ちを防御した、的な?」

 

苦しい言い訳だった。疑惑の目が強くなった時に教室の後ろの方から怒鳴り声が聞こえてきた。

 

「テメーどこ中だよ端役が!」

 

声の方を見るといつの間に来たのか机に足を掛けた典型的な不良生徒が真面目そうなメガネくんに凄んでいる。ヤベェよあいつ…倍率300倍を超える事が出来るヤンキーなんて想像してないって…

 

「騒々しいですわね」

 

顔を顰めてヤンキーの方を見る八百万さん。葉隠さんもそっちに意識がいってくれたようだ。内心で胸を撫で下ろしつつ、ヤンキー観察を続けているといるとモジャモジャ頭の男子とセミロング女子の後ろ、開けっ放しのドアからミノムシが入ってきた。

 

「お友達ごっこがしたいなら他所にいけ」

 

…不審者じゃね?と一瞬身構えたが次の言葉で考えを改めた。

 

「ハイ、静かになるまで8秒かかりました。君達は合理性に欠くね」

 

ミノムシだと思っていたがあれ、寝袋だな。

 

「担任の相澤消太だ。よろしく」

 

考えを改めた結果、変人だった。廊下から寝袋で移動してくる大人とか想像したくないな…

 

「早速だが全員体操服に着替えてグラウンドに集合だ」

 

ざわつく教室。

 

「あの、入学式とかガイダンスは…?」

 

モジャくんの後ろに居る女子が質問を投げかける。

 

「ヒーロー目指してるならそんな悠長な行事に出る暇なんかないぞ」

 

ピシャっと言い切る相澤先生。

 

「雄英高校は自由な校風が売り文句。それは()()()()()()

 

話し続ける間、全員が無言だった。

 

「さっさと着替えろ。…初日だからな、今回は減点しないでおいてやる」

 

その声を最後に教室を出ていった。

 

 

「…じゃ、着替える?」

 

「更衣室って何処だったっけ?」

 

誰かの声を皮切りに全員が動き出した。そうなると流石に優秀なクラスメート達、あれよあれよと更衣室を見つけて着替えてグラウンドへと向かった。

 

 

グラウンドに向かいながらさっきの相澤消太先生の事を考える。

…本当に教師なんだよな?流石に不審者が学校に入れる程ザルなセキュリティじゃないとは思うけど…

 

最悪は入学式やってる体育館まで個性使って走るか。

プロヒーロー呼んでくれば何とかなるだろ…多分。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。