加速少年の英雄希望 作:月面旅行BD
「はい、お疲れ様でした!今日の訓練は終了!!」
ピクシーボブの言葉で全員が脱力する。
A組もB組もひたすら個性使って疲れ果てた様子だった。
俺も相澤先生とマンツーマンで個性の使用範囲を伸ばそうとしてみたが…まぁ結果はあまり芳しくない。
今まで使ってた範囲を超えようとすると途端に脳が警告する様に痛みと熱を発するし、それを超えると一気に制御困難になる。
結局、今の使用範囲での時間延長がメインになったんだが1日程度の訓練で伸びるわけもなく。
「疲れた〜。そっちはどうだったの?」
葉隠さんから問いかけられる。
「あー…あんま効果なし?みたいな感じ…」
個性使用の反動で少し頭がぼーっとする。
「葉隠さんの方は?」
「まあまあかな?…個性に新しい使い方が出来そうなんだよね」
おぉ、羨ましい…
「良いじゃん。俺もそんな感じだったけどどうも上手く行かなくて…」
「…まぁ、まだ始まったばっかりだから!」
頑張ろ!と肩を叩いてくる葉隠さん。良い人だ…
「はい、注目!今日は夕飯の後にお楽しみがあります!」
お楽しみ?…何かデザートでもつくのかな?
「肝、試したくない?」
「「「肝試しキター!!!」」」
うるさっ!皆いきなり元気になるじゃん。
「そーいう訳で!夕飯後に組み分けして肝試ししよーぜ!」
テンション爆上げな皆を見ると楽しそうだな…と思う。
肝試しとかやった事ないから分かんねーけど要は暗い道を行って帰って来るだけじゃないの?
「夏といえば、の定番だもんね!」
葉隠さんも楽しそうにしてるし、ちょっと楽しみになって来た。
現金なモノだな〜と自分に苦笑していると着々と話が進む。
「じゃ、夕飯食ったら再集合!解散!」
わらわらと食堂へと進む皆に着いて行く。
取り敢えず一旦休もう。ぼーっとした頭でイベント事はちゃんと楽しめないからな。
夕飯後、合宿所前。
「よ〜っし!肝試しだー!!」
「やろうぜやろうぜー!」
テンション高く騒いでいる芦戸さんと上鳴くん。
そこに声をかける相澤先生。
「お前等補習組は今から補習だ」
無慈悲な宣言とともに引きずられていく補習組。
ってーと残ってるのは…A組は16人、偶数だな。
「…はい!じゃあクジ引いてっちゃってー!」
二人組で行く感じか。誰とでも構わないけど…
「…僕とだね。よろしく端場くん」
緑谷くんとか。爆豪以外なら誰でもいいわ。
「よろしく緑谷くん」
…しかし、話に聞く限りこう言うのって男女で行くから面白いんじゃないの?
「相手が俺ですまんね?」
「え!?何いきなり言ってるの!?」
動揺する緑谷くん。いやだってさ…
「模擬戦の時から麗日さんと仲いいじゃん?だからてっきり…」
と言いかけると緑谷くんが遮ってくる。
「そ、そん、そんな事言ったら端場くんだって!」
俺?俺はそう言うのないし。
「俺はそう言うのないよ?」
「葉隠さんと…あれ?そうなの?」
葉隠さんは良い人だけども。
「仲良くしてくれてるなぁ…って感じ?」
あれだけコミュ強な人だし。孤立しがちな俺に気を使ってくれてるんだろ。
納得した様な、してない様な顔をする緑谷くん。
ま、どっちでも構いやしないか。
「じゃ、始めるよ!最初はA組から!B組の脅かしに負けるなよー!」
「B組は死ぬ程ビビらせたれー!!」
最初の一組が森の小道に入っていく。
外から観てるだけでも暗くて雰囲気有るなぁ。
その後も続けて何組か入っていった辺りで異変に気づく。
「…何か燃えてませんか?」
焦げ臭い、と森の方を見るとうっすら黒煙が上がっている。
…ヤバい気しかしねぇ。
「ッピクシーボブ!」
緑谷くんの声に反応して咄嗟に個性を使う。
知らねぇ顔の二人組がピクシーボブの背後から襲い掛かっている所だった。
………緊急時って事で許して下さい!
直ぐ様飛んで腰から引っ張り込んで抱える。
そのまま推定ヴィランの前でUターン、虎さん達の近くで個性を解除した。
「…ヴィランか!?」
「あえっ!?何が起きたの!?」
虎さんが吠えてピクシーボブは混乱している。
…すみません、貴女の混乱は俺のせいです。
「すみません、ピクシーボブ。緊急時って事で今回だけ見逃してもらえませんか?」
暗に個性を使ったと伝える。
「…後でちゃんとお説教だから。ありがとね」
ボソリとお礼を言ってくれた。…うん、助けてられて良かった。
「あらら〜イキの良い子がいるじゃないの〜」
「コイツ、ステイン様の…!」
デカい何かを持った大男と、異形型の男が俺を見ながら話している。
「マグネ!コイツは俺がやる!」
背中に背負ったモノを構える異形型。
何だありゃ…多数の刃物を無理矢理ベルトで纏めてるのか?
「子どもに手を出すんじゃあないよ!」
虎さんが異形型に突っ込んで戦闘が始まった。
異形型とマグネと呼ばれた男は距離を取りながら攻め入る隙を探っている。
「此方も忘れないでよね!」
ピクシーボブが地面を操ってヴィラン共を巻き込もうとするが…
「そんな大振りな攻撃が当たるものか!」
難なく避けられた。
「でもそこじゃあコレは避けられないだろう!?」
回避先に飛んでいた虎さんが襲い掛かる。
「スピナー!こっちへ来なさい!」
マグネが何かを突きつけると、空中で不自然な挙動をして引き寄せられたスピナーとやら。
…引き寄せる個性、遠隔発動も可能と考えると接近戦は不利な状況だな。
「紛い物とは言えプロヒーローは一筋縄ではいかんか」
「だから言ったじゃないの…ま、やってやれなくはないけど」
不敵な笑みで此方を見るヴィラン共。
…ワイルドプッシーキャットが負けるとは思えないんだが…
「ヤバい!森が!?」
その声で森が燃え始めている事に気づいた。
まだ中に皆が居るってのに冗談じゃない…
これで確定した。ヴィラン共はもう全体に潜入済みであちこちで暴れ始めてる…!
こんな状況ならもうしょうがねえだろ…!
「落ち着け少年少女達!」
虎さんの声で踏みとどまる。
「大丈夫、我らが必ず守り通して見せる!落ち着いて合宿所まで退くんだ!…ピクシーボブ、頼む!」
「判った…!皆、着いてきて!」
虎さんがスピナーとマグネに突っ込むと同時にピクシーボブが先導して退避する俺達。
去り際に最後に見えた物は燃え盛る森と、尋常ではない量の煙。
シルエットだけだが暴れ回っている巨人の様な影。
今朝までの合宿所の面影は既になく。
そこは既に戦場と化していた。