加速少年の英雄希望   作:月面旅行BD

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襲撃の夜、或いは反撃の狼煙

 

 

走り続けて合宿所まで戻って来た俺達を出迎えたのは、青い炎を撒き散らすヴィランと戦う相澤先生の姿だった。

 

「どうしたイレイザーヘッド!もっと気張れよ!」

 

「やかましい奴だ…」

 

言われなくてももうお前は詰んでるよ、と言った瞬間に捕縛布で雁字搦めにされるヴィラン。

 

「屋内じゃ被害がデカすぎるからな。誘導させてもらった」

 

ピクシーボブ、状況を。と続けながらきっちり縛り直す相澤先生。

先生、滅茶苦茶強いなやっぱり。

 

 

「あーあ…この俺は此処までか…」

 

 

その言葉と共に黒い泥の様に溶けていくヴィラン。

身体変化と炎の2重個性か!?

 

「次は…いや、もうお前等の負けだな」

 

淡々と告げながら拘束から逃れていく。

 

 

「相澤先生、個性は…?」

 

「…駄目だな、コイツの個性じゃない。見ても解除されない」

 

炎のみがコイツの個性で、溶けてる方は別の奴の個性だ。

 

その言葉で少なくとも襲撃者が5人は居る事が確定した。

マグネ、スピナー、炎、泥…後は森でちらっと見えた大きな影。

 

「じゃあなイレイザーヘッド…愉しかったぜ」

 

そう言い残すと完全に泥に変化した。

その泥も直ぐに蒸発するかの様に消えていく。

 

 

「位置移動を兼ねた身代わりの派遣?若しくは同質量同士での場所交換型のテレポート?いやそれにしては泥が少なすぎる気がするし捕まってから起動した理由が判らない。変化した泥が消えた所を見ると前者の方があり得るか?でもそれだと個性を使えるコピーを作れるって事に…」

 

緑谷くんがブツブツと何時もの様に考えを喋り続ける。

確かに言わんとしてることはわかるけど…

 

「今はそれどころじゃないよ緑谷くん」

 

軽く叩いて正気に戻す。

何時襲われるか分かんないのに意識散漫になられちゃ困る。

 

「ご、ごめん…つい」

 

別に悪いことじゃないんだけど。ちょっと今は余裕がない。

 

 

「遅くなってごめん!今どうなってる!?」

 

マンダレイが息を切らして合流した。

…焦ってる様にも見えるけど何か合ったのか?

 

「ヴィランの襲撃だ。合宿所に集まった生徒は無事が確認されてるが肝試し中の生徒たちはまだ安否が判らん」

 

落ち着いた声で情報を共有する相澤先生。

 

「…マンダレイ、テレパスで広域に伝えてくれ」

 

個性の使用を許可する、と。

 

「責任は俺が取る。だから生徒達に逃げ切るだけの手札を渡して欲しい」

 

頼む、と頭を下げる。

 

まだヒーローじゃない俺たちに個性の使用を、人に対して許可するっていうのは相当大きな失点になるだろうに…

何よりも無事である事を優先するならそれが1番合理的だけど…

 

「判った。合宿場所全域に伝える」

 

スゥっと息を吸うと個性を使用して全域にテレパスを飛ばすマンダレイ。

 

 

『雄英高校生徒の皆に相澤先生から!個性の使用を許可する!出来る限り戦闘を避けて合宿所まで後退する様に、との事よ!』

 

 

個性を使って良いとなれば皆の生存率も大分上がる。

 

「ありがとうございますマンダレイ」

 

頭を下げると直ぐに次の行動に移る相澤先生。

 

「俺は他の生徒達の保護に回ります。…此処は任せても?」

 

「えぇ…あの!」

 

頷いた後、少し悩んでから声を挙げるマンダレイ。

 

「洸汰くんを見なかった?」

 

夕飯の後から何処に行ったのか判らなくて…と続ける。

その場の全員の顔が強張る。

この状況で居所が判らないのは拙過ぎる。

そして誰一人見たものが居ないと気付くと更に顔が曇るマンダレイ。

 

どうしたものかと思案する中、緑谷くんが声を上げた。

 

「僕、居場所解ります!先生…」

 

と緑谷くんが相澤先生へと目を向ける。

少し考えた後、頭をガシガシと掻いてから答える先生。

 

「…連れて帰ってこい。戦闘は避けろよ」

 

今回の敵はUSJの時とは比べ物にならない程危険だ。と念を押される。

 

「端場、個性は使えるか?」

 

「今まで通りの使い方なら問題なく。発展型は無理ですが」

 

体育祭までの使い方なら問題はない。

 

 

「…良し、緑谷について行ってやれ。即席だがお前等2人でペアを組んでもらう。」

 

 

絶対に戦おうなんて考えるなよ、と念押ししてから先生は皆を助けに森へと走り出した。

 

「じゃ、行こうか緑谷くん」

 

時間も惜しいしさ、と緑谷くんの肩を叩く。

 

「うん!…こっちだよ!」

 

個性を使って身体能力を満遍なく強化した緑谷くんがスーパーボール見たいに跳ね回って先を走り出す。

 

「凄い伸び代だったんだなぁ」

 

個性把握テストじゃ指一本ぶっ壊してたのに、と場違いな感想を抱きながら加速開始。

 

流石にまだ俺の方が速いが。

直ぐに追い付くと緑谷くんの視線の先を見る。

 

崖が目的地か?

 

そんな事を考えている所に視界の端からヴィランが飛び出してきたのが見えた。

 

新顔だな?取り敢えず一発殴らせろテメー!

此方に伸ばしてきた手を掻い潜って正面から仮面を付けた顔面を痛打してやる。

まるで道化師か手品師みたいな格好してるなコイツ…

まぁ関係ないが。とそのまま飛び出して来た所に殴り飛ばした。

 

…いやコレは戦闘じゃないし。障害を取り除いただけですし。

いきなり相澤先生の言葉に背いた事に気付いて内心で言い訳を並べながら緑谷くんに追い付く。

 

個性解除。

 

 

「ッ緑谷くん!ヴィランが出てきたから気をつけて!」

 

「えっ…!?」

 

もう片付けたけど。

 

「あのこ、こ……金的小僧を拾ったらさっさと逃げよう!」

 

名前が思い出せねぇ…緑谷くんに金的食らわせてたイメージが強すぎて他の記憶がねぇよあのガキンチョ。

 

「洸汰くんだよ!?」

 

直ぐに訂正してくる緑谷くん。そうだったそんな名前だったな。

その後暫く走るとようやく目的地である崖の上に到着したんだけど…

 

 

 

「テメェのパパとママさぁ!!」

 

筋肉ダルマが洸汰くんを殺そうとしてる場面に出会したんだが!?

 

個性発動…する前に緑谷くんが凄い勢いでぶっ飛ばした。

 

「悪いの全部お前だろ!!!」

 

おおぅ、キレてる…ってかまた腕ぶっ壊してない!?

 

「緑谷くん!……っ!?」

 

とっとと逃げよう、と声をかける寸前で青い炎が俺めがけて殺到してきた。

咄嗟に個性を使用して範囲外へと逃げるが…

緑谷くん達と分断されちまった。

 

 

「悪いな。お前にはちょっと用があるんだ」

 

 

合宿所で相澤先生がボコしてた全身ツギハギの青い炎使いが悪びれもなく俺へと手を向けている。

 

「俺には無いからとっとと帰ってくんね?」

 

よりにもよって相性最悪の相手だ。広範囲、高火力型で周りは森、延焼する可能性もある。

 

しかも目的が俺とかいう状況。逃げたとしても山狩りよろしく無差別に放火しかねないな。そんな状況になったらただでさえ皆の安否が不明なのに救助が難しくなっちまう。

 

此処で引きつけておくしかないか。

先生が全員を保護して、プッシーキャッツの皆さんが他のヴィランを捕縛するまで。

 

あのツギハギの火力が仮にエンデヴァー以下、轟くん以上だと想定して。俺の勝ち目は何%かね?……ま、0じゃなさそうだし足掻けるだけ足掻いて見ようか。

 

ワンチャン有れば足元ごっそり掻っ攫ってやる。

その余裕そうな顔が歪むときが楽しみだぜ!

 

いや、ソレはヒーローぽくないな。

目にもの見せてくれる!…もちょっと違うか。

 

どう言ったものかと考えているとヴィランから呆れた様に声を掛けられる。

 

 

「可愛げの無いガキだな…もっとビビっても良いぞ?」

 

「何回も襲撃されたらこうなるぜ?」

 

 

毎度毎度ちょっかい掛けて来やがって…

 

 

「雄英高校の警備にも少し言いたいことは有るが何よりもお前等(ヴィラン共)が悪い!とりあえず一発は殴らせろ!」

 

 

啖呵を切って万感の思いを込めて拳を握り締める。

日中の個性使用とここに来るまでの使用で少し熱を持ち始めた頭を軽く振った。

 

無駄遣いは出来ない…と冷静な頭で考える。

万全な状態なら緑谷くん達を掻っ攫って逃げれたかもしれないが、今のコンディションじゃ無理だ。

 

あの筋肉ダルマは見た限りじゃもろに増強型の個性だったし、守る相手が居て接近戦しか出来ない緑谷くんじゃ分が悪い…悪いけど、そっちは任せるよ緑谷くん。

 

このツギハギ男が合流したら逃げるどころの話じゃなくなる(俺達全員ここで死にかねない)

 

状況は最悪だ。でもお前等相手(ヴィランなんか)に屈するのは死んでもゴメンだ。

 

不味い状況だけど表情だけは不敵に笑い続けろ。

 

 

俺はヒーローを目指してるんだから。

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