加速少年の英雄希望 作:月面旅行BD
個性把握テストと言う名の洗礼を終えた翌日。中学時代と特に変化の無い午前授業を終えると、漸くヒーロー科らしい授業が始まる。
「わーたーしーがー!!」
おぉ…この声は…
「普通にドアから来た!!」
オールマイト!マジで教師やってたんだ…!
周りもガヤガヤと騒いでいる。
…1人コアな事で感動してる奴が居る。マニアか?気持ちは判るぞ。
「今日から皆が受けるヒーロー基礎学!その第一歩は…戦闘訓練!!」
いきなり!?相変わらず自由な校風だこと…
爆豪なんかはすげー楽しそうだし。
「それに伴って用意された…
おぉ…入学時に提出したあれが元になってるって奴!テンション上がるわ!!
皆も目がキラキラしてるし、やっぱヒーローっていったらコスチュームは外せないよな!
「着替えたら順次グラウンドβへ集合だ!」
「「「はーい!!!」」」
全員の声が一致して即座に行動し始める。昨日の個性把握テストで更衣室の場所は把握済みのためスムーズに準備が済んでグラウンドβに集まった。
「端場、似合ってんじゃん!」
上鳴くんが褒めてくれた。少し照れるな…
「上鳴くんも凄くヒーローっぽいな」
口下手なりに頑張ってみたが、やっぱ上手いこと言えないもんだな…と自己嫌悪していると肩を叩かれた。
「な!めっちゃテンション上がるよな!」
気にした様子も無く笑って済ます上鳴くん…いい人だ。
「っても端場、何でその格好にしたんだ?」
カッコいいけどさ?と疑問符をつける。
まぁ、言わんとしてる事は分からなくもない。
俺のコスチュームはほぼ普段着の延長線だ。
特注なのは走りやすい様に頼んだ靴くらいで後は防弾仕様の布を使った服だし。見た目も黄色のオーバーサイズのレスキュー風ジャケットを袖まくって着てる位で余り特徴は無い。ジャケット以外は私服と言っても良いな。
「靴以外は防弾仕様にしてくれれば何でも良いって要望出したらこうなった」
着る前はサイズ間違えてね?と思ったけど全部装備すると驚く程しっくり来た。そもそもジャケットが収納兼ねてるのが便利だなこれ。
「ほーん…良いデザイナーに当たったんだな」
「あぁ、ラッキーだったと思うよ…」
女子組の方を見やりつつしみじみ思う。
どうやら麗日さん(昨日解散前に軽く自己紹介した)の話を漏れ聞くに、デザイナー任せで身体のラインがモロに出るタイプのコスチュームになったっぽいし。
「端場くーん!…おぉ、キマってんね!」
「葉隠さんも…可愛いね?」
コスチューム姿の葉隠さんが声をかけてくれた。…全く姿が見えないけども。グローブと靴だけしか見えないわ…
「お、わかる?」
その場でターンした様だ。靴とグローブだけだと動きを想像するのって案外難しいな。
「って、靴と手袋しか見えないだろ!」
上鳴くん、それは無粋だぜ?
「例えばほら、グローブなんかは拘ってるよ」
直ぐ外せるような作りになってるし…今、コスチューム姿の葉隠さんを目の前にして不可視の個性のヤバさが実感出来た。グローブ外されたら正面から奇襲され放題だわ。グローブと靴以外全く見えん。
「そう、個性を活かす方向性で纏めてみたんだよ!」
両手でピースする葉隠さん。確かに透明である事を活かすなら目立つ格好は不都合だ。直ぐに外せるグローブと靴なら完全なステルスすら可能性だろう…この個性を何とかするなら広範囲を焼き払うとかしないと無理じゃね?
「成る程。理に適ってる」
「お前、ボケポジションだったんかい」
上鳴くんが何故か脱力気味に言ってくるが知らんがな。
それにしても葉隠さんの個性は大分初見殺しだな。
初見で対処出来るヴィランは居ないだろう。
「上鳴くんも対生物なら無類の強さだよね」
生きている以上電気が弱点じゃない奴は基本的に居ないからほぼ有利な相手しか居ないし。加減が効くなら非殺傷としては超一流だろう。
「お、おう…急に褒められると照れるな…」
そんなこんなで雑談しているとオールマイトが全員を集めて戦闘訓練の内容を説明し始めた。
途中で新任教師らしい一面が見れたりとかなりレアな場面があったがそれはさておき、今回の戦闘訓練の相手は対人との事。
ヴィランとヒーロー、二組に別れてのチーム戦。
ヴィラン側は核爆弾を守り切るかヒーローの捕縛で勝利。
ヒーロー側は核爆弾の確保かヴィランの捕縛で勝利となる。
ランダムでペアを組んで対戦相手を決めるシステムだ。
…いきなり模擬戦やるのか。組み合わせ次第で大分相性が変わるけどその辺はまぁ、おいおい調整しようってことかな?
「くじ引きでペアを決めよう!」
「…先生、1つ良いですか?」
くじを引く前に確認しておきたい事がある。
「何かな?端場少年」
「A組、21人で奇数なんですけど…1人余りませんか?」
そう、奇数なのである。
「……勿論、考えてあるとも!1つは3人チームになって貰って相手は私が選ぶとしよう!」
少し詰まったが、3人組対2人組の所が出来るのか。運任せならそこまで不公平感はないな。
「ありがとうございます」
「他に質問がある人は…居ないね!では順番にくじを引いてもらおう!」
さて、くじ引きの結果だが。
「お、一緒のチームだね」
「反復横跳びの…えっと端場?」
「よろしくね。尾白くん、葉隠さん」
尾白くんと葉隠さん、俺の3人チームになった。
「一応個性の確認だけしても良い?俺は見ての通り尻尾が生えてる異形型個性。身体能力には自信があるよ」
尻尾以外は普通に見えるけど、その尻尾が筋肉の塊だとすると前衛として申し分ない。コスチュームで隠れてるが筋肉の付き方からして何かしらの運動はやってた様だし。
「私は透明化の個性!…って言っても自分だけなんだけどね」
葉隠さんはさっきも見た通りだな。奇襲するなら彼女以上の個性はそうはいない。
「俺のは加速する個性。0か100かしかないから調整が利かないし、加速中でも他の物体に与える影響が普段と変わらない。加速の範囲は自分のみだからいざという時は2人を担いで逃げるよ」
ざっくり説明すると軽く目を見開く尾白くん。
「大概な個性だね…」
うん、まぁ自分でもそう思わなくもない。
「使い過ぎると頭痛が酷くなって最終的には気絶するから連続使用は出来ない。そこは留意してくれると有り難い」
バランスは…前衛が3人、俺が遊撃でも前衛2人か。余り良いとは言えないけど相性は悪くないな。
「取り敢えず尾白くんが前衛、葉隠さんが隙を見て突っ込む、俺が尾白くんの援護、でどう?」
後は臨機応変にやるしかないと思うんだよね。即席だから連携なんてろくに出来ないだろーし…個性使用すれば尾白くんの邪魔にならない様に攻撃出来るだろうけども。
「うん、取り敢えずそれで行こうか」
「異議なし!」
そういう事になった。
作戦会議が終わると周りも大体顔合わせが済んだ様で、それを見越したオールマイト先生が最初の組み合わせを発表した。
最初の模擬戦は… 緑谷・麗日さん VS 爆豪・飯田くんか。
心情的には飯田くんに勝って欲しいが…相方が爆豪だと協力は望み薄だな。
…気楽に見れて居たのは始まるまでだった。
想定よりヤバい事になっていて何も言えない。
爆豪が開始と共に緑谷くんを強襲。その後は2人でひたすら喧嘩している。訓練って事忘れてるだろアイツ等。
…爆豪は個性の使い方が巧いな、使い慣れてる。
緑谷くんは思い切りが良いな。自分の決断と心中する勢いで爆豪の攻撃を捌いている。少し迷うか間違った方を引いたらそのまま畳み込まれかねないギリギリで耐えてるわ。
…?爆豪が変な構えを取ってるな。何するつもりだ?
『いかん!爆豪少年!殺す気か!?』
オールマイトが大声で注意するも爆豪が止まることはなく。
轟音と共に緑谷くんの背後にあった壁が消し飛んだ。
…あいつ、あんな物人に向けたのか?当てる気が無くても間違って掠りでもしたらその部分がグチャグチャになってもおかしくない威力だぞ!?
爆豪の凶行に引いているとカウンター気味に接近してた緑谷くんが大きくアッパーを放つ。
…天井ブチ抜いたんだが!?お前もそんな一歩間違えたら殺しかねない威力を人に向けんなよ!!
振り抜いた腕がボール投げの時見たく変色してるしよ!
「先生!止めないとアイツ等どっちか死んじまうよ!」
「オールマイトッ!流石に…!」
『ヒーローチーム、WIN!!』
オールマイトに一声かけてあの阿呆共を引き離しに行こうと個性を発動する前に勝敗が決したとアナウンスがあった。
…麗日さんが飯田くんを出し抜いたのか。どちらにせよこれで終わりだな。
緑谷は腕一本使い潰して保健室行き。爆豪と飯田くん、麗日さんが戻って来て講評の時間だ。…爆豪と緑谷は減点式だとマイナス行きそうだがどうなるのかね?
「さ、さて!今回のMVPは誰か分かるかな!?」
オールマイトが仕切り直す様に声を上げる。
口々に麗日さん、緑谷の名前が上がるが…緑谷は無いだろ。
これが実戦なら爆弾を確保した時点で戦闘不能になった戦闘要員だぞ?ヴィランの増援が来たら足引っ張るの確定じゃん。
「飯田さんですわね」
八百万さんが飯田くんを推した。そっちの方あんま見てなかったんだけど何やってたんだろ?
…成る程。八百万さんの説明はとても分かりやすくて良い。
訓練の内容に一番沿っていたからか。それは納得だ。
1人で暴走して大爆発させた爆豪と戦闘不能になった緑谷は論外。
麗日さんは緑谷のぶち抜いた天井を散弾の様に飯田くんに飛ばした作戦は良かったが、飯田が持ってた爆弾が本物だったら通用しない。訓練だから何とかなった勝利であると。
「まぁ、飯田少年にも固すぎる節はあったが…正解だよ!」
なんか悔しそう…思ったより言われちゃって自分が言う事は無くなっちゃった、的な感じかな?
「さ、さぁ次の対戦に行こうか!」
場所を変えて模擬戦の続きだが。次は俺達3人のヴィランチーム VS 推薦入学者の轟くんと握力ゴリラの障子くんのヒーローチームだ。
「アレの後なら気が楽だ…」
「端場は肝が太いね…俺は少し緊張するよ」
「ねー。でも気合い入れていかないとね!」
だってアレより酷い事にするなら両手潰して建物崩壊させるくらいしかないと思うよ?
こっちのやる気は十分、後は作戦タイムにどんだけ考えられるかだな。相手は推薦入学者と近接パワー型の組み合わせだけど今回のルールなら幾らでもやりようはある。
んじゃ、気合い入れて行くとしますか!