加速少年の英雄希望   作:月面旅行BD

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模擬戦、或いは蹂躙劇

 

 

「さて、俺達はヴィランチームなわけだけども」

 

どういった作戦で行く?と2人に聞いてみる。

守るものがあると全員で突撃ってのもちょっと無理あるし。

折角3人居るから分けない理由も無いよな。

 

「うーん…端場、入口から爆弾設置場所までどのくらいで来れる?」

 

「ざっくり1秒以内。何か障害があっても2秒以内かな?」

 

途中で襲撃受けても逃げ切れると思う。

 

「よし…端場は初手でヒーローチームを襲撃してもらう。俺と葉隠さんは爆弾を守護しよう」

 

何かあったら無線で連絡するよ、と締めくくった。

 

葉隠さんの個性ならどっちに付いてるのか、別行動取ってるのか判らないからな。常に警戒を散らせるのはアドバンテージだ。

 

「オッケー。んじゃ行ってくるわ」

 

「気をつけてね!」

 

葉隠さん達と別れて一階へと向かう。

 

さて、ヒーローチームはどう出るかな…?

 

 

 

『バトルスタート!!』

 

模擬戦開始の合図と共に入口側から凍り始めた。

…先手必勝かよ!?直ぐ個性を発動して加速する。

爆弾の部屋まで走り始めるが…氷、止まる気配がないな?

追いつかれる事は絶対に無いけどこのペースだと最悪建物ごと氷漬けにする気だ。

…葉隠さんの個性に対する完全回答を実践して来る奴が居るとはね。というか閉鎖空間だと大抵のやつはこれで終わるわ巫山戯んな!

 

と迫る氷を振り切って2人のもとにたどり着くと入口を警戒して居る尾白くんと靴を脱ごうとして居る葉隠さんが見えた。問答無用で2人を抱えて窓から脱出する。…3階で良かった。まだギリ耐えられるわ。地面に着地すると建物から少し距離を取って停止。

 

建物が完全に凍った所で個性を解除した。

 

「…ッはぁ!、轟くん反則級につえーよ!」

 

「えっ!?」

 

「何が起きたんだ!?」

 

いきなり外に連れ出した2人が急に変わった周りの景色に驚いて居たが氷漬けの建物を見て事態を察した様だ。

 

「うわー…これは酷いね」

 

「ありがとう、端場…」

 

「良いってことよ」

 

んで、問題はこれからどうしようね?って事なんだけども。

 

建物ごと凍らせるのが相手の作戦なら近くに障子くんを置く事は無いだろう。凍っちゃうし。建物内部に入るのは轟くんだけの可能性が高い。

…そもそも生き残ってると思ってなさそうだしな。

 

 

「取り敢えず、障子くんが中にいる可能性は低いから2人は外から障子くんを確保しに行ってもらっていい?」

 

俺は爆弾の方を何とか回収してみるわ。と、続ける。

 

爆弾が氷漬けになってたら轟くん達を何とかしないといけないんだけども。広範囲攻撃持ちはなぁ…どうにか出来るか不安だが、自信満々な姿でないとヒーローじゃないもんな。

あ、今はヴィランか。

 

「分かった…気をつけて!」

 

「こっちは任せて!」

 

2人から返事をもらい、頷いてから再度個性発動(加速開始)

 

…一階は窓から何から全部氷で埋まってるな。轟くんが侵入して来た所から追いかけた方が確実だ。

建物を回り込む様にして入口へと走る。…障子くんが居た。

やはり建物には入ってない。無視して建物に再突入すると冷気が襲ってきた。…夏場は重宝するねこの個性。羨ましいわー。

コスチュームのお陰で氷に足が取られることも無く、爆弾の部屋までたどり着くと轟くんが凍りついた爆弾を確保する所だった。

あぶねー!一気に横まで行って蹴り飛ばす。

不意打ちで入ったからか軽く吹っ飛ぶ轟くんを見ながら個性を解除する。

 

「っだぁ!…間に合った!」

 

再使用までインターバル置かないと頭割れそ…何とか凌がないとな。

 

「…ッ!端場か!?」

 

葉隠さんでも似た結果になるもんな。

 

「正解だぜ、ヒーロー」

 

余裕がある様に見せかける。少し、時間を稼ぎたいな。何とか会話してくれないかなぁ…

 

「しかしまぁ、俺も大概だがお前は規格外だな」

 

轟くんを視界に収めながら周囲を見渡す様にして話しかける。

…この部屋に居たら二人とも足が凍りついてたな。

 

「…どうやって気づいた?」

 

お、会話に乗ってくれたか?

 

「派手に凍らせ始めただろ?あれで気づかない方がおかしい」

 

あんだけ盛大に氷出してたらそりゃわかるわ。

 

「見てから対処したのか…?」

 

警戒度が上がったな。

 

「お前の氷は確かに驚異だ。…俺以外には、だが」

 

嘘である。普通に相性悪すぎてキツい。

範囲攻撃されると逃げる以外の選択肢がないんだよ俺…

 

「あれじゃ(ノロ)すぎる。あの程度なら回避は容易い」

 

これは本当。避けるだけなら個性発動してれば楽勝だ。

…問題は核爆弾が動かせなくなった今、避けるだけじゃダメなんだよね。何とかして轟くんを無力化しないと…

 

 

『障子くんを見つけた!今尾白くんと戦闘中!』

 

 

耳につけた通信機から葉隠さんの声が聞こえた瞬間、轟くんが動きを見せた。…左側から氷が迫ってくる!

 

「ッハ!必死だな!」

 

個性をピンポイントで使って氷が来るルートを確認、当たらない位置を見つけて個性解除。上体を反らして必死に避けた様に見せかける。これで油断してくれたら有り難いんだけど…

 

「…もうお喋りしてる暇が無くなった。悪いがさっさと片付けるぞ端場」

 

「やってみろよヒーロー!」

 

良し、ギリギリクールタイムは稼げた。後は加速して確保テープ巻いて終いだ!

 

 

個性発動(加速開始)

 

視界がモノクロになって音が遠くなり無音の世界になる。

轟の右足から氷が生成されていくのが見えるがそれじゃ間に合わねえよ。視界から外れる様に奴の左側へと走ろうとした時に違和感。

 

…左足裏が地面に氷漬けされてる!?野郎、喋りながら気づかれないように凍らせてやがったのか!

 

咄嗟に靴を脱ぎ捨てるがその頃には部屋半分を覆うように氷が迫ってきていた。

 

…相打ち覚悟で行くしかないか。

生成される氷を蹴りつけて轟の方へ跳ぶ。轟は既に此方を視認出来てない。テープを取り出して轟の左手に巻き付けると同時に左足が氷に飲まれ始めた。

 

個性解除(加速終了)

 

 

個性解いたら一気に氷に飲まれて肩から上しか動かせなくなった。

やっぱコイツ規格外だわ。閉鎖空間だとルールがなきゃ勝てねぇ…

 

 

『轟焦凍、確保完了!』

 

 

アナウンスが入って初めて自身の左手に巻かれたテープに気づいた轟が此方を見る。驚いてるな。顔が半分しか見えないコスチュームだけど分かりやすい奴で助かる。

 

「やってやったぜ、轟くん?」

 

相打ち…寧ろ実戦ならボロ負けだが、今回は俺達の勝ちだ。

 

 

『障子目蔵、確保完了!…ヴィランチームWIN!!』

 

 

障子くんも確保したみたいだ。まぁ、あの2人がかりならそれこそ轟くん以外で対処出来る奴はそう居ないだろ。

 

「そろそろこれ溶かしてくんない?流石に冷た過ぎてヤバい」

 

呆然としてる轟くんに声を掛けると漸く溶かし始めてくれた。

……左手から炎?てっきり個性を解除したら溶け始めるのかと思ってたけど、二重個性持ちか?

 

「今回は俺の負けだ…次は負けない」

 

完全に氷から抜け出した俺を見ながらそう言って踵を返した。

いやいやいや、氷だけならまだしも炎まで出て来るなら余計に俺の勝ち目薄いんだが!?

 

俺は脱いだ靴を回収して轟くんの後を追いながら再戦時を思って少し憂鬱になった。

 

 

 

「それじゃ講評を始めるよ!今回のMVPは…」

 

「端場でしょ」

 

「端場さんですわね」

 

皆が口々に俺の名前を上げた。少し照れる。

 

「ンンッそうだね!轟少年の大規模凍結から逃げて仲間を救出、その後の分担もあの時点で考えられるベストだった!その上で轟少年を確保した端場少年がMVPだ!」

 

「もう一度やるのは勘弁してほしいですけどね」

 

軽い頭痛を抑えながらボヤく俺に笑いながら続けるオールマイト。

 

「葉隠少女も尾白少年も素晴らしい戦いぶりだったよ!障子少年も人数不利の中良く耐えた!」

 

「いやー…障子くん、タフだったね」

 

「ねー!結局不意打ちでテープ巻けたから勝てたみたいなものだったし!」

 

「そう言ってもらえるのは有り難いが…轟、すまん」

 

葉隠さんと尾白くんが障子くんを確保してくれてなかったら負けてたし、本当チームの勝利って感じだな。

障子くんはなんで轟くんに謝ってんだ?

 

「俺が端場の存在をもっと早くに伝えられれば勝てたはずだ」

 

障子くん曰く、俺達が脱出したのは凍結音に紛れて聞き取れなかったが、俺が轟くんを追いかけ始めたのには気づいたそうだ。

…障子くんの個性、器用すぎだろ!?

 

「結果論だ、気にしなくていい…俺こそ済まなかった。最初の一撃で勝負が着いたと慢心してた」

 

…そりゃ建物ごと凍らせたら普通は戦闘不能だと思うだろ。

ってか近接戦闘も出来る索敵要員と広域殲滅要員の組み合わせとか殺意高過ぎて笑えるわ。

 

「轟少年も最初の一撃と端場少年との一騎打ちは見事だった!…確かに少し気が緩んでいた所もあったけど、それは今後気をつければ良いだけだからね!」

 

皆も同じだよ!そのための訓練さ!、と締めくくった。

 

 

何とか勝てたな。次にやり合うなら表にいるときに初手加速して無力化するのがベストだわ。

 

「2人ともありがとう。何とか勝てて良かったよ」

 

「こちらこそ!端場くんが居なきゃ最初の一発で凍ってたと思うし…ありがとうね!」

 

「右に同じ。…気づいててもどうにもならなかったと思う。ありがとう」

 

臨時のチームメイト2人と感謝し合いながら次の模擬戦を観戦しているとふと視線を感じた。

 

…爆豪?なんか凄い目つきで見てんな。

視界の端に収めながらなんかやったっけか?、と思っていると今度は轟くんの方を見始めた。

 

…あー。首席入学したくらいだから自分の能力に自信があったのに俺等の方が目立ったからか。

 

これから幾らでもひっくり返せるだろうに。

少なくともそれだけの才能はある。…性格に難があり過ぎるが。

 

今後どうなるかなんて分かんないんだし、考えてもしょうがないわな。

 

結局その日の模擬戦が全て終了して解散するまで爆豪の様子が変わることは無かった。

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