加速少年の英雄希望   作:月面旅行BD

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トラブル、或いは傍観者

 

 

「オールマイトの授業はどうですか?」

 

校門前でバカみたいに集まってるマスコミを見て少しげんなりする。集まり過ぎて渋滞してるじゃん…

 

「はい、すみません〜通して下さい〜」

 

片手をチョップの形で軽く振りながら人混みを掻き分ける。

途中で何回か質問されたが全て無視。答えるとそれだけ混雑が長引くし。

 

…漸く切り抜けたな、と一息入れると後ろから軽い衝撃を受けた。

 

「おはよー!」

 

葉隠さんだった。着いてきてたのか?全く気づかなかった…

 

「おはよう、葉隠さん。」

 

相変わらず顔が見えないが、明るい声色から笑顔なんだろうなと思う。

 

「凄い人だかりだったね」

 

「あのオールマイトが教師してるってのが余程珍しいんだろね」

 

まぁ、No.1ヒーローが急に教鞭を取るってなったら気になるよな。俺だって気になるもん。

 

「でもあの集まり方は凄くない?」

 

「そうだね。適当に記者会見でもしてくれりゃこんなんすぐ散ってくれるんじゃない?とは思うけど」

 

ローカルな所は張り付くかもだけど腐っても天下の雄英だ。その辺の対処は心得てる事だろうし。

 

「ヒーローは人気商売な一面があるから、こういう事への対処だって慣れてると思ってたけど…」

 

この有り様だよね、と後ろを見やると丁度緑谷くんが取材陣に絡まれてる所だった。真面目だなぁ…答えなくても良い質問なんか無視すりゃ良いのに。

 

「ま、明日からは少し静かになるんじゃない?」

 

あの校長が何も対策しないなんてことは無いだろ。

オールマイトを教師にするって時点で想定済みなはずだ。

 

「だといいけどね〜」

 

間延びした声で答える葉隠さん。

少し眠そう?…表情が分からねぇとハッキリしないな。

 

「そういやいつの間に後ろに居たの?」

 

「ん〜?人だかりの前辺りから。真後ろを着いてくだけで抜けられたから助かったよ〜」

 

ありがとね!と感謝されたがそんな手前から居たんだ…

周りに人が居たとは言え全く気配を感じなかった。

 

「どういたしまして?そういえばさ…」

 

若干の恐怖を覚えながら雑談をしつつ教室へ向かった。

ヒーロー目指してくれてて良かった…葉隠さんが善性に寄った人じゃなかったら本気でヤバい事になってただろう。

 

 

 

 

 

 

 

「今日は学級委員長を決めてもらう」

 

ホームルームで相澤先生が唐突に言い放った言葉に教室中が騒然となった。俺以外の全員が立候補して収拾がつかなくなる前に飯田くんがその場を収めた…言ってることと行動が釣り合って無くて少し面白かったが。

 

結局、投票で決める事になったが…自分に投票するなってルールは必要だったんじゃね?立候補した奴は全員自分に入れるだろこれ…

 

…てことは俺が入れた票で決まる可能性が高いな。

うーん、まだ知り合って日が浅すぎて人となりも禄に知らないんだよな。辛うじて判るのは葉隠さん、尾白くん、上鳴くん、飯田くんの四択なんだけど…ま、投票って方法を提示した飯田くんかな。メガネだし。

 

 

「では結果を発表する。緑谷が三票、八百万が二票で委員長と副委員長だ」

 

俺以外で自分じゃない奴に投票した人が居たとは。まぁ全員が全員やりたいわけじゃないわな。

開票結果で悲喜交交な教室で1人挙動不審になる緑谷くん。うん、まぁ良いんじゃ無いかな?荒れてる爆豪とかよりはマシだし。

 

「ねぇねぇ、端場くん」

 

「何?葉隠さん」

 

「端場くんは誰に入れたの?」

 

黒板の俺の名前の所は白紙…黒板でも白紙っていうのか?だ。

 

「飯田くん。委員長ぽいし。」

 

メガネ+真面目=委員長の構図が頭に浮かんだし。

 

「投票って方法を提案して皆をまとめてたから適任じゃん?」

 

「確かに…!言われてみればそーだね!」

 

納得したように頷く葉隠さん。首元の服の動きで判断しないといけないから目線が若干怪しい所に向くのはしょうが無いんだよ?ホントに。

 

「でしょ。ま、緑谷くんも真面目そうだし上手くやってくれるよ」

 

飯田くんと仲良いみたいだからいざって時は助けてくれるだろ。

 

「良し、じゃあ授業を始めるぞ」

 

相澤先生の言葉で騒がしかった教室が静かになった。こういう所は進学校っぽいよな雄英高校。

 

 

 

 

 

 

 

午前中の授業が終わって昼休み。

今日は食堂にランチラッシュの飯を食べに来ている。

 

「わー凄い人だね」

 

「先に席取っておこうか」

 

…葉隠さんと一緒に。まぁ、別に良いんだけども女子と昼メシを食べるのは初めてだから緊張する〜。

 

適当に席を取って食べ始めるとふと気になって葉隠さんを見る。

…口に入れた物は見えなくなるのか。口内が見えないのに不思議。口の中に入れられるサイズなら隠せるってのは何かに使えそうだ。…掴んでる物はしっかり見えるんだよな。透過ってよりは後ろの景色を体表に表示してるのか…?

 

 

「あの、そんなに見つめられると食べにくいんだけど…」

 

葉隠さんから指摘されてしまった。不躾すぎたな、反省。

 

「ごめん、ちょっと気になって…気をつけるよ」

 

謝ってから食事を再開する…と同時にけたたましく警報が鳴った。

 

 

『セキュリティレベル3が突破されました。生徒の皆さんは屋外へ避難してください』

 

 

続いたアナウンスに騒然となる食堂。

我先にと出口へ向かう先輩方を眺めつつ蕎麦を啜っていると

 

「何してるの!?避難しないとヤバいよ!」

 

葉隠さんが慌てているが…この混乱の中に入って行く方が危険じゃない?

 

「今行っても出口のあの混雑具合じゃ潰されちゃうよ?」

 

それに、と窓の外を指す。

 

「多分アイツ等が原因でしょ」

 

マスコミが中庭に押しかけているのが見える。相澤先生やマイク先生が押し留めてるが…あれ、不法侵入で捕縛できねーんかな?

 

それにしても酷えなこの混乱。ヒーロー科ではないにしろ高校生にもなって押さない駆けない喋らないも守れないのか…

 

「だからすぐに訂正のアナウンスが入ると思うよ?」

 

「端場くん、冷静だね…」

 

「警報の時点で個性使って周りを見渡したらマスコミが見えたから。もし他の原因だとしても今の出口から出るのは無いね」

 

おしくら饅頭みたいに成ってる出口を見やって話していると、空中を回転しながら出口に張り付いた飯田くんが見えた。…何やってんだ?

 

 

「大丈ー夫!!皆さん落ち着いて下さい!ただのマスコミです!!パニックになる必要はありません!!」

 

非常口のピクトマークみたいになりながら大声で注目を集めつつ周囲を宥めている。

 

「此処は雄英!最高峰の人間に相応しい行動を取りましょう!!」

 

おぉ…上手く周囲を落ち着かせる事に成功してる。

自然と列を成して順番に出ていく生徒達を見て感心する。

蕎麦を食い終わったし、俺も避難する列の最後尾に向かうかな。

 

「んじゃそろそろ行こうか、葉隠さん」

 

「感心するべきか呆れるべきか迷う所だけど…うん、行こうか」

 

呆れられるの?…まぁ混乱を収める様に動かなかったからかな。

 

 

 

 

結局、あの混乱を収めたのを見たらしい緑谷くんが飯田くんに委員長の座を譲るとの事で我らの委員長は飯田くんに決定した。

一番らしい所に落ち着いてくれたみたいで良かったわ。

 

 

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