加速少年の英雄希望   作:月面旅行BD

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訓練、或いは襲撃

 

 

ヒーロー学の時間は毎回驚かせてくれるが今回は大掛かりだな。

移動にバスを使用するとは…周りも心なしかソワソワしてる。

 

「…やっぱさ、派手な個性ってだけで目立つし良いよな」

 

「派手で強ぇって言うとやっぱ轟と爆豪だな」

 

上鳴くんと切島くんが個性の話から誰が人気に成りそうか話してるみたいだ。…轟くんはまぁ物静かだし顔立ちも整ってるしで人気出そうだけど爆豪くんは…

 

「爆豪ちゃんはキレてばっかりだから人気でなさそ。」

 

「んだとコラ出すわ!」

 

蛙吹さんの言葉に語るに落ちる形で反応する爆豪くん。一部の人にぶっ刺さるかもね?

 

「ってかさ、強ぇって話なら端場もじゃね?」

 

俺か。強個性であることは否定しないけど…

 

「俺、切島くんや上鳴くん相手だと相性悪いよ?」

 

硬すぎてダメージが入らない男&触ったらお終いの電気人間。相性悪いわ…時間稼ぐだけなら幾らでも方法はあるが。若しくは不意討ちかな、先手必勝が刺されば勝てる。

 

「うーん…言ってることはわかんだけどよ?」

 

「なー。他人への期待がデカいっつーか、自己評価が低いっつーか…」

 

アレ見たら勝てるビジョン中々湧かねーよ、と

轟くんをチラリと見て続けた。

 

「どんな奴相手でもやりようは有る。ガチンコの一対一でよーいスタートの試合ならそりゃ勝ち目薄いけども絶対負けるなんて事は無い」

 

それこそオールマイト相手でも絶対に負けるなんて事は無いだろ。

 

そう続けるとバスの中はしんと静まり返った。

…いや、爆豪くんはすげぇ目で此方を睨みつけてるな。

 

「…上を目指すならいずれは越えなきゃ行けないんだから、その位の気概はないとさって話」

 

と続けると爆豪くんが爆発した。

 

「あぁ!?当たり前だろ!早送り野郎に言われるまでもねぇ!!」

 

何急にブチギレてんの!?琴線がわからなさ過ぎて怖えーよ、ヒーローっぽくしろよもうちょいさぁ!

 

「そーいう所だぞ爆豪」

 

「その下水煮込みみたいな性格さえマトモならなぁ…」

 

やんややんやと爆豪の性格をイジってるとバスは目的地に着いた様だ。促されて外に出ると試験会場が幾つも入りそうな巨大テーマパークが見える。

 

 

ウソの災害や自己ルーム(USJ)へようこそ!」

 

「スペースヒーロー13号だ!」

 

「わー私好きなの13号!災害救助で活躍してるプロヒーロー!」

 

13号先生が出迎えてくれたが、施設名は大丈夫なのか?もろに大阪のアレと被ってるけど…

 

「えー…実習を始める前にお小言を1つ2つ、3つ…4つ…」

 

授業に入る前にと、各々の個性に関する危険性、人に向ける恐怖などのお話とそれを助ける為にどう使うのか、それを今回は学んでもらいたい旨を話してくれた。…まぁ、爆豪くんとかモロ戦闘用個性だしなぁ。轟くんは汎用性有りそうだけど。

 

「…この授業ではそういった事を学んでいってくれると幸いです!ご清聴ありがとうございました」

 

そう13号先生が話を結ぶと同時に黒いもやみたいなのが目の前の広場に点々と現れた。…サプライズゲストか?

 

「一かたまりになって動くな!13号、生徒を守れ!」

 

相澤先生が真剣な表情で警告を上げる。

 

「あんだありゃ?また試験の時みたいにもう始まってるパターン?」

 

切島くんが呑気な事を口走るがそんな感じじゃないな。もやからわらわら出てきた連中、どう見てもカタギじゃなさそうだし。

 

「動くな!あれはヴィランだ!」

 

…雄英の授業中に襲撃してくるようなイカれがこんなに集まってるのか?

 

 

 

「13号に、イレイザーヘッド…カリキュラムではオールマイトが居るとの事でしたが…」

 

黒いもやで覆われた怪人が喋る。オールマイトがいると思って来た?ただのファンじゃないだろうし、打倒出来る何かがあるのか?

 

「なんだよ…折角大勢連れて来たのに…。オールマイトが居ないんじゃ意味ねーじゃん…」

 

体中を手で覆った異様な男が呟く。

 

「…子供を殺せば来るのかな?」

 

殺気をばら撒いた…アイツが頭で間違いなさそうだな。

その横に居る脳丸出しのあからさまにヤベー奴は何も喋らないが、見るからにパワータイプだ。黒もやがワープ個性ならあの手だらけ男が対オールマイトの切り札持ちか?見るからに発動型個性持ちだが、体格からして近接戦闘が得意なタイプには見えないが…

 

「ヴィラン!?バカだろ!?ヒーローの学校に殴り込むなんてアホすぎんぞ!!」

 

クラスメートがざわめき出す。相澤先生がすぐに指示を出して落ち着いたが、これは…

 

「侵入者用のセンサーが反応しなかった…!?」

 

13号先生が驚いているのを見ると、相手に無効化する個性持ちが居る可能性が高いな。轟くんも同意見ぽいし。

 

「先生!?1人で戦うつもりですか!?」

 

緑谷くんが相澤先生を心配しているが

 

「イレイザーヘッドの戦い方は個性を消して捕縛する一対一が基本のはず!あんなに大勢いては…」

 

「一芸じゃヒーローは務まらん。13号、生徒は任せたぞ!」

 

相澤先生はそう言い残すとヴィラン共の方へと飛び込んで行った。

…凄ぇな先生。的確に個性を無効化して各個撃破してるわ。あの布が巻き付くとパワータイプの異形型でも転がされてら。

あの布、コスチュームに追加出来ないかな…

 

「凄い…!多対一こそ先生の得意分野だったんだ…!」

 

心配してた緑谷くんが感心して居るのを飯田くんが引き連れるようにして避難を開始した俺達の目の前に黒もや野郎が転移して来た。

 

「させませんよ?」

 

「私達は敵連合(ヴィラン連合)。この度はオールマイトに息絶えて頂きたいと思いまして馳せ参じました」

 

黒もや野郎が喋ってる間に爆豪くんと切島くんが走り出してるのが見えた。…血の気が多い奴らだな!

 

個性を発動して黒もや野郎へと走る。目の前で爆豪の爆発と切島のラリアットが黒もや野郎の頭部分へとつき刺さると思ったらすり抜けやがった!?んじゃ俺は胴体に行くか。腹があると思われる部分を殴る。当たった感触はあるな。ついでに2発ほど骨のない部分に叩き込んで下がる…個性解除。

 

「グウゥっ!?」

 

「俺達にやられるとは思わなかったか!?」

 

「ケッ!早送り野郎、テメーが居なくても何とか出来たわ余計な真似すんじゃねーよ!」

 

「いやいや、お前らの攻撃スカってたじゃん。俺が殴ったダメージだぞアレ」

 

腹を抑えながら俺を睨みつける黒もや野郎。…見てんの俺だよな?目線が分かり辛いわモヤ野郎。

 

「…危ない危ない。卵とはいえプロヒーローを目指す金の卵。油断も隙もあったものではありませんね」

 

何事もなかったように続けやがる…次は意識飛ぶまで蹴ってやるよ!

 

「ダメだ!退きなさい3人とも!!」

 

13号先生の警告を聞いて咄嗟に個性を発動して飛び退く。

モヤ野郎のモヤモヤが爆発的に広がってその場のクラスメートを飲み込んでいくのが見えた。咄嗟に近場に居た葉隠さんを抱えて13号先生の方へと走る。…此処は範囲外だな、個性解除。

 

「…クソっ!爆豪と切島は!?」

 

「避けましたか…まぁ良いでしょう。目的はほぼ果たしました。」

 

散らして、嬲り殺す。

 

続いた言葉で少し安心する。少なくとも即死する様な事態ではない…抱えてた葉隠さんを降ろす。

周りを見渡すと少なくとも数人は残った様だ。飯田くんが居るのは幸運か悪運か判らんな。此処が一番安全だが、危険な奴が集まってるのも此処だ。別の、例えば敷地の外側に近い所に行ってくれてれば応援を呼んできてもらうのも容易だったのに…

 

「ありがとう…」

 

「どういたしまして。まだ安心出来ないけどね」

 

軽口を叩いて余裕ぶってみるが実際ヤバいなこれは。電波障害と転移個性持ちに退路を塞がれてる…

 

 

「…委員長、君に託します!この事態を学校に知らせて応援を呼んできて下さい!」

 

13号先生曰く、イレイザーヘッドが個性を消しながら大立ち回りしてるのに警報が復活しないのはそういった個性持ちが隠れて妨害しているからだと。それを探すより飯田くんが走った方が確実だし速い。

 

「それなら端場くんでも…!」

 

「飯田くん。俺の個性じゃ長時間は持たないんだ」

 

此処から敷地外に出ることは俺でも可能だろう。しかし電波障害がそこで切れるとは限らない。最悪は学校まで走る必要がある。

…俺じゃそこまで個性を使用し続けられない。

 

「しかし、皆を置いて逃げるなんて…」

 

「良いから行け!お前が今一番可能性が高いから頼んでんだ!」

 

その場にいる皆が口々に飯田くんにはっぱを掛ける。

 

「そうだよ!サポートなら食堂の時みたく超するし!」

 

麗日さんが励ますように声を掛けた。

 

「お願いね!委員長!」

 

 

その言葉で覚悟を決めた飯田くんが踵を返して走り出す。

それを妨害するようにモヤ野郎が妨害しようとするが…

 

「目の前で策を語る阿呆がいるとは!」

 

「バレても問題ないから語ったんでしょうが!」

 

飯田くんを妨害する様に出した黒いモヤモヤを13号先生が指先から吸い込む。…あれがブラックホールか。何でも吸い込むとかいう強個性。それは黒いモヤモヤも例外ではなかった。

 

「成る程…確かに厄介ですね」

 

しかし、と更にモヤモヤを増やす。

 

「これならどうです!?」

 

飯田くんの行く手を阻むと同時に13号へと転移のモヤモヤを広げる。自分に向かうモヤモヤを吸い込む13号だったが…

 

 

「ッ!?」

 

背後に開いた転移箇所から自分の個性で吸われて背中がボロボロになってしまっていた。

 

「やはり、プロヒーローといえど救助専門。純戦闘型に比べれば1枚劣りますね」

 

してやったりな感じを出してるとこ悪いけど。

 

「こっちだ黒モヤ野郎」

 

個性発動(加速開始)

背後から声を掛けられて反射的に此方を向こうとしているモヤ野郎を蹴り倒す。やはり胴体に当たり判定があるな。

倒れ始めた奴の肝臓辺りに膝を入れる。足が宙に浮いた。此方にモヤを広げて来るが遅い。

此方にモヤが届く前に服を掴んで走る。モヤを置き去りにしてセントラル広場との間の階段にモヤ野郎を投げ落とした。

個性解除(加速終了)

 

 

「ふぅッ…!」

 

 

頭痛がして来た…もうあんまり持たんかも知れん。

投げた黒モヤ野郎は長い階段をハリウッドみたいに転がり落ちて行った。…まぁ、死にはしないだろ。頭に当たり判定ないからクリティカルな所はどうにかして守ってんだろうし。

んでもって飯田くんの足なら既に敷地外を爆走してる頃だろう。後は救援を待つだけだ…と考えて何気なくセントラル広場の方を見ると…相澤先生が脳丸出し男に捕らえられている所だった。

 

 

ヤバいな…他のヴィラン共は手だらけ男だけだが相澤先生が負ける相手が残ってんのかよ…でもま、やるしかねぇよな!

 

 

再度個性を発動。

転げ落ちてる最中のモヤ野郎を拾って走る。もう1回付き合ってもらうぞ。

此方に気付いてない手だらけ男に投げつけて視界を塞ぐと同時に体勢を崩させる。

驚愕した様で無様に転がる手だらけ男を横目に脳丸出し男に攻撃する。

…取り敢えず後頭部?を殴りつけるがまるで効いた様子が無い。

近くで見ると相澤先生の腕がヤバい方向に曲がってる…躊躇してる場合じゃ無さそうだ。

丸出しの脳を殴って見ると少し腕が揺らいだ。

やっぱりそこが弱点か。分かりやすい奴だ!

真上まで飛び上がってそのまま思いっきりネリチャギを叩き込むと完全に指から力が抜けたのが見て取れた。

反動を利用して先生側に着地、そのまま相澤先生を掻っ攫う。

…限界だな。少し離れた所で個性解除。

 

 

「グァッ!…良し、まだ行ける!」

 

ギリギリだが後1回は発動できるな。その後気絶しそうだが。

 

「相澤先生!大丈夫ですか!?」

 

「端場…!?何でお前が此処に!?」

 

相澤先生はボロボロの姿で此方を凝視している。

 

「13号先生と飯田くんがやってくれました!もう少しで救援が来ます!」

 

脳丸出し男と手だらけ男から目を離さないようにしながら現状を伝える。

 

「…先生、まだ戦えますか?」

 

「…右手が動かん。個性は使えるがあの脳無とかいう大男、個性無しでオールマイト並みの力がある」

 

オールマイト並みと来たか。拳1つでランキング1位に成った男と同レベルとかヤバすぎだろ…

 

「あの手だらけの男、アイツに触れられるとそこから崩れる。防御不可能だと考えていい」

 

んであっちは防御不可と。手の方はどうにかできるだろうけど大男が無理ゲーっぽいな…

 

 

 

「はぁ…!?ガキを取り逃がした!?」

 

手だらけ男が急に大声を出した。仲間割れか?そうなら嬉しいが。

 

「はぁー…何十人ものプロ相手じゃ今回の装備じゃ勝てないな…黒霧、お前ワープゲートじゃなかったらバラバラにしてたよ…」

 

何か、覇気が無くなった…いや、萎えたのか?

 

「今回はゲームオーバーだ。…帰ろっか」

 

帰ってくれるなら追っかけないぞ?…追いかけるだけの体力がないとも言うが。

 

「でもその前に…平和の象徴の矜持、その一端でもへし折ってからにしよう!」

 

あれは…蛙吹さん!?緑谷くんに峰田くんも!?なんで此処にいるんだよ!?

 

手だらけ男の手が蛙吹さんの頭に掛かる。ヤバい、防御不可の攻撃が入る…!すみません、先生…!

 

最後の加速を切る。

全てが遅くなり、音が遠くなる。

全速力で蛙吹さんの方へ走り、手だらけ男を横から飛び蹴りで弾き飛ばす。限界か…!個性を終了させると酷い頭痛が襲ってくる。

 

「ッ逃げろ…ッ!」

 

蛙吹さんに最後の警告をした後、意識が薄れていく。

 

あぁ、先生を放置して蛙吹さんの方に走っちまった…

重体の先生1人で手だらけ男とオールマイト級の大男に対処するのは難しいとわかりきってるのに。此処で俺が足手まといになる選択をするとはなんて浅はかな事をしたんだ俺は…

 

 

そんな事を考えながら、でも不思議と後悔は無かった。

そんな自分に呆れ半分で苦笑を浮かべながら。

最後に見た光景でオールマイトが来てくれたのを幻視しながら意識が完全に途絶えた。

 

 

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