加速少年の英雄希望 作:月面旅行BD
あの救助訓練で襲ってきた連中はオールマイトがシバいたら逃げてったとのこと。病院で目覚めた俺は事のあらましを聞いて脱力しきっていた。
校長の事を悪く言いたかないが、世界で見ても最高戦力の男を茶飲み話で拘束してたってのはもう…相澤先生に土下座案件じゃないか?
まぁ、相澤先生がちょいと苦言を呈してたって話だし、それで許されたなら良かったのか?…良かったんだろな、多分。
…俺もめっちゃお叱りを受けた訳だが。まぁ、しょうが無いわな。逃げろって言われてたのに普通に戦ってたし。なんなら黒モヤ野郎(黒霧)をボコボコにして階段から転げ落とした挙げ句手男(死柄木というらしい)に投げつけるとかいう悪役ムーブかましちゃったから…
今回は色々不問になるけど次はちゃんと逃げろって凄ぇ言われた。俺まだ学生だしな…外傷は無いものの個性の過剰使用で脳が大分疲れてるから安静にしてろって事で病室で寝てる訳で。
相澤先生も命に別状は無いって事で安心したわ。素人目に見たらぶっちゃけ死んでても可笑しくなかったと思うレベルでズタボロだったし。
「端場ちゃん、身体は大丈夫?」
暇過ぎて脱走を考え始めた頃にお見舞い?で蛙吹さんが来てくれた。寝てる間にクラスメートは大抵顔出してくれたみたいだけど起きてる時に来てくれたのは蛙吹さんが初めてだ。
「大丈夫。自爆ダメージみたいなもんだから」
間を置かずに連続使用するとこうなるんだよね〜と軽く話すと真剣な目で此方を見つめながら
「助けてくれてありがとうね」
お礼を言われた。少し照れるわ…
「どういたしまして」
他に言う言葉が見つからん。気不味いわぁ。
「…蛙吹さん達は大丈夫だった?」
あの後の事は大まかには聞けたけど細かい所は聞いてないんだよな。
「えぇ。あの後オールマイトが来てくれてヴィラン達も逃げてったから」
うん、まぁ病院行きなのが俺と相澤先生だけな時点で他の皆は切り抜けられたって事だもんな。
13号先生も背中側のコスチュームがボロボロになっただけって話だったし。
「そっか。怪我が無くて良かったよ」
「ワープ先で戦った皆も無事よ」
良かった…転移系個性に巻き込まれた時に一番ヤバいのは転移先で即死させられる事だし。個性によるとは言え対象を選ばない個性は総じて凶悪な使い方が出来るから。
「ケロ…端場ちゃん、皆心配してたわ。早く良くなってね」
「夜までには退院出来るみたいだし、明日には顔出すよ」
言っちまえばただの疲労だし。ぶっちゃけ寝てりゃ治る類のものだ。今回はヴィランの襲撃があったから検査入院なんて大げさな事になってるだけで。
「んじゃ、また明日学校で」
「えぇ、また明日」
蛙吹さんが病室から出ていった。
…礼を言う為に態々来てくれるなんて律儀な人だなぁ。
翌日。無事退院し、クラスに顔を出すと大勢に囲まれた。
「端場!お前大丈夫だったか!?」
「心配したよ!」
「ケガとかはないの?大丈夫?」
やんややんや。心配してくれてたのは嬉しいけどいっぺんに喋られたら聖徳太子でもなければ全てを聞き分けるのは無理じゃね?
「心配かけたみたいでごめん。見ての通りピンピンしてるよ」
その後もわちゃくちゃと質問したり返したりしてると予鈴がなり、全員が速やかに席に着いた。進学校だなぁ…
「よーし、全員席に着いてるな。ホームルーム始めるぞ」
包帯でぐるぐる巻きになった相澤先生がそこにはいた。
…アンタ、そんな軽症じゃなかっただろ!?
「相澤先生!?」
「え!?復帰早くね!?」
「大丈夫なんですか!?」
ゴリゴリのミイラ男だけどホント無理だけはやめて欲しいもんだ。
「俺の安否はどうでもいい。何よりまだ戦いは終わってないんだ」
イヤイヤ、安否は大事でしょうよ!寧ろ一番気にするわ!!
「戦い…?」
「まさか、まだヴィランが?」
ざわめく教室。うん、まぁ皆が気にならないなら良いや…
「雄英体育祭が迫っている!」
「クソ学校っぽいのキター!!」
確かに。というかだ…
「先生、あんな事があったばっかりなのに開催して大丈夫なんですか?」
先生に質問する。昨日襲撃受けたばっかりなのにそんなイベントやってる余裕あるのか?
「ああ。逆に普段通りに開催する事で雄英の危機管理体制が盤石だと示す、らしい。警備も例年の5倍に増やすそうだ。それに…」
先生の話をまとめると。
雄英体育祭は日本中が注目する大イベント。
それにプロヒーローがスカウト目的で見る場でもある。
在学中3回しかないチャンスを潰す訳には行かないとの事。
「…プロに見込まれればその場で将来が拓ける訳だ。ヒーロー目指すなら絶対に外せないイベントだ!気合い入れてけよ!」
ちゃんと警備も増えるし、オールマイトも居るってんなら安心だ。
それに、毎年見てた雄英体育祭に今年は参加出来るってのはテンション上がるな!!
時間は飛んで放課後。普段の授業は普通の高校と変わらんな…多分。若干詰め込み気味な気もするがついていけない程じゃないわ。
「って何事だぁ!?」
大声を聞いて振り向くと、教室の扉前が人混みで凄い事になってた。
「うわぁ…出れねぇじゃん」
何でこんな集まってんだ?と続けると
「敵情視察に決まってんだろ早送り野郎」
爆豪くんが…もうコイツは爆豪でいいか。爆豪がチクリと言ってきた。仲良くしようとかそういうの無いのかよ。
「んな事分かってるわ。なんでこんなに数が居るんだって話。マトモな奴は態々見に来ないだろ。別に個性使う訳でもねぇんだから」
と爆豪に返すと鼻を鳴らして集まった奴らに話しかける。
「意味ねぇからどけモブ共」
「お前ホントにヒーロー目指してんの…?」
つい口に出た。ギロリと睨まれたがしょうがないじゃん!口悪すぎだって!ギャングオルカだって普段は凄い紳士的だって聞くぞ!
「あーあ、どんなもんかと見に来てみれば随分な態度じゃないか」
ん?コイツどっかで見たような気がするな?
「ヒーロー科に通う連中は皆こうなのか?」
「あぁ!?」
爆豪がキレる対象を俺からモジャモジャくん(仮)に変えた。ナイス煽り、モジャモジャくん!
「こーいうの見ちゃうと幻滅するわ。知ってる?普通科とか他の科にいる奴って結構ヒーロー科から溢れたのが多いんだ」
あ、そーいえば実技の試験説明で項垂れてた奴に居たなコイツ!って事は対人特化の個性か…少なくとも純戦闘型じゃないな。
「リザルト次第じゃヒーロー科への編入も考えてくれるって話。勿論逆も然りだけど」
此方を睨むモジャモジャくん。…俺になんか用かな?
「敵情視察?少なくとも俺は油断してんなら足元ゴッソリすくうぞって宣戦布告に来たんだよ」
おぉ…すげー自信じゃん!こういう奴は大好きだ!
「そーいう事なら大歓迎!な、皆!!」
答えて振り返ると全員なんとも言えない顔をしていた…いや、切島くんだけは震えてる?な。
「ヒーロー科志望大いに結構。でも俺らだって本気で勝ちに行くぜ?仮にもヒーロー科だからさ」
モジャモジャくんを睨みつけながら答えると少し怯んだがしっかりと俺を睨みつけてから踵をかえした。
…名前聞いときゃ良かったな。ま、良いか。あんだけ自信があるなら本番で嫌でも聞くことになるだろ。
「おいおいおい!熱い事してんなぁA組!」
俺を見ながら凄い剣幕の奴が来たな。
「隣のB組のもんだけどよぉ!ヴィランと戦ったっつうから話聞きに来たんだが…」
爆豪を睨みつけてるな…まぁ、序盤でバカほど煽ってたし、大分ヘイト溜めてんだろうが…
「てめぇエラく調子乗ってんなオイ!本番で恥ずかしい事になんぞ!」
あー…いや、爆豪に限ってはあんま無い…かな?実力だけで言ったらA組でも1、2を争うレベルだし。
爆豪はジッと見た後、無視して人混みをかき分けて行こうとする。ん〜…コイツすげぇわ。
「待てコラどうしてくれんだ!?お前のせいでヘイトバカ高くなってんだが!?」
切島くんがツッコむ。
「関係ねぇよ。上に上がりゃ関係ねぇ」
「く、シンプルで男らしいじゃねえか…!」
うん、そーだね。シンプルに自分と自分以外で切り分けてるタイプだね。…自分以外は全員敵って意味で。
結局その後は特に絡んでくる奴も居なかったので素直に下校した訳だが。教室の入口を塞いでた連中がはけてから葉隠さんにツッコまれた。
「端場くん、結構好戦的だね」
「いやまぁ…そうかもだけど何で?」
さっきのやり取りさ、と続けて
「あの普通科の子相手に盛大に喧嘩買ってたじゃん?」
「あぁ、あれはアイツが本気だったから。じゃ、本気で潰すね?ってことよ」
マジで宣戦布告に来たっぽいのアイツだけだしな。それならちゃんと答えなきゃ失礼ってもんでしょ。
「自分ルールがある所はちょっと爆豪くんと似てるよね~」
はぁ!?あの爆発野郎と似てる!?名誉毀損で訴えるぞ!!
……落ち着け、落ち着け。大した事じゃない。似てるって言われたのは性格面じゃないんだから大丈夫。
「…そう、かもね?」
「うわ、凄い顔!」
ケラケラ笑う葉隠さん。そりゃあの爆豪に似てるよね?って言われたらこんな顔にもなるって…
その後もからかわれながら家路に着いた。
話すのは好きだけどからかわれるのはあんま好きじゃないと気付けたわ。