加速少年の英雄希望 作:月面旅行BD
あっと言う間に2週間が経ち、本日は雄英体育祭の初日である。
お祭りって事で屋台も並ぶ雄英高校。来場した客が浮かれてる中、選手控室として宛てがわれた教室でA組の皆は少し緊張している。
「い、いよいよだね…!」
「そうだね。…これ3回目だけども」
と葉隠さんと軽口を叩いていると軽く肘打ちが飛んできた。甘いわ!手のひらで受け止める。
「流石に
体育祭は体操着着用が義務づけられているから袖の動きで丸わかりだ。
「むー。やっぱコスチューム使わせてほしい!」
「まぁまぁ…他の科と公平にやる為って話だししょうがないって」
…というか、だ。葉隠さんの場合上着を脱いで袖を肩まで捲くれば腕の動きは分からなくなるでしょうに。
「それに、コスチューム使ったら葉隠さんの事誰も見れないよ?」
スカウト目的なんだし、目立たないと…と続けてふと思う。
「…葉隠さんが目立つって、どうやるんだ?」
「あー!言ったな!」
ポカポカと叩かれる。ごめんて。
「端場」
葉隠さんに叩かれてる最中に轟くんが声をかけてくる。なんだろ?
「うん、何?」
「…お前には1回負けてる。今回は負けねぇぞ」
葉隠さんの猛攻を避けて立ち上がる。
「前にも言ったけど、轟くんの方が強いと思うよ。でも…」
轟くんの目の前に行って目を合わせる。…すげー整った顔してんな。ちょっと腹立つわ…
「今回も俺が勝つ」
目を合わせてニヤリと笑う。ルールがあるなら勝算はある。閉鎖空間で一対一とかじゃなければ対戦形式でも目がある…と思う。
「おぉ~…轟、お前かなり好戦的なんだな…」
「緑谷の次は端場かーい」
「まぁ、模擬戦で土つけられてるしな」
周囲の反応からするとどうやら葉隠さんと雑談してる間に緑谷くんにも宣戦布告してたらしい。うーん…血の気が多い、でもそういうの嫌いじゃないぜ!
「勝ちたい相手が多くて大変だな轟くん。ま、ここにいる全員がライバルだし…全力でやろうぜ」
その場のノリで周りを見渡しながら話す。
全員が引き締まった顔で俺を見てる…やべ、この先なんて言おう…?
「最大の障壁として期待してるよ」
そこまで残ってたらな!……主に俺が!!
個性の都合上、連戦だと厳しーんだよなぁ…
『雄英体育祭!!ヒーローの卵達が我こそはと鎬を削る一大バトル!!』
プレゼントマイク先生のアナウンス?煽り文?を聞きながら入場ゲートへと進む。
『どーせてめーらアレだろ?コイツらだろ!?』
すげーや、テレビで見た光景を生で見てるよ…
『ヴィランの襲撃を受けたにも関わらず、鋼の精神で跳ね除けた奇跡の新星!!』
『ヒーロー科!1年!!A組だろぉぉ!!!』
うわぁ、凄い人だ…観客席全部埋まってるぞ。
緑谷くんなんかは緊張しまくってんな。
『そしてB組に続いて普通科C、D、E組。サポート科の…』
うわぁ…マイク先生、それはちょっと露骨過ぎじゃね?
…ほらぁ!他の組の奴ら此方めっちゃ睨んでんじゃん!!
「選手宣誓!!」
整列してると前の台…アレってなんていうんだ?…にミッドナイト先生が上がり、選手宣誓の時間となった。
「選手宣誓、ね…」
「どうしたの?」
「いや、確か主席入学者がやるって話だったからさ…」
葉隠さんとヒソヒソと話してるとミッドナイト先生が
「1年A組、爆豪勝己!」
と、爆豪を呼ぶ。…絶対人選ミスってると思うんだけど。
「せんせー、俺が1位になる」
やる気のない語気の癖に使う言葉が強すぎる…
「絶対やると思った!!」
「調子乗んなよA組!!」
「ヘドロヤローが舐めた口聞いてんじゃねぇぞ!」
凄ぇ、生徒だけじゃなくて観客席からも若干ブーイングされてる…
まぁ、アイツに任せたらこうなるわ。ってか俺等も巻き込まれてんじゃん…どっちみち全員に勝つだけだからどうでもいいが。
「せめて良い跳ね台になってくれ」
首元を掻っ切るジェスチャー付きである。更にブーイングが増えた…もうコイツの方向性が全世界に広まったな。ヴィランっぽいヒーローに新たな超新星だわ。
「じゃ、早速第一種目行きましょう!」
「雄英って何でも早速だよね」
葉隠さん、その通りなんだけど今じゃないと思うんだ。
「いわゆる予選!毎年何人もの生徒が此処で涙をのむ事になるわ!」
後ろに投影された画面がスロットみたいに回転する。…無駄に凝ってるな。
「運命の第一種目、今年は…コレ!!」
後ろの画面に"障害物競走"と表示されている。
「障害物競走…」
なんかあんま良くない予感がする…
「全11クラスで総当たりのレースよ!このスタジアムの外周4kmを回って帰ってきて貰うわ!」
4km…個性使いっぱなしで走りきれる距離じゃないな。
要所で使って行けばまぁ、なんとかなるか?
「わが校は自由が売り文句!コースを守ればは何をしても構わないわ!」
嫌な予感的中だな。轟くんより前に居ないと妨害され放題じゃん…
「さあさあ!位置に着きなさい!」
ぞろぞろとスタート地点のゲートへと集まる。
…出口狭くね?今は良いとしてもスタジアム出口は狭すぎてギュウギュウ詰めになるぞ。
「スタート!!」
号令と共に
色が抜けて音が徐々に遠くなる。
周りのやつを避けながら前に飛び出ると横から轟くんが地面を凍らせながら来てるのが見えた。…やっぱ初手ブッパしてくるよな。
前を向いて走る。一番乗りでスタジアム出口を越えた。
…一度個性を解除する。
「っ良し!スタートダッシュ成功!!」
個性のインターバルを数えながら走る。
『おおっと!1-A 端場、いつの間にか先頭を独走しているー!』
『端場の個性なら楽勝だろうな…これ、俺いるか?』
実況解説されんの少し恥ずかしいわ…相澤先生が解説してんのすげーレアじゃね?
『しかしここで第一の難関、ロボインフェルノだ!!』
…入試の時の仮想敵か。ご丁寧に0ポイントまで居るじゃん。
約5秒後に再加速、切り抜けたら解除でどうにでもなるな。
問題は…
『ここで1-A轟を先頭としたA組集団が追いついた!!』
『此処までそんなに距離ないからな。当然だろう』
皆来るよね。しかも轟くんが先頭て。爆豪は何やってんだよ…
「追いついたぞ端場」
うん、まぁそうなんだけども。
「そうだな。…んじゃ、俺先に行くからまたな!」
悪いけどもこういう方式なら俺に分があるぞ?
ロボ軍団の隙間を縫うようにしながら走り抜ける。
後ろから氷が追ってきてるが…追いつかれないな。寧ろ対象はロボ軍団か。
第一関門が何処まで続くか判らんし、取り敢えず次の関門まで走ろう。
……アレか?
「ッはぁ!…ってなんじゃこりゃあ!」
目の前に広がる断崖絶壁と渡されたロープをみて絶叫する。
スタジアム外周になんてモン作ってんだ雄英!!
『端場、またもやいつの間にか第2関門へと到達ー!?一足先にThe・フォールの洗礼を受けるー!!』
『個性の使い所を上手く選んでるな。今のところは良いがこの先はどうするか見物だ』
コレ、個性使ってもあんま意味ねーな…終わった後に走ったほうが距離稼げるわ。
地味に高い所に張られたロープをえっちらおっちら渡っていると背後から再度後続組に追いつかれた。
『おおっと、此処で後続組もThe・フォールへと到達だ!!第一の関門は余裕で突破されたが此処はどうだ!?』
『何人かは上手く個性を使って越えてるな。…飯田は予想外の方法だが』
「端場、お前…」
轟くんがロープの上をスタイリッシュに凍らせながら渡りつつ声をかけてくる。
「…なんだよ?」
今の俺はロープの真下を猿みたいに雲梯の要領で進んでいる。
足元に何も無いのが若干怖いわコレ。
「…先に行かせて貰う」
あー、置いてかれたー。…さっきカッコつけてブッチ切ったのにこれじゃ確かに拍子抜けするか。
ま、後少しで対岸だし…と思ってると背後から爆発音が近づいてくる。
「ハッハァ!ダセェな早送り野郎!!」
爆豪だった。
「舐めんな!対岸着いたら直ぐに巻き返してやるよ!」
言い返してる最中に飛んでった。…多分舐めんな!、しか聞こえなかっただろうな。ま、直ぐに追いつくが。
対岸に着くとプレゼントマイクの実況が耳に入ってくる。
『此処で順位が入れ替わった!!トップは轟!追随するのは爆豪!!そのまま最終関門、一面地雷原!怒りのアフガンだー!!』
『個性の相性も有るからな…結果はまだ判らんぞ』
此処って一応公共のスタジアム外周だよな…どんだけ改造してんだよ!?
『地雷の威力は控えめになってるが音と見た目は派手だからな!目と足を酷使して進めよ!注意深く見れば判るようになってるぜ!!』
…てか最後の地雷原、轟くんは凍らせて判定or不発に出来るし爆豪は飛んでくだろうしで意味なくね?
『おおっと此処で順位が入れ替わったか!?』
いや、もう考えても仕方ないな。行くしかねぇわ!
不自然に広くなってる場所に着くと前方で喧々諤々とやり合ってる二人が見える。
地面を確認すると確かに不自然に盛り上がってる所が見受けられた。…試しに踏んで見る。爆発、煙と衝撃が来る…前に後ろに下がった。踏んでも作動する前に走り抜けられるな。良し、最短ルートで行ける。
地雷原出口に向かって全力疾走。
幾つか踏んだ地雷が爆発した…と思うが音は聞こえないので無視。
2人に追いついた。…爆豪が凄い顔で振り向いたがそこにはもう居ないぞ。
轟くんは一心不乱に前を見てるな。…まぁ俺の方が速いが。
一気に地雷原を駆け抜けたが…流石にこれ以上使うと後に響くな。
「だぁっハァ!…良し、逃げ切るぜ!」
『一体何が起きたんだ!?いきなり地雷が爆発したと思ったら関門を越えた先に端場が現れた!!これで決まりか!?』
『独壇場だな…』
後はもう普通に走るだけだ…と思っていたんだが。
背後でデカい爆発音。爆豪か?と後ろをチラリと見ると、板に乗った緑谷くんが吹っ飛んで来てる!?
『おおっと此処で緑谷が猛追!1位の端場に追い縋る!!イレイザーヘッド、お前のクラスすげぇな!どんな教育してんだ!?』
『何も。奴らが勝手に火ぃつけ合ってんだろ』
「うわぁぁ!」
はああああ!?お前こっち飛んでくんなよ!!
瞬間的に個性を使用。突っ込んでくる緑谷くんを回避して直ぐに解除する。
「グッ…!」
少し頭が痛い。連続使用の弊害だ…
走り続けるが、緑谷くんに稼がれた距離は個性抜きじゃ詰められない…!
『なんと!誰が想像しただろうか!今一番にスタジアムへ帰ってきたその男!!』
…負けた、か。
『緑谷出久の存在を!!!』
2着か…今回でまた少し課題は見えたし、良しとしよう。
『後続組も続々とゴールイン!着順は後で纏めて発表するから待っててくれな!!』
轟くんと爆豪も来たか。3人して緑谷くんに出し抜かれたって考えると少し笑える。
爆豪の顔が大分アレな感じだけど大丈夫か…?
「さて、全員が揃った所で順位の発表よ!上位42名が次の本戦に進めるから確認なさい!!残念ながら落ちちゃった人もあんしんなさい!まだ見せ場はあるわ!」
ミッドナイト先生から本戦についての説明が始まった。
42人か…毎年の流れだと最後の決勝戦に進めるのは20人以下だから半数以上が篩い落とされるな。
「さて、気になる第2種目は〜…コレ!」
"騎馬戦"?…騎馬戦!?
チーム戦なのは良いけど、騎馬組むの?
…俺の個性、半分位終わってね?
「参加者は2〜4人で騎馬を組んでもらうわ!普通の騎馬戦と違うのは…」
ミッドナイト先生の説明を簡単に纏めると以下の通りになる。
1つ、騎馬を組んだらその人の持ち点の合計点を鉢巻で所持する。
2つ、与えられるポイントは予選の順位で決まる。
3つ、騎馬を崩されても、鉢巻を取られても負けではない。
4つ、鉢巻は首から上に巻く事。隠すのはNG。
5つ、制限時間は15分、時間内に鉢巻を集める事。上位4チームが次に進める。
「また、予選を1位で通過した緑谷くんは1000万ポイント!!」
……アブねー!2位で良かった!!
俺の個性で1000万ポイントとか誰も組んでくれないわ。このルールだと轟くんが広範囲攻撃してきたら一巻の終わりじゃん…
真面目に考えると騎手なら行けるけど騎馬は難しいな…流石に3人担いで走るのはキツイ。2人までならまぁ、何とかなるけど長時間は無理。…下で1人だけ加速してもなぁ。
「あ、後悪質な崩し目的の攻撃は一発退場だから注意してね!あくまで騎馬戦、正々堂々戦いましょう!」
さてと。誰を誘うべきかな…
最悪2人で組んで俺が肩車して加速するって手も有るが…
その場合は身体能力に長けてる人が必要だ。最良は爆豪だけどアイツと組むのは無理だろうし…
「じゃあ今から15分間、騎馬決めの交渉スタート!」
えっあっはやっ…まだ決めかねてるのに…!
葉隠さんの言う通り何でもかんでもいきなりだな!!