織田家の人質生活をしていて、信長様に連れ回される生活も楽しいが、監視役を織田の者でガチガチに固められているから人材召喚をすることができない。
まぁ今召喚したら今川に人質になった際に織田の息がかかった者扱いされて、召喚した人が動けなくなるので諦めるしかない。
あとはSSRの野菜の種とかがまた溜まってきているから、今度鞍馬が来たら運んでもらって、多月に育ててもらおう。
日本でも育つバナナとか出たし……。
栄養価高いし、茎部分は繊維に加工できるし、葉っぱも肥溜めで混ぜることで肥料になるし……。
うーん実に優秀。
前に獲得したアブラヤシと一緒に栽培してもらおうかな。
あとは道具系で、前に旋盤機のカードを獲得した事を紹介したが、新しく手押しポンプを獲得することに成功した。
複製することができれば井戸水の汲み上げが凄く楽になるので是非導入したい。
あとは足踏み機織り機、回転脱穀機、ガラ紡績機なんかも当たった。
織物系は木綿が当たらないと使えない……あれ? 三河って木綿が栽培されていた様な……。
まぁガチャで当たることを願おう。
そんなこんなで織田に連れ去られてから1年が経過し、俺は数え年で7歳となった。
1548年、天文17年。
俺は相変わらず織田の加藤家に人質として暮らしているが、加藤家はうどん関係の売り上げにより多いに盛り上がっていた。
そして更に小麦粉を使った料理は無いかと俺にせがんできた。
俺としても小麦の需要が増えれば、俺が三河統治をする際、二毛作で増産予定の小麦の売却価格が上がる。
そうなれば三河に金銭を流す事ができるので人口の多い尾張での需要拡大は願ったり。
そうなると小麦を大量に使うとなればパンだろうか。
パン……ヨーロッパでは一般的に食べられる主食であり、日本は米の文化圏なのでパン作りは発展していなかった。
確か俺の記憶が正しければパンの伝来は鉄砲と同じく1543年だったはずなので、場所によっては作り方が広まっているかもしれない。
まぁ俺が作るパンは現在の日ノ本にある食材で作るパンになるが……。
さて、パンを作るのに今の日ノ本で手に入らない物、手に入りにくい物と言えば卵、牛乳、バター、そして砂糖である。
牛乳は信長様が飲んでいたくらいだから市場にあるのでは無いのか?
そう思われるかもしれないが、獣の乳は不浄の物として日本では飲むことを原則禁止されていたし、日本の在来種の牛は乳をあまり出さないのである。
昔は蘇という乳製品が税の代わりに納められていた時代もあったが、それも数百年前。
平安時代に食肉禁止の法令が広まると次第に誰も飲もうとしなくなっていたのである。
信長様は普通に飲んでいるが、あれは例外というものだ。
そんなんなので乳製品であるバターがあるわけも無く、鶏も神聖な動物として見なされていたので卵を食べるなんてもってのほかと入手困難なので、市場に出回らない。
砂糖は完全に輸入に頼っているのでこれもべらぼうに高価であるため使わない。
じゃあ何を使うか。
小麦粉、塩、ゴマ油、それに酒を作る時に使う麹を使っていく。
ゴマ油はバターの代わりの油分、麹はパンを膨らませる酵母の代わりとして使っていく。
まず小麦粉と塩、麹をよく混ぜる。
次にお湯40度くらいのお湯と油を入れて纏まる様に混ぜていく。
粘り気が出てまとまってきたら、丸くして寝かせる。
すると発酵して膨らんでいき、四角い型に入れて窯で焼いていく。
すると現代日本人が見慣れた食パンの様なパンが出来上がる。
勿論味は食パンとは違い、少し塩っ気を感じる程度かつ、食感はアンパンとかに近い。
そもそも明治時代に酵母が入手できなくて麹を使ってパンを膨らませて中に餡を入れたアンパンがパン食が広まるきっかけになったと言われているのでね。
まぁとにかくパンの完成である。
いざ実食。
「ふむ……食べ応えはあるが、これを米の代わりに食べたいとは思わんな」
「味が淡白じゃな」
「美味しいが、毎食これだと落胆するな」
加藤さんやその家臣達、味が淡白と言う信長様。
やはり一工夫する必要があるか……。
そうなるとやっぱりアンパンになってくるか……。
肉や卵が使えればサンドイッチと言う手があるが、先程も言った通り入手困難なので、入手しやすいあんこを詰めるのが良いだろう。
この時代のあんこは塩餡であり、砂糖を使うあんこはまだ無かった。
そのためややしょっぱい仕上がりになるが致し方ない。
あとは味噌を練り込んだ味噌パンも作ってみた。
「おお、これなら食べやすい」
「うむ! 味噌の味が良い」
「焼き固めれば行軍食にもなりうるか?」
アンパンと味噌パンの評価は上々。
これなら物珍しさに食べる者も出るだろうし、米を使っていなくて腹持ちが良いとなれば、行軍中にも食べられるパンは軍事的にも使えると判断された。
「南蛮ではパンと呼ばれており、南蛮では米が取れないのでこのパンが主食となっているようです」
この言葉に信長様が食い付いてきた。
「南蛮ではこれが米の代わりに食べられておるのか」
「はい、一番初めに出した皆さんの不評だった味の薄い物を食べております」
「それだと力が出ないのではないか?」
「南蛮は食肉が盛んの様で牛や猪を家畜化した豚、鶏やもこもこした毛に覆われた羊という生き物を食べているのだとか。私も文献でしか目にしていないので事実かどうかは分かりかねますが」
「ふむ……肉と合うのか」
「脂っこい食べ物とは合うでしょうね」
「なるほどのぉ」
作っておいてなんだが、パン食の需要拡大するの相当時間かかるな……。
うどんの食べ方を色々工夫したほうが小麦需要は伸びるかも……。
そう思う俺であった。
信長様が美濃の斎藤家の姫と結婚し、斎藤家と織田家の間で婚姻同盟が成立した。
今まで織田家は北の斎藤家、東の今川家という2つの勢力に挟まれていたのだが、これで北を気にすることなく東に注力することが出来る様になってしまった……。
おいおい、その道中にあるのは三河だそ。
大国同士の道路になってるじゃねぇか……。
それで戦場になるのも三河だろ。
はぁ……やってらんねぇわ。
三河の事を考えるとこの出来事を素直に喜ぶことができないが、お祝いはしておく。
信長様、実は豆味噌が好きなのでナス田楽と肉味噌という料理を振る舞ったところ、凄い喜ばれた。
ナス田楽は味噌田楽のこんにゃく部分を輪切りにしたナスを焼いて味噌を塗った物。
肉味噌は熱田で仕入れた野鳥をミンチにして、ナス、瓜、里芋を細切れにして炒めた物で、これがご飯に合うのである。
「うむ! この肉味噌は特に美味いな! 毎食これを食べたいくらいだ!」
「それほど気に入ってくださったのなら作り甲斐があります。加藤家の者に作り方は教えてあるので、毎食食べるようでしたら加藤家の者を通じて城の料理番に伝えるように取り計らいを」
「面倒な……竹千代が料理番に教えればよかろうに」
「お忘れかもしれませんが私は人質なのですよ……それに今回の婚姻、私からしたら身の危険を感じているので」
聡明な信長様も俺の立場がどうなっているかよくわかっている。
それを踏まえて発言していると思うが、信長様の親父さんが俺を用済みと考えればコロッと殺される立場でしかない。
まぁ交渉に使えるし、三河を仮に今川から奪取したら俺の父親は切腹させられて、俺が傀儡として祀り上げられる……なんて事を考えているかもしれない。
「余はそんな事はせぬからな!」
「わかってますよ。信長様は舎弟は大切にしますからね」
「うむ!」
信長様、史実でも味方判定と身内判定っていう2種類の判定持っていて、味方なら1回、身内なら2回まで裏切りを許すという激甘感情持っているし……。
「将来余が織田家の当主となり、尾張を支配したら、竹千代、お前が東を守れ」
「東……ですか」
「余は尾張だけで終わるつもりは無い。美濃、近江、そして京。天下を手中に収める。それには仲間がいる」
「私は三河から東を守ればいいんですか……いやぁ大変だ」
「余が天下を取ったのなら東海三国は竹千代の物だ」
「……ふふ、信長様、東海三国だけじゃ釣り合いませんよ私は」
「ほう」
「信長様が天下を取ったのなら関東八州をいただきたい。それくらいいいですよね」
「くく、言うではないか」
信長様は俺の手を握り
「互いに生きてその日が来ると良いな」
「良いなではありません。やるんですよ」
俺は信長様の手を握り返すのだった。
高評価、コメント、お気に入りよろしくお願いします!