とりあえず三河に居る松平旧臣達に吉良家や同調する国人衆を討伐する大将に俺が選ばれた事を報告し、兵を集めておくように指示を出した。
それに駿府の商人達相手に岡崎城主として三河の国人一揆鎮圧後は三河統治を任されるから、今俺に投資すれば、三河での商売の利権を譲ると空手形を切って軍資金を調達。
その軍資金と蕎麦の利益でコツコツと貯めていた金で武具を揃え、土手づくりに参加して、まだ職に就けずに困っていた流民連中に
「戦で活躍したら三河に領地を与える」
そう約束をし、流民約2000名を集めることに成功した。
全員に武具を持たせることはできなかったが、全員に刀だけは持たせ、いざ三河に進軍。
勿論目付役の朝比奈泰朝含め、今川家臣達も参加し、俺が大将という感じである。
転生者である俺に戦で人殺しができるのか少々疑問であるが、鞍馬曰く
「できなければ死ぬまで」
と、バッサリ言われた。
そんなこんなで兵を進め、三河の岡崎城に入る。
岡崎城では松平旧臣達も詰めかけており、俺の姿を見て
「立派になられた……」
とか
「松平の血筋は途絶えてはおらぬ!」
だとか口々に歓迎の言葉と松平の当主万歳の声が上がる。
岡崎城に詰めていた朝比奈泰朝の親父さんにも挨拶をし、戦をどのように進めるかの確認を行う。
ここは士気を上げるためにも吉良と一戦交えた方が松平旧臣達のガス抜きになると俺は提言し、それが採用され、三河の兵1000も合流して約3000となる。
相手の吉良は約2500……ほぼ同数勝負。
城に籠もるか、出てくるか……俺的には出てきて野戦にしたいので、鞍馬に1500の兵を預けて別働隊として動いてもらうことにした。
今川方の監視役達から危険だと忠告を受けたが、ここで一揆を殲滅して、勝たないと、能力不足を理由に岡崎城代の任を解任される可能性すらある。
少々博打であるが、勝機は十分にある。
吉良側は俺の本軍の数が少ないと見るや、城から出てきて野戦に応じる構え。
おそらく兵数の他に、大将が俺なので初陣の若造ならばどうとでもなると思われたのだろう。
矢作川上流に陣を敷き、両者睨み合いが始まった。
まずは弓合戦。
弓を使って遠距離から敵を攻撃するのが合戦の習いである。
まぁ約200メートルほど相手と離れているため、盾を構えればそうそう被害が出ることもない。
それは相手も同じ。
互いに距離を詰め、今度は石が降ってくる。
こちらも石を投げつけるが、こんな事をやっていてもらちが明かないので、義経と木葉にそれぞれ兵を100ずつ付けて、側面奇襲をしてもらうことに。
そしていよいよ敵が近づき、本戦が始まる。
「かかれぇ! かかれぇ!」
俺は今川方の制止を聞かずに飛び出して、最前線に飛び込み、兵を鼓舞していく。
「覚悟! うぐ!」
足軽程度であれば鞍馬から免許皆伝と言われた京八流剣術で敵兵を斬り殺していく。
俺の活躍に兵達も士気が上がり、勢いよく突撃をすると、吉良側は兵数有利なのに徐々に押されていく。
そこに義経、木葉の小隊が敵側面から攻撃を開始すると熱したナイフでバターを切る様に、敵がみるみる溶けていく。
義経と木葉は敵陣を貫通して、反対側から飛び出し、腰には無数の敵将の首をぶら下げていた。
更に背後から鞍馬の別働隊が突撃し、吉良軍は大混乱に陥り、混乱の最中、敵大将の吉良義安は討死。
大将を失った吉良軍は崩壊し、蜘蛛の子を散らす様に兵達が逃げていき、吉良側の将約100名が討死を確認し、すぐさま吉良一族の居城である東条城に攻め込む。
吉良側が大敗したという情報が流れる前に攻め寄せたことで、あっという間に落城し、吉良一族を捕縛。
そのまま矢作川を渡って西条城も小突いただけで降伏。
最後に残った海沿いにある一色砦(ほぼ城)も陥落させて、僅か1日で一揆首謀者の吉良一族を滅亡に追い込んだ。
今川方の将達は大勝に浮かれる中、鞍馬と相談し、まだ動ける兵を連れて奥三河の一揆勢の鎮圧に取り掛かる。
今川方の人達に吉良一族を岡崎城に輸送することを頼み、動ける兵達1500を連れて夜間行軍を開始。
地の利を知り尽くした鞍馬の誘導により奥平氏が居る南設楽郡に到着。
ここは土地の9割が森林という木々の生い茂る場所であるが石川数正と平岩親吉の文官コンビに500の兵を与えて木々を切り倒して狼煙を幾つも上げろと命令。
その間に奥平氏の拠点である山城の裏手に本隊が回り込み、鞍馬が天狗の神通力で城の弱点を看破すると、そこから突撃できるように構えた。
狼煙が無数に上がり、城内が慌ただしくなった隙を突いて、俺率いる1000名の兵が城内に突撃、ほぼ抵抗されることなく、奥平氏の一族を確保し、岡﨑城に護送の兵を残して、額田郡の菅沼氏、牛久保城と吉田城という2つの城を持つ国人の牧野氏を翌日に一揆として城から出てきて今川支配地域を襲おうとしているところを強襲し、殲滅。
当主は討死、子息は捕縛し、これで三河の国人一揆は鎮圧となったのであった。
「よく吉良の反乱を討伐してくれた!」
「ははぁ……」
吉良だけでなく、反乱していた国人衆を軒並み轢き潰し、一族を捕らえて駿府に送り届けると、上機嫌の今川義元様が俺を労ってくれた。
こちらとしても手頃な相手で合戦の経験を積めたので感謝である。
将来三河の反乱分子を今処分できたというのも大きいが……。
三河では俺の活躍により松平万歳状態になっており、流石に駿府に滞在しながら政務を行うのは難しい状態に陥っていた。
「では松平元信、お前に三河統治を任せるが、お主の技量を三河だけで使い潰すつもりもない。半年は駿府に滞在し、政務を手伝え……良いな」
「ははぁ……」
今川義元様が俺に首輪を付けるのも忘れない。
これで半年は岡﨑、半年は駿府で年半々行き来しながら政務を行うことになる。
参勤交代擬きというわけか……裏切るつもりも無いし、岡﨑に留めておいてくれよ……。
まぁ松平が勢力を盛り返す事を今川は何より恐れているし、俺も家臣の掌握に時間がかかるから、ここは我慢我慢。
とりあえず岡﨑にて冬の間は政務が行えるし、三河武士達を集めることから始めるかな。