今川から派遣された家臣達も言ってしまえば監視役。
しかも今川で英才教育されたエリート達だ。
それがいきなり土木普請をやらされて肩透かしを喰らったことだろう。
ただこれからの仕事は別だ。
今回の土木普請で俺は今川から派遣されてきた彼らがどれくらい使えるか確認することができた。
材料集めで商人達に顔が利く者、人を指揮するのが上手い者、数字の扱いが上手い者、普請に駆り出された人物達と仲良くなるのが早い者……色々いたが、年貢の徴税に向けて割り振りを決めていく。
年貢の徴税を現地で確認する者、年貢を輸送する者、護衛する者、年貢の帳簿を付ける者……やるべきことは山程ある。
俺の直轄地には村々に代官を派遣しているが、俺が能力の確認をする前に家臣達の間で何処に誰を派遣するか決めていたので、今回は乗っかった形になっていた。
正直代官達の能力はこれっぽっちも信用していない。
三河武士の悪いところが出て村人達を攻撃したり、俺が派遣する監督役に楯突かないか不安がある。
まぁ能力が有ればそれでよし、無ければ今川から派遣してもらった人材を代官として当てはめる。
それだけ松平は内政系の人材が不足している。
悲しいかな、これで独立なんてしたら領地運営が何処かガタが出て、一揆が発生しかねない。
ただでさえ一向宗という爆弾を抱えているんだ。
国人一揆は国人勢力を削るために武力で処理したが、一向宗のほとんどは農民。
一揆が発生すれば生産力が低下してしまうからな。
史実みたく起爆すれば弱っている今川へもダメージが入りかねないから徐々に解体していくしかない。
最終的に守護不入の権利を剥奪できれば最高だが……。
まぁ一向宗が流行っている理由も三河が貧しいからであるので、衣食住が満ち足りていれば命懸けの一揆に民衆は参加しないだろう。
その為には俺が良い領主であることが絶対条件であるが……。
「税率を下げる……五公五民に引き下げだ」
「し、しかしそれでは松平に入る収入が減るのでは……」
重臣であり、石川数正の父親である石川康正が収入減を危惧するが
「休民の期間も必要だろう。ただでさえ去年は国人一揆と戦が頻発していたんだ。我々武士も連戦は辛いように、農民達も辛い思いをしている」
ともっともらしい理由を付けて年貢の割合を七公三民から一気に二割も引き下げた。
今年は赤字になるだろうが、多月が広めている農法が広まれば来年から一気に収穫量が増加する。
増収分こちらの年貢の総量も増えるため、収入の量も増加するだろう。
あとは今年中に増える各種作物類の消費を増加させる事をしなければ……。
秋になり、全体で見ると収穫量は微増。
俺のガチャチケット枚数が決まる農民の生産力という数値が前年は12万石だったのが、今年は14万石に増えていた。
つまり2万石分は生産量が増加したということ。
これで領民達は多月の新しい農法の有用性に気づいただろうから、来年一気に生産力は上がるだろう。
増えていたのは農民の生産力だけでなく、商人の取引量も増えており、昨年の商業規模は1万石だったのが、街道を整備したり、関所を廃止したことで一気に2万石増加して3万石となった。
職人の生産規模は相変わらず1万石のまま。
こちらもテコ入れしていくしかないわな。
貿易は今年も赤字、2万石引かれたので合計の石高は16万石。
これに所領が三河全土プラス知多半島の一部も加算されるので合計石高は20万石。
ようやく国持ち大名らしくなってきた。(まだ今川に従属大名であるが)
年貢の徴税に関してはやはりというか各地で代官と監視役のトラブルが多発し、三河者としてのプライドが邪魔をして理性的な話し合いができない状況に陥る者が多数。
俺はそういう代官は容赦なく処罰をし、勿論監視役の方が悪かった場合は今川氏真の元に強制送還して別の人材を送ってもらった。
お陰で三河では俺の意見を通しやすくなり、松平による統治体制が固めることができた。
今川から送られてきた者達も、俺が公平に処罰するのを見て、能力が有れば重用してくれると判断し、やる気に満ち溢れていた。
送られてきた人材のほとんどがエリートではあるが、次男、三男といった本家のスペア的人材で、功績が無ければ出世できないが、そのきっかけすらも与えられてない状態だったが、三河開発で招集したことで、俺の下で働いたというキャリアが構築することができるし、氏真様は俺の下で働いた経験を今川にフィードバックすることを望んでいるので、将来の出世に繋がるのである。
そりゃ皆やる気になりますわ。
とりあえず年貢の徴税も無事に終わり、兵糧は残すが、それ以外の食料は商人達に売ってしまった。
米は普通に売れるが、じゃがいもや薩摩芋、とうもろこしなんかは価値が定まっていないため売ることができない。
なので俺は今年の借金の利息を商人達に返済すると、更に借金をして酒の増産を指令。
少名古根こと少名が待ってましたとばかりに酒造りの技術を教えた者達が俺が借金して建てた酒蔵を借りて酒屋を開き、酒を作り始める。
寺の方から酒の利権侵害では無いのかと抗議が来たが、作っている酒の種類や原料が違うから酒座の利権には抵触しない、なんなら焼酎座という蒸留酒を扱う座を俺の権限で新しく酒屋を開いた面々に座の仲間を示す証拠である株を買い取らせ、別の座(商業組合)を作らせてしまった。
既存のどぶろくばかり作っている寺達は米の多く採れる尾張には安さで負けるし、駿河には質で負ける。
商人の行き来が増えて両国の酒は三河でも飲めるとなれば、質の悪く、それでいて高い三河のどぶろくは売れなくなるだろう。
寺の資金力を削るにちょうどよいし、俺が岡﨑城に入り、媚を売ってきた寺には事前に情報を流していたので、焼酎座にも加入している。
株を持っていれば商売ができるので、まだ作れる人員が居ないなら他所から仕入れて売れば良いし、株仲間ということで弟子を送り込むこともできる。
寺の間でも格差が出れば俺を恨むより出し抜いた同業者の方を妬むのが人間ってものだ。
寺を分割統治できれば幸いである。
それにここで追い打ちを掛ける。
尾張ですっかり有名になったうどんと駿河の蕎麦……両国から人員を呼んでうどん屋と蕎麦屋を暖簾分けさせて小麦と蕎麦の需要増加も狙う。
更に更に、沢山増えた管狐達に指示を出して、格安で多月の村で採れる新しい野菜類を使った料理屋を開かせ、作り方を公開するというのでかぼちゃや人参を食べる文化を根付かせていく。
「さて、これで少しでも食の多様化が進めば良いが……あとは肉を食べたいなぁ……信長様と狩りした鹿肉美味かったなぁ」
俺は鶏を飼育して食べることができないか家臣に相談するのだったが、神聖な鶏を食べるなんてと止められてしまうのだった。