今年も田植えが始まり、領内視察をした感じ、すっかり多月式農法が定着したようで、正条植えかつ、肥料もちゃんと使われていた。
収穫量が増えたことで、畑で緑肥を育てる余裕が出てきたのも大きいだろう。
流民の受け入れも順調に進んでおり、冬の間に逃げてきた流民達を保護し、最低限の食事と服、農具を提供して、耕作放棄地に流民達を定住させていった。
そこで指示に従った農業をするのであれば年貢を4公6民にすると約束した。
すると、流民達も生きるために田や畑を作り直し、多月から学んだ農民に流民達に指導をさせながら、作物を植え、定住するに至ったのである。
更に管理を行き届かせるために、土地の所有者を明確にし、1つの耕作地につき代表者を1人出すという管理者を明白にしていった。
これはまだ流民達の村でしか行っていないが、土地の管理者を明白にすることで、税を村単位で集めたり、寺社が農地から二重に税を取り立てようとすることもあるので、直轄化することで多重徴税を無くそうとしたのである。
ちなみに参考にしたのは太閤検地。
良い制度は真似て取り入れ、失政はなるべく犯さない。
少しずつ俺の政治基盤を整えていかないとね!
知多半島の常滑で焼き物を作っていた埴安から連絡があり、遂に磁器を焼くことに成功したと伝令から言われ、俺が直接見に行くと、蔵の中に冷やす為に並べられた磁器が沢山並べられていた。
「おお、見事な皿だな」
「でしょー、大変だったんだからね!」
埴安曰く、磁器には粘土、石英、長石の3種類の原料が必要で、長石は色々な石から採取できるし、石英(水晶)は珪砂(石英をより細かくした砂の一種、海岸で採れる)を使い混ぜて焼いたらしい。
作り方はわかってはいたが、細かい比率の調整が難しく、完成に1年近くかかってしまったとのこと。
まぁ窯を日ノ本にはまだ伝来していない連房式登窯(燃焼効率と複数の磁器を同時に焼き上げることができる窯)の再現を行なったりもして遅れてしまったらしいが……。
「でもこの連房式登窯のお陰でちょー沢山焼けるようになったの! 1回の燃焼で約300個皿や壺が焼けるんだよ」
「なるほど……ちょっと下賤な話になるが、製造費用ってどれくらいかかるんだ?」
「うーん、まず窯の製造費用がおおよそ50貫から60貫(現代価格600万から720万)、材料費が100枚の皿を作るのにおおよそ500文から1貫(6万から12万)、燃料費が1回焼き上げるのに2貫から3貫(24万から36万)、これに絵を付けたりするとそれ分費用がかさむね」
「なるほど……となると売値としては今物の陶器の茶碗が1個50文から200文だから磁器としての物珍しさも加味して、一番安いので500文、絵付きの高いのだと10貫でも売れるかな」
「高級品は今度ボーンチャイナにも挑戦してみるよ! 乳白色の方が絵乗りも色鮮やかになるだろうからね!」
「売り方どうするかな……競売にかけた方がいいか? それとも領主が纏め買いして専売にした方がいいのか……」
「職人の質を上げたいなら競売じゃない? 産業の保護が目的なら専売にした方がいいけど……ここ以外だと作れる人居ないから、技術が伝播するまでは事実上の専売になるだろうし」
「ちなみに磁器作れる職人って何人いるんだ?」
「私が手伝わなかったら作れる人は皆無だよ。だから作れる個数も1カ月で300個以下……焼いてる途中に割れたりするのもあるからね。おおよそ8割は焼けるから240個は売り物になると思っていいよ」
「その数だと俺が場所を提供するから競売形式でも良いな。岡崎城下だと競売力が足りないから……尾張の熱田や津島、駿河の駿府で売ったほうが金になるな……とりあえず今回は駿府で売ってみよう。あと出来の良い物は今川義元様に献上するから包んでおいてくれ」
「ういー、わかったよ!」
「ほほぉ、これが三河で作った今焼きのぉ……」
「はい、唐物に比べると価値は落ちるかもしれませんが、いかがでしょう」
俺は今川義元様に早速出来上がった中で一番質の良い物を献上すると、義元様は上機嫌になる。
「うむうむ、実に良い作りじゃな。言われなければこれが今焼きとは思われんだろう」
「これが一番の出来ですので、義元様にお譲りいたしますので、市にて焼き物を売る許可をいただきたい」
「ふむ……よかろう。値段はいくらといたすのだ?」
「今焼きというを考慮しまして安くても1貫から……高い物ですと5貫とかになりますね」
「ふむ……なるほど……質の良い物を言い値で幾つか買おう」
「よろしいので?」
「ああ、無論だ。元信のことであるからこの金を更に職人達の育成に使うのであろう? それならば高値で売れたほうが良いだろう」
「ありがとうございます!」
こうして埴安が作った皿や壺で絵が描かれた質の良い物は義元様に買われ、比較的安い物を市場で売ったが、これも今川家臣達や貴族の皆さん、商人の方々が義元様が絶賛したという噂を聞いて集まり、飛ぶように売れるのであった。
今回だけで550貫の売上になり、そこから1割の55貫を税として徴税したが、それでもなお400貫残り、職人達も大儲け。
埴安は職人育成に売上は使っていくと言ってくれたので、今後多少安くなるだろうが、磁器が出回っていく事になるだろう。
そうなれば南蛮貿易の商品にもなり得るからね。
俺は更に特産物を増やすために、今度はガチャで当たった蚕と桑を育てる女神と一緒に召喚した。
「コンコン! 幸せ運ぶ狐の女神! ウカノミタマの玉ですよ!」
狐耳に尻尾が生えた女神様が現れた。
俺が日本では生糸栽培が遅れているので、養蚕と桑栽培に通じる農業神であるウカノミタマに養蚕産業を興してほしいと願った。
「なるほどなるほど! いいですよ! その代わりにお稲荷さんを所望します!」
このウカノミタマ神は実は稲荷神社の神様で、日本一社が多い神であり、権能が多岐に渡る。
商人達からは商売繁盛、漁師からは大漁祈願、武士からは無事息災や子孫繁栄を願われた為に、全知全能の神の次くらいにできることが多い器用万能である。
「そう言えば私の使徒である管狐を大切にしてくださってありがとうございます」
「いや、俺はこき使っている感じなんだが」
「いやいや、管狐達は仕事が無いと堕落してしまい、悪戯をするようになるので、色々な仕事を割り振るくらいでちょうど良いのですよ」
「そしたら一部の管狐を招集して養蚕を覚えさせて、各地に広める役目を管狐達に頼もうかな」
「それは良いですね! 是非やりましょう!」
この後に多月の住む村に定住してもらい、同じ農業神として農作業をしながら養蚕を始めた玉は数年後に三河での生糸生産が始まるようになるのだった。
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