ガチャ狂い徳川家康   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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信長様襲来

 俺が信濃統治に対して人材配置が終わり、一息付いた頃、信長様から鬼電の様に手紙が浜松に届いており、その内容を一言で表すと会いたいというメンヘラ彼女かよという内容であった。

 

 俺も今後の対応を信長様と対応したかったので丁度よいと思い、会談の場を取り決め、場所はちょうど中間にあるし、岡崎城でということにしたかったが、信長様は浜松に行くから待っておれと浜松に来るらしい。

 

 手紙のやりとりから3週間後、浜松に本当に信長様が来て、茶室で会談を行うことになった。

 

「結構なお点前で」

 

「ありがとうございます」

 

 俺が茶を点てて、信長様が茶を飲み、とりあえず定型文を言い合う。

 

「さて、まずは武田との戦の完勝おめでとう元康」

 

「ありがとうございます信長様」

 

「おいおい、お主はもう4カ国の太守なんだぞ、余を様付けしていたら体裁が不味いのではないか?」

 

「信長様が体裁を口にしますか……うつけと呼ばれていた信長様らしくありませんね? 何か悪い物でも食べましたか?」

 

「おお、言うではないか!」

 

「家臣達の前では言えませんが、私の中では信長様は信長様なのですよ。例え互いの立場が変わったとしても……それに信長様は美濃を飲み込んだら3カ国の太守(尾張、美濃、飛騨)ではありませんか。あんまり変わりませんよ」

 

「ふふ、元康は元康のままであるな! 義弟として頼もしくも、友として誇らしくもあるぞ」

 

 茶のおかわりを点てながら信長様と話を続ける。

 

「三河港が開港して尾張の貿易量は増えたと思うのですが、どうでしょうか?」

 

「うむ! 三河や今川領から大型船が行き来していて、港は活気づいておるわ! 港からの上納金も増えて、織田家としても潤っておる。それに美濃からも水晶のなりそこないの様な鉱物を大量に買い込んでいるが何に使っておるんだ?」

 

「あぁ、それは磁器を作るための材料ですね。信濃でも産出するのですが、美濃や飛騨産のは質が良くて重宝しているのですよ」

 

「ふむなるほどのぉ……元康は色々な発明をして領内を富ませるから凄いな」

 

「いえ、私の力だけではなく、家臣達の力があってのことです。人の交流が盛んになり、そのうち技術が流出すると思いますが……」

 

「なんだ、盗んで良いのか?」

 

「信長様にだったらある程度は教えますよ。正直、磁器とかは信長様も家臣達や職人を煽って作らせているのでは?」

 

「やはりバレていたか……陶器はできるが磁器は難しくてのぉ……美濃にも良質な粘土を産出する地域があって、真似ているがなかなか成果は出んのだ」

 

「ふむ、こちらから職人を送りましょうか?」

 

「良いのか? 元康の金蔓ではないのか?」

 

「競争無くして良質な物は産まれませんから。それに今の状態だと知多で何か起これば、せっかくの磁器の製造技術が失伝してしまう方が怖い。そうそう、南蛮人はこの様な茶器を好むらしいですよ」

 

 俺は白いティーカップを見せる。

 

「取っ手が付いておるな」

 

「熱い茶を入れた時に持ち主が火傷をしないように配慮した物で、南蛮人は黒い豆を挽いて煎った物を飲むらしいですよ」

 

「ほぉ……豆の煎り汁ということか?」

 

「はい」

 

 信長様にせっかくだからとティーカップをあげると上機嫌の信長様はティーカップを頬ずりして喜んだ。

 

 信長様がイケメンだからその姿も絵になるが、文字で起こすと20代半の男性がティーカップにデレデレしながら頬ずりする……うーん狂気を感じる。

 

 信長様はティーカップを箱に仕舞うと、話を続ける。

 

「美濃はあと少しで詰みに持っていけるが、今年中の決着は無理そうだ。ただ銭や全体の国力で勝っている余の織田が斎藤を飲み込む日も近い。美濃が終われば近江に進出するべきと思うか?」

 

「うーん、私としては伊勢を取りたいところですね」

 

「伊勢か……それは何故だ?」

 

「信長様、海洋国家と陸上国家という言葉は聞いたことがありますか?」

 

「いや、聞いたことがないな」

 

 俺は信長様にシーパワーとランドパワーについての説明をする。

 

「要は土地の重要度の違いになります。シーパワーは外周部……海に面した海運を使うことで点での支配を意味し、ランドパワーは面……多くの土地の支配を意味します。日ノ本は全体的に見ると多くを海に面したシーパワーの国になりますが、それを有効活用できていません」

 

 俺の説明としてはシーパワー、ランドパワーを説明したが、要は幕府がある以上領土の拡張による面での制圧は周辺勢力を刺激して敵に囲まれる危険があるので、海側から制圧していくのはどうですかという提案であった。

 

 伊勢には海賊や水軍が跋扈しており、度々通行税を要求されて海運の妨げになっていた。

 

 そこで織田家が伊勢を制圧することで伊勢や隣接する志摩の海賊を討伐し、海運力を強化、日ノ本の商業の集積地である堺との海路を強化して貿易により国力を増していく戦略はどうかという案だ。

 

「それに近江の六角は浅井に負けたとは言え、幕政に関与するほど強い力を持ち続けております。一旦足場を固める意味でも、小勢力が乱立して結束力に乏しい北伊勢を攻めて基盤を整えてから南伊勢の北畠を攻撃するがよろしいかと……ただ足利義輝公が仲裁に出てくると思いますので、そこで有利な条件を引っ張ってくるまでの戦いになるでしょうが」

 

「それでは伊勢や志摩の海賊は討伐できないでないか」

 

「いえ、その条件に海賊討伐を北畠に約束させて敵対してもらい、海賊の残党を織田家が条件を付けて織田水軍に組み込んでいけばいいのですよ。そうなれば海賊達は織田方に感情が傾いていくと思うので」

 

「なかなかえげつない事を考えるな元康」

 

「謀略の類を嗜まないと大名はやっていけませんから」

 

「ふふ、余の義弟は頼もしい限りだな」

 

 伊達に今川、織田、武田、北条と囲まれた弱小松平で生き抜く為にどうするか考えてない。

 

 今は運良く今川を吸収して乗っ取った感じになって、武田を倒して周辺国から見ると頭1つ抜けた存在となったが、上杉も北条も信用できない。

 

 織田は信長様の性格上俺と信長様の代で縁切りすることはないだろう。

 

「元康は今後どうするんだ? 上杉でも攻めるのか?」

 

「今のところ上杉だけが敵対する可能性を残しているんですけど、武田と違い、共存は可能だと思っているんですよね。上杉も米は取れにくい土地だけど商業作物の栽培が盛んで、貿易に関しても積極的なので」

 

 上杉は青苧という着物の原料の独占販売権を得ており、それを元手に貿易で財源を形成していた。

 

 関東遠征の費用もここから抽出している。

 

 俺としては越後平野の干拓に成功すれば、200万石は米の収穫量が増えるので、内政に注力してもらい、共存の道を探れないかとも思っているが……。

 

「北条はどうなのだ」

 

「武田が攻めてきた時に無理に帰国したのでしこりが残ってしまった感じですね……ただ上杉が撤退する原因を作ったのも今川なので複雑な感情を持っているのでしょう。緩い同盟関係は続いていますが、私が上杉と接近すれば仲が拗れる可能性が高いです」

 

「元康から見てどちらが相手しづらいのだ?」

 

「総合的に見て上杉でしょうか。敵対したところで旨味が全くない」

 

「ふむ……上杉とは連絡をとっていたのだが、元康もなるべく早く連絡をしておいた方が良いと思うぞ」

 

「忠告ありがとうございます」

 

 信長様はその後、市が産んだ甥っ子と遊んでから帰るのだった。

 

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