ガチャ狂い徳川家康   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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湯豆腐を囲んで

 〜元康サイド〜

 

「ぬふふ、昆布〜昆布〜」

 

 俺は安丸が蝦夷との交易で運んできた昆布を使って料理を作っていた。

 

 俺の近くには鳥居元忠と平岩親吉の2人も居る。

 

「湯豆腐ですか……美味そうですね」

 

「元康様、薬味の準備はできましたよ」

 

「おう、一緒に食べようか」

 

 年貢の確認や冬に備えて信濃などの地域への食料支援で秋から冬の初めはドタバタしていたが、大晦日が近づくにつれてようやく政務が落ち着いてきていた。

 

 なのでふらっと城下町を散策していると、新しく豆腐屋ができていて、豆腐を買ってきたのである。

 

 豆腐屋の店主は俺が領主であることを知っていたらしく、酷く驚き、金は要らないと言われたが、ちゃんとお金を支払って購入し、本丸の台所にほど近い場所に俺や家臣達、奥方が気軽に休憩する場所として囲炉裏のある部屋を使い、そこで鍋を吊るして湯豆腐を作っていた。

 

 昆布の出汁が染みた鍋に一口大に切り分けた豆腐を入れて煮込み、薬味を並べて豆腐が温まるのを待つ。

 

「今年は激動な1年であったな」

 

「まさかあの強大な武田を一気に追い詰めるところまで持っていけるとは思いませんでしたよ」

 

 鳥居元忠が湯呑みに茶を入れながら俺達に回していく。

 

 最近遠江東部と駿河で茶の栽培が広まり、特産品として売られ始めていた。

 

 今回飲んでいる茶葉は、冬に採れた茶葉を使う寒茶と呼ばれるお茶で、渋みが少なく、ほのかに甘い性質をしている。

 

 冬なので葉が硬くなっていたり、そもそも冬は葉があまり生えない為貴重なお茶である。

 

 領主と言う立場なので飲むことができるが、普段の食事で飲むのはぬるま湯の麦茶とかが多い気がする。

 

 春になれば新茶が出回るので、季節に合わせたお茶を俺は嗜む。

 

「元康様、上杉謙信公と文通しておりますが、どうですか? やはり戦になりそうですか?」

 

「(平岩)親吉は心配性だな、今のところ手紙の感じ戦には発展しなさそうだ。交易を通じて共存できる道筋を探っている」

 

「それなら良いのですが……」

 

「となると……今、今川家は敵が居ない状況になった……ということになりますか?」

 

「(鳥居)元忠の言う通り、今川家に現状挑む様な敵対勢力は居なくなったね。強いて言うなら弱体化した武田だけど、絞り取るだけ絞って、武田が軍拡に舵を切れないように経済的に弱体化させるつもりだよ」

 

「経済で弱らせるという発想を持つのは元康様だけだと思いますよ」

 

「元忠……そうかな? 信長様も思い付いて、斎藤家にやっているように思えるけど」

 

「元康様、信長公は対等な同盟国の大名なので、様付けはいかがなものかと……」

 

「あ、悪い悪い、やっぱり癖でな。お前たちの前だと気が抜けてつい言ってしまった」

 

「全く……おや、湯豆腐出来上がったみたいですよ」

 

「お、本当だ。親吉、器を取ってくれ」

 

「私がよそいますから元康様は座っていてください」

 

「悪いな」

 

 平岩親吉が湯豆腐を器によそってくれて、薬味を乗せていく。

 

 大根おろしにネギ、すりおろした生姜、醤油を少々。

 

 2人にも行き渡ったのを確認していただく。

 

「うん、豆腐が美味いな。あの店主若いのになかなかの腕前だ」

 

「南城下の三丁目の豆腐屋ですか? 新しくできた」

 

「ん? 親吉も知っていたのか?」

 

「ええ、元々岡崎城で料理番見習いをしていた男ですよ。確か兄弟が蒸留酒の座の株を手に入れていて、暖簾分けして居酒屋を浜松に出店していたので、居酒屋の豆腐料理に使う豆腐の需要が伸びていると耳にしたのでしょう」

 

「なるほど、豆腐屋開いて城下の居酒屋や食事処、町民達に豆腐を卸すか……対抗の店もまだ出来てないし、今のところ独占だな」

 

「豆腐作りの腕がこんなに高いとは思いませんでしたが……」

 

 箸で豆腐を半分に切って、口の中に入れると、ほろほろと崩れ、大根おろしと生姜、ネギの辛味が醤油と昆布だしで中和されて豆腐の味を引き立てる。

 

 うん、美味い。

 

「豆腐料理というと味噌汁に入れたり、豆腐田楽が有名ですけど、他に何か美味しい料理ってあるのですか?」

 

「あ、私も聞きたいです元康様」

 

「ふむ、そうだな」

 

 豆腐を使った美味しい料理でパット思いつくのは豆腐ステーキ、豆腐ハンバーグ、麻婆豆腐……。

 

 豆腐ステーキはほぼ田楽の作り方と一緒か。

 

 串に刺して焼くか、鉄鍋で焼くかの違いかもしれんな。

 

 となると豆腐ハンバーグが良いかもしれないな。

 

「鶏肉……いや、2人は俺が奥三河で牧場を作って動物を育てているのは知っているよな?」

 

「はい、奇妙な動物を他国から取り寄せて育てていると」

 

「二の丸に居る錦鯉もその時に手に入れたのでしたよね?」

 

 ガチャ産だが、他国からの交易で手に入った事になっていたか……。

 

「そう、その動物の中に猪を家畜化した豚という動物が居てな、その肉を細かく刻み、挽肉とし、豆腐と半々の量で混ぜる。この混ぜる時に玉ねぎと大葉も入れると味が良くなるな」

 

「それを円形に形を作り、鉄鍋で焼いていき、両面中まで火を通し、大根おろしと醤油をかけて食べると絶品な豆腐と挽肉の固め焼き(豆腐ハンバーグ)が出来上がるぞ」

 

「鶏肉では代用できないのですか?」

 

「勿論できるが、旨さを求めるなら豚肉が良いってだけだ」

 

「美味しそうですな。家内と一緒に作ってみようと思います」

 

「私はせっかくですし、自分で明日にも作ってみましょうかね」

 

「親吉もそろそろ結婚すれば良いのに……好きな女性の1人くらい居ないのか?」

 

「いや、許嫁が前にいたのですが、私の家格が上がった事で釣り合わなくなったのと、元から相性が悪かったので解消となり、今父が探しているところですね」

 

「なんだ、親に頼るではなく自分で好きな娘を見つければ良いではないか。金はあるんだから妾の1人でも抱えてさ」

 

「元康様が言いますか? いつの間にか嫁が増えていく元康様が!」

 

「俺もびっくりだよ……いつの間にか嫁が増えていく……これが婚姻外交ってやつか……てな」

 

「はぁ……まぁ良い娘が居れば囲いますよ。最悪元康様に泣きつきますから」

 

「それは勘弁してほしいがな……」

 

 あっという間に湯豆腐は無くなり、締めにうどんを投入して、即席の醤油タレに付けて食べ、久しぶりに鳥居元忠と平岩親吉の2人と腹を割って話せた様な気がするのだった。

 

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