ガチャ狂い徳川家康   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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産業革命のすすめ! 水力式紡績機

 産業革命と言うと蒸気機関による機械類によって一気に産業が活性化したと言う風に歴史の授業で習うと思うが、産業革命が始まったとされる1760年頃から一気に蒸気機関が広まったのではなく、1世紀かけて蒸気機関が広まっていったのである。

 

 ではイギリスが何故ヨーロッパの工場と言う地位に就くことか出来たか……それは水力を使った工場を効率的に運用していた事によるものである。

 

 産業革命により繊維産業が急拡大し、布を海外に売りつけることで富を稼いだ……とされているが、布製品を大量に作るのに蒸気機関は要らない。

 

 必要とするのは水路と水車である。

 

 馬込川から水を引いた水路近くに水車が建ち並んでおり、俺や家臣達、商人達の前で天棚がとある機械の実用実験を行なっていた。

 

 天棚が水車の動力と機械を接合すると、歯車が回り始め、機械の部品が回転を始める。

 

 すると糸が巻き取られ始め、巻き取っている機械はレールに沿って進んでいき、糸を数秒かけて引き伸ばすと、一定の位置に到達すると糸を伸ばしていた歯車が切り替わって糸を巻き取り始める。

 

 それが糸があるだけ繰り返され、人は糸の補充と糸が切れてしまった際に手直しするだけで、あとはほぼ自動で糸を紡いでくれる。

 

「まず糸ができるまでの工程として木綿から種を取り除き、人の手で綿をほぐし、そしてふわふわにした綿を練条機と言う機械に掛けることで繊維にします。それを次にこちらの粗紡機に入れていくと粗糸となります」

 

 練条機ではローラーに綿を入れることで薄く伸ばされた繊維が出てきて、それを棒に巻き付ける。

 

 トイレットペーパーを数倍サイズにし、そこに繊維が巻き付いている状態と考えるとイメージが分かりやすいかもしれない。

 

 それを粗紡機に入れると糸に紡がれて、不揃いの糸が出来上がる。

 

 それを更に高品質の糸にする時に最初のとある機械……水力式紡績機が使われる。

 

 これらの工程を得ると、高品質かつ均一の繊維を大量に作ることができるのである。

 

「天棚、このカラクリの使い方はわかったが、いまいちどれぐらい凄いのか周り理解できてないぞ。(石川)数正、このカラクリがいかに凄いか分かるか?」

 

「元康様、意地悪な質問ですな。具体的な数値が無いとなんとも」

 

 石川数正に俺が質問すると、数正は両手を上げて降参のポーズをとる。

 

 天棚はそれではと具体的な数字を言い始める。

 

「まずこれらの工程を全て1人が行なった場合1町の糸(約110メートル)を作るのに半日から1日かかる作業になります。しかしこれらの機械……カラクリを使うことにより500倍から1000倍の糸を紡ぐ事ができるようになります」

 

 おお、と歓声が上がる。

 

「つまりこのカラクリを同時に動かせば」

 

「はい、石川数正殿の言うように、これらの機械を並列で動かせば、今の糸の値段を十数分の一にすることができるでしょう。そうなれば織物にする値段を加味しても今川の布は他国に比べて格安で販売することができます」

 

 商人達は目を輝かせる。

 

「商人の皆さんにはこの作られた糸を買い取ってもらいたい。買われた糸はそのまま他国に売るにしても、領内で布に加工してもらっても構わないが、他国に売る際には既存の布に比べて少し安い程度にしてもらいたい」

 

「なぜでしょうか? この原価であれば他国の布を駆逐することもできそうですが」

 

「そうなると青苧の利権を持つ上杉と利権が激突してしまう。そうなれば上杉と敵対することに繋がるからな……」

 

「失礼しました」

 

「うん」

 

 その後商人達は機械に対して融資をして生産量を増やすことはできるかや、融資金額によって卸される糸の量の割合を買うことはできないのかなどの質問が相次いたが、勿論購入の権利を売り、その権利を持つ者に優先して卸売りすると約束すると、融資の約束が相次いだ。

 

 紡績関係は官営企業にして人を多く雇うことで雇用を確保しつつ、泰平の世になった際の武士達の働き口として斡旋する予定である。

 

 そういうのも色々考えて置かなければいけないのが領主の大変なところ。

 

 あと何故商人に融資を頼んだかと言うと、信濃の再生計画や信濃の鉱山開発、永代たたら場の設置費用や、織田家と行う製鉄所の建設、今川水軍拡張のために行っている水夫の養成や弁財船の建造費、岡崎城などの各国の主要となる城の改築費用、道路の舗装費用などなど、とにかく色々金がかかる。

 

 今川家は戦国大名達の中で最も裕福な家であるが、それでもこれだけ様々な計画を並列してやっていたら金は飛ぶわな。

 

「天棚、これからも新しい機械をガンガン作って普及に一役買ってくれ」

 

「もちろんですよ! 目指せ産業革命ですよ!」

 

 こうして今川家では200年早い産業革命が起こりつつあるのだった。

 

 

 

 

 

 

 梅雨の時期も終わり、蒸し暑い日々が始まった。

 

 農民達は夏野菜の収穫作業を行い、領民達は海や川で涼むが、領主かつ政務で忙しい俺は城から出ることができなかった。

 

 なので息抜きに料理を作ることにした。

 

 今回作る料理はゴーヤチャンプル、アジのさんが焼き、そして塩漬けきゅうり。

 

 ご飯はタコと枝豆の炊き込みご飯、汁物はトウモロコシの味噌汁にしよう。

 

 ゴーヤチャンプルは沖縄を代表する庶民料理で、現代では緑のカーテンが流行った時にゴーヤを栽培することを推奨され、その時に作ったゴーヤの食べ方としてゴーヤチャンプルがテレビでよく特集されていたのが俺の前世の記憶としてこびりついている。

 

 この時代でも苦瓜として育てられており、夏に味噌汁に入れたり、漬物にしたりして食べられていた。

 

 今回のゴーヤチャンプルの材料はゴーヤに卵、豆腐、そして豚肉である。

 

 各食材をカットし、卵は溶いて、中華鍋を熱し、油をしき、豆腐に焼き色をつける。

 

 一度豆腐を取り出したら、ゴーヤ、豚肉を炒めていき、蓋をして少し蒸し焼きにする。

 

 そしたら豆腐を再度投入し、卵を入れ、味付けに醤油をかけたらゴーヤチャンプルの完成である。

 

 次にアジを使ったさんが焼きと言う料理を作っていく。

 

 太平洋に近い浜松では漁も盛んで、夏だと脂の乗ったアジが釣れる。

 

 そのアジを使った料理になめろうと言う料理が存在する。

 

 この料理は新鮮なアジを包丁で叩き、ミンチ状にして、そこに生姜やネギ、味噌を混ぜて食べると言う料理で、場所によってはアジでは無く別の魚でも作られることがある。

 

 イカの原型を残したなめろうも食感が面白くて酒が合うのでおすすめである。

 

 ただ流石に俺は領主なので食あたりになるわけにはいかない。

 

 そのなめろうを焼いた物がさんが焼きと言う料理となる。

 

 しかもただ焼くのではなく、アワビやホタテなどの大きな貝殻になめろうを敷き詰めて焼くことで、貝の風味が付いて美味しいさんが焼きが完成する。

 

 元々千葉県の郷土料理で、漁師がアジやサバがよく捕れて、なめろうにしていたが、山に仕事に行くときにも食べられたらいいのにと考えた結果、貝殻の中になめろうを詰めて焼くことで弁当代わりにしたのである。

 

 これがさんが焼き誕生の逸話で、俺も前世で千葉の海辺に遊びに行った時に海辺の居酒屋がさんが焼きを安く売っていたので買って、夕暮れの甲子園を観ながら一杯やった記憶がある。

 

 美味しくて食べやすい、魚の割には日持ちするのでおすすめの一品である。

 

 そして塩漬けきゅうり。

 

 夏といえばきゅうりであるが、きゅうりが食べられるようになったのは実は昭和からであり、それまではきゅうりは不味い野菜の代表であった。

 

 というのもきゅうりの収穫は熟れてからと思われていたので、苦味が強くなった黄色く熟れてから食されていたので、物好きしか食べない野菜であった。

 

 面白い逸話としてかの有名な水戸黄門のきゅうりの評価として、毒が多く栄養がないと酷評し、領民にきゅうりを作るのを禁じたなんて逸話が残っていたりする。

 

 それくらい作られてなかった野菜なのであるが、多月が現代種の苦味の殆どないきゅうりを広め、更に俺が熟れる前のきゅうりのぬか漬けや塩漬けなどの様々な漬物を紹介したところ、食べる人が増え、漬物業界の王であるたくあんと同じくらいの人気を博していた。

 

 あとはだし汁とタコ、枝豆を炊いた炊き込みご飯にトウモロコシの味噌汁。

 

 トウモロコシの味噌汁は身を包丁でそぎ落として入れていく。

 

 全部俺が作っていき、台所を預かっている料理人達は熱心にメモを取り、作った料理を味見させて再現できるように仕込む。

 

 そして妊娠している千代、市、直虎、そして瑠璃の4人及び彼女達に仕える侍女達にも振る舞い、彼女達から美味しいと喜んでもらって、俺はほっこりするのだった。

 

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