「信長様……腰が軽すぎませんか?」
「良いだろ元康……義弟に会うのに何故躊躇わなくてはならぬのだ」
冬のある日、信長様が俺と一緒に昔みたいに鷹狩りをやろうと誘われ、予定を合わせて三河で鷹狩りを行っていた。
どうやら良質な鷹を信長様が手に入れたらしく、俺に自慢したかったらしい。
そういうところが信長様らしい。
「元康、近衛殿より嫁を貰ったと聞いたが、朝廷に幾ら献金したのだ? 相当詰んだであろう」
「信長様だけですよ……30万貫です」
「さ、30万貫だと! 贈り過ぎであろう」
「まぁその分貰いたかった役職を貰えましたので」
「ほう? 元康が欲しい役職? 義元公が就いていた治部大輔あたりか?」
「皆言いますね……いえ、私が欲しがったのは鋳銭司長官の役職ですよ」
「鋳銭司長官……銭造りか、銭座でも造るのか?」
「ええ、銭の製造権を朝廷から貰ったので、これから新しい銭を製造していきますよ」
「そういう大切な話は余にも言ってほしかったな」
「流通段階になったら声かけようと思ってましたから許してください!」
「うむ! 許す! こうして教えてくれたからな……してどんな銭を流通させるのだ?」
「ちょっと待ってください」
俺は家臣に言って、新しく流通させる予定の銭を持ってこさせると、信長様に見せた。
「2種類あるな……1つは普通の銅銭に見えるが」
信長様に見せた銅銭の1つは青銅貨と呼ばれる物で、若干黒い色をした硬貨である。
中央に穴が空いていて、永禄通宝(永楽通宝から文字って)の文字が両面に彫られていた。
「これが今流通している通貨と素材を一緒にした通貨で、こっちが……」
俺は黄銅の太平通宝と彫られた通貨を取り出す。
「ほお、黄金色に光る通貨か……実に見事な物であるな」
「銅に混ぜ物をして黄金色にしているんですよね」「これならば確かに今流通している通貨より価値は高いな。うむ、今川が価値を担保するのであれば、商人達も喜んで使うであろう」
信長様は黄銅の硬貨をよく眺めてから、俺に返した。
俺と信長様はそのまま鷹狩りをし、野鳥を捕まえて羽を毟り、家臣達が解体している。
「解体する役目、昔は私でしたよね」
「ああ、元康が作ってくれた肉料理は美味かったな……そう言えば元康、お主乳をよく出す牛を飼育しておるのか?」
「あれ? 信長様に言いましたっけ?」
「いや、市から手紙でチーズなる牛の乳から作る食べ物を食べて美味しかったと書かれておってな。それが気になるのだ」
「ああ、なるほど……確かに乳をよく出す牛は居ますよ。うちの水軍が琉球まで行って買い付けて来たんですよ」
実際はガチャで出現させたのだが、琉球との貿易で手に入れたことにしておく。
「良いなぁ……余も食べたい!」
「チーズは保存が効きますので今度贈りますよ。肉と一緒に焼くとおいしいですよ」
「ほぉ……楽しみにしておくぞ」
相変わらず乳製品好きだな信長様……。
乳製品は置いておくとして、信長様に今後の予定を確認しておく。
「私の方は信濃と甲斐の旧武田領の再開発で忙しいので当面動けないと思います。信長様はどうしますか?」
「ふむ、余も今年は力を蓄えようと思う。伊勢北部を制した滝川一益という何でもこなせる有能な男が居るから、そいつと志摩国から逃れてきた九鬼氏を保護したから、織田家でも水軍を作ろうかと思ってな」
「それだと確かに時間と金が必要になりますね」
「うむ!」
ふむ、織田水軍が史実より前倒しで創設するとなると、石山本願寺と敵対することが起こった際も海上封鎖が史実以上にやりやすくなるだろうな。
それに織田家が水軍持つとなると貿易でも今以上に今川との貿易が盛んになるというのも強みかな?
まぁ今川としては織田家が水軍持つ方が良いだろう。
「信長様焼けたみたいですよ」
「おう」
家臣達が捕らえた野鳥の肉を細かく切って、それを串焼きにしてくれた。
俺は家臣にタレを用意してもらい、タレを付けて食べる。
「秘伝のタレです。信長様もどうぞ」
「うむ、いただこう」
信長様はタレ付きの串焼き肉(ほぼ焼き鳥)を食べると、美味しそうに勢いよく食べ尽くした。
「うむ美味であった! 材料は何なのだ?」
「醤油に砂糖、みりんですね。みりんは酒の亜種だと思ってください」
「砂糖が使われているのか……通りで甘い訳だ」
「信長様甘いの好きですもんね〜」
「うむ! 甘い物は大好きだな!」
信長様の甘い物好きは有名で、蝦夷で作った砂糖を信長様に一部譲ったところ、すごい喜ばれたのである。
史実でも長曾我部元親が砂糖を約1.8トン信長様に贈って大喜びさせた……なんて話もある。
まぁ長曾我部元親はその後の外交を失敗して、信長様から討伐を受けるのであるが……。
閑話休題
まぁまだ蝦夷でも砂糖栽培が始まったばっかりなので、信長様に譲った砂糖の量も10キロくらいであるが、それでも手紙で滅茶苦茶長文でお礼を言ってきたし、どんな料理に使えるか聞いてきたので、うどーなっつ(うどんでドーナッツを作るやつ)を教えた。
織田領では俺が広めたうどんの店が盛んにあるから、それを束ねて揚げて砂糖をまぶして食べるというのを教えたらほぼ毎日食べているらしい。
虫歯にならないように歯磨きもした方が良いと俺は信長様に歯ブラシを送ったりもしていた。
「ふぅ……食べたな」
「食べましたねぇ……狩ったばかりは美味いですね」
「元康、三好が弱体化しているが、将軍を助けるために上洛した方が良いと思うか?」
「いえ、三好は三好長慶が病という噂を聞いております。今は政務ができているようですが、長くは無いかと。それに今動くと朝廷から警戒される可能性が高いです」
「朝廷がか?」
「はい、朝廷では私が多額の献金をしたことにより将軍不要論が発生しています。今動くと朝廷を刺激するのと、三好と戦闘になった場合、京を戦火に巻き込むことになります。そうなると信長様の名声は地に落ちることになります。そうなれば私が上洛しなければならなくなるので……畿内情勢はまだ燃え上がりますよ」
「ほう、元康がそう言うか……ならば当分待つことにしよう。となると上杉に余も贈り物を贈っておくか」
「そうですね。謙信公とは長い付き合いとなると思いますし、不義理を行わなければ気持ちの良い方ですよ」
「ふむ……いい話が聞けた。元康、市を頼むぞ」
「はい!」
更新頻度変更のお知らせ。
この話以降火曜日と土曜日に更新となります。
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