「うーん、南蛮貿易……南蛮貿易……」
俺がどうにか南蛮貿易ができないか呪文の様に唱えていると
「殿! 港に南蛮船が来港しました!」
「マジ!」
願いは通じる物で、運良く南蛮船が港に来たらしく、俺はその南蛮船の代表者に貿易の話を行うため、港に急いで向かうのだった。
「領主様自ラ我々ニ会イ来テイタダケルトハ……」
「いや、我々も南蛮貿易をしたかったのでこうして縁を結べて幸いです」
カタコトの日本語で話す白人の男性はラフィエルというカス商会という商会の代表者であった。
【以後『』がラフィエル達外国の方々の発言とさせていただきます】
『領主様は我々カス商会に何をお求めでしょうか。鉄砲ですか? 火薬ですか? 色々取り揃えていますよ』
「火薬や鉄砲は大丈夫だ。そうだな……俺が求めるのは工芸品や芸術品だな。宝石とかでもいい。まぁ一番良いのは金や銀だが……」
『そちらの商品ですと我々に魅力的な商品が無ければあまり売りにすることができませんが……我々も商人なので……』
まぁ商品のすり合わせを行う前にラフィエル殿の事情を聞く。
彼らはポルトガル商人で、キリスト教の布教目的ではなく、インドのゴアや東南アジアのマラッカに拠点を作り、明のマカオにも居住権を獲得し、貿易の許可を得て、その明が銀決済なので銀の産地がある日ノ本に火薬や生糸等を売りつける代わりに銀を確保し、明で茶葉や生糸を仕入れ、マラッカまで持っていって換金、もしくは東南アジアの諸国を巡ってゴアまで香辛料を運ぶことで利益をあげていたらしい。
ただ最近は同業者が増えてきて、博多や堺だと貿易の旨味が減ってきたので、少し離れたこちらまで進出してきたらしい。
『というわけで銀を求められたり火薬が売れないとなると困るのですよ』
「ふむふむ、なるほどな。それだとうちの商品を見たら買いたいってなると思うぞ」
俺は家臣に南蛮商人と会う時用に用意していた今川領から産出したり売却できる商品を纏めたカタログ……見本品と共にラフィエル殿に見せてあげた。
最初はあまり期待していなかったラフィエル殿であったが、俺が見せた物を見たり嗅いだりすると目の色を変えた。
まず興味を引いたのは真珠であった。
『我々の祖国や周辺の地域では真珠は聖書にも書かれているくらい高貴な宝石扱いであり、大粒で綺麗な乳白色の真珠は高値で取引されるのです!』
興奮気味に語る。
明でも真珠の売買は行われているらしいが、真珠養殖までは行っておらず、南蛮貿易に向けて真珠養殖を開始していた今川家では質の良い真珠を生産していた為に魅力的な商品に見えたらしい。
次に目をつけたのは絹織物と生糸であり、生糸は日ノ本では生産できないと思って大陸から高値で売りつけていたが、今川領で生糸の生産量を増やしていると聞くと、早めに知ることができて良かったと安堵していた。
大陸からせっかく生糸を運んできたのに、日ノ本産の生糸が市場に流れ込めば、高い外国産の生糸は駆逐されてしまうので、それを事前に知ることができて、損をするのを避けることができて安堵したのである。
それに絹織物の質も高く、大陸でボッタクリ価格の割に質の低いのを掴ませられるくらいなら最高品質には少し劣るが、それでも高品質の今川産の絹織物ならインドやヨーロッパでも高値で取引されるでしょうと高評価だった。
関連して普通の布(主に綿製品)に関しても高評価で、東南アジアだと香辛料の代金として布を対価として交換することがあり、丈夫な布というだけで高い需要があるらしい。
今川産の布は他の地域に比べて半額以下の値段と安い為、これも交易で十分な利益が出せると語る。
『この磁器に関しても素晴らしい! 磁器は大陸で高額で取引されていまして、我々ヨーロッパ商人は悔しい思いをしていたのですが……明の品よりも明らかに質が良い! ただ本国向けとなると形を調整してもらいたいのですが……』
「ええ、要望があれば形は希望通りに作らせてもらいますよ」
『本当ですか! 明の職人達は中々要望通りに作ってくれなくて困っていたのですよ! いや! ありがたい!』
磁器に関しても特にボーンチャイナと呼ばれる製品(動物の骨を混ぜた磁器)の乳白色に輝く皿は高値で売れると大喜びであった。
あとは香辛料関係。
今川領で生産している香辛料の種類を見せると、ヨーロッパで求められている香辛料が幾つかあったらしく、是非売って欲しいと頼み込まれた。
『確かにこれほど我々に都合の良い商品があるのであれば今川領と取引したいです!』
「こちらが欲しい物ですが、こういう物を求めているのですが……」
俺は今川領で少量生産しているゴムを見せる。
ガチャ産で少しだけゴムの生産をしていたが、ゴム栽培に適した土地が今川領には少なく、だったら東南アジアの貿易で採ってきてもらおうと考えた。
『これは?』
「ゴムという植物の樹液です。東南アジアでは多く茂っている植物で色々な製品に使うことができるのですが、今川領内では栽培にあまり適していなくて」
『なるほど、我々にこれを東南アジアで採ってきて欲しいと』
「はい。マラッカ周辺でもゴムの木はあると思うので、樽に詰めて持ってきてもらえればその樽とこちらの商品を交換しましょう。勿論最初に言った芸術品や宝石類、金銀でもいいですが」
『ふむ』
「それにうちの布を大量に買ってそれを帰りの東南アジアで香辛料に交換してゴアに持ち込めば大金になるんじゃないですか?」
『確かにそうだな』
「なんならうちで船作っているんで買いませんか? 外洋航海できますし、浅瀬でもキビキビ動く船作ってますが」
『なるほど……マカオでも船は買えるが高いからな。ここで安く大型の船を買えるのであれば我が商会も規模を拡大できるか』
「ええ、私的には商品を買って代金支払ってもらえれば良いので、最初に今川に立ち寄ってくれたカス商会と今後もお付き合いしたいですし」
『わかった。ただそうなると港に異国人向けの宿泊施設を用意してくれると助かるのだが』
「ええ、希望の限り聞きますよ」
俺はこうして南蛮商人のラフィエル殿と知り合い、南蛮貿易を開始することになるのだった。
まぁキリスト教の宣教師とかが来るのも時間の問題だろうがな……。