ガチャ狂い徳川家康   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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征夷大将軍拝命

 追撃の戦果の殆どは織田軍が持っていったが、もとより数が多いのは織田軍の方。

 

 それに鉄砲を装備していない兵も多いので、ここで武勲を稼ごうと躍起になっている兵も多かった。

 

 お陰で今川軍はこんな大規模な戦闘が行われたのに死者0という快挙を達成していた。

 

「運悪く鉄砲が暴発して負傷した兵は居ましたがね」

 

「死ななかっただけ儲けものだ。ちゃんと負傷手当は出しておけよ」

 

「は!」

 

 家臣達も大勝したことで将来自分達の地位も相対的に上がることに大喜びであり、地位が上がれば給料も上がる。

 

 今川家では銭座が機能していることで、給料を土地ベースから銭ベースへと切り替えることに成功したため、多くの土地に縛られない家臣達がどんどん出世していた。

 

 逆に土地に縛られている者はこの出世レースから脱落していってしまったが……。

 

「元康様、三好家の重臣である松永久秀殿が面会を望んでいますが」

 

「会おう」

 

 戦国の蝙蝠とか大悪人と呼ばれる人物である松永久秀であるが、この世界でも遺憾無く実力を発揮し、いち早く三好家と朝廷が仲違いを始めると、朝廷に擦り寄り、協力して新将軍候補の京入りを阻止し、そして今回の関ヶ原の戦いにも息子共々病気を理由に参加していなかった。

 

 で、関ヶ原の戦いが旧幕府軍の敗北が決定的になると京周辺の三好勢力を蹴散らして、敗残兵の捕縛を行なっていた。

 

 三好家の者達からは凄まじくヘイトを集めていたが、流石不浪人から三好長慶の側近まで成り上がった存在。

 

 こちらへの売り時を間違えない。

 

 上層部が軒並み吹き飛んだ浅井家は決戦数日後には滅亡し、織田軍の一部が朝倉の追撃に越前に侵攻して暴れまわっている。

 

 畿内方面も三好や周辺国人勢力及び三好に与していた幕臣達もほぼ死んだ為に上洛はスムーズに行われた。

 

「……多少はマシになったな」

 

「これよりも廃れていたんですか……」

 

 京に入った俺の印象は廃れているなぁ……という感じであったが、前に上洛したことのある信長様はこれでもだいぶマシになったと呟いていた。

 

 ところどころで公家と思われる家が再建されていたが、ボロボロの家も多かった。

 

 近衛様によるとある程度再建できていた京なのであるが、三好勢が将軍を襲った永禄の変で火災が周囲に広がり、上京の一部と下京の殆どが燃えたのだとか。

 

 せっかく再建し始めていた京が燃えた事も天皇が怒って足利家や三好は信用できないと言っていた理由に繋がるのだとか。

 

「まずは兵達の滞在ができる陣を整える事か」

 

「まぁ織田軍の殆どは畿内周囲の鎮圧に動く」

 

 三好勢力の残党はまだ畿内各地にいるため、畿内から叩き出す必要があった。

 

 織田に外部の制圧を頼み、今川軍は京の治安維持活動に注力する。

 

 一応俺の京での住まいは近衛様の屋敷で宿泊することになり、天皇との謁見準備にてんてこ舞い。

 

 正式に征夷大将軍の役職を与えられるため、その儀式についてや幕府の本拠地をどこにするかについての協議も行わなければならない。

 

 あと各勢力の整理も行わないと……。

 

 現状お祝いの書状を送ってきたのは織田、上杉、そして毛利と島津である。

 

 情報通の大友が送ってこないのは意外であったが、あっちは大内氏の正統後継を名乗っているから、旧幕府側で動いた方が利があると考えているのか……それとも様子を見ているだけか……。

 

 まぁ商人経由で南蛮人相手に日本人で人身売買していた証拠を掴んでいるので滅ぼすのは確定である。

 

 というか毛利には御老体の元就本人じゃなくて良いので、優秀な息子達……毛利両川と呼ばれる吉川元春か小早川隆景のどちらかを上洛させて、中国地方の領地問題解決に動きたい。

 

「はぁ……上洛できたは良いがここから始まりだというのに……」

 

 家臣達の多くは天下人だ! 新しい将軍だ! 

 

 そう俺のことを持ち上げるが、新政権で盤石にしておかないと、南北朝の動乱みたいになったり、室町の天下人達の様な短命政権になってしまう。

 

 民主化するまでは長期政権を維持したいものである。

 

「さてさて、どうするべきなのかな……」

 

 

 

 

 

 

 

 朝廷から昇段することを許され、天皇の前に出て頭を下げる。

 

『今川元康、お主によって多くの公家が救われた。大義である』

 

「はは!」

 

 天皇と顔を合わせることは許されていない。

 

 公式の場では御簾という天皇と公家達の間にすだれで仕切られている。

 

 御簾越しに会話をするのである。

 

「朝廷復興に微力ながら力となればと思ったまででございます」

 

『その微力のお陰で朕達は救われたのであるがな』

 

 話はそのまま征夷大将軍の拝命が行われ、更に正二位の官位が与えられた。

 

 ここ100年で武家で正二位に生前与えられた人物は居なかったはず……。

 

 どんだけ俺偉くなるねん。

 

 これ以上って左右大臣と関白とかになってくるからな……。

 

『時に、今後の幕政はどこで行おうと思うのだ?』

 

「京に近い場合、幕府の争いに朝廷を巻き込み、京が荒廃するのは室町をみていてよくわかりました」

 

「なので以後の政務は浜松の地で行い、日の本を統一した暁には関東の江戸を開発し、京に負けない都市を築こうかと思われます。以後の世界統治を考えると浜松では手狭、京では海が遠いゆえに」

 

『ふむ、世界統治とな?』

 

「現状日ノ本の争いの原因は日ノ本の土地不足や利権争いが原因となります。ゆえに日ノ本を拡大したいと思っております」

 

『日ノ本の拡大とな!』

 

「はい」

 

 俺は公家達や天皇から見える位置に地図を広げる。

 

「そもそも日ノ本は世界で見ると凄く小さい島国なのです。この島国で争っているだけでは鎌倉から全然進歩していない為、日ノ本を広げることに注力するべきです」

 

 俺は台湾や蝦夷地を指さす。

 

「まずはこの2つの島を日ノ本に組み込みます。蝦夷地は関東と同じくらいの広さ、台湾は九州と同じくらいの広さがあり、蝦夷地は米の収穫は難しいですが、他の作物や砂糖の栽培、豊富な海産物がありますし、鉱物資源も豊か。台湾は暖かい気候ゆえに大量の米を作ることができ、何より明と近いので、貿易の拠点になり得ます」

 

 俺は更に指を地図の南にずらし

 

「比律賓(フィリピン)の島々も日ノ本の8割程度の大きさですが、大きな国もなく、日ノ本の武士達が移住して開拓しても大きく揉めることは無いでしょう。そして更に南に進んでいけば」

 

 オーストラリア大陸に指さす。

 

「明と同じくらいの大きさなのに、人がほぼ住んでいない巨大な島があります。四季が逆になっている……日ノ本が夏の時にこの島は冬になっているらしいのですが、この島を日ノ本の領地として開発できれば……明にも負けぬ巨大な国が誕生することになります。私が生きている間にこの島への植民ができるところまで進めたいと思いますが、成功すれば……皆様方は数千年秋津島を中心とした日ノ本を初めて拡大したと歴史に名を残す事になるでしょう!」

 

 おおっと公家達は感嘆する。

 

 天皇も簾で表情は見えないが、歴代の天皇では成し得ながった偉業を自分の代でなせるかもしれないと言われれば……嬉しくなるだろう。

 

「今各地にいる大名達も自分達の領地が広がるのであれば喜んで人を出すでしょう! そのためにも一刻も早く戦乱を終わらせ、戦乱で消費していた力を外に向ける必要があるのです!」

 

 俺の演説は天皇にも効いたらしく、任せると力強く俺に託されたのだった。

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