「ふう、緊張した……」
「見事な演説でしたよ元康殿」
「近衛様……私はこういう未来を作りますという決意表明をしたまでです」
近衛様の屋敷に戻った俺は政務を片付けながら新しい幕府創設に向けての準備を行う。
問題になるのは……宗教問題である。
「本願寺や延暦寺……他にも色々な寺の権限が大きすぎる。これを削っていかなければ」
「しかし、一筋縄ではいかないでしょう。大内氏が上洛した時にも寺との利権争いで揉めましたし……」
一応比叡山の延暦寺と石山の本願寺に手紙を出した限り、本願寺とは交渉は可能。
石山から退去してもらう可能性を告げると、代替地を用意してくれること、宗教の弾圧をしないのであれば受け入れられると手紙をくれた。
門主の顕如はまだ23歳と若いのに、流石史実で数十万の門徒を操り、天下人の信長様と10年の宗教戦争を繰り広げただけのカリスマ坊主である。
交渉のテーブルに就くことで本願寺としての立場を明確にした。
本願寺は新幕府に協力すると……。
一方で比叡山延暦寺はダメだ。
権限の縮小や金貸しの停止の代わりになる利権を提示したにも関わらず、既存の利権に凝って敵対的になっているし、あそこは朝倉と懇意にして越前の工芸品や酒などを転売し、その利益を原資にして金貸しをしているから朝倉の息がかかっている。
やはり比叡山はこの世界でも燃えるべきか。
まぁそれをするとしても一度借金を清算した方が良いだろう。
比叡山の坊主達が調子に乗っているのも貴族達の借金が原因だし……。
「貴族の借金を今川家が肩代りするのですか?」
「ええ、徳政令を出しても良いですが、それだと新幕府は困った時に徳政令を行うという悪例を残してしまう。徳政令はしない方が良いですし、こちらは財源を握っているので問題はありません」
この後に貴族の借用書を今川家が纏めて清算することになるが、俺が溜め込んだ銭の改鋳によって出た金銀で十分に返済できる金額であったため、借金を俺に一本化した。
これにより貴族達や周辺の侍達が苦しめられていた比叡山の坊主による高利貸しに一気に返済してやって利ざやで稼ぐのを停止させた。
これで新規に借りなければ比叡山に入る金は一旦停止となる。
「信長殿」
「おう、腐れ坊主を焼けばいいのだな!」
そして借金を返済したことで俺は比叡山延暦寺に対して不入の権利の剥奪や金貸しで人々を大いに苦しめた事、その他寺の僧でありながら男色や肉欲に溺れ、仏道に反しているとし、批難声明を発表。
これに多くの貴族も同調し、比叡山からの退去を迫ったところ、反発して使者を僧兵が斬り殺したため、武力介入を開始。
比叡山は炎上し、史実よりも完全に寺を包囲したことで逃げ延びる僧の数は減り、一気に延暦寺の勢力は後退。
全国に対して敵対すればこうなるという見せしめに比叡山を焼いた事になった。
それで燃え残った金銀の一部はちゃっかり回収し、協力してくれた信長様と山分け。
ちゃんと借金を返済したのに抵抗した延暦寺という構図を表向き作り、悪名が上がらないように情報操作していったため、周辺勢力の反発もほぼ無かった。
そして朝倉も滅亡し、石山本願寺の代替地として焼き払った比叡山跡地を譲る事に決め、延暦寺と本願寺の仲を決定的に悪くする策も行いつつ、上杉謙信公や毛利から毛利元就の代役として小早川隆景、島津からも三男の島津歳久が上洛。
近衛屋敷にて毛利、織田、上杉、島津……そして今川の話し合いが始まるのであった。
錚々たる顔ぶれの中、俺は上段に座り、織田信長、上杉謙信、小早川隆景、島津歳久の4名が頭を下げる。
「面を上げてくれ。これより足利家に代わり今川家による新たな幕府を開くことになる。幕府の根幹について話していこうと思う」
まず役職の配分であるが、管領という役職は室町において争いの火種としかなっていなかった為廃止とし、新しい役職を作るとする。
それが大老という役職である。
「今後今川家は日ノ本を統一することに邁進し、天下統一の暁には大老の所領を除き、中小勢力は今川家が吸収していく所存。大老の所領については大きな干渉を行う予定は無い」
それぞれの家の所領についても発表を行う。
「まず大老の最大石高は現石高より200万石としそれ以上は幕府が召し上げとするがよろしいか」
「「「「異論ございません」」」」
200万石というとこれを超えているのは織田家と北条家、毛利家の3家であり、北条は叩き潰す事が決まっているので除外。
織田家は近江が加わった事で越えてしまったが、飛騨という生産力がほぼ無いのに石高計算だと結構な数値になるため、飛騨を切り捨てれば近江、美濃、尾張、伊勢4国でギリギリ200万石に収まる……というか収まるように検地して石高を偽装してもらう。
まだ全国の検地をしていない為偽装仕放題である。
これは毛利にも言えて、中国地方の大半を抱え込んだ事で逆に領地経営を圧迫していたので、石見銀山には手を出さないから備後及び出雲のラインで我慢するか、小早川家と吉川家を毛利家から分離させて別の大名とすることで影響力を残すかの2択を迫った。
まぁ毛利家としては現状で満足しているため前者を選択し、いうことを聞かない国人をパージして大名の権限を上げていけば良いだろう。
島津に関しては島津が欲しがっていた三州(薩摩、日向、大隅)の領有権及び琉球貿易の権利を担保することで、実数値以上の石高を与え、飼い慣らす方針とした。
上杉は関東の権利を放棄してもらう代わりに日本海側の利権……越後、越中、能登の3国と上野と下野の一部を領有させることで200万石の範囲に抑える。
まぁ越後平野の開発が成功すれば越後単独で400万石の出力が出るし、日本海側の貿易の権利を握れるので良いだろう。
逆に今川家は東海3国、関東、東北、四国、畿内は一門で固めるつもりであり、懐柔した勢力を蝦夷地、台湾に流すつもりである。
「幕府の本拠地は関東に拠点があった方が統治に都合が良いため、北条を潰した後に江戸を大規模な開発を行う」
これは既定路線であり、更に北九州に巨大な炭鉱があるため、そこは直轄地とし、製鉄所を作り、馬に頼らない鉄道という機械動力による乗り物を使った輸送網を日ノ本に構築すること、海外開発を積極的に行うことを約束した。
そして試案段階であるが、史実江戸幕府の統治をモデルとした組織図及び法令を見せる。
とりあえず4家は新幕府における高い役職と地位、そして現状の所領の殆どが安堵されたので概ね納得してくれた。
後は抵抗する勢力をどう潰していくかの話になり、まずは毛利と畿内の間に存在する中小勢力を今川と織田連合軍と毛利軍の一部で轢き潰し、その後北陸攻め、四国攻め、関東攻め、北九州攻め、最後に東北攻めで終わらせるという順序を決めた。
「あと10年で全国は統一する。家督の継承権や家令の整備は各家に任せる。さあ乱世を終わらせるぞ!」
「「「「はは!」」」」