オカルト・アポカリプス~人類なき後の地球における心霊現象の発生について~   作:紫 和春

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第1話 世界は終焉しました

 21世紀後半。人類は二つの道を選んだ。一つは宇宙に進出し、人類の更なる発展に挑む人々。もう一つは地球に残り、母なる星を愛する人々。

 宇宙に進出した人々は、自らを「スペーサー」と名乗り、広大な宇宙の旅へと出発した。

 一方で地球に残った人々は、今まで通りの政治体制を取り、やがてそれは地球規模の紛争へと変貌する。

 そして21世紀の終わり頃、地球は核の炎に包まれた。9割以上の動植物が死滅し、地球の環境は激変した。

 それから数十年後。かつての日本と呼ばれた場所で、移動する物体が数個。

 

「……この辺りも地図通りではありませんね」

 

 それは人類の女性のようにも見えるだろう。しかしその目には、本来の人類には存在しないホログラフィックが浮かんでいた。

 彼女は九王(くおう)みこね。かつての日本国にあった理化学研究所が製造した、完全独立型直立二足歩行ロボ・特定環境把握ヒューマノイドである。

 彼女の使命は、独立して稼働することを主軸とした地球環境の測定を実行することである。そのために、彼女の内臓データベースにはあらゆる地形データと環境測定データが存在する。そして現在の環境と照らし合わせ、それが人類や生命体にどれだけの影響を与えるのかをデータ化しているのだ。

 

「仕方ないさ。日本だってあの国から核攻撃を食らった。その爆発と放射線の影響はかなり酷いものだろう」

 

 彼女の隣にいる白銀の馬がしゃべった。彼は対話型大規模ストレージ搭載機械馬、通称ウッマである。

 

「そうですね、あの戦争は酷いものでした。まさに『100秒の沈黙』という名にふさわしい名です」

 

 「100秒の沈黙」戦争。人類が地球生命体もろとも消し去った、忌々しい戦争の名前。世界中の核兵器が打ち上げられ、ただ沈黙と祈りだけの時間が残された自滅戦争。

 九王はアーカイブに残っていた映像を読み込んで、その惨劇を確認する。そして自分の存在意義を再確認した。

 九王はウッマの背中に載せてあった広範囲測距ドローン、R-0012を起動させ、周辺の地理的状況を測定するために飛ばす。

 そして彼女は自身の体に埋め込まれている環境測定機器を起動し、早速調査を開始する。

 

「場所、東京都青梅市。気温21℃、湿度30%。風向きは東北東から1.4m/s。空間放射線量は……、基準値の12倍」

 

 当然のことながら、核攻撃を食らったことにより空間中の放射線量は非常に高くなっている。通常の人間なら10年程度で酷い症状が発生することだろう。

 九王はウッマに載せていた測定機器を下ろし、さらに詳細なデータを測定する。土壌を採取し、地表の放射線量を計測する。

 放射線というのは空からだけでなく、地上からも放射されている。しかし放射性物質が地上に降り積もる━━放射性降下物が存在すると、それだけでも地上の動植物に影響を与えるのだ。

 土壌を観察していると中にミミズがいたようで、モゾモゾと空気中に出てくる。

 

「あなたはここに住んでいるのね?」

 

 九王はミミズに語りかけるものの、返事はない。いくら超万能なヒューマノイドであっても、動物の言葉は分からない。

 九王はミミズをそっと掴み、そのまま地面に戻す。少しでも長生きできるように祈りながら。

 

「それで? 何かいいデータは取れた?」

「……いえ、今回も取れませんでした」

 

 九王は悔しそうに言う。彼女が探しているデータが取れなかったのだ。

 しかし、彼女の言う探しているデータは少し変なデータである。

 

「ここにも霊的なデータは存在しませんでした……!」

 

 彼女は理化学研究所によって製造されたと紹介したが、開発された部署が曰く付きであった。怪奇現象解明部━━通称オカルト部の手によって生まれたのだ。

 そもそもオカルト部は理化学研究所にあったかどうかも定かではない部署である。ある噂によれば、様々な部署の物好きが集まってできた非合法的存在であったとも言われていた。今となっては真偽不明となってしまったが。

 とにかく、彼女は心霊現象を追及するために日本のあらゆる場所を巡っている。彼女のアーカイブに残っている映像から場所を特定し、そしてその場に赴いてデータを取得している。

 なぜ彼女が心霊現象を追うように設定されているのか。それは彼女自身には分からない。彼女の自由意思より上位に存在する命令によって行動しているに過ぎないのだ。

 

「まだ6回しか外出できてないですけど、それでもこの時間は無駄ではないと思っています」

「挫けていないのならいいけど……。体力(バッテリー)は大丈夫そう?」

「まだ8%しか使ってませんよ。ウッマも大丈夫でしょう?」

「もちろん。じゃあ次の場所に行こうか」

「そうですね。アール君にも戻ってきてもらいましょう」

 

 そういってドローンのR-0012に戻るよう命令を下す。ドローンは地形や植生の生データを取得し、九王の元に戻っていく。

 そのままウッマの背中へと吸い込まれるように着地する。台座に固定されたのを確認した九王は、R-0012が取得したデータをウッマのストレージに格納する。後はウッマとは別系統の解析コンピュータが地形データなどを解析してくれるだろう。

 

「さて……。では次の目的地へと向かいましょう」

「次はどこに行くつもりなんだい?」

「そうですね……。神社仏閣に行ってみましょう。大きな神社やお寺なら呪物があるかもしれないですし」

 

 そういって九王とウッマは、次なる目的地へと向かう。

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