オカルト・アポカリプス~人類なき後の地球における心霊現象の発生について~ 作:紫 和春
なんとしてでもオオツチザルを捕獲しようと行動する九王を見て、小堀は昔の自分を重ね合わせる。
(目標や目的に向かってがむしゃらに走っていく姿。それこそ、若い人間の特権だろうな。まぁ、九王君は人間じゃないけど)
それでも目標が存在するというのは、人間であれ人工知能であれ大切なことである。
「では、作戦を立てましょう」
トラックの荷台を囲んで、九王は会議開始の宣言をする。
荷台には九王の額から照射された地図が投影されていた。
「現在私たちがいる場所がここです」
そういって広場に赤いピンが立つ。
「そして昨日、罠を仕掛けた場所がここになります」
今度は黄色のピンが、赤いピンの周りに立つ。
「この仕掛け方ではオオツチザルは寄ってこないことが分かりましたね」
「もしそうだとして、今日はどうするんだ?」
「今日の攻略方法のために、この地図が必要です」
そういって九王は、新しいデータを地図上に表示させる。
「これは……?」
「この周辺の地形データです。これを使ってオオツチザルの巣を特定し、その周辺に罠を張っていこうと思います」
「オオツチザルの巣を特定? どうやって特定するつもりだ?」
「まずは、この広場を中心とした半径1kmの地形データを私が詳細に読み込みます。そして読み込んだ地形から不自然な箇所を発見するのです。オオツチザルの巣は急斜面にあると言われているので、そこを重点的に探す感じですね」
「なるほどね……」
小堀は一度納得するものの、直後に出てきた疑問点を投げかける。
「そういえば、地形データは終末戦争の時で更新が止まっているはずだ。すると現在の地形とデータに差異が見られる可能性がある。そこはどうなんだ?」
「10m四方での食い違いはあるかもしれませんが、対象は半径1kmなのでそこまで大きな誤差が生じているとは考えにくいです。あとは私がこの場から見える範囲の地形を確認し、それをデータと照らし合わせて誤差の程度を調べることができます。もし誤差の割合が25%を超えている場合は、この地形データは信用に値しないと結論づけることができるでしょう」
「そうか。ならまずは地形データの突き合わせを行う必要があるな」
「はい。それはこの作戦会議が終了した時に実行します。ここからは、地形データが一致していた場合の話です。データから導き出された場所に罠を集中的に仕掛け、一晩監視します。幸いこちらには遠隔操作可能なアクションカムが大量にありますので、これを私と同期させて監視を行いたいと考えています」
「もしそれらしい影が発見された場合は?」
「その場合は小堀さんが現場に急行してください。私とウッマは後からついていきます」
「俺の仕事かよ……。まぁいい。そのくらいはやってやる。今回はオカルト調査じゃなくて、生物調査として考えよう」
こうして小堀の同意も得られたところで、作戦会議は終了した。
まずは地形データと実地のデータ参照を行う必要がある。
「では地形をスキャンします」
九王のカメラとCPUがフル稼働する。両目のカメラから入ってきたデータを解析し、それを3Dマッピングしていく。
数十分かけて、見える範囲のデータを取得した。
そこから最新の地形データとマッピングした地図を比較する。
「視界の範囲内でのデータ相違率は約11%。植物や岩による過誤データ率は約20%であるため、最新の地形データは信用するに足るものと判断します」
「そうか。そうなれば次の段階に進めるな」
「はい。オオツチザルの巣をデータ上で捜索します」
そういって九王は目をつむり、地形データを詳細に検討する。データのメッシュは0.1mという高解像度のデータだ。つまり、10cm単位で高低差が分かるという極めて精度の高い地形データである。そのデータを隅から隅まで探索し、人工物と思われる地形を探し出す。
そして……。
「……見つけました」
急斜面に見つけた不自然な地面の盛り上がり。大きさもそれなりに大きく、オオツチザルの特徴に一致している。
「あったのか? 本当に?」
「ありました。あちらの方向です」
そういって九王は、その方向へ指をさす。
「それじゃあ、そこに罠を仕掛けるんだね?」
ウッマが改めて聞く。
「もちろんです。すぐに行きますよ!」
そういって九王は罠である布を持って、山の中へと駆けだしていく。