オカルト・アポカリプス~人類なき後の地球における心霊現象の発生について~ 作:紫 和春
「それで、これからどうするんだ?」
小堀は九王に尋ねる。
「ここは手っ取り早く、ソルレイバーストに詳しい人を呼びましょう。小堀さんの人脈ならすぐに呼べる人だと思います」
「俺の人脈?」
「以前会った小堀さんの同僚ですよ」
「あぁ、あのインド系のクローンサイボーグね。そういえばソルレイバーストの調査員と合流するとか言っていたな」
「小堀さん、彼━━ハルバルジャン・シンさんと連絡は取れますか?」
「ちょっと待ってろ、ログを遡ってみる」
そういってパソコンを操作する小堀。
数分もすれば、シンの連絡先を入手することができるだろう。
「よし、メールを飛ばしてみる」
脳内で生成した文章をメールとして送信する。
返事はすぐに返ってきた。
『ソルレイバーストの調査員なら、俺と一緒に行動している。調査のほうは一向に進んでいないから、合流するのはやぶさかではないよ』
文章を九王にも見せる。
「では合流してもらいましょう。どのくらいでこちらに来れますか?」
「聞いてみる」
これまたすぐに返事が返ってくる。
『今すぐとなると、大体6時間以内で合流可能だ』
「では、すぐに来てもらいましょう」
九王の判断により、シンに来てもらうことになった。
シンに九王たちのいる理研の座標を送り、しばらく待つ。
「今から来るとなると、4時間はかかるだろうな……」
小堀が現在の時刻を見ながら、そのようなことを呟く。
しかし予想に反して、シンたちは2時間程度で理研へとやってきた。小堀のシャトルの隣に優雅に着陸すると、中から二人の機械人間が出てくる。
「やぁ、久しぶりだね」
「あぁ、久しぶりだな」
そういって小堀はシンと握手する。シンの後ろから、少し風貌の違う男性がやってくる。
「どうも、ソルレイバーストの調査のために派遣されたデニス・シュートリヒだ」
「よろしく」
小堀はシュートリヒとも握手した。サイボーグだが金髪を生やしているシュートリヒは、見るからに少し変な印象を受けるだろう。
「うん、オオホリ……。難しい読み方をする名前だね」
「そうですかね……?」
「それで、君はタグがついているから味方ってことは分かるが、後ろのお嬢さんは一体誰だね?」
シュートリヒは、九王のことを指さす。
「あぁ、彼女は地球人類が作った環境測定用のヒューマノイドだ。害はない」
そう小堀が紹介した瞬間、シュートリヒは険しい表情を見せる。
「地球人類の……残存遺産か?」
「あ、やべ……」
次の瞬間には、シュートリヒは腰に携帯していた電磁拳銃を九王に向ける。
「オオホリと残存遺産! その場から動くな!」
「待て待て待て! コイツはそんな危険な存在じゃない!」
九王を置いてけぼりにして、小堀とシュートリヒで会話が進んでいく。
「小堀さん、これはどういうことですか?」
「それは……」
「貴様が説明しないのなら、俺から説明する」
シュートリヒは拳銃を九王に向けたまま、説明を始める。
「情報の出所はどこからだったかは覚えていないが、ある日突撃調査隊の間で一つのメールが出回った。それは、地球人類が製造し残していった残存遺産に関する情報だ。『地球人類の残存遺産は、いずれ我々スペーサーを滅ぼす。その前に全て破壊せよ』という内容だ」
「私にはスペーサーの方々を滅ぼすような力は持っていません」
「しかし、今の地球からは我々の常識を超えたガンマ線バーストが発生している事実がある。仮に貴様がこれの正体を知っていなくとも、将来的に我々に敵対する可能性があるならば、俺はそれを破壊せねばならない」
そういってシュートリヒは視線を小堀に向ける。
「突撃調査隊の全人員にそのようなメールが回っていたはずだが、まさかオオホリはそのメールを見なかったのか?」
「それは……」
「虚偽の申告をするのなら、俺がこの場で制裁を下す。言葉に気を付けるんだな」
そう言われて、小堀は思わず歯ぎしりをする。
「……あぁ、メールは見たよ」
「ならば何故、こいつらを破壊しなかった?」
「……情みたいなのが湧いたんだ。実際、彼女からの環境データは有益だった」
「ならもう用済みだな。破壊するぞ」
「待ってくれ! こいつらはそういう連中じゃない!」
小堀が九王とシュートリヒの間に割り込む。
しかし、シュートリヒは拳銃を構えてジリジリと九王に接近する。
一触即発の緊張状態になった時、シンが動いた。なんと、シュートリヒの持っている拳銃の銃口に指を突っ込み、撃鉄の間に指を滑り込ませたのだ。
「シン! 何をしている!?」
「俺の見立てじゃ、そこのお嬢さんはそんなに悪いヤツには見えない」
「貴様も邪魔をするのか……!?」
「うーん……。この状況だとYESということになるな」
「この……、売国奴どもが……!」
シュートリヒはブチ切れ寸前だ。
それでもシンは冷静である。
「これは俺の直感だが、彼女は地球のために行動しているように見える。じゃなかったら、同じ調査を目的としている小堀とここまで一緒に行動していないだろ?」
シンは小堀の方を見て、同意を求めている。
「あ、あぁ、そうだ。実際九王君がいなかったら、俺の調査は中途半端なものになっていただろう」
苦し紛れでも、自分の本音を打ち明ける小堀。その眼差しは、純粋そのものだった。
シンと小堀から説得を受けたシュートリヒは、しばらく苦悶の表情を浮かべながら考える。
そして拳銃を下ろした。
「……分かった。今は協力を要請しよう。だが、次に変な真似をしたら、すぐに破壊する。いいな?」
「えぇ、もちろんです」
こうして、シンとシュートリヒが一時的に仲間となった。