オカルト・アポカリプス~人類なき後の地球における心霊現象の発生について~ 作:紫 和春
九王の手によって負傷した保安部員たちと副艦長は、現在医務員によって救護されていた。会議室内の鮮血はすぐさま掃除、消毒され綺麗な状態になっている。
そして保安部とは所属の異なる警察機関の特警が、当時の状況について簡単に聞き取りを行い、処遇は後回しということになった。
「全く、九王君の行動にはドキドキさせられるぜ」
小堀が若干の冷や汗をかきながら、九王のことを見る。
「意外と魂胆があるというか、肝が据わっているというか、ね?」
「まぁ、環境測定用のロボットとは思えないな」
シンとシュートリヒも九王の大胆さに舌を巻いていた。
「まぁ、その話はあとでゆっくりしましょう。それよりも、今は戦艦の話です。シュートリヒさん、戦艦はいつ来るか分かりますか?」
「そうだな……。メールを送信したのと同時に出発したと仮定すれば、短距離ワープで丸1日といったところか」
「丸1日ですか。思ったより早いですね……」
そういって九王は少し考え込む。
「そもそも交渉の時間で2週間とか見込んでいたんですが……」
「その予定ぶっ壊したの自分じゃねぇか」
小堀がツッコむ。
「あれは正当防衛です。自分と関係者に危険が及ぶと判断したので、行動したまでです」
「それにしてはずいぶん手慣れた様子だったがな」
シュートリヒの小言が炸裂する。
「それよりも、です。少なくとも明日までは時間が空いています。何かしたいとかありますか?」
九王はその場にいる全員に尋ねる。
「それなら……」
そこでローレン艦長が口を開く。
「
「いいんですか? 私が言うのもおかしいですが、対価として支払えるものはありません」
「構わない」
「それに、その加速器は地球の残存人類遺産というものに該当するのではないですか? 私と同じ、破壊する対象だと思うのですが?」
「まぁ、我々も色々と事情があってね。人類の生み出したあらゆる叡智の結晶は、知識を有していてかつ技術を日常的に使用していなければ、数十年で廃れてしまう。我々が宇宙に進出したことによって、海に浮かぶ船が作れなくなったのと同じようにな」
「……その例えはよく分からないです」
「もう少し言葉を変えるとするなら、とある昔に使われていた何かしらの道具を、今の人類が再現して使おうとしても、その製作方法や技術、知識は全く別種であると言うことだ」
それでも九王は少し難しい顔をしていた。
「まぁ要するに、今の我々も過去から学べることがあるかもしれないってことにしておいてくれ」
「それでいいなら、先ほどの話を受けましょう」
「それなら、知識だけなら第4銀河艦隊の仮想大図書館にあるはずだから、それっぽいものをピックアップしておこう」
そういってシュートリヒはタブレットを操作し、情報の取得に入る。
「さて、副艦長がいなくなってしまったから、私が直接連絡を入れるほかないな」
艦長も技術員に集合するように連絡を取る。
こうして、ジェンジュン全体で加速器再稼働に向けた動きが加速していく。
「艦長、技術員が集合しました。現在は8番格納庫にて大型輸送船に搭乗しています」
「分かった。ちょっと狭苦しいだろうが、そのまましばらく待機するように言ってくれ」
「大図書館から加速器に関する文書データをあらかた回収した。おそらく現場で役に立ってくれるはずだが……」
「要点をまとめたいが……。九王君、できるか?」
「データの容量にもよります。5テラまでなら今ここで整理できますよ」
「とりあえず、1テラだけまとめてくれないか?」
「分かりました」
こうして手分けして作業を行っていると、シュートリヒのタブレットにメールが飛んでくる。
「どうやら貸してくれる標準戦艦が到着したようだ。現在第一衛星軌道から惑星対地同期軌道に遷移している途中だそうだ」
「おそらくだが、ここから見れるのではないか? すまないが艦外カメラを軌道してくれ」
「はい」
艦長の補佐官が、会議室のタブレットを操作して、画面にジェンジュンの外の様子を映す。すると、光り輝く4つの点が、ものすごい速度で移動しているのが見えるだろう。
「あれは……、エモータル級標準戦艦ですかね? CICからも艦のタグを確認したそうです」
「エモータル級は少々小型とはいえ、ジェンジュンに比べれば遥かに大きい戦艦だ。それを4隻も貸してくれるとはな」
数十分も待っていれば、ジェンジュンのすぐそばに貸与艦隊が並ぶ。
「2,3隻で大丈夫って言ったのに、4隻も貸してくれたのかよ」
「何かあった時の予備だと思えば問題はないだろう」
「シュートリヒさんの言う通りです。もしものことがあったときに使えばいいんですから」
九王はそれぞれ準備したものを再確認する。
「……全て問題なし。準備は整いました」
一同に話しかける九王。
「では行きましょう。いざ、岩手県へ」