「さて、とりあえずその前に」
スロウが吹き飛んだ受付の場所を見やる。これから暴れると無くなっちゃう可能性もありますしね、と言いながら手をかざした。
「全部まとめて、《リザレクション》」
「以前も思ったが、貴様の能力相当規格外だな」
「エミルのために覚えましたからね」
席と一緒に木っ端微塵になった受付全員を蘇生させたスロウは、状況が理解出来ずにあたりを見渡していた彼等にいいから逃げろと指示を飛ばした。ぽかんとしていた受付達は、しかし戦闘態勢に入っているイゼルブ達を見て慌てて逃げ出す。アンゼリカ嬢達が既に行っていた避難誘導の列に紛れてそのまま会場を飛び出していった。
「まったく。人間は脆い上に礼も言えんのか」
そんな受付を眺めていたイゼルブがふんと鼻を鳴らすが、やらかしたお前が言うなととりあえずツッコミを入れておいた。暴れるにしても死人出すまでやってなきゃこうはならなかったんだよ。
「愚問だな。我は魔王級の魔物だぞ。人の世に合わせる義理など持ち合わせておらん」
「一応仲間ってことになってるそこの二体は持ち合わせてるみたいだけどな」
「あら、失礼ですわね。ワタクシもそれなりの礼節は持ってましてよ」
そこの、とラミューとイリスを指差すと、キララから物言いが来る。ええと、持ってるか? お前。道端で自分を束縛して転がってるやつが礼節とか。
そんな俺の視線に気付いたのだろう、ふふん、と胸を張りながら、キララは誰かれ構わず束縛をしていない時点で相当礼節はあるだろうと主張し始めた。見事なドヤ顔である。
うん、まあもうそれでいいや。
「もう無駄口はいいでしょ? イリス、あんたを今度こそ始末してやるわよ!」
言うが早いかイリスに突っ込んでいくアリア。そんなアリアにやれやれといった風な表情でラティがついていった。アリア一体ならば、と余裕を持っていたイリスも、ラティがその背後から銃を構えたことで顔色が変わる。
「危なっ! ちょっと、一対一じゃないの?」
「誰がそんなこと言ったのよ。ほら、さっさと始末されなさい!」
「……落ち着きなさいよ。って言っても無駄みたいね」
がぁ、と吠えるアリアを見て肩を竦めたラティは、まあいいやとアリアの援護で銃をぶっ放していた。
そんな状況を見ながら、俺は俺でイゼルブをぶっ倒すために剣を構える。イゼルブもそれに合わせるように拳を開き戦闘態勢を取った。
スロウの支援を貰い、一気に肉薄する。さっさとケリを付ける。そんなことを思っていたその一撃は、四肢をサラマンダーに戻したラミューによって受け止められた。ふぅ、と息を吐いたラミューは、そのまま体全体も巨大なトカゲ型モンスター、サラマンダーへと変わっていく。正確には戻っていく、か。
「正直気乗りはしていませんが、行きます!」
「そうは、いかないよぉ……!」
サラマンダーの巨体をシトリーが受け止めた。そのままラミューを押し留め、今のうちに向こうをと俺に告げる。了解、助かった。そんなことを言いながら、俺はラミューをすり抜けて改めてイゼルブへと突っ込んでいった。
「あら、ワタクシを忘れていやがるのではなくて?」
急停止、そしてバックステップ。一瞬いたその場所に巨大な蜘蛛の足が突き刺さっていた。あら残念、とそれを引き戻したキララは、これまでの変態ぶりは鳴りを潜め、獰猛な魔王級の目をこちらに向ける。まずい、ラミューとイリス、そしてイゼルブはある程度の戦い方は分かっているが、こいつだけは未知数だ。何をしてくるか分からない。
「エミル、ここはわたしたちに任せてください」
「スロウ!? いやお前は支援を」
「だから支援するんですよ。いけますよね、クーヤ」
「了承、姉様」
「通用するかは分かりませんが、私も出来る限り支援をします」
スロウの言葉にクーヤが前に出て、コイナもスロウの隣で花粉をキララにぶち込む。むむ、と少しだけ動きが鈍ったのを見て、クーヤが一気に前に出た。そのまま鎌を振り上げ、キララをぶった切ろうと振り下ろす。
「なめんじゃないですわよ!」
蜘蛛の足がそれを受け止める。受け止められびくともしないそれに動きを止めたクーヤは、返す刀で残りの蜘蛛の足を叩き込まれぶっ飛んだ。バウンドし、しかし途中で受け身を取って立ち上がる。げほ、と口から血を吐きながら、それでも戦意を失わず武器を再度構えていた。
「やっぱり俺も」
「無用。義兄様、直進」
「クーヤのダメージは回復させます。わたしも色々工夫しますから、エミルはさっさとあれをぶっ飛ばして戦闘終了させてきてください」
コイナもそんなスロウの言葉に頷く。分かった、と返事をした俺は、三体を信じてキララの横をすり抜けた。
「行かせ――おお!?」
「この濃さならば、流石に通用しますよね」
コイナの花粉がキララを蝕む。さっきよりあからさまに動きの落ちたそれを横目に、俺は素通りをしてイゼルブへと突っ込んだ。
「イゼルブ!」
「ふ、来たかエミル。さあ決着をつけようではないか」
「やかましい。いいからさっさと倒されろ!」
一気に肉薄すると剣を振り抜く。それを腕で受け止めたイゼルブは、返す刀で俺に手刀を放ってきた。その程度の攻撃で倒されるわけはない。体を捻って回避すると、今度はこっちの番だとばかりに剣に魔力を込め斬撃を放った。
「む!? 何だそれは」
「新技だよ。俺だってそれなりに成長してるんでな」
予想通り、魔法剣の一撃はイゼルブの障壁の対象外らしい。剣と魔力の斬撃を二重に食らい、ガードした奴の腕にざっくりと傷が生まれる。舌打ちをしたイゼルブは、その傷を回復魔法で塞ぎ始めた。
「させるかよ!」
そんな隙を与えてなるものか。俺は再度距離を詰めると、その勢いのまま剣を振り下ろす。呑気に回復などしていられないイゼルブは、治療を中断すると俺の攻撃を迎撃しに掛かった。
「エミルめ、やるではないか」
「そりゃ、どうも、っと!」
剣を振り上げ腕をかち上げた隙を狙い、奴の腹に蹴りを叩き込んだ。ぐふ、と一瞬動きが止まったタイミングで、俺は剣で胴を薙ぐ。寸前で躱されたが、しかしダメージは与えられていたようで、イゼルブは腹を押さえて後ずさった。
「ぐぅ……」
憎々しげに呻いたイゼルブは、しかし今度はこちらの番だとばかりに魔法をぶっ放し始めた。最初に戦った時とは違い、今度は向こうにも仲間がいるからだろう。周囲を所構わず破壊していたそれとは違い、俺を狙って仕留めるための魔法に変わっている。
正直厄介だ。火炎は弾丸のように射出され、少しでも動きを止めるとあっさり貫かれて終了してしまいそうだ。氷の竜巻は俺の回避を潰すように要所要所に配置され、どんどんと逃げ場がなくなってくる。
「がはっ……!」
肩に魔法が命中した。抉られるような痛みが全身に伝わる。というか実際抉られた。肩が半分ぐらい無くなっている。左手はもう使えないなこれ。だらりと垂れ下がったままのそれを見て、まあまだ片手が残っているのでなんとかなると武器を構えた。
「なるわけないですよ!」
スロウ怒りの回復。抉られた部分が元に戻り、左手が再び使えるようになる。思わずスロウの方を振り向くと、プンプン怒る我が彼女がそこにいた。そう言われても、これは不可抗力と言うか。
「だとしても! そーゆー時はわたしに回復頼んでください!」
滅茶苦茶怒られた。いや、だって、お前も今キララと戦ってて忙しいじゃん。そんなことを思いながらスロウの方を見たが、スロウはスロウでキララと対峙しつつ残りのメンバーへの支援を行っていた。出来るんだそんなこと。なんて思っていると、スロウはこちらを見えて笑みを浮かべる。
「これくらい出来ないと、エミルの隣には立てませんから」
「俺への期待が重い」
とはいえ、まあそこまで言われてしまえば、多少なりともそれに答えないといけないなと思うわけで。剣を構え直し、再度イゼルブを睨んだ。ふん、と鼻を鳴らしたイゼルブは、片手に魔力を、もう片手で手刀を作り出し、俺を睨み返す。
「生半可な傷では回復されるのならば、回復不可能なまでに叩き潰すまでだ」
「はっ、やれるもんならやってみろ」
牽制で斬撃を飛ばす。それを手刀で弾いたイゼルブへと一気に肉薄すると、魔法を放とうとしているもう片方の手へと斬撃を放った。向こうもそれは読んでいたのか、俺の攻撃にぶつけるかのようにゼロ距離で魔法とぶっ放す。自身のダメージも気にしないその攻撃で、俺もイゼルブも両方とも吹き飛んだ。
即座に受け身。向こうも同じように体勢を整えていたのを見ながら、余裕を与えまいと再度一足飛びで距離を詰める。させるか、と向こうが魔法を放ってきたが、呼吸を整え意識を集中させた。それにより魔法の弾道がはっきりゆっくりと見えるようになる。
魔力を込めた斬撃で、その魔法を切り払った。と同時に集中を解く。勢いを殺すことなく、イゼルブの目前へと躍り出た。
「忌々しい奴め」
「お互い様だよ」
剣を振るう。向こうの手刀とぶつかり、ギャリギャリと嫌な音を立てた。わざと弾かれるような動きでその攻撃を受け流すと、体勢の崩れたイゼルブへ追撃を放つ。させるか、とイゼルブも魔法を手に留めた状態で俺の眼前に突き出した。
再度爆発。さっきとは比べ物にならないそれは、俺もイゼルブも盛大に吹き飛んだ。ゴロゴロと転がりながら、受け身も取れずにゲホゲホと咳き込む。鞘を杖代わりにして立ち上がると、イゼルブも大ダメージを受けているようでヨロヨロと立ち上がるところであった。
「くっ。まさか、ここまでやられるとは……」
先程呪文をぶっ放した左半身が焼け焦げている。あの調子だとこの戦闘中は左手は使い物にならなさそうだ。かく言う俺も衝撃で骨が何本か折れた。というか多分これ内蔵に突き刺さってる。下手すると死ぬ。
が、向こうがまだやる気な限り、俺ももう一度くらいはぶつからなくてはいけないわけで。まあ最悪死んでもスロウに生き返らせてもらえばいい。
一歩踏み出す。それだけで俺の体力がごっそり持っていかれたような気がした。これ思った以上にヤバいな。とはいえ、向こうも満身創痍になっている今がチャンスなわけで。ここで足を止めるわけにもいかない。
「行くぞイゼルブ」
「来い、エミル!」
そう言ってお互いにボロボロの体を引きずりながら再度ぶつかり合いを。
そんなタイミングで、俺とイゼルブの眼の前に複数の影が立ち塞がった。ラミュー、イリス、キララがイゼルブを守るように立っており、しかし代わりに戦う、というような雰囲気をかもし出しているわけでもない。いうなれば、この辺にしておきましょう、という空気だ。
それはこっちの前に立った面々も同じくである。スロウ、アリア、シトリーとクーヤ、コイナ、ラティの六体が、無茶し過ぎだと言わんばかりの目で俺を見ていた。
「そもそも。そーゆー場合はまず回復されてからにしてください」
やっぱりプンスカ怒っているスロウに回復をされる。ぐちゃぐちゃだった内臓も元に戻り、先程までの体の重さが嘘のように快適になった。が、流した血はまあ戻らないので少しふらつくが。
「ぐ、余計なことを。我はまだ、ぬぉぉぉぉ!?」
「はいはい。とりあえず大人しくしてやがってくださいませ」
その一方、邪魔をするなと言わんばかりであったイゼルブはキララによって拘束された。あっという間にグルグル巻きになったイゼルブは、そのまま地面に転がされる。仲間を束縛するのってこんなに気持ちがいいものですのね、とか変態が恍惚していたがとりあえず聞かなかったことにした。
「そんなにボロボロだと本当に討伐されるわよ。いやまあ、それでいいなら別に止めないけれど、私としても美味しい血の供給源が無くなるのはちょっと惜しいのよね」
ふぅ、と肩を竦めるイリス。そんなことを言いながら、まあまだ血の気は多いみたいだしとボロボロのイゼルブを吸血し始めた。あの、それ本気でそいつ死ぬんじゃないですかね。いや何で俺討伐対象の心配しなきゃいけないんだよ。
「ぐふぅ……」
血を抜かれて大人しくなったイゼルブを一瞥して、ラミューも小さく溜息を吐いた。そうしながら美少女シスターに擬態し直した彼女は、ではこの辺で、と話を締めに掛かる。
「ああ、うん。まあそれでいいなら」
こちらとしても個人的な討伐対象であるイゼルブを見逃すのは惜しいと思わないでもないが、現状このメンバーならば十分に戦えることも判明したし、俺も個人でイゼルブに力負けはしていない。ついでにこの三体が、三体でいいのか? が見ている限りはあの時みたいな惨劇はそうそう起こらないであろうし。
今回? いやこれはなるべくしてなった事故みたいなもんだろ。実際問題、お役所仕事で新しく制定された適当なルールに則って見直した結果本物の魔王級を野放しというとんでもない結果になったわけだし。俺達の仲間にしろ、ラミューにしろ、ちゃんと実物を見て、以前の書類と照らし合わせて、そういうことをきちんとすれば何も起こらなかったはずだ。
まあ何が悪いってギルドが悪い。これ改めて抗議を送っておいたほうがいいんじゃないだろうか。そんなことを思うくらいだ。
ともあれ。まあこちらも怪我人はスロウが回復させたし、死者はスロウが蘇生させたしで会場の被害くらいだろうから、まあ終わりでもいいだろう。こう言っちゃなんだが、俺の思考も大分スロウ達に毒されてる感じがするな。
それでは、とグルグル巻きにされたイゼルブを引きずりながら三体は帰っていく。そんな連中の後ろ姿を見ながら、俺達も帰るか、と会場を後にするのだった。
「エミル君エミル君、これ見て」
そんな完全な無駄骨折の出来事が起きてから一週間くらい後。村のギルドでいつものように暇潰しをしていると、お姉さんが送られてきた書類を見て苦い顔を浮かべていた。
そうしながら俺に差し出してきたそれを受け取り、読む。
「えっと、何々……魔王級認定見直しの見直し?」
「この間の会場爆破がよっぽど効いたみたいだね」
だとしてもなんだこれ。前回の見直し制度は制定されたルールがあまりにも杜撰であり、到底冒険者からの理解が受けられるものではなかったため、再度の改正を行うに至ったわけです、とか書かれてるけど、そう思うんなら最初からやるなよ。
はぁ、と溜息を吐きながらそんなことを思った俺の表情を見てお姉さんも察したのか、まあそうなるよね、と苦笑していた。
「エミル君も抗議したんだったっけ?」
「したよ」
そりゃもう思い切り。ふざけんな、と。俺の大事な仲間を虚仮にしやがって、と。
そんな勇者級の抗議、というよりも文句だな、を受けたギルドは文字通りすっ飛んできて平謝りである。現状増えている粗雑魔王級にたやすく対抗出来る貴重な戦力として存在している勇者級にへそを曲げられでもしたら、とそれはもう土下座せんばかり、というか土下座された。
何でも、俺の仲間のその扱いを受け、俺以外の勇者級パーティーが二組、抗議を送ったらしい。その二組とはバクス、ヴェル、メリィの王国勇者パーティとクロード、リナ、アスカの教国勇者パーティ。どちらもなくてはならない面々である。
加えると、話を聞きつけた月の大聖女と妖精姫も抗議をしたとかなんとかで、抗議そのものではなかったが、傀儡人形も何かやったらしい。そんな大国三国所属の頂点からのそれを受けた上に、さらに悲鳴彫刻家とか竜のおっさんとかの所属してない属性頂点が文句つけに行ったとか行かなかったとかいう話も出て、ギルドはもうおしまいだとばかりに大騒ぎなったらしい。
そうして最終的にギルドの手伝いもしている迷宮の管理者にどうにか執り成せないだろうかと泣き付いて今に至る、と。
「というか、迷宮の管理者がいてなんであんなことになったんだ?」
「話によると、ギルドの上層部の派閥争いで独断専行したとかって言われてるね」
「だからあんな杜撰だったのか」
だとしても末端ももう少し考えるところあっただろと思わないでもないが。あれか、その派閥の連中でやったからちゃんとした職員はそこに回されてなかったとかか。
お姉さんに尋ねてみると、まあそうかもしれないね、と返された。実際新しい見直しはそんな会場に行かなくても各ギルドで出来る。まあ書類と確認という手順は変わっていないが、その辺りもある程度の裁量を職員で設けるという形だ。
「これはこれでお役所仕事なんだけどね」
ははは、とお姉さんは笑う。まあ変に特設された認定会場とかに向かわなくていい分俺達としては助かるが。
「ところで、結局魔王級の見直しはどうなったんだ?」
「ああそれ? まあこれも結構雑でね。ちゃんとした魔王級はそのままで、エミル君達が言ってた粗雑な魔王級レベルを、準魔王級っていう認定にするらしいよ」
つまり、魔王級が増えているわけではなく、上級より上ではあるが魔王級ほどではないモンスター、準魔王級が増えていますよ、という体に変えたわけだ。うん、何の意味があるか分からないな。
「あ、でも一応基準があるみたいですね。上級冒険者パーティー複数かっこ最低三パーティかっことじ、ならば討伐可能」
横にいたスロウが基準を読み上げる。まあつまり上級者パーティーだと束でもキツイのが魔王級、束なら倒せるのが準魔王級という扱いになる、と。まあ確かにこれまで戦った粗雑な魔王級はそのくらいの強さだったな。
「一応考えてはいるのね。迷宮の管理者様の意見なのかしら」
お姉さんの隣で書類を纏めていたアリアも会話に参加してくる。その割にはお役所仕事だし、他の頂点への執り成しとちょっとアイデア出したくらいなんじゃないか。そう返し、それでも十分属性頂点としては人に関わってるしと俺は続けた。
確かにそうね、と納得するアリアから再度書類に視線を移す。まあモンスターの魔王級見直しの件は分かった。となると、後は使役モンスターや街で暮らす魔物の認定だ。
「書類は来てるよ。どうする? もうこの場で認定しておく?」
はいこれ、と前回とそう変わっていない書類を六枚手渡してくる。これ貰って思ったけど、クーヤやラティは向こうで認定してもらってもいいんじゃないのか。そんなことをお姉さんに話すと、まあそれでもいいけど、と返された。
「魔物の住人じゃなくて使役モンスターとしての認定だから、結局エミル君は立ち会わなきゃいけないよ」
「お役所仕事め」
「そこは私もギルド職員なので諦めてもらって、ね?」
ぐぬぬ。まあこの間の受付と比べればちゃんと説明してくれるからお姉さんのほうがなんぼかマシではあるんだけど。
しょうがない、と横のスロウに頼んでクーヤ、コイナ、ラティを呼んできてもらった。今度は大丈夫なんでしょうね、とラティはジト目でお姉さんを見ている。
「そこは大丈夫。認定するのは私だから。エミル君のパーティーメンバーはよく見てるしね」
そういうわけで、とスロウ、アリア、シトリーを魔王級認定。次いでラティも当然魔王級認定で判を押した。どうでもいいが、そんな軽く魔王級認定して大丈夫か?
「これまでの実績があるから問題ないよ。実践もまあ、いつも見てるし」
そうしながら、クーヤとコイナを準魔王級に認定するお姉さんを見てちょっと待ったと声を掛けた。いくらなんでもそれはどうなんだ。そう思ってつい口を挟んだが、お姉さんは何か問題あるのかと言わんばかりである。
「この間の戦闘で魔王級と戦ったんでしょ? ただの上級モンスター認定は逆に失礼なんじゃない?」
「そ、うかな……?」
まあ確かにこの二体はスロウ達やラティと比べると強さはちょっと劣る。が、普通の上級モンスターと比べれば正直実力は上なのは間違いない。成程、新しく出来た準魔王級が丁度いい感じなのか。
「はい、完了。あ、今お役所仕事だなって思ったでしょ」
「まあ、割と」
「そこら辺はしょうがないんですぅ。……でも、まあエミル君たちが強いのを一番間近で見ているギルド職員は私だから、そこは信頼して欲しいな」
「いや、そこは疑ってないけど」
そう言うと、じゃあこれからも頑張ってね、とお姉さんは笑う。まあ適当にな、と返すと、お姉さんはそれでも苦い顔せず、いつものエミルくんだねと微笑んでいた。
認定、最初からこれなら何の問題も起きなかったのに。そんなことを思いながら、ついでだしと居座るクーヤ達の騒がしさを俺は聞いていた。