幼馴染の擬態した虫が聖女とか言われた   作:負け狐

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やはり力技、力技は全てを解決する


第百二十三話

 しかし、そういえば。本物のエミル、とスライムは述べた。今の状態だと俺のコピーは偽物でしかないということなのだろうけど、だとしても意味がよく分からない。捕食して本物がいなくなれば必然的に、とかそういう意味か。

 

「どーしたんですか?」

 

 何かを考え込むような仕草を取っていたのに気付いたらしいスライムが俺に尋ねてくる。が、浮かんだ疑問を素直に答えてくれるはずもないだろうから、何でもないと返した。

 

「そーですか? わたしはエミルが大好きですから、聞かれたら答えますよ?」

「その顔と声で言うんじゃねえ」

「きゃあ、怖い」

 

 わざとらしく怖がったスライムは、それで聞かないんですか、と俺に聞いてきた。

 

「……本物の俺が作れるってさっき言ったな」

「ああ、そーゆーことですか。ええ、そうですよ。エミルを食べちゃえば、エミルの魂が手に入る。そーすれば、エミルの能力を手に入れたわたしが、完全なコピーのエミルを作れるって寸法です」

「意味が分からん」

「わたしは捕食した相手の能力をもらえるってことです。そして、その情報で、本物と同じ能力の完全なコピーが作れちゃうんですよ。例えば、こーやって」

 

 ずる、と冒険者の姿をしたスライムが出てくる。多分消息を絶った中級冒険者だろう。魔法使いが魔法を放ち、剣士と弓使いがそれぞれ物理で俺に襲い掛かる。その動きはなるほど、村人達とは違いきちんとした冒険者の動きだ。

 

「まあ、村人も完全なコピーではあったんですけどね、でも所詮ただの人ですし」

 

 どうですか、と俺に自慢気に聞いてくるスライムだったが、正直この程度ならば何の問題もない。魔法使いの攻撃を躱し、弓使いの放った矢を切り払うと、俺は剣士をそのまま一刀両断にした。返す刀で弓使いに肉薄、横薙ぎに切り払うと、最後の魔法使いも追加の呪文を放たれる前に袈裟斬りにしてしまう。切られた冒険者は、やはりドロリと溶けていった。

 

「あらら。やっぱり中級冒険者だと勝てませんね」

「これがお前の最大戦力だって言うならな」

「仕方ありません。能力を完全にコピーできなくても、こっちのほうが強いみたいですから」

 

 そう言うと再びスロウとアリア、シトリーを量産した。こっちを見てニコリと微笑むスロウやシトリーを模したスライムを見ながら、俺は苦い顔を隠そうともせず剣を構え直した。

 

「あ、そうそう。どーせなので、こんな趣向も用意しましたよ」

 

 そう言うとスライムの本体に人影が一つ作られる。その人影を見た俺は、思わず目を見開いた。見慣れているその顔は、自分と同じもの。まあなんで今まで出さなかったのかと思わないでもないが、スライムのコピー先としては、能力がなければ近接役としてシトリーとそう大して変わらないからだろう。

 だというのにわざわざ俺を一体コピーした理由は。

 

「さ、『エミル』、出番ですよ」

「スロウ! 後ろだ!」

「え? 後ろ?」

 

 突然叫んだ俺の声に反応したスロウが振り向く。が、当然ながらそこには何もなく、隙だらけになったスロウを偽シトリーが大剣で吹き飛ばした。ふげ、と声を上げてすっ転がるスロウ。まあ自身にかけている支援のおかげでダメージは殆ど無さそうなのが幸いか。

 

「アリア、気を付けろ! 右にいるぞ!」

「右? 右なんて何も」

「シトリー! 受けるな! 飛んで避けろ!」

「え? あ、りょ、了解だよぉ……」

 

 アリアはいもしない右に注意を割かれ偽スロウの一撃が腹に命中、その隙を狙って偽シトリーの追撃が飛んできた。嘗めるな、と偽シトリーを爆破したアリアは、一体どういうことだとこちらを睨んだ。

 そしてシトリーも変な避け方をしたせいで隙を晒してしまった。偽アリアの粘液攻撃を食らってしまい、そのままゴロゴロと地面を転がる。

 

「スロウ! アリア! シトリー!」

「どーしたんですかいきなり」

「何なのよ、もう」

「わけが分からないよぉ……」

「違う、今のもさっきのも俺じゃない!」

 

 慌てて叫ぶ。そうしながら、俺の偽物がいるから気を付けろ、と三体に告げた。

 舌打ちをする。そのまま、向こうででたらめなことを叫んでいる俺をぶった切らんと一気に距離を詰めた。

 

「させないわ」

「エミルくんは、ワタシが守るよぉ……」

 

 アリアとシトリーのスライムがそれを阻む。邪魔だ、と偽アリアも偽シトリーも一刀のもとに斬り伏せた。正直見た目が問題なだけで、強さとしては村人だろうが冒険者だろうがスロウ達だろうが誤差だ。

 だから、眼の前の俺も似たようなものだろう。そう思い切り裂かれ溶けるアリアやシトリーを一瞥せず、俺の偽物も一刀両断にする。

 

「がぁっ」

「ただ煩いだけだったな」

「うーん。やっぱりそう上手くは行きませんか」

 

 本体の傍らで佇むスライムが考え込む仕草を取る。もう一回試してもいいですけど、と本体を眺めたスライムは、再度俺のコピーを作り出すと、でたらめな指示を叫ばせ始めた。

 が、今度はそんな俺の話を聞きもしない。スロウも、アリアも、シトリーも、気にすることなく眼の前の偽物を排除しに掛かっていた。

 

「あれ? もう聞かなくなっちゃったんですか」

 

 もう、と不満げに唇を尖らせたスライムは、じゃあ別に出す意味もないですね、と本体の触手で絡め取ると握り潰した。偽物とはいえ、自分自身がそんなぞんざいな扱いをされると何となくムカつく。

 

「大丈夫ですよ。もういい加減数では駄目だということも分かってきたので」

 

 本体の触手が何本が蠢き始める。そろそろ本体が動きますか。そんなことを言いながら、スライムはゆっくりと手を掲げた。

 

「え? いやぁ!」

「アリア!?」

 

 眼の前の偽アリアが触手に絡め取られる。ギリギリと圧迫され、藻掻き、苦しむ。苦悶の表情を浮かべたアリアは、俺に助けを求めるように手を伸ばしてきた。

 

「い、やぁ……エミル、た、すけ」

 

 ぶしゃ、と眼の前でアリアが潰れた。伸ばされた手はだらりと垂れ下がり、そしてドロドロと溶けていく。その粘液を吸収した触手は、次のターゲットとして呆気に取られている表情の偽シトリーに狙いを定めた。

 

「や、や、だ……エミルくん……ワタシぃ……」

 

 同じように絡め取られた偽シトリーも先程と同じように握り潰される。果汁を絞るように偽シトリーを粘液へと変えた触手は、そうしてどんどんと偽物を潰して吸収していった。

 当然その中には偽スロウも多数いるわけで。思わず手近にいた偽スロウを触手の攻撃から庇ってしまった。いや、これは本体に吸収させないための方法であって。

 

「エミル、ありがとうございます」

 

 それでもまあ、スロウが無事でよかった。そんなことを思っていた矢先、別の触手に偽スロウが捕らえられた。

 

「あ、え、エミル、や、だ、エミル、だいす」

 

 ぐしゃりと偽スロウが潰れた。ドロ、とさっき俺に笑顔を見せていたスロウが溶けていく。そんな光景を見て、やっぱり克服できてないみたいですね、とスライムが笑っていた。

 

「そんな状態で、この本体を倒せますか?」

「……ふざけるなよ、人の精神散々弄びやがって」

「食べやすいようにしているだけですよ? 人間だって食材を料理しますよね? それと一緒です」

 

 そう言って笑ったスライムは、さて、と本体に視線を向けた。分裂していた余計なものも吸収しましたし。そう言葉を続けると、命令を下すように俺達へと手を突き出す。

 

「エミル!」

 

 ズズズ、と動き出す本体、その動きを確認したのか、スロウ達もこちらへとやってきていた。どうやら偽物はほぼ全て倒したか吸収されたかしたらしい。残っているのはあの本体の横にいるスロウを模したスライムくらいか。

 

「さて、どーします?」

「どうするもこうするも」

「でも、中に村の人がいるんだよねぇ……」

 

 正確には魂だが、それが中に留まっている以上、あいつをぶち殺すと必然的に村の住人も殺してしまうことになる。そんなような話をスライムはしていたが、しかしそれをどこまで信用していいものか。

 

「本当のことですよ? 私は食べた村の人の魂、ぜーんぶ保管してありますから」

 

 クスクスと笑うスライムは、では早速と触手を俺達へと向かわせた。巨大な質量とスライムらしからぬ早さを持ったそれは、正直単純な脅威でいうならさっきまでの偽物より数段上だ。

 偽物の厄介さとこの本体の攻撃力を考えると、成程魔王級だと認定されてもおかしくはない強さを持っている。とはいえ、ならば対処出来ないかといえばそんなこともない。魔王級、準魔王級とさんざん戦ってきた俺達にとって、むしろこっちの方が戦いやすいくらいだ。

 触手を回避し、叩き切る。切れた触手はビクビクと震えていたが、別の触手がそれを回収、吸収して再び生えてくる。

 

「それなら!」

 

 アリアが触手を爆発させる。木っ端微塵になった触手は回収不能だったのか、そのままドロリと他のスライムと同じように地面の染みになった。

 

「む。やりますね。でもまだまだ触手はありますし、本体を攻撃しちゃうと村人の魂も傷付いちゃいますよ」

 

 スライムは余裕を崩さない。確かに向こうの言う通り、村人の魂が人質に取られてる限り俺達はスライムの本体を攻撃することが出来ない。いや、厳密には気にせず攻撃しても何の問題もないとは思うのだが。実際問題、魂しか残っていないのならばもう既に死んでいると同義で、今ここであいつを倒したとしても俺達が村人を殺したことにはならない。

 そんなことは頭では分かっているが。どうにも、魂があれば蘇生出来るんじゃないかと考えてしまう。

 触手の攻撃を躱し、断ち切り。それらを吸収して再生する触手を、あるいはアリアの爆発で消し飛ばしつつ。ジリ貧になってくるこのやり取りを続けながら、俺達はなんとかして本体と村人の魂を引き剥がせないかと考えていた。

 

「んー」

 

 そんな中、難しい顔をしていたスロウが、じゃあちょっとやってみますかと拳を握る。何か方法でも思い付いたのか、そう問い掛けると、思い付いたと言うか、と頬を掻いた。

 

「まあ出来るかどうか分からないんでものは試しですけど。エミル、アリアちゃん、シトリーちゃん。わたしをあの本体の場所まで連れてってください」

 

 スロウのその言葉に、了解と頷いた俺達は、迫りくる触手を弾きながら一気に距離を詰めた。目指すは本体、そこにスロウを連れて行くことだ。

 

「ん? どーしたんですか? もう観念して村人ごと本体を殺す覚悟でも持っちゃいましたか」

 

 それは厄介ですね、とスライムが苦い顔を浮かべる。そうはいかない、と触手の勢いが強くなった。が、そんな程度では俺達は止まらない。何より、別に俺達全員が辿り着く必要がない。

 

「スロウ!」

「はい、ありがとうございます、エミル、アリアちゃん、シトリーちゃん」

「それはいいけど、どうするのよ」

「何か方法が、あるのぉ……?」

 

 一足先に本体へと辿り着いたスロウは、その巨体を見上げ、成程と頷く。そうしながら、ゆっくりと両手を本体へとかざした。

 

「これならいけるかもしれません」

「え? なにを――」

「その場で、《リザレクション》!」

 

 突然のことにスライムが呆気に取られている中で、スライムの本体から村人が一人吐き出された。スライムも驚愕に目を見開いているところからすると、あの村人はスライムが作った疑似餌の偽物というわけでもないらしい。

 え? つまりスロウ、スライムの中の村人の魂をその場で直接蘇生させたってことか? そんな事が可能なのか? あれ多分グッチャグチャに混ざってるだろ。

 

「流石に集中しないとキツイですけどね。――いきます、《リザレクション》! 《リザレクション》! 《リザレクション》! 《リザレクション》!」

 

 スロウが呪文を唱えるたびに村人が本体から飛び出してくる。ドサドサドサと次々に吐き出されるそれを、スライムは呆気に取られたように眺めていた。ちなみに俺達も流石についていけなくて動きが止まっていた。

 

「《リザレクション》《リザレクション》《リザレクション》《リザレクション》」

「ちょ、ちょっと待ってくださいよ! 何で、何でそんな事が出来るんですか!? 捕食して魂だけになった村人を? 蘇生する? そんなことが!?」

「出来るんだよなぁ、こいつなら」

 

 いや、知らなかったけど。でもスロウならそのくらい出来てもおかしくないんじゃないかという謎の信頼感がある。まあ隠れ潜む百花が以前属性頂点の後継者にしようとしてたくらいだし。あの時は何言ってんだと思っていたが、ここまで来ると割と本気で後継になれそうな気もしてくるから怖い。

 そう言っている間にも村人はボロボロと吐き出されてくる。それに伴い、スライムの本体がどんどんと小さく弱くなっていくのも感じた。捕食した魂で強化されていたのだから、それがなくなれば必然的に弱体化するわけだ。

 

「はっ。こ、これ以上はやらせません!」

 

 我に返ったスライムは慌てて触手でスロウを排除しようとするが、その頃には一足先に動いていた俺達がそれを阻む。その間にもどんどん村人は復活していく。

 ならば、と吐き出された村人を再度回収しようと本体が動き出すが、一人再吸収する間に五人くらい吐き出されていくので結局弱体化は止まらない。スロウを妨害することは出来ない、再吸収は間に合わない。詰みだ。

 最終的には昼間沼にいたくらいの大きさになってしまったスライムの本体と、何十人もぶっ倒れている村人という異様な光景が出来上がった。

 スライムは本体を掴み上げ、慌てて逃げ出す。逃がすか、と俺達はそんなスライムを追いかけた。

 

「お、っとぉ」

「スロウ!?」

「流石に疲れました。さ、後で追いつくんでみんなはスライムを追ってください」

 

 その途中、がくりと膝から崩れ落ちたスロウを慌てて支えたが、心配するなと手をひらひらさせたので、分かったと頷きスライムを追いかける。どうでもいいがあれだけやって疲れたで済むんだ。

 ともあれ。そうして追い詰めた先はスライムがいた沼。スライムはキョロキョロと辺りを見渡し、沼に生息しているスライムを吸収しようと本体を沼に投げ入れた。

 

「この辺のスライムを吸収した程度じゃ、そう大した強化にもならないだろ」

 

 剣を構える。それに合わせるように、アリアは扇を、シトリーも大剣を構えた。

 

「ひっ。え、あ、そ、そーです。村人が全員復活したっていうことは、わたし、誰も殺してませんよ。ね? だ、だから」

「だから何だ? お前を見逃したら、また同じことを繰り返すだろ?」

「し、しません! もう人間は食べません! エミルの言うことも聞きますし、ほ、ほら、この体、好きにしてくれてもいーですから」

 

 むに、とスロウの姿のまま胸を持ち上げる。それを見て俺は溜息を吐いた。この期に及んでそんな色仕掛けが通用すると思ってるのかよ。

 

「まあエミルなら通用しそうよね」

「スロウちゃんの姿に、とことん弱いんだよぉ……」

「ぐふぅ」

 

 なんか横にいた味方から攻撃が来たんですけど。いやまあ、確かに今回はスロウの偽物に思い切り何度も引っ掛かりはしたけど、でももう流石にここまでくれば多少は耐性が出来てくるわけで。

 

「……本当にもう何もしないんだな?」

「ほらまた」

「いつものぉ……?」

 

 違う、スロウの姿に絆されたわけじゃない。とはいえ、まあ完全にスロウのおかげとはいえ村人は全員助かったし、もうこれ以上何もしないと言うなら。

 

「本当です! ほ、ほら! もう何もしません!」

 

 そう言って両手を広げる。そんなスライムを見て、俺は小さく溜息を吐いた。分かった分かった、そう言いながら俺はくるりと踵を返す。

 そのタイミングで、スライムの本体が俺に襲い掛かってきた。沼のスライムを吸収して少し大きくなっていたそれが、俺に覆いかぶさって捕食しようとしてくる。

 

「エミル!?」

「エミルくん……!?」

「一応言っておくけど」

 

 その捕食は、俺が放り投げた魔力を込めシトリーの能力を起動させた鞘に引っ張られたことで不発に終わった。べしゃ、と地面に着地したスライムの本体を、俺は真っ直ぐに見詰める。

 

「流石にこれを見逃すほどお人好しじゃない」

 

 改心なんかしないって分かってたしな。そんなことを言いながら、俺はスライムの本体に剣を振り下ろす。

 

「や、やめて! もう本当に何もしませんから! 何でもしますから! だから――」

 

 斬、とスライムの本体を真っ二つにした。今度こそ本当にとどめになったのか、スライム本体もドロリと溶けて粘液へと変わっていく。

 そして。

 

「あ、ほ、本体が……」

 

 呆然とそれを見ていたスロウの姿をしたスライムも、やがてゆっくりとその姿が崩れていく。

 

「いやぁぁぁぁ! 助けて、死んじゃう! 溶けちゃう! エミル、お願い! わたしをたすけ――」

 

 ぐじゅり、とスライムの腕が溶けた。スロウと同じ顔、同じ体が、そのままドロドロと溶解していく。ぐちゃり、と粘液になったスライムは、そのまま地面の染みになり、消えていった。

 

「おまたせしました。あれ? もう終わっちゃいました?」

 

 そのタイミングでスロウがやってくる。ああ、きちんと止めを刺したよ。そう伝えると、まあそうですよね、とスロウは頷いた。

 

「流石にあれを許すことはないでしょうから」

「当たり前だ」

 

 そう言いながらアリアとシトリーを見る。ちょっとバツの悪そうに視線を逸らしながら、でもエミルはスロウの姿に弱いし、と呟いていた。その辺りは確かにそうなので言い訳も出来ない。まあじゃあお相子ってことで。

 そんなことを言いながら、さてでは村に戻ろうかと俺達は歩みを進める。

 

「村自体はそのまま残ってるし、被害自体は最小限になったか?」

「そーですね。村長の家とその付近が壊滅したくらいじゃないですか?」

「……まあ、最小限ね」

「うんうんうん……」

 

 村人全員が食われていたのに建物の被害が一つや二つで済んだなら最小限だろ。そんなことを思いつつ、ふと隣を見て、そしておもむろにスロウを抱き上げた。

 

「わわっ、どーしたんですか?」

「どうしたもこうしたも、お前まだふらついてるじゃないか」

「あはは、やっぱり結構疲れましたしね」

 

 そのままお姫様抱っこでスロウを支えると、さあ戻るぞと再び歩き出す。スロウも最初は驚いていたものの、すぐに俺に体を預けてきた。

 

「ねえ、エミル」

「何だ?」

「わたしの疲れが取れたら、エミルがわたしの偽物にやられたようなこと、しましょうか?」

「へ?」

「えっちなこと、してもいーですよ」

 

 スロウのそんな発言に、思わず転びそうになったのは御愛嬌ということで。

 

 

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