幼馴染の擬態した虫が聖女とか言われた   作:負け狐

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何とは言わないが
シトリー>>スロウ≧ラティ>アリア≧コイナ>クーヤ
くらいのイメージ


第百五十九話

 リゾートの日々はあっという間に過ぎ、ついに最終日。スロウ達の水着姿も見納めだ。

 

「エーミル。えっちなこと考えてますか?」

「何でだよ」

「じっとわたしのおっぱい見てたから」

「水着を見てたんだよ」

 

 しかしそれはそれで確かにエッチなことを考えていたと思われてもおかしくない。何だか釈然としないが、とりあえずスロウの言葉に渋々頷くことにした。

 そんな俺の横にスロウが座る。そうしながら、遊びましたね、と呑気な声で俺に述べた。

 

「こーゆー風に羽根を伸ばすの、初めてくらいじゃないですか?」

「まあ確かに。みんな揃って遊ぶってのは初めてだな」

 

 スロウ、アリア、シトリー、クーヤ、コイナ、ラティ。この面子で何も考えずに遊ぶ、だなんてことは間違いなく初めてだ。

 

「今度はセフィちゃん先輩も誘って遊びましょうよ」

「そうだな」

 

 とはいえ、婚約者がいる令嬢とこういう遊びをしていいものかという心配もある。まかり間違ってセフィの水着がポロリした日にはフレデリクさんに殺されても文句は言えない。

 その前にラティがキレそうだが。

 

「エミルがえっちなこと考えてる」

「……これはエッチなことに入るんだろうか」

「割と?」

 

 じゃあやめよう、はい、やめやめ。セフィと遊ぶのはもうちょっとそういうハプニングのない場所にした方がいいな。あるいはフレデリクさんも一緒にだな。

 そんなことを思いながら話題を変えるように、お前は泳がないのか、とスロウに問い掛けた。今はちょっと休憩ですという返事をしたスロウは、そこで何かを思い付いたように小瓶を取り出す。

 

「そーいえば。本来海で遊ぶのって日焼け止めとか塗るらしいんですよ」

「あぁ、そうだな。俺も日焼けして結構痛い」

「エミル、日焼けしたっていう割にあんまり黒くないですね」

「そういう体質なんじゃないか?」

 

 比較対象がいないので分からない。いかんせん周りの連中は虫なりなんなりの擬態なので、日焼けするという現象と無縁なのだ。コイナは擬態ではないが人型モンスターなので人間の範疇には収まらないし。

 それはいいんだが、それでその日焼け止めがどうしたんだ?

 

「塗ってください」

「何でだよ」

「そーゆー体験をしてみたいんですよ」

 

そう言ってビーチの敷物の上にうつ伏せにになる。水着の紐をゆっくりと解き、じゃあお願いしますね、とスロウは述べた。

 お願いしますったって、何をどうすりゃいいんだ? とりあえず小瓶の日焼け止めを手に出して、両手の平で伸ばす。そうして、スロウの背中にその手をそっと当てた。

 

「ぁん!」

「な、なんだよ」

「くすぐったいです」

「知らん。……大体、塗らなくても別に何の問題もないんだから、塗り残しとか気にすることもないよな」

「へ? わ、きゃ、ゃん、エミルっ、ちょっと、もう少しやさしく、あぁん!」

「変な声出すなよ。いかがわしいことしてるみたいだろ」

「ラティはそれでも全然構わないわよ」

 

 ば、と振り向く。いつのまにか湧いていたラティが非常にいい笑顔で俺がスロウに日焼け止めを塗り込んでいるさまを観察していた。

 何しに来た、とジト目で問い掛けると、何しにも何も、とラティは視線を横に向ける。

 

「一旦休憩。でみんないるわよ」

「な!?」

 

 ラティにしか意識が行ってなかったが、確かにアリアもシトリーもクーヤもコイナもいる。アリアは何やってんだかという顔で、クーヤとコイナは仲がいいようで何より、といった感じで。

 シトリーだけは何だかあわあわしていたが。いや待て、一応言っておくがビーチでエッチなことをしようとしていたわけじゃないからな。

 

「でも、スロウちゃんおっぱい丸出しだしぃ……」

「あ」

 

 そういえば背中に日焼け止め塗るって話で水着の上の紐解いたんだった。ラティ達が来たから体を起こしたスロウは、成程確かにおっぱい丸出しである。シトリーには及ばないが十分なボリュームを誇るそれが、がっつりしっかりたぷんと大きく丸くて。

 

「エミル。見過ぎです」

「はっ。わ、悪い」

「別にエミルにならいくら見られてもいーですけど、ちょっとこの場では」

 

 そう言っていそいそと水着をつけ直すスロウ。その恥じらいが何だか無性に可愛くて、俺はスロウをギュッと抱きしめた。ラティが騒いでいるが、まあ気にすることはないだろう。

 そんなことをしながら、それで結局何をしていたのかという話に戻る。スロウに頼まれて日焼け止めを塗っていたと素直に答えると、そこにいた面子は成程と頷き、そして首を傾げた。

 

「別に日焼けしないわよね?」

「何か塗ってみたかったらしい」

 

 なんだそれ、と呆れたような表情を浮かべたアリアは、次の瞬間に何かを思い付いたとばかりの顔になる。そうしながら、ねえエミル、と俺に声を掛けた。

 

「あたし達も日焼け止め塗って欲しい、って言ったら塗ってくれる?」

「嫌だよめんどくさい」

「あら残念。やっぱりスロウだからなのね」

「ぶっちゃけスロウ相手でももう次はやらん」

「えー! 何でですか!?」

「だから面倒くさいんだよ。別に塗っても塗らなくても変わらないんだから無駄だし」

 

 あと何だかいかがわしいことをしている気持ちになってくるので俺の精神に悪い。スロウ相手ならまだマシだが、もしアリアやシトリー相手にそういうことをしてしまうとそれは流石に、となってしまうし。

 ともあれ。変なことをやっていないで普通に遊ぼう。そんなことを思った俺は、スロウを連れて海へと入る。もう今日で終わりなんだから、目一杯楽しんでおこう。

 

「そーですね。あ、でも」

「何だよ」

「岩陰でえっちなことする、とかそーゆーのも体験しておきます?」

「脳内ピンク芋虫」

「言い方が酷い!?」

 

 酷くないよ、むしろ当然だ。

 そんなこんなでリゾート最終日の海を堪能し、リゾート最終日の温泉へと移動。

 何だかもうお約束のように全員混浴に現れるので、俺も段々慣れてきた気がする。いや、そう思い込もうとしているだけな気がしないでもないが。そもそも散々見ているはずのスロウの裸にも慣れていないんだから、他の女性陣の裸なんか慣れるはずもないか。

 はぁ、と溜息を吐きながら体と頭を洗う。思えばあっという間だった。遊んで遊んで修行して戦闘して。何だか色々なことをギュッと煮詰めた四日間だったような気がする。

 

「どーしました?」

「ん? いや、そうだな。スロウは楽しかったか?」

「楽しかったですよ。聞くまでもないです」

「そうか。それならよかった」

 

 そんなことを言いながら、他の面々に聞いてみる、今回のリゾートは楽しかっただろうか、と。

 

「楽しめたわよ」

「楽しかったよぉ……」

「堪能」

「勿論よ」

 

 アリア、シトリー、クーヤ、ラティはそう述べる。そうして最後、コイナは。

 

「はいっ。非常に楽しかったです」

 

 そういって満面の笑顔で答えてくれた。一番色々あったであろう彼女がそう答えてくれるのならば、まあこのリゾートは良いものだっただろうと言えるはずだ。

 ギルドのチケットでなし崩しにやってきたバカンスだったが、こういうのもたまには悪くない、とそんな風に思えた。

 

 

 

 

 

 

 帰りはいっそ《テレポート》で、とも思ったのだが、帰りの便まで含めてリゾートのチケットだと言われたので素直にそれに乗る。段々と小さくなっていく島を見て、ああ終わりだな、とほんの少し寂しい思いも湧いていた。

 そうして王都の飛竜港に到着。ここからラティは教国へ、クーヤは帝国へ、コイナはベルンシュタインの城下町へそれぞれ《テレポート》で送っていき、残った俺達もスロウの《テレポート》で村に帰る。

 なんだかんだ疲れていたのだろう。冒険の終わりとはまた違う心地よい疲労を感じながら、俺はベッドに飛び込み。次に起きたのは翌日だった。

 

「あ、おはよーございますエミル」

「おう。お前も昨日は寝てたくちか?」

「ぐっすりでしたね。シトリーちゃんはまだ寝てるみたいですし」

 

 はいどうぞ、と朝食を出してくれるスロウにお礼を言いながらそれを食べる。そうしながら、これでさていきなり冒険者に戻れって言われても中々厳しいよな、とぼやいた。

 

「そーですね。ぶっちゃけわたしもまだリゾート気分抜けてないですし」

 

 そう言いつつ、まあどうせそうそう依頼なんか入りませんよ、とスロウは笑った。まあ確かにそうなんだけど、そういう時に限って、とかありそうなのが嫌なんだよな。

 とりあえず行ってみるか、とスロウと一緒にギルドに向かう。おかえり、と声を掛けてくれたマイア姉さんにおみやげを渡しつつ、あれ、と周囲を見渡した。

 

「アリアちゃんなら今日はお休みしてもらってるよ。どうせいつも通りのギルドだしね」

 

 俺の視線に気付いたのか、お姉さんはそう言って笑う。まあギルドの手伝いもしながら冒険者も、っていう忙しい日々を送っているアリアにはそういう休暇は必要だ。

 そんなことを思いながら、じゃあ俺達への依頼もなさそうだな、とお姉さんに問い掛けた。

 

「そうだね。エミル君達がリゾートに言っている間も今も、その手の依頼は入っていないよ」

 

 そいつはよかった。そんなことを思いながら、じゃあ暫くはのんびり出来るな、と俺はギルドの椅子に腰を下ろす。

 そんな日々を送っていた俺達だったが、今日はどうやら違うようで。

 

「あ、エミル君。依頼入ってるよ」

 

 三日ほど経ったある日、いつものようにギルドでだらけていた俺に、お姉さんがはいこれ、と依頼書を出してきた。勇者級への依頼ということはまあ厄介事だよな。そんなことを思いながらそれに目を通して、あれ、と思わず声が出た。

 依頼者の名前は、セフィーリア・フォン・ベルンシュタイン公爵令嬢。

 

「あれ、セフィちゃん先輩から依頼ですか?」

 

 ひょこ、と横から覗き込んだスロウが、じゃあ絶対受けなきゃ駄目ですねと拳を握っている。まあ確かに、普段から世話になっているセフィの依頼となれば受けない理由はない。というか、わざわざ依頼なんかにしなくても頼みがあるって言えば俺達は別に一も二もなく受けるんだけど。

 

「一応勇者級になったから、その辺りはきっちりしておこうってことかもしれないわね」

 

 受けるのは確定、と内容も別段確認せずにさっさと依頼書を受理扱いにしたアリアがそんなことを述べる。まあ確かにその辺気にしてそうだからな。勇者級になって、流石に公爵令嬢お付の冒険者でいられなくなったから余計に、って感じか。

 まあとにかく、まずは行って話を聞いてみよう。そう述べると、スロウもアリアもシトリーも勿論と準備をする。スロウの《テレポート》で城下町へと移動すると、公爵の城へと早速向かった。

 

「依頼を受けて頂き、ありがとうございます」

「別に、セフィちゃん先輩との仲ですから。依頼なんて言わないでお願いでも全然いーんですけどね」

「ふふっ、ありがとうございますスロウさん。ですが、これはどちらかというと個人的なものですので」

「それこそ余計に依頼にする必要なかったんじゃないのか?」

 

 セフィの言葉にそう返すと、彼女は少し困ったように微笑む。そうしながら、まずはこれを見てくださいと立てかけてあったレイピアを手に取った。

 

「うわ」

 

 スロウが思わず声を上げた。まあそうだろう、セフィが愛用していた武器が、見事にへし折れている。何と戦ったらこうなるんだと思うほどの損傷具合であった。

 そんなセフィの後ろではコイナが同じように困った表情を浮かべている。セフィもコイナも何かあったのだろうか。そんなことを尋ねる前に、セフィがその口を開いた。

 

「これは、数日前の訓練で破損した私の武器です」

「訓練で?」

「はい。少し前から違和感を覚えてはいたのですが、気にするほどではないとそのまま使用していました。ですが」

「セフィーリア様との訓練の際、私のツタとのぶつかり合いで」

 

 魔王級に届いたコイナとの模擬戦で限界が来たらしい。まあ長く使ってればそういうこともあるよな。そんなことを思い、口にした俺だったが、セフィの表情が曇ったのでなにかおかしなことを言ったのだろうかと首を傾げた。

 ふう、と息を吐いたセフィが、部屋の片隅においてあった箱をコイナに持ってこさせる。それを開くと、そこには何本ものへし折れたレイピアが。

 

「……これは、どうしたのぉ……?」

「破損した武器の代わりに使った武器ですわ」

 

 曰く、壊れたレイピアに代わり新しい武器を用意したのだが、どれもこれもセフィの動きに耐えられずすぐに壊れてしまったらしい。

 

「でも、セフィちゃん先輩のところならもっとちゃんとした武器作れるんじゃないんじゃないんですか? ほら、エミルの悪徳の剣みたいな」

「エミルさんの悪徳の剣は特別な試作品。そして、その技術を転用して作られたのが先日破損した私の武器でした」

「でもそれなら、再度その技術で作れば」

「その結果がこれです」

 

 アリアの言葉に返すように、へし折れたレイピアを指差す。えっと? つまり悪徳の剣の技術を使った量産型ではセフィの動きに耐えられないってことか?

 何なの? 公爵令嬢って勇者級を超えた化物か何かなの?

 

「ご謙遜を。私ではエミルさんには敵いませんわ」

「毎度思うがその結果どこから出てくるんだよ」

 

 そうツッコミを入れたが、セフィには不思議そうな顔をされた。何でだよ。からかっているわけでもなく、何で心の底から思えるんだよ、おかしいだろ。

 

「なんにせよ、悪徳の剣の技術の量産型で駄目なら、それこそ悪徳の剣の技術そのものを使えばいいんじゃないのか?」

「それが問題なのです。実は、悪徳の剣の技術そのものは試作品でしたので、同じものが作れず」

「ん? じゃあこれを渡せば解析できるとか」

「ええ。少しお借りしてもよろしいでしょうか?」

 

 依頼ってそういうことか。そんなことわざわざ依頼にしなくても、それこそちょっと貸してくれって言いに来てくれればよかったのに。

 そんなことを思いながら悪徳の剣を渡す。それが既に剛腕の鍛冶師に鍛え直され別物になっていたので解析出来ない、と言われたのはそのすぐ後のことであった。

 

 

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