幼馴染の擬態した虫が聖女とか言われた   作:負け狐

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10章はここまで


第百六十三話

 剛腕の鍛冶師の工房にユニコーンとバイコーンの死骸を運んできた俺達だったが。工房の面々のまず第一声は、なんだこりゃ、だった。

 

「ユニコーンとバイコーンの魔王級。にしちゃ通常とは大分感じが違うな」

「やっぱりそうなのか?」

「そういう変わったのは割といるっちゃいるがな。ほれ、お前のとこのラティ、あいつだって普通のクイックシルヴァーの魔王級とは大分違うぜ?」

 

 それ以外のクイックシルヴァーの魔王級を知らないので何とも言えないが、まあ普通じゃないのは何となく分かる。性格的な意味なのか、とも一瞬思ったけど、そういうことじゃないよな、きっと。

 

「性格もそうだけどな。当たり前だが、普通の魔王級モンスターは乱暴で、人の命なんざ何とも思ってない連中ばっかだ」

 

 人の、とは言ったがまあ基本仲間以外どうでもいい、みたいな性格ってことだよな。

 

「何でわたし見ました?」

「いや、普通の魔王級の参考にしようかと」

「む。まあ確かにわたしは別に知らない人がどーなっても別にまあって感じですけど、それってそこまで言われるほど変じゃないですよね?」

「人間はそこら辺言うほど徹底してないからなぁ」

「むむー。最近はわたしだって見ず知らず助けてるじゃないですか。今回だって蘇生しましたよ。まあエミルがして欲しいだろうなって思ったからですけど」

 

 ふくれっ面で俺の胴をポカポカしてくるスロウを見て、可愛いなこいつと思わず抱きしめた。こんなことで騙されません、とか言う割に、そのまま抱きしめているとえへへと大人しくなる。可愛い。

 

「話の腰を折るようで悪ぃが、群れを作る性質がないモンスターは基本仲間も大切にはしないぞ。魔王級になると群れるっていう感覚がなくなるのか単独で行動するのも多いしな」

 

 だからこそ二体一組で戦っていたこいつは珍しい、とユニコーンとバイコーンの死骸を指差した。

 でも手下とか作る連中はいるだろ。以前戦ったコカトリスなんかはそうだった。バジリスクを手下にしてたし。

 後はそれこそ仲間集めてるイゼルブとか。

 

「まあ、魔王級は本当に特殊個体みたいなもんだからな。大まかな生態はそのモンスターに準じるが、それ以外の付加要素が多種多様だ。……この辺はもっと知識のあるやつに聞いてくれ、妖精姫とか、傀儡人形とか、月の大聖女とか、あとは迷宮の管理者や悲鳴彫刻家とかにな」

「聞けない頂点のほうが少なそうだな」

「頂の古龍の爺に聞くと説教臭くなるからな。隠れ潜む百花は言うまでもねぇだろ」

 

 でもってオレはその辺説明が上手くない。そう言って笑った剛腕の鍛冶師は、まあそんなことよりこいつだ、と騎士の死骸を再度見る。

 

「とりあえず中身の有無から確認だな」

 

 そう言って剛腕の鍛冶師はユニコーンとバイコーンから鎧を引き剥がしに掛かる。これで普通に人間の姿とか出てくるとちょっと気まずいとか思っていたが、どうやらそんなことはなく、そもそも鎧が体の一部になっているようで剥がすのも一苦労であった。中身は影で出来たマネキンのような素体のみ、そう思ったが、剛腕の鍛冶師はこれはいいと笑みを浮かべる。

 

「こいつはほぼ全身がオリハルコンだな。二体分を加工すれば相当の量が手に入る。セフィーリアの武器を作った分なんぞあっという間に取り返せるな」

 

 そう言って笑った剛腕の鍛冶師は、そうだ、と俺達を見た。いいこと思いつたとばかりに笑みを強くさせた。

 

「何ならこれ使ってお前らの武器も強化してやれるぞ」

「それは、いいのか?」

「それくらいやってもお釣りが来る量ってことだ。まあセフィーリアの武器ほど大量に使うわけでもなし、ちょっとした強化だけどな」

 

 どうする、と俺達に尋ねる剛腕の鍛冶師。いやまあ強化してもらえるんならば断る理由もないし、俺達は遠慮なくお言葉に甘えさせてもらうことにした。

 そうしてユニコーンとバイコーンから取れたオリハルコンで俺達の武器も強化された。とはいっても何か特別な性能が付与されたというわけではなく、純粋に基本能力が強化されたという感じだ。後はこれで壊れることはほぼ無くなったと思っていいらしい。

 そんな強化された武器を受け取り、俺達の今回の依頼もこれで終了。そう思っていたら、こいつを忘れるな、と大量の布を渡された。

 

「これは?」

「スロウの糸にアリアの鱗粉とシトリーの花弁を加えて作った特別性の布だ。加工自体は普通に出来るが、服に仕立て上げた後は相当の防御力を誇るぜ。このオレが保証する」

 

 ああ、これが例の。そんなことを思いながらそっと布に触れると、非常に柔らかな肌触りを感じる。これで本当にそんな服が出来るんだろうか、と心配になるほどだ。これじゃあまるで高級なドレスなりなんなりの素材のような。

 そこまで考え、あ、そうだ、とアリアを見た。ボロボロのドレスになってしまって下着がチラチラと見える状態のアリアを見た。

 

「何よエミル。あたしに欲情したの?」

「だから何でだよ。……この布、アリアのドレスを作るのにも使えないかって」

「あたしの?」

 

 スロウやシトリーとは違って、アリアの場合のドレスは自前で作り出しているわけではなく既製品を着ているだけだ。だから今のようにボロボロになるとそのまま。

 その心配を解消する手段として、アリアのドレスもこれで作れないだろうかと考えたのだ。

 

「あら、それはいいですわね。エミルさんの冒険者の服だけでなく、アリアさんのドレスの仕立てもまかせてください」

「え、ちょっと、セフィーリア様!?」

「なんだよ、自分で提供した素材だから自分で使えない、とか言わないよな」

「あたしの部分はともかく、スロウとシトリーの方よ。あの娘達はあんただから素材を提供したんでしょ?」

「え? 別にアリアちゃんが使うのも全然いーですよ?」

「ワタシも問題ないよぉ……」

 

 むしろ何が問題なのだ、という表情を浮かべるスロウとシトリーを見たアリアは、はぁ、と溜息を吐いた。そうしながら、そういうことならばお願いしますとセフィに頭を下げる。

 これで本当に依頼は終了。なんだかんだ剛腕の鍛冶師に色々と迷惑を掛けたので謝罪とお礼を述べると、気にするなと笑っていた。強いやつに強い武器を作るってのは結構気持ちいいもんなんだからな、と言葉を続ける。

 

「だから遠慮なくまた来い。武器のメンテナンスならいつでもしてやるぞ」

「ああ、ありがとう」

 

 

 

 

 

 

 そういうわけで。剛腕の鍛冶師の工房を後にした俺達は、まずは運搬を手伝ってくれた上級冒険者の二人を送り届けるために帝国のギルドへ向かう。こっちのほうが馴染みあるので、と帝国カフェに移動した俺達は、店の扉を開けた。

 

「いらっしゃいませ、って」

「あ、エミルさん! 来てくれたんですか!」

 

 カフェには新たな看板娘になったオルとアルの姉妹が働いていて、俺達を見て笑顔を見せてくれた。アルが。オルは俺を見て、げ、という表情になっている。

 ててて、とこちらにやって来たアルは、それで今日はどうしたんですか、と尋ねてきた。いやまあそんな大それた用事はなくて、そこの二人を送ってきたんだけど。そう述べると、アルはそこに二人を見て、あ、と声を上げる。

 

「無事だったんですか!? 連絡も取れなくなってて、ギルドも心配してたんですよ」

「あ、無事だったいうか……」

「無事にされた、というか……」

 

 アルの言葉にバツの悪そうに視線をそらす二人。どういうことよ、と会話に参加したオルを見て、観念したのかダンジョンでの顛末を語り始めた。

 そう言えば俺達も目の間で殺されたことしか知らなかったな、と思いながらそれを聞く。曰く、勇者級になるための修行も兼ねてダンジョンへと潜り、下層でも戦えたので調子に乗って深層へと潜り込み、迷い、その挙句の果てにユニコーンとバイコーンの魔王級と遭遇し、そして。

 

「私は頭を潰されて死んで」

「私は輪切りにされて死んだの」

「え? それで何で――あー……」

「スロウさんに助けてもらったんですね」

 

 納得の早い蜘蛛姉妹。まあお前達も似たような経緯で蘇生されてるからな。スロウの能力のアレさは十分承知の上のはずだ。

 まあそこは置いておいて。無茶した挙句死んだのは変わりない。これはマスターに説教をしてもらわないといけないとオルとアルはカウンターに居るマスターに声を掛けた。それに頷いたマスターは、じゃあ向こうのギルドの方に行こうかと笑顔で二人に声を掛ける。

 笑顔ではあるが、声は笑っていなかった。ひぃ、と悲鳴を上げた二人は、そのまま売られる子牛のような顔でカフェからギルドへと移っていく。

 じゃあとりあえず用事も終わったし、俺達も帰るか。そんなことを思っていると、アルが少し寂しそうな表情を浮かべていた。それをブンブンと頭を振って散らしたアルは、あれ、と何かに気付き俺の持っていた荷物を指差す。

 

「それ、なんですか?」

「ああこれか? スロウの糸やアリアの鱗粉、シトリーの花弁を使って作った布だよ。俺の新しい防具の素材にするんだ」

「防具の素材……」

 

 へぇ、と物珍しそうにそれを眺めていたアルは、そのうち自分達もそういうのが出来るんだろうかと考え込んでいるようであった。

 そんな会話をしつつ、俺達はカフェを出る。そのまま再度《テレポート》を使い、今度はベルンシュタイン公爵家へとセフィを送っていった。布もセフィに渡し、服の作成をお願いする。

 

「結局セフィにはまた頼み事をしちゃったな」

「いえ。これぐらいはお安い御用ですので」

 

 そんな会話をしながら、俺達はベルンシュタインの城を後にする。自分達の村へと帰ってきて、ふう、と息を吐いた。

 アリアはこんな格好じゃいられないから、とすぐに家に戻っていく。そんなアリアを見送りながら、俺達も帰るかと家に戻った。

 そうして、持っていたもう片方の荷物を、人が一人はいるようなカバンを部屋の床に置く。アルが布の方に興味を持ってくれてよかった。こっちの方を何だったかと聞かれると非常に面倒なことになるところだったからだ。

 カバンを開ける。シトリーの疑似餌が出てきた。既に本体とは繋がっていない古いやつだ。袈裟斬りにされた部分は修復されたものの、耐久力が限界を迎えたので破棄された代物である。

 ベッドにシトリーのそれを横たわらせる。勿論息はしていない。接続の切れた疑似餌は既にただの人形、あるいは死体に近い。が、その姿はまだ瑞々しく、ここにシトリーが寝転がっているかのように錯覚するほどで。

 

「どーするんです、それ」

「うわぁ!」

 

 ひょこ、とスロウが後ろから声を掛ける。急なそれに思わず声を上げてしまった俺は、脅かすなよとスロウを見た。

 勿論スロウはそんなこと気にしない。前回はどうしたんでしたっけ、と横たわっているシトリーの古い疑似餌のおっぱいをむにむにと揉みながら、呑気な声を出していた。

 

「あ、エミルも揉みます?」

「揉まん揉まん」

「シトリーちゃんと繋がってないからですか?」

「……というか、シトリーも当事者がいない場所でそんないかがわしいことされてたら気まずいだろ」

「ワタシは別に、もう捨てるやつだしぃ……」

 

 ひょこ、と今度はシトリーが横から割り込んできた。再び急なそれに再度声を上げつつ、いやよくないだろ、とシトリーにツッコミを入れる。

 

「え、でも、スロウちゃんやエミルくんが触るなら、別にいいよぉ……」

「スロウはともかく俺に体を許すな」

 

 そういう意味ではないとは思うが、一応釘を差しておく。体を許す? と首を傾げていたので多分大丈夫だと思う。

 ちなみにスロウはその会話の最中シトリーの古い疑似餌のおっぱいを枕にして遊んでいた。

 

「エミルー、これ気持ちいいですよ」

「……そうか」

 

 シトリーのおっぱいを枕にすると気持ちいい、というまったく役に立たない情報をスロウからもらいつつ、そんなことよりそれをどうするかだろうと話を戻す。

 それで前回の話だ。えっと、あの時は。

 

「エミルは結局使ったんですか? シトリーちゃん」

「おい」

「え? 使ったのぉ……?」

「使ってない! ちゃんと燃やした!」

 

 パチパチと燃えて灰になっていくシトリーを見るのは滅茶苦茶嫌だったが、まあ腐っていくのを見るよりはマシだったのでこっちを選んだ。ちなみに誰も手伝ってくれなかった。シトリーですら、である。お前らそこら辺の感性モンスターだからしょうがないとはいえ、ちょっとは寄り添ってくれてもいいんだぞ。

 まあそういう意味では今回も燃やすのがいいだろう。そんなことを考えつつ、古い疑似餌にいたずらしているスロウを見た。おい股を広げるな、タイツを破くな、パンツをずらすな。

 

「シトリー、お前もっと怒ってもいいんだぞ?」

「う、うん……? でもあれ、もう別に古いやつだしぃ……」

 

 シトリーにとってはもう捨てる古着くらいの扱いらしい。いやそう考えるとそれに文句を言っている俺の方がおかしいのか? いやでもなぁ、俺にとっては動かないシトリーがスロウにいたずらされてあられもない姿をさらしているようにしか見えないわけで。おいおっぱいを出すな。もう色々丸見えになってるぞ。

 

「エミル、えっちな気分になったんですか?」

「……そりゃ、そうだよ」

「シトリーちゃんの体を見て反応しちゃうんですか?」

「しょうがないだろ……俺だって男なんだし、美少女がそんな、あられもない姿になってれば」

「わたしの体では満足できませんか?」

「それとこれとは話が別で」

 

 そんなことを言っている間に、スロウはシトリーの古い疑似餌を持ち上げる。背中の部分をもそもそといじっているとそのまま体を突っ込んだ。

 何を、と思っている間に、スロウはシトリーの古い疑似餌にすっぽりと収まっていく。

 

「あ、やってみたらできちゃいましたね」

 

 そう言って立ち上がるシトリー。否、古いシトリーの疑似餌に入ったスロウ。流石にそれは予想外なのか、シトリーも目をパチクリとさせていた。

 

「えっと……スロウちゃん、それ、大丈夫なのぉ……」

「思ったより大丈夫ですね。息苦しくもないですし。あ、こっちのおっぱい揉んでもちゃんと自分のおっぱい揉んでる感触になります」

 

 すごいですねこれ、と目をキラキラさせるシトリーの皮を被ったスロウ。そんなわけで眼の前には普通のシトリーと上も下も丸見えのシトリーがいるという異様な光景が広がっていた。

 で? それはいいんだけど、お前何やってんの?

 

「何って。エミルがシトリーちゃんとえっちしたそうだったから?」

「なんでそうなる。俺は別にお前以外とそういうことをする気は」

「今はこのシトリーちゃんがわたしですよ?」

 

 そう言って俺に胸を押し付けてくるスロウ。でもその胸はシトリーの胸で、抱きついてくるスロウだけどガワはシトリーで。シトリーに擬態したスロウが、俺に迫ってきて。

 

「し、シトリー! ちょっとこいつどうにかしてくれよ! このままだとお前に関係ない場所でお前が汚されるぞ!」

「え……? あ、そうなのぉ……?」

「そうなの!」

「でも、その古い疑似餌はもう使ってないしぃ……」

「そういう問題じゃなくない!?」

「ほら、シトリーちゃんもいーみたいですし」

「いやむしろお前はいいのか!? 実質浮気みたいなもんじゃ」

 

 中身はスロウとはいえ、このままだと間違いなくシトリーとそういうことをしてしまう。たっぷりとボリュームのあるおっぱいが俺に直接押し付けられて、いつもポヤポヤしている顔が愛おしそうに俺を見詰めて、キスをねだってきて。

 

「あぁぁぁぁもう!」

「エミルくん……!?」

「あ、キレた」

「当たり前だコノヤロー! ちょっとそこに座れ!」

「エミルならどんな姿のわたしでも愛してくれますよね?」

「そりゃ芋虫でも人型でもスロウだからな。でも今のそれはシトリーだろ」

「わ、ワタシは別に気にしないよぉ……だから遠慮なく、使ってくれてもいいよぉ……」

「そこは気にしろ!」

 

 




実際この場合どうなるんだろう……
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