スロウに迎えに来てもらって村に戻ってきた俺達は、まあ俺が切り出さないといけないよな、と咳払いを一つした。
「スロウ」
「はい」
「シトリーとも付き合うことになった」
「そーですよね」
「……一応聞くけど、他に何も言うことないのか?」
「わたしが一番なんですよね?」
「そこは間違いないし、シトリーも承知の上だ」
言ってて俺最低な奴なんじゃないかと思えてくる。二番目の彼女でいいからとか承知させて付き合うとか酷過ぎやしないか?
が、ここでやっぱりそういうのはいけないとシトリーを振るのはもっと鬼畜な気がしないでもない。希望を与えてから崖下に叩き落とすが如き所業である。
「シトリーちゃん」
「な、何かなぁ……」
「エミルのこと、好きなんですよね?」
「うん……。エミルくんのこと、大好きぃ……」
そういって両手の指をくっつけてはにかむシトリーは非常に可愛らしかった。そんなシトリーを見たスロウは、うんうんと頷くと俺に抱きついてくる。
いきなりどうした、とスロウに尋ねると、決まってるじゃないですかと返された。
「とりあえず、一件落着ってやつです」
「抱きついてきた理由になってないぞ」
「それはわたしがただエミルをぎゅっとしたかっただけですけど」
そう言いながら、ちらりとスロウはシトリーを見る。え、と首を傾げたシトリーだったが、何かを察したように目を見開くと、じゃあ、と俺に抱きついてきた。
「どーですかエミル」
「何が?」
「わたしとシトリーちゃんに抱きしめられて、どんな気持ちです?」
「どんな、って」
気持ちいいとか答えればいいのか? それはそれで変態じゃないか? かといって別に何もって言うのも違うし、嘘になる。
「し、幸せだ、とか?」
「何で疑問形なんですか」
「なんて答えればいいか分からないからだよ」
「そーゆー時は素直におっぱい気持ちいいとか言えばいいんです」
「俺の気持ちを捏造するな」
「えっと……? 気持ち、よくないかなぁ……」
「そっちはそっちで何を言い出す!?」
おかしいぞ。シトリーはもうちょっと慎みのある性格してなかったか? こんなグイグイ来るような感じだったっけか。
――したいならすればいいとか言うやつだったわ。その辺は野生のモンスターだったわ。
「ああもう」
とりあえず二体を引き剥がす。はいはいと素直に引き下がるスロウと、名残惜しそうなシトリーを見てから、俺はそんなやり取りを見学していたギルドにいる残りの面子に視線を向けた。
アリアもお姉さんも、まあそうなるだろうな、みたいな表情であった。自分で言うのもなんだけど、いいのか? 人の社会的に見ると割と酷いことやってるぞ。
「あたしはモンスターだもの。その辺別に気にしないわ」
それに、とアリアが俺を見る。何だよ、と続きを促すと、何でもないわと微笑まれた。まあどっちにしろアリアはその辺りスロウやシトリーと同じ倫理観だから関係ないということなのだろう。
じゃあお姉さんはどうなんだ。そんなことを思いながらマイア姉さんの方を見やると、しかし別にいいんじゃないかとあっけらかんと言い放たれた。
「スロウちゃんもシトリーちゃんも承知の上でしょ? なら別に他人がとやかく言うことでもないんじゃない?」
「それはそうかもしれないけど」
「それとも何? 反対して欲しかった?」
そんなことはない、と首を横に振る。ならいいじゃないかと笑ったお姉さんは、しかし表情を真面目なものに変えると、俺を真っ直ぐに見た。
「ねえ、エミル君。そうやって他人に意思を委ねちゃ駄目だよ? エミル君はエミル君なんだから、自分で決めたことはしっかりと自信を持たなきゃ」
「ぐ……」
その通りだ。他人の、他の意見に流されるようなことを考えていては駄目だ。これはあくまで俺が決めたこと。ちゃんと自信を持って、スロウを彼女に持っているのにシトリーも彼女にしましたと言えるように。
いいのかこれ? 逆に流されてないか? いや、でも自分から進んでハーレム野郎のそしりを受ける覚悟を決めたんだ。そこは疑ってはいけない。と、思う、多分。
「まあぶっちゃけ自覚があるかないかの違いしかなかったですけどね、その辺」
「なんでだよ」
「そこで何でだって言っちゃう時点であんたはどうしようもないわ」
「うんうんうん……」
「擁護のしようもないね」
何故かギルドに居る面々全員からボロクソ言われた。
ともあれ。シトリーとも付き合うという話は無事に、無事か? まあ終わり、そのまま家に戻ってきた。ギルドの次は親に伝える番だったが、うちの両親は両親でじゃあちゃんと悲しませないようにという言葉だけで終わった。自分の息子が彼女増やしてきた時に掛ける言葉がそれでいいのだろうか、と思わないでもなかったが、ひょっとしたらギルドの時と同じように今更と思っていたのかもしれない。
まあ特に問題がないのならばそれでいいや。そんな風に結論付けつつ、ようやくドタバタしていた一日も終わりを迎える。
そう思っていたのだが。
「ん?」
夜、コンコンとノックの音が聞こえたので、空いてるぞ、とその相手を招き入れた。ガチャリとドアを開けて入ってくるのはシトリーである。どうした、と問い掛けると、えっと、と少し悩むように視線を彷徨わせた。
「え、エミルくんは、平気かなぁ……」
「何の話か分からんので何とも言えないが」
いきなり平気かと言われても。死ぬような目に遭うことはないとは思いたいが、しかしその辺の警戒も一応しつつ当たり障りのない返答をした。
対するシトリーは、俺のその返答に首を傾げていた。まるでそんなこと分かっているだろうともいえる反応である。
そのまま俺のすぐ近くまでやってきて、そしてそっと俺の手を取った。
「シトリー!?」
「こういうこと、だよぉ……」
そうしてシトリーの大ボリュームなそこへと導いてくる。むにゅりと柔らかな感触が手の平に伝わり、ゆっくりとシトリーの胸に俺の指が埋まってゆく。
こういうことって、どういうことだ。などとここで惚けられるほど俺も鈍感ではない。そもそも、シトリーとも付き合うようになって、そしてそんな彼女が夜に俺の部屋にやってくる理由とか考えたら自ずと答えは出てくる。
だとしてもちょっと早くない? その日にいきなり? スロウだってその辺は――あんまり変わらないかもしれないけど。
「ワタシ、あの時ちょっとだけ嘘ついたのぉ……」
「あの時?」
「疑似餌が勝手に動いた時……スロウちゃんが中に入っていたからあんな風になったって言ってたけどぉ……」
「ああ、そういやそんなこと言ってたな」
あの時のシトリーの疑似餌を思い出すと、あまりにもな格好も思い出すのであまり精神によろしくない。
それはそれとして。確かにスロウがあれを被ってえっちしようとかなんとか言ってたから芽が出た疑似餌もそれに則った行動をしたって言ってたわけだが。ちょっと嘘吐いたってどういうことだ。
「あの時の疑似餌、ワタシの言いたいことを言ってたんだよぉ……」
「えっと?」
「エミルくんが好きってこと……告白したこと……関係ないって言ってたけどぉ……」
「……ああ」
「本当は、ワタシの言いたかったことなんだよぉ……」
そう言って俺に抱きついてくるシトリー。ぎゅっと俺を強く抱きしめながら、だから、と言葉を紡ぐ。
「エミルくん……好きぃ……大好きなのぉ……」
「ああ、俺もお前を」
「だから……」
「ん?」
トン、と体を押される。ベッドに倒れ込むような形になった俺は、そのままシトリーに馬乗りにされるような状態となった。ゆっくりと服のボタンを外し、たゆん、と大きなおっぱいが俺の眼の前にまろび出る。
「エミルくん……ワタシ、エミルくんの子種が欲しいんだよぉ……」
「聞いたことのあるセリフ!?」
あの時のエッチな古い疑似餌のセリフを本物のシトリーが言い放ちやがった。思わずツッコミを入れた俺の顔に、シトリーの生おっぱいが被せられる。
「わぷ」
「ぁん……! エミルくん、そこ、舐めちゃ、いやぁ……」
「いや不可抗力で」
シトリーのおっぱいから脱出した俺はそんなことを述べるが、既にやる気満々のシトリーは気にすることなくゆっくりとスカートをたくし上げている。
「ねえ、エミルくん……お願いがあるんだよぉ……」
「な、なんだよ」
「ワタシのタイツのここ、破って、欲しいなぁ……」
ここ、というのは勿論下着を覆っている箇所である。いや、破るってあれだろ? 前スロウが古い疑似餌にいたずらした時みたいにしろってことだろ?
そんなことを思っている間にも、スカートを捲り上げたシトリーが俺の眼前に迫ってくる。花の香りが漂い、思わず思考がクラクラする。トラップレシアに引っかかる被害者ってのは、ひょっとしてこの香りにも誘われているのかもしれない。
まあ、どのみち可愛い彼女のお願いだ。やって欲しいというのならばやってやる。眼の前のタイツにゆっくりと手をかけ、そしてビリビリとタイツを裂く。シトリーの下着がはっきりと顕になり、花の香りがより強くなった。
「お願い、下着も、ずらしてぇ……」
シトリーの甘い声が聞こえる。そっと下着に手を添えると、それを指でぐいとずらした。
甘い甘い花の香り、そしてトロリと流れ出る花の蜜。それを見て俺は自分自身が反応してしまうのを感じていた。
「あ……。エミルくんの準備も出来ちゃったぁ……」
それを見たシトリーは、俺のズボンをカチャカチャといじりながらそんなことを言って嬉しそうに笑い、そして。
「エミルくん……エミルくん……!」
あの時とは違う。眼の前のシトリーは本物だし、きちんと告白も受け入れた。だから、まあ別段問題はない。
そのまま俺は、シトリーに受粉を。
「エミル、朝ですよ!」
無遠慮にドアが開けられ、スロウが俺の部屋に入ってくる。そうしてベッドに寝ている俺とシトリーを見て、うんうんとなにかに満足するように頷いた。
「昨夜はお楽しみでしたね」
「何で嬉しそうに言うんだよ。自分の彼氏が違う女と寝たんだぞ」
「複数のメスがオスを共有するのは割とあることですしね」
「モンスター倫理観!」
起き抜けにそんなツッコミを俺は入れるが、まあ勿論別の理由もありますよ、と指を立てながらスロウは笑う。二本立てたってことは二つあるってことでいいのか。
「一つは、エミルは別格だとしても、私はシトリーちゃんも大好きですからね。どっちも不幸になってないならありじゃないですか」
「ありかなぁ……」
「で、もう一つは、これはもう決まってますけど。エミルの一番がわたしならだいじょーぶです」
「シトリーのほうが一番になってたらどうするつもりだったんだよ」
「なりました?」
「……なってないけどさ」
そんなやりとりをしていると、シトリーが目を覚ましたらしくゴソゴソと動き出す。むにゃむにゃと目をこすりながら、俺とスロウを確認すると笑顔を見せた。
「おはよう、エミルくん、スロウちゃん……」
「おう、おはようシトリー」
「おはようございますシトリーちゃん。昨夜はお楽しみでしたね」
そう言って笑うスロウ。シトリーはそんな言葉を受けて少し照れくさそうに頬を掻いた。そうしながら、うん、と頷いた。
「スロウちゃんの、おかげだよぉ……」
「どーいたしまして」
「ん?」
どういうことだ、と二体に問い掛ける。尋ねられた方は、別になんてことのない様子でそれに答えた。
昨日シトリーをけしかけたのは自分だ、とスロウがのたまった。
「エミルはこーゆー押せ押せに弱いんで、一気に勝負をかければいけますよって」
「お前は何を入れ知恵してるんだよ」
いやまあ、それはそうかもしれないけれど。実際昨日は大分シトリーに押されていた気がするけれど。
こほん、と話題を変えるように咳払いをした。この話題を振ったのはそっちなのに、というスロウの視線を無視しながら、俺はシトリーを見やる。スロウとの時は、擬態が出来なくなってちょっとした騒動になったから心配していたが、シトリーは別段そういうこともないようだ。
「ワタシの場合、疑似餌を被っているから……スロウちゃんとは擬態の仕方も違うからねぇ……」
「でもシトリーちゃんは植物モンスターですし、受粉したらしたで色々あるんじゃないです?」
スロウのその言葉に、シトリーはあははと苦笑する。確かにその可能性もあるけれど、と少し考え込む仕草を取った。
「レアちゃんの例がある分、植物モンスターと人とのほうが高そうな気がしますけどね」
「言われてみれば、そうかもぉ……?」
そんなことを言いながらシトリーが思わずお腹をさする。暫し自身の身体を探るような仕草をしていたが、今のところ大丈夫、と頷いた。
「それはそれとして、エミル君の子種のおかげで疑似餌が追加で出せるようになったよぉ……」
ぽん、とシトリーが増える。とはいっても片方は空っぽの疑似餌なのでちょっとした囮にしかならないだろうが、戦略の幅は広がるだろう。
まあ、武者修行の結果とは関係ないところなのが何とも言えないのだけが問題だろうか。
「まーいいじゃないですか。エミルのおかげってことで」
「それの何がまあいいなのか分からんが」
とりあえず起きるぞ。そんなことを言いながらベッドから出て着替えようと。
「……なんだよ」
「じー」
していると、スロウが俺をじっと見てきた。はいはい、と肩を竦めながら、スロウを抱きしめキスをする。うんうんとそれをされたスロウは満足そうに頷くと、じゃあ次は、とシトリーに視線を向けた。
「ふぇ……!? え、っと、じゃぁ……お願い、しますぅ……」
おずおずと俺に近付いてくるシトリーを見て、そしてスロウを見た。ほれ、やれ、と目で訴えかけてくるので、分かった分かったとシトリーを抱きしめ、そして。
そっと、キスをした。
12章はここまで
次回から不定期になるやもしれません