※昼と夕方の二回更新(二回目)
眼の前の三体が既に中身を食われているとすると、やれることは一つしかない。が、そんなことは出来るはずもない。
スロウ達を殺すなんて、そんなことは。
「スロウ、アリア、シトリー」
「どーしたんですか?」
「なによ」
「どうしたのぉ……?」
俺の声に反応して動きを止める三体。見た目はとてもじゃないが中身を食われているようには見えず、生きているようにしか見えない。
「もー、どーしたんですか?」
そう言ってスロウがこちらにやってくる。甘えたいならいつでもどうぞ、と両手を広げてハグ待ちのポーズを取った。今は別にそんな状況じゃないだろ。そんなスロウに思わずそう告げる。
「わたしはいつでもそんな状況ですよ。はい、ぎゅー」
「スロウ……」
抱きついてきたスロウは、そのまま俺にキスをする。ちゅく、と舌を絡ませあった俺は、やはりそこにほんの僅かな死臭と別の虫の匂いを感じていた。ああ、そうだ。このスロウはもう死んでいて、中身は別の虫が操っている。そう確信を持った、持ってしまった。
「きゃ、エミル、今日はいつにもまして甘えん坊ですね」
「スロウ、俺は」
「いーんですよ。エミルが甘えたいなら、いつでも甘えてください」
そんなスロウを思い切り抱きしめる。この温もりを、この感触を、忘れないように。
そうしてスロウから離れた俺は、アリアとシトリーにも向き直った。
「あら、あたし達にも甘えたくなったの?」
「え、そ、そうなのぉ……?」
「ああ」
迷うことなくそう述べる。アリアをギュッと抱きしめ、そして深く口付けた。ああ、やっぱりほんの僅かの死臭と別の虫の匂いがする。アリアも中身は食い尽くされてるんだ。
「ぁん、もう、今日はがっつくのね」
「嫌か?」
「そんなわけないじゃない。もっと来て、エミル」
アリアも強く強く抱きしめる。もう二度と味わえないであろう感触を、ゆっくりと。
それが終わったら、シトリーだ。
「ゃん、エミルくん……いつもより、積極的だよぉ……」
「シトリー、駄目だったか?」
「ううん……いいよぉ……ワタシも、気持ちいいしぃ……」
思い切り抱きしめて、そしてキスをする。甘い甘いはずのそれは、ほんの僅かな死臭と別の虫の匂いが混じっていた。シトリーも駄目みたいだ。中身は食い尽くされている。
確認は終わった。スロウも、アリアも、シトリーも。全員アピスの言う通り中身を食い尽くされた死体になっている。
思い出す。スロウも、アリアも、シトリーも。もしそうなったらどうして欲しいのかを。
「出来るわけないだろ……」
既に死んでいるとしても、こうして俺の前で立っているスロウ達を殺すことなど出来はしない。オルとアルには出来たのに。
違う。オルとアルをやってしまったからだ。あれが俺の中でどうしようもないほど深くこびりついているんだ。
「どうやらその娘達は倒せないみたいですし、そのままエミルさんを殺しちゃってください」
空中で俺のやり取りを見ていたアピスがスロウ達に指令を出す。相変わらず、そんな命令なんか聞くわけがない、と言いながら、体は勝手に俺を攻撃しているようで。
駄目だ。このままだと間違いなく死ぬ。アピスに殺され、コピーとは言え復活したあいつが再びヘンリエッテの部下になって。あの街みたいな被害が、オルとアルみたいな被害が、また。
「エミルくん? どうしたのぉ……?」
「いや。そうだな……そんなのは駄目だよな」
そう言いながらも攻撃してくるシトリーの大剣を弾き返した。わわ、とその衝撃でびっくりしているシトリーを、俺は。
「きゃぁ……! え、エミル、くん……?」
「シトリーちゃん!?」
「シトリー!?」
スロウとアリアが悲鳴を上げる。軽く切り裂かれたシトリーは、やはり血が一滴も流れず、キョトンとした表情で、己の状況を確認していた。
「わ、ワタシぃ……ぁう……! か、体がぁ……!」
その衝撃で虫がシトリーを食い破ろうとし始めたらしい。悶え、苦しそうに俺を見る。
「エミル、くん……ワタシ、おかしく、なっちゃ……あ、ぁぁっ……」
「シトリー……!」
分かってる。分かってるけど、苦しそうに悶えるシトリーを見るとどうしても。思わずシトリーを抱きしめてしまい、そして後悔する。これは、この流れは。
「ゃぁん……ワタシ、食い破られ、ちゃう、のぉ……?」
「シトリーちゃん、わたしが回復を――あ、え……」
「スロウ? どうし――え?」
スロウの回復が発動しない。さっきの支援も発動したように見えていただけだったのか、所詮中身を食い尽くされた死体では聖女の能力を使用出来ないのか。
そんなことを考えながら、俺は腕の中で悶え苦しむシトリーを見た。しっかりしろ、と思わず声を掛けた。
「エミル、くん……ワタシぃ……もう、だめぇ……ぁん、食い、破らぁ、れ、るぅぅ……!」
「シトリー!?」
俺の腕の中でシトリーがバリバリと食い破られ、一匹のハチが飛び出てくる。隙だらけだ、とばかりに俺を攻撃しようとしていたが、その頭を鷲掴みにするとそのまま地面に叩きつけた。即座に剣を振り下ろし、真っ二つにする。
「こんなにあっさり!? ま、まだ、残りの二匹がいますから」
「残りの二匹って、わたしたちのことですか」
「シトリーがあんな状態になった以上、そうでしょうね」
そんなことを言いながら、スロウとアリアは俺を見る。シトリーの残骸をそっと床に下ろすと、俺は二体に向き直った。
「エミル、わたしは――あぅ」
「スロウ!? ――うっ」
そのタイミングで二体も悶え出す。アピス、と空中にいる奴を睨み付けると、向こうも予想外のようでそんな、と目を見開いていた。
「外に出るのが早いですよ! もうちょっと中にいる状態で粘らないとエミルさんが殺せないじゃないですか! もう、役立たず!」
そんなアピスの言葉を聞くことなく、俺はスロウとアリアに視線を戻した。どちらも苦しそうで、中の虫が外に出ようとしているのが分かる。
「わたしは、まだ、平気です……アリアちゃんの方を……」
「っ、アリア!」
「なによ……大丈夫、きゃぅん! なんだから……そんな顔しないで……」
そんなことを言われても、とアリアを抱きしめる。そんなことをしても無駄だと分かっているのに、体が勝手に動いてしまう。だって、もうこの時点でアリアもスロウも死んでいるのだから。
「エミル……だから、そんな顔、あぁん! しないの……。あたしは、あ、あ、あ……」
「アリアっ!」
「駄目っ、出てきちゃうっ! 食い破られちゃうっ! いやぁ、エミル、エミルぅ! あたし、あたしぃぃぃぃ!」
「アリアちゃん! 回復、回復が、使えなっ……きゃぅん!」
ぐしゃりとアリアが食い破られ、再びハチが顔を出す。逃げようとしたそのハチを追い掛けてトドメを、と思ったが、それより苦しそうに悶えるスロウに目がいってしまった。
「スロウ、スロウ、しっかりしろ!」
「や、やだ……わたしも、食い破られて、ぁん! 死んじゃうん、ですか……?」
「大丈夫だ、俺がそんなことさせない」
「えへ、エミルが、きゃん! そう言ってくれるなら……安心です」
そうやって笑うスロウだが、悶え苦しむのは変わっていない。どうする、どうすればいい。どうすればスロウを助けられる。
「ぁぁん、中で、暴れてるっ……わたしを、食い破ろうとしてますっ……!」
「スロウ!」
「エミル……ゃん! 今ならわたし、何も抵抗できないですし、どれだけえっちなことしても、いーですよ」
「何を」
「もー、最期のお願いくらい、聞いてくれたって……あっ、やだ、待って、まだいやっ……ぁん、そんな、エミルと、きゃぅん! したいことがぁ……」
「スロウ! スロウ、駄目だ!」
「あ、ああ、食い破られちゃう……わたし、エミルと……やだぁ……助けて、助けてエミル……!」
「ああ、助ける、お前だけは――」
「や、いやぁ……出てくるっ……食いやぶっ、られるぅ……エミル、エミル、わたし、食い破られて……やぁん! 死んじゃいますっ! や、いや、死ん、じゃうぅぅぅぅ!」
食い破られたスロウの残骸からズルリとハチが這い出てきた。羽を広げると、さっきの虫と同じように即座に逃げ出しアピスの横に並ぶ。これで向こうの戦力はハチが二体か。
そんなふうに、妙に冷静な思考が出来ているのに俺は気が付いた。つい今しがた眼の前でスロウが死んだというのにだ。……いや、むしろそのおかげで我に返ったと言うか。
というか、そもそも、そこで死んでいるのは――
「どうしました? さっきまでとは表情が違いますね」
「……怒りが振り切っただけかもしれないぞ」
「とはいっても、私は空中にいますし、そちらの攻撃は届かない――」
魔法剣の斬撃を飛ばし、アピスの周囲を飛んでいたハチを始末した。え、と目を瞬かせるアピスの眼の前で、二匹のハチが墜落しドロリと溶ける。
「お前一体だけなら、どうとでもなる」
「え、そ、そんな……!? 嘘でしょう!? わ、私はここを出て――きゃぁ!」
問答無用で斬撃を飛ばす。それを必死で避けているようだが、戦闘能力もそう大してないアピスではこの状況を打破する手段がない。
俺に虫を寄生させようにも、遠距離は避けられるし、直接注ぎ込もうと近付けばその時点で終わりだ。本来ならばスロウ達もそうなるはずだ。むしろスロウ達の方が俺一人よりやりにくい。
じゃあなんでスロウ達があんな悲惨な結果になったのか。それを考えれば、ひとつの答えが浮かんでくる。というより、何でその考えに行き着かなかったのか不思議なくらいだ。
「ひ、ひぃ……どうしよう、もう打つ手がない……!」
「終わりだよアピス」
「ま、待ってください! もう何もしませんから! 静かに暮らしますから! な、なんならほら、主様が言っていたみたいに、慰みものにしてもいいですから! エミルさんのこと愛しますから! し、死んじゃった女の子達の代わり、精一杯務めますからぁ!」
鞘を足場にし、アルの蜘蛛の巣の発射台を作り出すと、その勢いで俺は高く跳んだ。アピスの眼の前まで跳び上がると、涙目になっているアピスに向かって剣を振り下ろした。
斬、とアピスが真っ二つになる。切り裂かれたアピスは、そのまま地面にどしゃりと墜落して動かなくなった。
「あーらら。アピスったら結局やられちゃったんですね、よわよわ、ざこですねぇ……」
「グリュセ」
「どーしました? 見事エミルが最後の一人になったので、その扉から外に出られます。やったね」
「全部お前の思うがままだったってことか」
「なんのことやら」
あくまでとぼける様子を変えないようなので、俺は剣を抜き放ち、先程殺したアピスの死体を見た。以前のスライムのように溶けていく気配のないそれを差しながら、つまりはそういうことだろうとグリュセに告げる。
「そういうこと、とは?」
「さっきのスロウ達、お前の作ったコピーだな」
「その根拠は?」
「そもそもスロウ達がやられるはずがない」
「流石の信頼ですね。それで終わりですか?」
「……アピスが作ったハチは溶けたけど、お前が作ったアピスは死んでも溶けていない。ってことは、これまでとは違って、お前が作ったコピーは死んでも溶けないようになったってことだ」
「だからスロウちゃん達もコピーだと? んー。そんな適当な推理じゃ三十点くらいしかあげられませんよぉ……」
ち、と俺は舌打ちをする。まあしかし推理自体の方向性はあっているはずだ。何か根拠になるものがあれば、あいつが納得する答えになる。とはいえじゃあ何がある? 持っていた武器か? 流石に偽物は完全に模倣出来ていないだろうけど、そこまで確認はしていないし、あいつの求めている答えとは違う気がする。
何とかしてその答えを出さないと、きっとあいつは満足しないし、俺もモヤモヤを抱えたままになる。あの扉を開けて外に出ても終わりはするかもしれないが、それでは解決したことにならない。
「そういえば」
そんなことを考えていたタイミングで、そうだ、と思い出すことがあった。というか、グリュセが何度か言っていたことがあった。思い出せ、だったか忘れるな、だったか。
一体何を言っているのかとあの時は思っていたが、それはつまり。
「お前、言ってたよな。アピスのやり方は嫌いだって」
「言いましたよぉ……。なのにコピーにしたのが意外だとでも?」
「まあ、それは多分お前の言っていた実験に関係するんだろう」
それよりも、だ。あいつが嫌いだ、といっていた根拠を、グリュセは村のギルドで話していた。あの時は流していたが、確か。
「寄生して中身を食い尽くして操るのがどうにも気に食わないとか言ってたはずだ」
「そーですね、言いました。それが?」
「俺がお前も同じじゃないかって言ったら、お前言ったよな。自分が用意するのは偽物で、本物がいるからこそだ、って」
「そーですそーです! よく覚えていてくれましたね!」
嬉しそうな声でグリュセが言葉を返す。その声を聞いて間違っていないと確信した俺は、だからだ、と言葉を続けた。
「アピスに本物を食い尽くさせるはずがない。本物がいるからこそって考えるやつが、そんなことはしない」
「うん、良い答えですよぉ……。花丸を上げます」
そんなことを言いながら、グリュセが床から湧き出てきた。パチパチと手を叩きながら、笑顔で俺を見やる。その笑みはいつもの挑発的で甘ったるいものとは少し様子が違い、本気で喜んでいるようにも見えた。
「エミルの言う通り、この空間に用意したのは全員私の作ったコピーです。だから安心してください」
「ああ、そうかい」
「偽物ではありましたけど、大事な相手が死ぬのは心がえぐられますよねぇ……? 私はエミルのその顔が見たくて、この空間を用意しました」
「悪趣味だな」
「本物には手出ししていないんですから、以前と違って大分優しくなったと思いますけどねぇ……」
そう言っていつもの挑発的で甘ったるい笑みに戻ったグリュセは、そういうわけですので実験と能力調整は終了しました、と続けた。ありがとうございましたと頭を下げたグリュセは、ではどうぞと扉へ案内するように手を動かす。
そんなグリュセに思い切り剣を振り抜いたが、切り裂けはすれども攻撃の当たった感触はしない。顔を顰めた俺を笑顔で見ていたグリュセは、エミル一人では倒せないみたいですね、と述べていた。
「ちっ。……それで、結局何の実験だったかは言わないのか?」
「聞きたいんですか? 欲しがりですねぇ……」
まあいいですけど、とグリュセが笑う。そうして、能力調整の方は体験してもらった通りです、と告げられた。それがよく分からないから聞いてんだよ。
「だから、体験してもらった通りなんですってば。コピーを限りなく本物に錯覚させる空間の作成、ですよ」
「……それは」
「途中から違和感も持たなくなったでしょう? アピスは一応ヒントみたいなものとして用意しましたけど、こいつは本物がもういないので錯覚されません。だから、こいつだけになっちゃうと空間の能力も低下しちゃうみたいですねぇ……」
成程。スロウ達のコピーが全員虫に食い破られたタイミングで我に返ったようになれたのはそのせいか。後その口振りからすると、アピスはどのみち勝たせるつもりは無かったっぽいな。最初から詰んでいるとは、まあ少しだけ同情してやらんことはない。
いや、コピーとはいえスロウ達を殺したんだからやっぱり同情もしないな。
「まあ、アピスはもう作らないですよ。やっぱりあいつの能力は嫌いです」
「ああ、そうかい」
「あと、出来ることは分かりましたけど、意外と下準備が大変だったんで、能力としては趣味の範疇ですねぇ……」
言外に、趣味以外では使わないとでも宣言するかのようにそう述べたグリュセは、笑みを強くさせながら俺を見た。
そうしながら、実験の方ですが、と言葉を続ける。
「何だよ」
「指輪、発動しませんね」
「は?」
指輪? 何のことだ、と一瞬考えたが、ハッとして俺は自身の左手を見た。そうだ、よくよく考えたらこの指輪があるから、俺だけグリュセに巻き込まれて飛ばされた時点で本物のスロウが指輪ですっ飛んでくるはずだ。
「前回はそれで負けたようなものですからね。今回はそれを少しの間でいいから防げるようにと主様に提案したんですよ」
そうして出来たのが、《テレポート》封じ。短時間ではあるが、この空間には《テレポート》出来ず《テレポート》させないという結界を作り出せるという代物らしい。
それは、非常にまずい。もしヘンリエッテがそれを使ってしまったら、大魔王級から逃げられなくなる。
「まあ、主様はそこまでこの実験に興味なさそうでしたけどね。だから私が好きにさせてもらいました。あ、最初のスロウちゃんの《テレポート》はそれっぽい偽物ですよ。騙されなくてよかったですねぇ……」
そう言いながら、さて、そろそろ効果も切れるしスロウちゃんが来ちゃいますね、と軽い調子でグリュセは述べた。
「じゃあそろそろ私は帰ります。そっちの帰りは迎えに来たスロウちゃんに頼むか、ここを調査に来た冒険者さんに頼んでくださいね」
そう言いながらグリュセの体がドロリと溶ける。待て、と手を伸ばしたが、あっという間にグリュセは溶けて消えた。舌打ちし、八つ当たりのようにグリュセのいた場所に剣を突き立てたが、そこに一枚の紙が落ちていたことに気が付く。これは、と拾い上げると同時に、空間もどろりと溶けていった。
「なんだ!?」
思わずぐ、と身構える。館を覆っていたスライムが全て無くなり、次の瞬間には廃墟とも言えないほどのボロボロの家の残骸が残るのみ。これにグリュセのスライムがくっついてあの空間になっていたのか。
「あれ? エミルさん?」
「どうしたのよ、こんな場所に」
そんなことを思っていた俺に声が掛かる。そこには、銀髪ツーサイドアップのタレ目の美少女、アルと、金髪ツインテールのツリ目の美少女、オルの二体が。
「オル! アル!」
「な、何? どうしたのよ、そんな顔して」
「何かあったんですか?」
よかった、生きてる、今度こそ本物だ。そんなことを思いながら、俺は思わず二体を抱きしめた。
「え、エミル!? お前、いきなり何するのよ!」
「エミルさん!? ど、どうしたんですか!?」
二体が騒いでいるが、気にしない。よかった、と俺は安堵の溜息を吐きながら、二体を強く抱きしめて。
「よし、行けた! エミル、だいじょーぶですかって何事!?」
ん、と振り返る。そこにはオルとアルを抱きしめている俺を見て目を見開いているスロウの姿が。
「スロウ!」
本物のスロウだ、生きてるスロウだ。俺は振り向くとスロウに抱きついた。わわ、と先程より更に目を見開いたスロウは、しかしすぐに笑顔になって抱きしめ返してくる。
「よしよし。エミル、怖い夢でも見たんですよね」
「スロウ……」
「だいじょーぶですよ、わたしはここにいますから」
そう言ってよしよしと撫でられる。そのまま俺は、スロウの胸で心地よくなって暫くされるがままになっていた。
「な、なんだったのよ……」
「多分、私達の受けた依頼の調査と関係あるんじゃないかなぁ」
俺に抱きしめられた驚きから立ち直るのが遅れたオルがそんなことを述べる。あはは、と苦笑しながらアルがそんなオルに言葉を返していた。