幼馴染の擬態した虫が聖女とか言われた   作:負け狐

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ゲームだと使い回し乙とか言われるやつ


第六十一話

 教国からやってきた勇者級冒険者に同行する王国の冒険者。でも場所は帝国。そんな頭がこんがらがるような状況になっている今であるが、ともあれ件の連中と俺達はギルドで顔を合わせることになった。

 マスターの案内でやってきた冒険者は三人。金髪の女の人とピンクブロンドの少女、そして以前出会ったことのある青年、クロード。

 

「おや」

 

 じっと見ていたから、というわけなのか、はたまたマスターから紹介されていたからなのか。こちらを見たクロードはそこで少しだけ目を見開いた。まさかこんな場所で再会するとは、と笑みを浮かべながらこちらにやってくる。

 

「覚えてたんだな、俺のこと」

「勿論。左腕の借りも返していないですしね」

「手加減してたくせによく言うぜ」

「おや、心外ですね。私はあの時宣言した通りの強さで全力を出しましたよ」

「それを手加減って言うんだろうが」

 

 ジロリとクロードを睨んだが、当の本人は涼しい顔だ。あの時持てる力を使ったのだから何の問題が、などと言いながら、視線を俺から残りの面々に向けお久しぶりですと声を掛ける。

 

「むー」

「心配なさらずとも、前回のような不埒な真似はしません」

「それは分かってますけど、なんとゆーか、胡散臭いなーって」

「ぶふっ」

 

 あ、クロードの仲間の金髪の女の人が吹き出した。ピンクブロンドの少女の方も笑いを堪えるような仕草を取っている。仲間を悪く言われたようなものなのだけれど、まあスロウのそれが見下すとか貶すとかいう感じで言っているわけではないと判断したからなのかもしれない。

 あるいは、仲間の二人もクロードを胡散臭いと思っているか。

 

「言われてるよ、クロード」

「うーん。私は別に怪しいものではないと思うんですけどね」

「そういうところが怪しいのでござるよ」

 

 つんつんと肘でクロードを突く金髪の女の人、苦笑するクロード、そしてなんか口調が凄い癖のあるピンクブロンドの少女。なんというか、このやり取りだけでも割と濃いめだというのが分かる。

 

「エミルくん、そうは言うけれど、君の方も負けてはいないと思いますよ」

 

 そんな俺の思考を読んだのか、クロードが苦笑したまま俺に述べる。いや分かってるよ、俺のパーティーメンバーがはちゃめちゃなのは。俺以外全員虫だぞ、思わない理由がない。

 それはそれとして。では改めてと自己紹介を行った。俺、スロウ、アリア、シトリーのそれぞれ自己紹介を済ませると、クロード以外の二人が成程例のパーティーだったのかと頷いている。

 

「そんな知られるようなことしてるか?」

「勿論。君達の活躍は、月の大聖女様からね」

 

 そう言って笑う金髪の女の人――リナさんは、それに、とスロウを見た。同じ聖女仲間として、結構期待もしていると続けた。

 

「聖女さんなんですか? ……とゆーことは、セフィちゃん先輩より強いんですか?」

「一応ランクとしてはね。でも、あの娘も相当の強さを持ってるから、一概には言えないかなぁ」

 

 やっぱり見習い聖女だとか言ってたのは嘘だろ。そんなことを思っていると、急成長したからというのもある、とリナさんが付け加えた。その理由は言わずもがな、と俺達を見て微笑んだ。

 

「それにしても、リナが月の大聖女様の名前を出した途端嫌そうな顔をしたでござるな」

 

 その一方で口調が怪しいピンクブロンドの少女――アスカさんがこちらの表情を見てそう述べる。そんなこと言われても、月の大聖女には碌な思い出もないので仕方ないと思って欲しい。

 というかクロードにしても、あいつの無茶振りの結果腕がへし折れたんだから少しは思うところがあるんじゃないのかとも思ったりするんだが。

 

「あれはまあ、なるべくしてなった結果なので」

 

 そう言ってクロードが笑う。ほんとかよ。俺だったら多分月の大聖女に恨み言の三つや四つは平気で言うぞ。

 

「成程。属性頂点に気安いというのは本当なんだ」

 

 そんな俺とクロードのやり取りを見て、へー、とリナさんが割り込んでくる。そうしながら、確か属性頂点の半分と知り合いなんだっけ、と俺に尋ねてきた。

 半分、というのは月の大聖女、傀儡人形、迷宮の管理者、妖精姫のことだろう。が、一応知り合いと言っていいのならばそこに隠れ潜む百花と剛腕の鍛冶師も加えて現在六体だ。

 

「ということは、後は頂の古龍様と悲鳴彫刻家様の二体だけってことなんですか。ほえー」

「アスカ、素が出てる」

「はっ! ……こほん。成程、後二体なのでござるな」

 

 なんかもうこのやり取りだけで面倒な気分が湧いてくる。属性頂点もそうだが、強くなればなるほどアレになっていくのだろうか。そんなことを思いながら、俺は小さく溜息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

 顔合わせが無事に、まあ無事だな、に終わり、俺達は件の場所へと向かうことになった。道中各々の持っている能力などを話し合い、そしてある程度の役割も決める。

 とはいっても、俺達はあくまでサブであり、やるとしても露払い程度という形になったが。クロードは少し渋っていたが、当の本人である俺が進言したのでしょうがないと折れたようだ。

 

「調査の書類を見る限り、どちらかといえばこちらがサブでもいいとは思うんですけれどね」

「何でだよ。強さは天と地ほどもあるだろ」

「そうかな? 見た感じ、実力だけなら上級で全然やっていけるよね、君達」

 

 リナさんがそんなことを言いながら俺達を見やる。だからそういうのはいいんだってば。圧倒的に経験が足りない俺達が上級になったところで、他の上級の足を引っ張るのがオチだ。実際問題、今だって上級の上澄み、勇者級のクロード達の役に立つとは思えない。

 

「経験不足という話では、拙者もそう変わらないでござるよ」

 

 横を歩きながらアスカさんがそう述べる。曰く、自分はとある子爵家の後妻の連れ子で、義姉に迷惑をかけたから冒険者になって挽回するんだと張り切っていた結果、気付くと勇者級パーティーの仲間になっていたのだとか。

 ちなみにクロードが付け加えていたが、この口調はその辺りと何の関係もないらしい。なんでだよ。

 

「いや、関係あるでござるよ。子爵家の技を受け継ぎし魔法剣士、それを目指すには必要なことなのでござる」

 

 絶対違うと思う。会ったことないけど絶対この口調聞いて子爵家の人達、特に義姉は微妙な顔してると思う。ちらりとクロードやリナさんを見ると、同じように苦笑していたので間違いないだろう。

 

「まあ、形から入るのは間違いじゃないとは思うわ」

「そうでござろう?」

「ええ。アスカさん、あたしはその姿勢、応援するわよ」

 

 悪役令嬢ロールプレイを嗜んでいるアリアにとってはそうでもなかったらしい。むしろ共感するように頷きながらアスカさん側に立っている。アスカさんの方も、共感してくれる相手が出来たと目を輝かせている。

 あれいいのか、とクロードに尋ねたが、まあ本人が満足しているのならと返された。確かにこちらとしてもアリアの悪役令嬢を受け入れているので何とも言えないのは間違いない。

 

「それにしても、アリアちゃんとアスカが並んでると、悪役令嬢とヒロインみたいね」

「言われてみれば」

 

 リナさんの言葉を聞いて二人を見る。ピンクブロンドの令嬢は成程確かに物語のヒロインのような雰囲気を醸し出しており、悪役令嬢アリアンロッテと並ぶと妙に収まりがいい感じもしてくる。

 

「成程。アリアさんはアリアンロッテを目指しているのでござるか。拙者と同じく目指すものがある同士、仲良くして欲しいでござるよ」

「ええ。勿論よ」

 

 だが、いかんせん会話がこれである。内容自体はいいのだが、アスカさんの口調で全てがぶっ壊れている気がしないでもない。気にしないほうがいいとは言うけど、これ慣れるまでが中々大変なのでは。

 

「口調が変、は、妖精姫様もそうだったしぃ……」

「お前も中々言うなシトリー。いやまあ確かに言われてみればそうか」

 

 何か酷いこと言われてる気がするっス、とかいう妖精姫の幻影が見えたが気にしないことにして、じゃあまあいいかと流すようにする。

 そんなことをしているうちに、件の場所へと到着した。ついこの間もやってきた場所で、この間と同じようにスノーラビットがうじゃうじゃと湧いているのが見える。正直ウサギの見た目をしているモンスターだとはいっても、これだけの数がいると普通に気持ち悪い。

 

「それで、どうする? この量をいっぺんに倒すとまたアンデッドが湧くぞ」

「また、でござるか?」

「前回やらかしてアンデッド湧かしちゃったんですよ」

「成程。確かにそれは避けたいですね」

 

 ふうむ、とクロードが顎に手を当て考える。が、それよりも先にリナさんが前に出て武器を構えた。聖女が前に出ていいのか、というツッコミはもう今更だ。支援も出来るバーサーカーというのが聖女の別名と言っても過言ではないのだから。

 

「とりあえず少し数減らそうか」

 

 そう言ってリナさんは持っている武器を振るう。ブオン、と盛大な音を立て、スノーラビットが薙ぎ払われた。

 ちなみに武器は自分の背丈ほどの大斧である。これまで以上に聖女とは、と首を傾げたくなるバーサーカー的武器だ。

 それはさておき、成程流石は勇者級。スノーラビット程度ならば片手で捻るような勢いだ。そんなことを思っていると、別に君達もそのくらい出来るでしょうとクロードが笑っていた。

 

「流石にあそこまでは無理だ」

「まあ、リナはバーサーカーですのでしょうがないかと」

「クロード! 聞こえてるんだけど!」

「おや失礼。次は小声で言います」

 

 悪びれる素振りもなくそう返す辺り、多分いつものやり取りなんだろう。そして、つまりこうやってリナさんが前線に出るのもいつも通りなのだろう。

 しかしそう考えると、神殿騎士、バーサーカー、魔法剣士のパーティーってバランス無茶苦茶悪くないか? それでも勇者級になっているということは、それだけ実力があるということの裏返しなのか。

 

「それはまあ追々で。アスカ、そっちはどうします?」

「拙者の出番あるのでござるか? リナだけで十分でござろう」

「スノーラビットだけならば。でも」

 

 クロードが視線を奥に向ける。うじゃうじゃいるウサギの向こう側、そこからゆっくりと骨が湧き上がってくるところであった。どういうことだ、流石にあの程度じゃアンデッドが湧いてくる容量には満たないぞ。

 成程、とクロードが頷いた。これは罠に掛かったかもしれませんね。そんなことを呟くと、ちなみにあれに見覚えはありますかと湧き始めたアンデッドの奥を指し示す。

 マントとフードを被ったアンデッドが、何も映さない双眸を俺達に向けていた。

 

「あいつ、あの時の自称魔王級……!?」

「ああ、やっぱりですか。成程、どうやらやられた時の為の保険を用意していたようですね」

「どーゆーことですか?」

 

 あの時の光景がフラッシュバックしたのか、スロウが俺を守るように前に出ながらそんなことを問い掛ける。心配しなくても、もう無茶はしないっての。

 

「おそらくですが、資料によると自称魔王級の能力はネクロマンシー。倒されてもアンデッドが湧きやすい土壌を残して、それを起点にしてアンデッド化して復活出来るようにしていたのでしょう」

「復活? ということは、あのアンデッドはこの間の自称魔王級なの?」

「見る限り、能力は数段落ちてるように見えますね。……でござるな」

「上級くらいってこと、なのかなぁ……」

 

 成程確かに、再度現れたあいつを見ていても、前回の時のような絶望感は湧いてこない。いや、強敵であるという気配は変わらず感じるのだが、それでもそこ止まりだ。ぶっちゃけてしまえば、やってやれないことはない、程度。学院で戦ったシェイプシフターが上級に片足突っ込んでいるくらいの相手だったので、そう考えると正真正銘の上級相手は今回が初めてか。

 

「意外と余裕がありそうですね」

「馬鹿言え。上級なんか戦うの初めてなんだぞ」

「戦うのが初めてだ、で済むんですね」

 

 どこか含みがあるようにクロードが笑う。そうしながら、では自分達は周囲の露払いでもましょうかとリナさんとアスカさんに声を掛けていた。おい待て、何でお前らが周囲の露払いなんだよ、普通逆だろうが。

 

「まあ確かにそうでござるが、クロード、どういうつもりでござるか?」

「どういうつもりか、といえば。エミルくん達の戦っている姿が見たいな、と思いまして」

「月の大聖女みたいな事言いだしやがったなお前」

「神殿所属の者にとってはトップですから」

 

 そう言って胡散臭い笑みを浮かべるクロード。そんな笑みのまま、まあそう心配せずともと言葉を続けた。無茶なことは別に言っていませんよね、と俺に尋ねた。

 まあ、確かに。俺もさっき思った。思ってしまったんだ。やってやれないことはない、と。前回のような絶望的な戦力差みたいなものを感じないと。

 

「エミル、どーします?」

「どうするっていっても」

 

 帝都のギルドマスターや妖精姫の言葉を思い出す。俺は自分の実力を過小評価している、と言っていたことを思い出す。あの時はそんなことはない、と謙遜ではなく本気で思っていたが。

 もし言われた通りならば。実力だけ、単純な戦闘能力だけならば、ひょっとしたら。

 

「やるなら付き合うわよ」

「問題ないよぉ……」

 

 俺の考えていたことが顔に出ていたのだろうか、アリアとシトリーもいつの間にか横に立って各々の武器を構えていた。スロウも任せてくださいとスタンバイしている。

 そこまでされて、やっぱりやらない、なんて言えるほど俺は腑抜けてはいない。一人ならともかく、仲間が一緒に立ってくれているのならば。

 

「クロード」

「はい。存分に戦ってください」

 

 そう言って襲いかかってくるアンデッドを切り払う。道は作ってやる、と言わんばかりのその行動に礼を言いながら、俺達はフードのアンデッドへと駆けていった。

 行くぞ元魔王級。こないだのリベンジをしてやるからな。

 

 

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