幼馴染の擬態した虫が聖女とか言われた   作:負け狐

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間が空いちゃったわりにこんな感じ


第八十四話

 クロード達からの連絡が来た。どうやら向こうも大まかにではあるがまあ道具系のゴミが無くなっていることを確認したらしい。

 というわけで、まあ元々そうであったが厄介事確定である。恐らく完成したであろう何かを見付けて、まあ予想というより確信であるがそれを破壊しなくてはいけない。

 問題はそれがどこにあるか、だ。それだけのものを作っているのならば、流石に目立つだろうに。

 

「そーですよね。街の人が犯人でもない限り見付かると思うんですけど」

 

 俺の意見に賛同するようにスロウがそう述べる。他の面々もそれに同意するように頷き、そしてもう一つの可能性について考えを巡らせた。

 すなわち、スロウが言ったそれである。街の人が犯人だった、の場合である。

 

「確かにそうなら、クロード達に気付かれないというのも納得する――かしら?」

「まあ、あの三人は実力は勇者級だから最高峰だがお人好しだろうからその辺疑わないだろうしな」

「あんなに怪しいのにお人好しってことですか、クロードさん」

 

 スロウがさり気なくボロクソ言う。まあその辺は俺もそう思っていたので別段反論もしないし、アリアもシトリーも、セフィやフレデリクさんですら何も言わない辺り奴の立ち位置は大体そういうことで間違いないのだろう。

 ともあれ。そういう方向で考えるのならば、最初に考えていたように上級冒険者並みの実力を持っているという考えは一度リセットした方がいいのかもしれない。いや、そう考えるのが逆に、ということもあるので強さについてはある程度据え置きしておいた方がいいか。

 

「で、だ」

「どうしたのぉ……?」

「街の人が犯人だったとして。どうやって犯人を割り出すんだ?」

「確かにそうですね。その方向で考えた場合、絞り込む要素が無さ過ぎます」

「いや、そうでもないよ」

 

 フレデリクさんがそんなことを述べる。どういうことだとそちらを見ると、何かしら怪しいものを作っているのならば、流石に分からないはずがない、と続けた。

 でも、それならもっと前に分かるはずでは。そう述べると、フレデリクさんは頭を掻いて苦笑した。

 

「ははは。それを言われると痛いね」

「とはいえ、盲点だったからという可能性もありますし」

「まあ、そうか」

 

 正体不明の外部犯だと思い込んでいたので、街の人の怪しさを見逃していた。それは確かにあるかもしれない。まあどちらにせよ、もう一度その辺を調べてみれば分かることだ。

 念の為、というか情報共有を兼ねてクロード達にもその可能性を伝えたが、その場合はあまり役に立てないと申し訳なさそうに返された。

 

「おい勇者級」

『それを言われると痛いわね』

『とはいえ、拙者達は自分で言うのもなんでござるが、人を疑うのが苦手なのでござるよ』

『二人は基本的に考えずに突っ走るからでしょう』

 

 クロードの言葉にリナさんとアスカさんがうるさいと返す。いやまあそれは何となく分かる。脳筋だよな二人共。

 でもそれならクロードはどうなんだ。お前はそういうの得意そうだろ。

 

『得意、というほどではないですけどね。二人よりは、といったところでしょうか』

 

 後ろでぶーぶーと文句が紡がれるのを流しながら、ではこちらも少し調査をしておきますと告げて通信は終わった。

 というわけで調査再開だ。今度は街の人への聞き込みを行い、何か怪しい人を見付け出す。そう思って何人かに尋ねてみたが、いかんせんそれでさくっとでてくるなら苦労しないわけで。

 そもそも俺達は何が怪しくて何が普通なのかを判断する材料が足りていない。

 

「フレデリクさんはどうなんだ?」

「技術者として街の人と接する機会は多いけれど、これでも一応領主側の人間だからね。細かいところまでは流石に分からないですね」

「細かいところは、ってことは、大体のとこなら分かるってことですか?」

 

 スロウの問い掛けに、フレデリクさんは頷く。そうしながら、でも、と顎に手を当て考え始めた。

 そんな状態のままやってきたのはとある店。人型魔道具、魔導人形がある場所だ。どうしたんですかと店主が彼へと質問するが、まあ少しね、と苦笑しながら濁していた。

 そうしながら魔導人形のチェックを始める。成程、と頷くと、では次とばかりに別の場所へと向かっていった。

 

「フレデリクさん、どうしたんだ?」

「ああ、申し訳ない。少し気になることがあったから」

 

 まあ何件か魔導人形を調べていたからそれは分かる。分かるが、何が気になっているかが分からない。そんなことを思いながら話の続きを促したが、彼は彼で確信はないけれどと頭を掻いた。

 

「街の魔導人形に細工された可能性がありそうなんだ」

「それは随分と大規模な」

 

 セフィの表情が強張る。それは俺達も同様である。それはつまり街全体が危険に晒されているということに他ならないわけで、それこそ上級冒険者レベルの犯人がどうとか言ってられない。

 そんな俺達の雰囲気を察したのか。フレデリクさんが苦笑しながら、とはいっても、と付け加えた。

 

「街に甚大な被害が出る、というほどではないよ」

「というと?」

「例えば――街の人間を無差別に襲う、とかそういう命令を実行するような細工はされていない」

「どーいうことです?」

「うーん。こちらとしても犯人の意図は良く分からないのだけれど。ただ、混乱させる目的であることは確かだね」

 

 言ってしまえば素人の仕業。そんな言い方をしながら、このまま細工された魔導人形を追っていけば辿り着くかもしれないと呟いた。はっきりと口にしなかったのは、それが正解であるかどうかの自信が持てなかったからだろう。

 とはいえ、それでも重要な手がかりである。クロードに情報共有を行い、それは余計に役に立てないですねと返され、とにかく魔導人形のある場所を片っ端から調べることにして。

 

「……分からん」

 

 結果として犯人は見付からなかった。街の人が何かを隠している様子もないし、誰かを匿っている様子もない。捜査は振り出しに戻った。

 だが、それはそれでおかしいといえばおかしい。これだけの細工をしているのだから、何かしらの痕跡は残っていて然るべき。だというのに何もそれっぽいのはなくて、まるでその場所でそこの人が自らやっているかのような。

 

「何か思い付いたんですか?」

「思い付くっていうか、何かおかしいというか」

「言ってみなさいよ。こういう時はどんな意見でも役に立つわよ」

「じゃあ言うが。何かまるで街の人全員が犯人みたいだ」

 

 犯人が絞れない。範囲が広過ぎる。だったら行き着くのはそれじゃないか。そう思ってしまったわけだ。当然何言ってんだお前みたいな顔でアリアには見られた。お前どんな意見でも役に立つって言ったじゃないかよ。

 

「そりゃ言ったけど。いくら何でも、んー」

 

 どうですか、とアリアがセフィに問い掛ける。同じように聞いていた彼女も可能性としてはなくはないかもしれませんが、とフレデリクさんに視線を向けながら、しかしいくら何でもと続けた。まあそうだよな、その場合、治めている貴族であるアンブル家への大規模な裏切りだ。セフィの言葉じゃないが、いくら何でもそこまでの規模になることはないはずだ。

 

「そもそも、そこまでして何を作ってるのか、になるよぉ……」

 

 シトリーがぽつりとそんなことを述べる。言われてみれば確かに、粗大ごみの山からパーツを漁って、挙句の果てにパーツを盗んで。そんなことをしてまで街の人が大規模に作るものって一体何だ。

 じゃあやっぱり街の人全員が犯人説は荒唐無稽ってことになるか。

 

「魔導人形」

「へ?」

「わざわざ細工をしたのは魔導人形だけ。あれは、魔導人形の構造を把握するためのものだったとすれば」

 

 フレデリクさんがそんなことを述べる。そうして暫し考える素振りを見せた後、俺達を見てこんな事は出来るか、と頼み込んできた。

 

「周囲の、魔道具の感知は出来ませんか?」

「と、言われてもな。スロウ、糸で何とか出来ないか?」

「んー。規模にもよりますし、魔道具の感知っていうかそれっぽい何かを調べるくらいですよ、ぶっちゃけただの糸ですから」

「お願い出来ますか?」

「いーですよ」

 

 てい、と糸を吐いたスロウが、そのまま何かを考え込むように目を閉じる。そうして、何やら難しい顔で首を傾げた。

 

「んー。やっぱりよく分かりませんね」

「そうですか、無理なお願いをしてしまって申し訳ない」

「あ、でも。なんか変なのは見付けましたよ。そこのお店の人」

 

 びしぃ、と近くの店の店主を指差す。へ、と素っ頓狂な声を上げた店主に向かい、腰に刺してある包丁を差した。

 いや、違う。あれは包丁じゃない、短剣だ。確かにただの店主が持っているものじゃない、冒険者とかが身につけるような装備だ。

 

「言われてみれば不自然ね」

「うんうんうん……」

 

 スロウの言葉に続くように、アリアとシトリーもそれを見る。店主はどうしたんですかと首を傾げ、これが何かと短剣を掲げた。

 

「ちょっとした骨董品市で手に入れたもので、気に入ったからこうして腰に下げているだけですよ」

 

 見てみますか、とそのままそれをこちらに差し出す。そんな行動に拍子抜けした俺達は、何だそんなことかと軽く溜息を吐き。じゃあ遠慮なくとそれを手に取り。

 

「んな――」

「エミル!?」

 

 瞬間、自分の体の主導権を奪われた。

 

 

 

 

 

 

「こいつ――」

 

 毒づくが、体は思うように動かない。俺の体はそのままスロウ達から逃げるように離脱し、そして周囲の魔導人形へと向かっていった。短剣が魔導人形に触れると、それだけで正常稼働していた魔導人形が異常な動きをし始める。

 

「お前が犯人かよ!」

 

 なんとか動く口と目で短剣を睨むが、短剣は何も言わない。まあ武器が喋るとは思ってもいないが、それでも俺は主導権を完全に奪われてはなるものかと抵抗をし続けた。

 

「おい、短剣。何とか言ったらどうだ」

「――」

「それとも、俺の口を使わなきゃ何も喋れないのか?」

「――」

「まあ、俺達のせいで作戦が台無しになっただろうから、そうなるのも」

「うるさい」

 

 短剣から声が響く。予想外だったのが、声色からすると女の子らしいということだ。もっとこうおっさんだったり魔物魔物してたりするかと思ったので思わず俺の言葉が止まる。

 ふん、と俺が黙ったのを見て鼻を鳴らした――剣だから鼻は無いだろうけど――短剣は、そのまま俺の体を使って目的地まで一気に駆け抜けた。その途中で俺の持っていた通信用の魔道具を放り投げ壊す。短剣のくせに用意周到である。

 

「勇者級が来ると面倒だから」

 

 そう言いながら辿り着いたのは一体の魔導人形らしき何か。店の倉庫に隠してあったらしいそれを見て、俺は思わず目を見開く。その辺の魔道具人形とは一線を画しているそれに近付くと、短剣はその手に自身を握らせた。

 

「まだ完全に完成してないけれど」

 

 魔導人形らしきものが動き出す。ふう、と息を吐いたそれは、腰に短剣を仕舞い込むと、ふふん、とこちらを見た。

 

「どう? ラティ、結構可愛いでしょ?」

 

 ラティ、というのはこいつの名前だろうか。そんなある意味どうでもいいことを考えながら、俺はそれを見る。薄い金髪を黒いリボンでポニーテールにした勝ち気な瞳の美少女の姿をしたそれは、どこか人懐っこい笑みを浮かべていた。

 

「それが、今回の事件の結果か」

「そうよ」

「……体が、欲しかったのか?」

「何よ、悪い?」

「さっきみたいに誰かの体を乗っ取ればいいんじゃないのか」

「嫌。だってラティの望んだ姿じゃないもの」

 

 ふん、と仁王立ちするラティ。俺はそんなラティを眺めながら小さく溜息を吐いた。こいつ、そんなことのためにこんな騒ぎを起こしたのか。いや、まあ魔物ならそんなもんか。むしろそっちの方がまだマシくらいだ。

 それはそれとして。さっき乗っ取られた時もそうだったし、今目の前で魔導人形の体を使っている時もそうだが、こいつただのモンスターじゃない。上級冒険者レベル、という予想もあながち間違いではなかった。

 というか。

 

「……お前、魔王級だな」

「分かるの? そうよ、クイックシルヴァーの魔王級、ラティ。よろしくね」

「よろしくされても困る」

「どうしてよ」

「お前、これだけやらかして討伐対象にならないと思ってんのかよ」

「危害は加えてないわよ。被害もまあ、かわいいものじゃない?」

「街の人の体を取っ替え引っ替え乗っ取って悪巧みしてる時点で駄目だろ。それが分かってるからお前も逃げたんだろうに」

 

 最初から大丈夫だと思ってたら俺の体使ってここまで来てないだろ。そう告げると、ラティは少しだけバツの悪そうに視線を逸らした。

 ともあれ。そう時間も掛からずにスロウ達もここにやってくるだろう。そうすればクロード達とも合流出来る。その後はこいつを討伐して終わりだ。

 

「……流石にラティも黙って殺されるのは嫌よ。だったら抵抗するわ」

 

 そう言って一歩踏み出してくる。そう思うんならもっとこう、やり方あっただろ。いや、出来るだけ被害を出さないようにやったからこそ粗大ごみから部品調達したのか。でも足りないから仕方なくって感じか。そういう意味では確かに被害もまあ――いや、どっちにしろ無罪放免ってわけにはいかないか。

 

「何よ。怖気付いたの?」

「……こちとら中級冒険者だぞ。魔王級に一人で挑むほど強くもないんだよ」

「じゃあ戦わなきゃいいじゃないの。ラティは別にそれでいいわよ」

「いや、だから」

 

 調子が狂う。なんというか、普段俺の周りにいる連中を相手にしているような、そんな気さえしてくるような。

 

「どっちにしろ、一回しばいて謝らせないといけないからな」

「ふん。やれるものならやってみなさい」

 

 

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