幼馴染の擬態した虫が聖女とか言われた   作:負け狐

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第二パーティ(アタッカー、デバフ、アタッカー)の巻


6章
第八十七話


 というわけで場所は故郷に戻って王国。上級冒険者の試験である。試験のはずだったのだが。

 

「なあ」

「どうしました?」

「これは、どういう状況だ?」

「状況、不理解?」

「いや、どっちかというと、理解したくないから尋ねてるというか」

「そこは素直に観念したほうがいいんじゃないの?」

 

 横にいる三体を見て溜息を吐く。そうしながら、視線をそこから先、俺達より数歩離れている後ろへと向けた。

 スロウ、アリア、シトリーのいる場所を、である。

 

「どーしました?」

「だからどういう状況なんだよこれ」

「理解はしてるんでしょ?」

「だから! 理解したくないから言ってんだよ!」

「多分、観念したほうがいいと思うよぉ……」

 

 横にいる三体とほぼ同じやり取りをする。再度溜息を吐いた俺は、諦めたように肩を落とした。

 どういう状況かと問われれば。上級冒険者の試験を行う予定だったと答える。そう、だった、だ。上級冒険者の資格は書類に記入するだけで終わったのだ。

 じゃあ何をやっているかと言えば。

 

「勇者級になんかなりたくないんだよ俺は……」

「そう言われましても」

 

 窓口の職員が困ったように述べる。俺達を見て、そして視線をそれより後方へと向けた。

 月の大聖女、傀儡人形、妖精姫の三体を見て、カウンターにおいてある書類に視線を落とす。

 

「教国の勇者の推薦状に加えて、属性頂点までもが推薦している冒険者となると、必然的に勇者級になってしまうというか」

「なんで推薦した!」

「普通は喜ぶところだと思うのだけれど」

 

 そう言って傀儡人形がクスクスと笑う。まあそりゃ、勇者級といえば冒険者の頂点。冒険者としては目指すべき場所。そういうものだということは俺も分かっている。

 が、いかんせん俺はそこに魅力を感じていない。ぶっちゃけてしまえば面倒であると言い切ってしまえるくらいには憧れがない。だから、強力な後ろ盾があっても別に嬉しくはないわけだ。

 

「それはあちきも十分承知なんスけど。でも、やっぱりエミルさんの実力を考えると、どうしてもある程度は上に行って欲しいと思っちゃうんスよね」

 

 申し訳なさそうに妖精姫がそう述べる。悪意がないのは分かるし、属性頂点としての立場的な、調停者としての意味合いもあって推薦したのだろうというのが彼女の表情から分かるので責めにくい。いやまあ、妖精姫は色々と世話になってるし、責める気はなかったけれども。

 

「諦めなさいな。それに、過ぎた謙遜は嫌味にもなるのよ?」

「別に謙遜してるわけじゃないんだけどな」

 

 月の大聖女がそう言いながら微笑む。やいのやいのと持ち上げてくれるのだが、正直自分がそこまで強いと実感したことがないのだ。魔王級モンスター相手に真正面から挑めるような強さを持っているとは考えにくい。

 そんなことを思っていると、横からの視線が強くなった。ジト、という擬音が聞こえてくるくらいの視線が突き刺さる。

 

「魔王級に真正面から挑んで、人の顔面潰しておいてよく言うわ」

「お前人じゃないだろ」

 

 ぶうぶうと文句言うその視線の主にそんなツッコミを入れつつ、だとしても完全討伐できたわけでもないし、あの時のダメージでいうならば一時的に行動不能に出来た程度だろう。勇者級の、クロード達と比べるとその差は歴然だ。

 

「別に彼等と同じ場所にすぐ立て、というわけではないのよ」

「クロード達だって最初はもっとヒヨッコだったわ。勿論、他の勇者級もね」

「そう気負わなくても大丈夫っスよ。エミルさんはエミルさんのままで、十分強いんスから」

 

 傀儡人形、月の大聖女、妖精姫が俺の心中を読んだかのようにそう述べる。いやまあ多分、分かりやすく表情に出ていたんだろうなというのが自分でも分かるので、そこら辺は別にいい。文句を散々言ったものの、ここまで来て、止める、という選択肢は俺の中でも無い。

 何より、魔王級なりかけ、あるいは駆け出し魔王級だというスロウ達と一緒にいるためには、俺もそれなりの称号が必要になる。逃げるわけにはいかない。

 が、だ。それはそれとして。

 

「それで何でこの面子でパーティー組むことになるんだ?」

「不満?」

「そりゃいつもの面々じゃないからな、不満というか不安だよ」

「ごめんなさいエミル様。ですが、私も精一杯頑張りますので」

「いやそれはいいんだけど」

「何よ。じゃあラティが問題だって言いたいわけ?」

「いやお前は大問題だろ」

 

 はぁ、何度目かの溜息を吐く。いつもの三体ではなく、全然違う三体とパーティーを組む事になったこの状況を嘆きながら。

 

 

 

 

 

 

「ご説明しますと」

 

 窓口の職員曰く。スロウ、アリア、シトリーについては魔王級なりかけ、あるいは駆け出しの認定がされた。その時点で実力は十分、素行も冒険者になってから何かやらかしているわけでもなし、と脅威度も低い。扱いとしては教国のヤマタノオロチのように共存可能な魔王級としての証明もされた。

 俺についても、これまでそんな三体を纏め上げていたという実績や、持っている絆だとかなんだかいう訳の分からないものが評価され、勇者級の認定も滞り無く行われるらしい。あくまで駆け出し勇者らしいのだが、そのくらいで止まってくれる方が俺としてもありがたいので、勇者になるのは渋々だが、素直に受け取ることにする。

 で、ここからが問題だ。勇者級として成ることは問題ないと言うものの、所属している使役モンスターには情報が少ないものもある。それらもきちんと仲間として連携、あるいは絆が出来ているのかというのが今回のポイントだ。

 

「というわけでして、エミルさんにはクーヤ、コイナ、ラティの三体とともに試験依頼を受けていただくことになるのですが」

 

 問題はありますでしょうか、と職員が尋ねる。あるよ、大問題だよ。この面子で一体全体どうやって試験依頼をクリアするってんだよ。

 そんな言葉が喉まで出かかり、いやまあ別にそうなればなるでやっぱり俺に勇者級の資格はないってことになって元の生活に戻れるのか。そんなことを一瞬だけ考えて、いや違うと頭を振った。

 もう既にスロウがほぼ魔王級に認定された以上、俺がここで落ちるとスロウの使役モンスターの資格も無効になる可能性がある。そりゃ中級冒険者が魔王級を使役なんて普通に考えたら無理だからな。上級なりたてとかでも怪しい。やっぱり、勇者級駆け出しくらいの資格は欲しい。

 つまり、俺はスロウと一緒にいるためにもこの勇者級試験をなんとしてでもクリアする必要があるわけだ。

 

「クーヤ、コイナ、ラティ」

「疑問?」

「はい、どうしましたか?」

「なによ」

「俺はこの試験依頼をクリアしたい。協力してくれるか?」

 

 真っ直ぐに三体を見て、俺はそう述べた。そんな俺を見て、クーヤもコイナも、そしてラティも、どこか面白いものを見る目で笑みを浮かべた。

 

「愚問。姉様、感情、優先」

「私はいつでもエミル様の味方です」

「エミルとスロウが一緒にいるところもっと見たいもの、当然でしょ」

 

 何か一体その理由でいいのかと思わないでもなかったが、ともあれ皆俺のパーティーとして協力してくれることに異は唱えないらしい。ありがとうとお礼を述べると、窓口の職員に続きを促した。それで、試験って一体何をやるのか、と。

 そうして移動した先はギルドの練習場。まずは簡単な実力測定ということで、測定人形に攻撃を行うらしい。

 

「これ、俺もやるのか?」

「いえ、戦闘データの殆ど無い三名の資料作成のためですので、エミルさんは指示を出してもらいたいのですが」

「指示か……コイナはともかく、他の二体が言う事聞くかな」

「クーヤ、戦闘、従順」

「別によっぽど変なこと言わなければ言うことくらい聞くわよ」

 

 ならいいんだけど。そんなことを思いながら、では開始してください、という声と共に俺はクーヤに指示を出した。以前、あの時の魔王級と出会った時と比べて、果たしてどのくらい強くなっているか。

 とか考えていると、糸で作り出した鎌でスッパリと測定人形をぶった切っていた。あ、と誰かが声を出したが、クーヤは気にすること無く、そのまま測定人形を切り刻む。

 

「クーヤ、ちょっと待った」

「?」

 

 ピタリと動きが止まる。どうしたのだと言わんばかりに振り向いたクーヤに一旦戻るよう伝えると、俺は職員にこれどうなのと問い掛けた。

 

「一定以上のダメージで破壊はされるので想定内の現象ではありますが、まさか一撃とは」

「師匠、先生、修行、成果」

「間違いなく上級モンスターは確定です。……ミミックロウラーが上級と魔王級になるなんて」

 

 物凄い難しい顔をしながら書類を記入していく職員。まあ種族というかあの姉妹が特別おかしいだけだと思うのでその辺りは気にしないほうがいいと思う。そもそもクーヤは妖精姫と隠れ潜む百花に修行をつけられてるんだから、ある意味当然というか。むしろスロウが何でこうなった状態というか。

 

「そういえば妖精姫」

「どうしたんスか?」

「何でクーヤは俺の使役モンスター扱いのままなんだ? お前達の弟子ならそっちにした方がよくないか」

「属性頂点は冒険者になれないっスからね。あちきらの弟子って扱いだけだとモンスターのクーヤは冒険者の仕事が受けられないんスよ。だからあの時のまま残してたんス。結果としてこんな事になってしまって申し訳ないとは思っているんスけど」

 

 深々と頭を下げられる。いやまあ別にそれはいいし、ちゃんと理由があるんならしょうがない。我ながら妖精姫に甘いとは思うが、他の属性頂点がほとんど碌でもない連中だからそこはしょうがない。特に横で笑っている傀儡人形。

 ともあれ。クーヤの実力測定は終わり、コイナは別段問題なく測定が終わった。問題なかったよな? 状態異常の検出値に若干職員が引いていたが、まあ概ね問題は無かっただろうと信じたい。観客となっているセフィを見ながら、やっぱり彼女と一緒にいるだけでパワーレベリングされてるのかとかも思ったりはしない。

 そして最後。ラティである。ぶっちゃけると測定するまでもなく魔王級のモンスターである。右手に取り出した銃で測定人形を蜂の巣にして、これでいいのかと職員に問い掛けていた。

 

「は、はい。流石は魔王級……」

「別にこれはラティが凄いわけじゃないわよ。フレデリクとセフィーリアに修理してもらったボディのおかげ」

 

 そう言うが、基本設計はラティが行っているんだから、まあ立派なラティの武器として考えていいだろうと俺は思う。何よりそれを自由自在に操るという能力そのものが魔王級足らしめている。

 そんなこんなで測定は終了。上級、上級、魔王級という認定を受け、俺の使役モンスターがまたおかしいことになった。というか書類上六体中四体が魔王級の魔物使いとか一体何の冗談だ。

 

「普通の魔物使いならば、一生掛かっても辿り着けない領域でしょうね」

 

 そう言って傀儡人形がクスクスと笑う。加えるならば、と言葉を続け、月の大聖女と妖精姫に視線を向ける。

 

「全ての属性頂点に協力を仰げる、というところもかしら」

「仰ぐつもりもないけどな」

 

 後全てじゃない。風の属性頂点はまだ会ったことがないぞ俺は。そんなことを傀儡人形に述べると、何が可笑しいのか口元に手を当てて楽しそうに笑っていた。

 書類作成も終わり、次はいよいよ実践である。まあここで大人しくしていても、本当の依頼で暴れ出すようではとてもじゃないが制御しているとは言い難いだろうし、何よりそんな危険な魔物を野放しにも出来ない。

 そう考えると今まで俺がやってきた後見人って実は大分危ない橋だったのではなかろうか、と今更ながら怖くなってくる。

 

「属性頂点のお墨付きって偉大だったんだな」

「あら、珍しいわね、エミルくんがそんなこと言うだなんて」

 

 心底驚いたような表情で月の大聖女がそんなことを述べた。やかましい、俺だってたまには素直になることだってある。妖精姫も笑うな。

 まったく、とジト目で観客になっている属性頂点共を睨みながら、それで実践は一体何をやるのかと職員に問い掛けた。職員はそんな問い掛けに、そう心配せずとも、これまでのやり取りである程度は判定できていますと返す。

 

「ですので、後は当人に認められるかどうかになります」

「当人?」

「はい」

 

 そう言うと職員は依頼書を取り出し俺に手渡した。依頼内容は野生化したオルトロスの討伐。以前模したゴーレムと戦ったことはあるが、本物は初めて。そんな相手を、慣れないパーティーメンバーで倒すとなると中々に骨が折れる。

 出来ない、ではない。もう段々と感覚が麻痺しているのか、なるほど、とただ素直に受け取るくらいには冷静に、相手の実力とこちらの実力を比べていた。

 だから、気になったのはその部分以外の箇所。討伐に際し、同行するもう一つのパーティーについてだ。

 

「別の勇者級と合同の依頼なのか」

「そういうことになります。彼等に認められれば、試験はクリアということで」

 

 そう言いながら、心配せずとも同じようにやれれば一発合格ですと職員は笑う。向こうの勇者級も、まあ勇者級と言われるだけあってきちんとした相手だから、と職員は続けた。

 が、だ。勇者級だから、勇者級と言われるだけあって。そんなことを言われてもだ。

 俺の知っている勇者級というと、大分まともとはかけ離れたような連中だったんだけれども。特にあの胡散臭い男とか。

 

「一応聞くけど」

「はい」

「その勇者級って、クロードとどっちがまとも?」

「教国の勇者級、クロードさんと……?」

 

 変なことを聞くんだな、と首を傾げた職員は、そもそも勇者クロードは別におかしな人物ではないだろうという前置きをしながら言葉を紡いだ。同じくらいきちんとした人物ですよ、と。

 

「……そうか」

 

 じゃあ多分碌でもないやつだな。俺はそんな確信を持ちながら、このパーティーでどうやって依頼を達成しようかと頭を悩ませるのだった。

 

 




ちなみに第一(いつも)はサポーター、アタッカー、タンクのバランス型
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