ご注文は名人ですか?   作:神近 舞

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今回は短めです。私にも予定が......。


第10羽 対お兄ちゃん用決戦部隊、 通称チマメ隊

 

〔1〕

 

 金冠杯決勝戦。対局相手は真辺 明(まなべ あきら)九段。竜皇連続9期通算11期、名人連続3期、その他タイトル含めて通算獲得タイトル29期の強豪棋士だ。

 

「真辺さん、今日はよろしくお願いします」

「良い対局にしような」

「はい!」

 

 金冠杯は一般棋戦の中でも超早指しの棋戦だ。持ち時間10分(切れたら秒読み30秒)+考慮時間1分が5回という非常に短い持ち時間だ。そのため、40手目まで指した上でそこから対局を再開するという方式をとっている。封じ手の41手目から再開だ。先手は僕のため、僕の封じ手から始まる。

 

「封じ手は4五桂です」

 

 僕は攻めの一手を示した。その後、僕と真辺九段による攻防が続く。

 

「......見つけた」

 

 僕は真辺玉の詰み筋を見つけた。僕は連続で王手をかけていく。

 

「......負けました」

「ありがとうございました」

 

 真辺九段が投了。今期の金冠杯覇者は僕に決まった。

 

 

 

 

 

 Side Rize

 

「リゼ先輩!さっきのニュース見ました!?」

「あれだろ?レイが金冠杯で優勝したってニュース」

「そうです!......レイは......すごいですよね」

「そうだな......私たちが見るべきなのは伯方名人じゃない、伯方 玲だ」

「えっ?」

「ほら、私たちはレイと距離が近い分、錯覚しないようにしなきゃダメなんだよ。『伯方名人』としてのレイと『伯方 玲』としてのレイを」

「......そうですね。ココアにも似たようなことを言われたばかりでしたね」

 

 そうだ。私たちが気に留めるべきなのはレイだ。伯方名人じゃない。伯方名人の方は私たちが気にしなくても頑張っている。レイを気に留めることが出来るのは私たちだけだ。だからこそ———

 

「この気持ちに......嘘をつく訳にはいかない」

「......!レイについては負けませんよ!」

「私もだ、シャロ。ライバル、だな」

「......はい!」

 

 強力なライバルが出来てしまったな。

 

 Side Out

 

 

 

 

 

〔2〕

 

 とある日のラビットハウス。ラテアートとラテワードを作ってるリゼさんと僕、コーヒー豆をすり潰すチノちゃん。今日はやけに静かだった。

 

「ココアがいないと静かだな」

「ですねー」

「えぇ......」

 

 それはこの前のこと。

 

『テスト前の連休だから———』

『千夜の家で勉強合宿?』

『そうなの!レイちゃんは問題無いよね?』

『何を判断してそうなったのさ』

 

 一応学年1位をキープしているけどさ。

 

『と言う訳でチノちゃん、ティッピー貸して?』

『何を企んでるんです?』

『私、モフモフしないと寝れないから!』

『安眠グッズじゃないです!』

『ティッピーを枕にする気かい?』

『じゃ、じゃあせめて夜を越すために、今からモフモフ成分の蓄えを!』

 

 そう言ってチノちゃんにモフモフするココア。

 

『モフモフ成分って何さ』

『お前は冬眠する熊か!?』

 

 そして今に至って、現在ココアは甘兎庵へ勉強合宿しているのだった。

 

「でも今は静かですが、これから騒がしくなります」

「「えっ?」」

「マヤさんとメグさんがお泊りに来るんです」

「マヤちゃんとメグちゃんが?」

 

 すると、ドアが開く音が聞こえた。来店して来たのはマヤちゃんとメグちゃんだった。

 

「やっほー!チノー!リゼー!レイ兄ー!」

「お世話になりまーす」

「ココアの代わりにお店を盛り上げるよ!」

「頑張ろうねー」

「ココアが居たら喜んだろうに」

「そうですね」

 

『妹がいっぱい!』とか言ってそう。

 

「今日はよろしくー!」

「はい」

「んー......」

「「「ん?」」」

「小さいのが3人うろつくと、名前を間違えそうになるな」

「私も!?」

「チノ、マヤ、メグでまとめて、チマメだな」

「「何かヤダー!」」

「私も!?」

「ネーミングセンス......」

 

 その後、僕は制服を2人に渡したリゼさんと仕事をしている。

 

「......なぁ、レイ」

「はい?何でしょうか?」

「その......敬語、やめてくれないか?ココアたちと同じようにタメで呼んでほしい......」

「......おっけー、リゼ。これで良い?」

「あぁ......それでいい。......よし」

 

 リゼが小さくガッツポーズを決めていた。何故?

 

「お待たせー!」

「ん?」

「えっ?」

 

 なんと、マヤちゃんがメグちゃんと同じツインテールをしていた。

 

「私達が働いてる間はツインテデーね」

「お揃いー」

「妙なルールを......」

 

 かわいいな。ってダメダメ!惑わされるな!

 

「リゼの真似ー」

「まあ良いでしょう」

「悪くはないな」

 

 チノちゃんとティッピーもツインテールしていた。そしてみんなの視線は何故か僕の方向に向く。

 

「レイ兄もやろうよ!」

「なんでさ」

「レイお兄ちゃんならお似合いだよー」

「いや......だから......」

「レイ?」

「レイさん?」

「......分かったよ」

 

 やればいいんでしょやれば!僕は持っていた髪留めで短めのツインテールを作る。恥ずかしい。男としてのプライドがズタボロだ。

 

「メグー!本物のリゼはどーれだ?」

「えっ?えっと......えっと......」

「みんなツインテだから見分け付くかな?」

「わ、ワカンナイヨー」

「律儀に乗らなくて良い!」

「だってー......」

 

 面白いなこの子たち。その後、マヤちゃんとメグちゃんがラビットハウスの手伝いをしていた。

 

「お待たせしましたー」

「あら?私が頼んだのはカプチーノよ?」

「あっ!すみません!」

 

 カプチーノではなくミルクココアを差し出してた。

 

「間違えてミルクココア出しちゃった」

「ん?飲み物作ってるのって......」

「まさか......チノちゃん!なんでミルクココアばっかり作ってるの!?」

 

 いつの間にか無意識にミルクココアを大量に作ってしまったチノちゃん。

 

「いつの間にこんなに......」

「まさか......ココアシック!?」

 

 チノちゃんがミルクココアを見て疑問を抱いてた。

 

「僕がカプチーノ持って行くよ......すみません、お待たせしましたー!」

 

 僕は出来たカプチーノを持ってお客さまの方へ行く。

 

「とりあえず飲も?」

 

 僕とチノちゃんとメグちゃんは大量のミルクココアを飲むことに。......うっ、重たい......。

 

「飲み切ったねー」

「しばらくミルクココアはいいや......」

 

 その後、キッチンではリゼがパスタを茹でていた。

 

「ねぇリゼ、私にもアルゼンチン教えて」

「アルゼンチン?社会の宿題でも教えて欲しいのか?」

「アルデンテの事じゃないかな?」

「そう!それそれ」

「「通訳か!?」」

 

 アルゼンチンからアルデンテ......まぁ分からんでもないけど......。

 

「メグさん達は以心伝心なんです」

「なるほど?」

「私とリゼさん、レイさんも心が通じ合えば......」

 

 何かを想像するチノちゃん。途中からなぜかよだれが垂れていた。

 

「言葉なしで通じ合いたいならハンドシグナル教えてやるよ」

「ハンドシグナル?」

「主に軍隊が使うやつだね。手のサインだけの指示で行動するためのもの。それでリゼ、例えばどんなのがあるの?」

「これが撃て。っでこれが弾よこせだ」

 

 リゼは右手を前に出したり、右手を上下に振る。

 

「そんなの使わないです」

「全部軍用じゃないか」

「そうか?あはは......」

「じゃあリゼ!」

「な、何だ?」

 

 ジッとリゼを見つめるマヤちゃん。

 

「私は今、何を思っているでしょう?」

「ん?えっと......銃貸してとか?」

「ブブー!」

「はいはーい!」

「はいメグ!」

「仕事が終わったら温泉プールへ行って疲れを取ろうー!」

「ピンポーン!」

 

 メグちゃんが見事的中した。

 

「「凄い......!」」

「この前、チノに話聞いてから行きたかったんだー!もうリゼー、それくらい分かってくれないとー」

「分かるか!」

 

 無理難題にもほどがある。

 

 

 

 

 

〔3〕

 

 仕事が終わった僕たちは、温泉プールに来ていた。

 

「温水プール楽しみー!」

「ワクワクだねー!」

「はしゃぎすぎてはぐれるなよ?......ん?チノは?」

 

 野良うさぎを触ろうとしてるチノちゃんを見付けた。

 

「あ!野良うさぎがいたので......」

「チノちゃん、だんだんココアっぽくなってない?」

「えっ......?どうせならレイさんっぽくなりたいです」

「なんでさ」

 

 その頃温泉プールでは、マヤちゃんとメグちゃんが元気に遊んでいた。リゼはビーチチェアでゆったりしていた。チノちゃんは僕と将棋を指しており、ティッピーは観戦していた。

 

「レイさん、おじいちゃん、お友達を泊めるのは初めてでちゃんともてなせるか不安です」

「ん〜」

「その気持ちは分からなくはないかな」

「今思えばこう言う時はココアさんに頼りっきりでした」

「ありのままのお前で接すれば良い」

「あれ?おじいちゃん声......青山さん!?」

「青山先生?」

 

 いつの間にか青山先生がそこにいた。

 

「ってマスターならきっと言うと思うんです」

「あ......あの......ここへは良く来るんですか?」

「小説のアイデアはどこに転がっているか分かりませんから。ではではー」

 

 青山先生はまたどこかへさまよいに行った。

 

「チノー!見て見てーリゼに買ってもらったー!二手に分かれて銃撃戦やろうぜ!」

「は......はい」

 

 4人は水鉄砲で銃撃戦をする事に。リゼ&チノちゃんペア、マヤちゃん&メグちゃんペアに分かれた。僕は審判だ。

 

「よーし!スタートだ!」

 

 テンションが上がっているのか、いつもより輝いて見えるリゼ。

 

「ねえ、これどうやって水入れるの?」

「使い方分かってなかった」

 

 そもそも水鉄砲の使い方を把握していなかったこの2人。

 

「おいおい......」

「そう言う事は先に言え!」

「ごめーん」

 

 改めて銃撃戦スタート。僕は4人の位置情報を常にモニタリングしている。リゼは物陰に隠れながら相手を探す。その頃、チノちゃんは物陰に隠れていた。そこにさまよいに行ったはずの青山先生が来た。

 

「そんな所でどうしたんですか?」

「メグさんマヤさんには以心伝心のチームワークがあると思うのでリゼさんに任せて隠れているんです。あっそうだ、ティッピーは人前で濡れるの嫌がるので預かっててくれませんか?」

 

 ティッピーを青山先生に預けようとするが———

 

「困りましたね、実は私......マヤさんに銃を託されてまして」

 

 彼女は後ろに水鉄砲を隠し持っていた。

 

「えっ!?」

「リゼさんの居場所を聞いて来いと」

 

 するとティッピーを人質(?)にする。

 

「わしを人質にする気か!?」

 

 その刹那———

 

「はあぁぁぁぁぁ!」

「はうっ!」

「わっ!?」

 

 リゼが水鉄砲を放ち、青山先生と何故かティッピーに直撃させた。

 

「ティッピー!」

「メグも見付けたぞ!」

 

 プールに隠れてるメグちゃんを見付けて直撃。

 

「うわ!? 見付かっちゃったー」

「マヤさんはどこです?」

「そんな簡単に口を割る訳———」

 

 するとメグちゃんがある方向を指差して。

 

「あっち!」

「なっ!?」

 

 簡単に場所を教えてしまった。

 

「教えちゃったよ......」

「バカ正直だったか!?」

「メグのアホー!」

「悪役って楽しいですね」

 

 水に濡れたティッピーは体を細める。

 

「今回はチノちゃんとリゼの勝ちだね」

 

 そして銃撃戦はリゼ&チノちゃんペアの勝利。その後、僕とリゼは夜景を眺めていた。

 

「夜景綺麗だねぇ」

「先生!お風呂上りにコーヒー牛乳飲もう!」

 

 コーヒー牛乳を持って来たチノちゃんたち。

 

「先生?」

「僕とリゼが?」

「リゼとレイ兄のこと、先生だって」

「つい学校にいる感覚だった。体育の先生みたいだからかな?」

「あぁ、なるほどね」

「......何故隠れている!?」

 

 何故か僕の後ろに青山先生が隠れている。

 

「すみません、先生と聞いて。担当さんがここまで原稿を取りに来たのかと」

「えぇ......」

 

 その後帰宅する僕たち。

 

「プール面白かったなー!」

「ねー!」

 

 ココアにメールしようとするチノちゃん。

 

「早くココアちゃんとお話したい?」

「そ......そんな事言ってないですが......」

「最近のチノはよく顔に出るし」

「よし!ラビットハウスまで競争だ!私とレイが勝ったらお前らは明日からチマメ隊だ!」

「えっ、僕も走るの!?」

 

 全速力で走り出す僕とリゼ。

 

「「「えー!?やだー!」」」

 

 その夜、チマメ隊とティッピーは、チノちゃんの部屋に集まっていた。僕はお風呂に入っていた。

 

「......」

 

 僕の日常はあの頃と比べて大きく変わった。この温かい日常を失いたくない。

 

『父さんに認められてるアンタと違って......私は......!』

「......!」

 

 思い出したくないことまで考えてしまった。もう忘れよう。あの人とは決別したんだから。

 

「......出よう」

 

 これ以上何も考えたくない。

 

「はぁ.....サッパリした......ん?」

『料金所で蜂の巣にされちゃったよぉ......またスタートに戻っちゃった......』

「何やら楽しそうな声が。おや?」

 

 チノちゃんの部屋のドアの前に立つタカヒロさんが居た。

 

「タカヒロさん?」

「レイ君」

 

 手招きしてドアを指差す。楽兎がドアを覗くと、チマメ隊がボードゲームで楽しく遊んでる。

「楽しそうですね。あれって、昨日タカヒロさんが買ったボードゲームですよね?もしかして、チノちゃん達へのプレゼントだったんですか?」

「2人がお泊まりに来るってチノから言われたからね」

「タカヒロさんは凄いですね......僕は、彼女たちのために何か出来ているのでしょうか?」

「レイ君は十分やってくれてるよ。チノの面倒を見てくれてるからね」

「そう......でしょうか」

 

 あまり自信は無いが。その後、チノちゃんの部屋では、チマメ隊が一緒のベッドに寝ていた。僕は寝ている3人を確認する。

 

「チノちゃん、マヤちゃん、メグちゃん、おやすみなさい」

 

 僕はチノちゃんの部屋のドアを閉めて自分の部屋に戻った。翌日、外は雪が降っていた。僕は右手にコーヒー豆が入った紙袋を持って、ラビットハウスに向かっていた。

 

「ん?レイ?」

「ん?リゼじゃん」

 

 道中、リゼと出会った。

 

「どうしたんだ?そんな所で」

「タカヒロさんからコーヒー豆の買い出しを頼まれて、それで今戻ってる途中なんだよ」

「そっか」

「リゼ、一緒に来る?」

「あぁ」

「それと、リゼ」

「なんだ?」

「その髪型も似合っているよ」

「......!」

 

 僕たちはラビットハウスに向かった。

 

「今日はお客として入ってみよう」

「それじゃあリゼ、いらっしゃいませ」

「あぁ」

 

 ドアを開けてリゼを来店させる。

 

「ん?」

「ただいまー、って、えっ?」

 

 ドアを開けるとそこには。

 

「「「おかえりなさい!お姉ちゃん!お兄ちゃん!」」」

「妹喫茶だよ!」

 

 赤いランドセルを背負ってポーズを取ってる3人が待っていた。

 

「な、ななな何してる!?一列に並べ!チマメ隊ー!」

「僕はそう簡単に堕ちないよ!3人ともせいれーつ!」

 

 チマメ隊は怯えた。

 

「教官とレイ兄には効かなかった!?」

「やっぱりココアさんにしか効きませんね」

 

 こうして楽しいお泊まりをしたチマメ隊であった。チノちゃん、よかったね。




この世界の将棋界の事情10
第33期竜皇戦終了後の当時の報道
『伯方七段、早すぎたタイトル戦』
『伯方七段三連勝からの逆転四連敗、11月の体調不良が原因か』
『広島竜皇、最強の挑戦者相手にタイトルホルダーの意地を見せる』
当時の世間の反応
『小学5年生で2日制タイトル戦なんて早すぎた』
『逆に今まで勝てていたのが奇跡』
『次の棋帝戦もあまり期待出来なさそう』

レイの弟子になるのは誰?

  • ココア
  • チノ
  • リゼ
  • 千夜
  • シャロ
  • その他
  • 誰も取らない
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