ご注文は名人ですか?   作:神近 舞

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執筆ペースと投稿ペース......これ以上上げられないよう......ムニャムニャ。


第11羽 少年は赤い外套を纏いウサギを駆りて聖夜の空を行く

 

〔1〕

 

 今日は星河戦決勝の放映日。決勝の対局は僕と広島九段の対局。ダイニングに備え付けのテレビで僕はココアとチノちゃんと共に視聴していた。......自分の対局をこうして目の前で視聴されることほど恥ずかしいものは無いな。

 

「プロ同士の対局を見ていると、たまに指した手の意味が分からないときがあります」

「そうだね......僕も小学生になる前まではそうだった」

「これが天才の成長速度......!?」

 

 ココアは何を言っているんだ。君もたまにプロ顔負けの一手を言い放つときがあるでしょうが。対局は相掛かりで進行し、中盤に突入。

 

「相掛かりって指しこなすの難しくないですか?」

「確かに大変だね。相手の指す手も考慮する必要があるからね」

「意外と感覚でいけたりしないかな?」

 

 それはココア、君だけだ。対局は終盤に差し掛かり、僕の玉を広島九段が詰められるか否かという状況。

 

「逃げ切れ......逃げ切れ......!」

「レイさん......頑張ってください......!」

「......」

 

 広島九段は僕の玉を———詰められなかった。ここからは僕のターンだ。

 

「レイさんそこです!そうです!それです!」

「レイちゃんそこで3二銀だよ!やった!指した!」

「......あはは」

 

 僕は広島玉を必至に追い込み、広島九段が投了。これで今期の星河戦優勝者は僕になった。ココアとチノちゃんは感動のあまり、僕に抱きついた。

 

「「レイちゃん(さん)おめでとう(ございます)!」」

「......ありがとう」

 

 こういう日も、悪くないな。

 

 

 

 

 

〔2〕

 

 今日はクリスマスイヴ。僕たちは街のクリスマスマーケットに来ていた。多くのクリスマスグッズやイルミネーションなどが立ち並ぶ。

 

「わー!クリスマスマーケットだ!」

 

 僕たちの目の前には巨大なクリスマスツリーが立っていた。

 

「ココアちゃんは、こう言うマーケットって初めてなのよね」

「うん!」

 

 初めてのクリスマスマーケットでテンションが上がるココア。

 

「「落ち着いて(ください)!」」

「もうテンション有頂天だよ!どこから行く?」

「......!」

「来て早々目的を見失うなー!」

「今日は店のツリーに飾るオーナメントを買いに来たんですから」

「そうだよー、遊びに来た訳じゃないんだから」

「ああ、そうだった」

「舞い上がっちゃう気持ちも分かるけどね」

「折角だし、用事が終わったら色々見て回るか」

「そうしましょう」

「だね」

「わーい!」

 

 またもやテンションが上がるココア。

 

「「落ち着いて(ください)!」」

「レイちゃん、チノちゃんこっちだよー!」

 

 しょうがないココアだなぁ......。僕たちはマーケットを回る。

 

「みんな、クリスマスメニューは決めた?」

「ああ、今年は4人で考えたんだよな」

「頑張りました」

「熟考に熟考を重ねた結果———」

「クリスマス限定ですんごい豪華なパンケーキを作るんだ!」

「素敵ねー!」

「甘兎庵では何か出すんですか?」

「うちは今年もターキーを出すの」

「甘味処でターキー!?」

「ターキーって七面鳥だよね!? そんなの出すの!?」

「何故か評判良いらしいわ......」

 

 嘘でしょ......?

 

「じゃあうちはピザ焼こうよ!」

「なんでさ!?」

「回したピザ生地でお皿を割るのが目に見えます」

「ココアならやりかねない......何故だろう、その確信がある」

「若かりし頃のわしなら回せた!」

 

 マスター?貴方もイヴの雰囲気にあてられてません?

 

「チノって時々凄い冗談言うよな」

「あはは......」

 

 あれ、まだ腹話術で通じているんだ......。

 

「シャロさんは当日バイト尽くしですか?」

「あっ......ええ、時給が良いから。ホントはクリスマスくらいゆっくり休めたら良いんだろうけど......」

「「じゃあバイト終わりにクリスマスパーティーしようよ(クリスマス会しませんか)!」」

「あっ!」

「おぉー」

 

 ココアとチノちゃんの台詞が見事にシンクロした。

 

「完璧にハモったな!」

「見事なシンクロだよ!」

「わー!チノちゃんとハモれる日が来るなんて!」

「ち......違います!ココアさんが言ったのはクリスマスパーティー。私が言ったのはクリスマス会です。それにハモる回数はレイお兄ちゃんの方が圧倒的に多いです」

 

 僕を巻き込むな自称妹。

 

「一緒だよー!ご馳走食べてケーキ食べてコーヒー飲んで朝まで踊り明かそうよー!」

「踊りませんし明かしません。そもそもクリスマスと言うのは心静かに祝うもので......」

「チノちゃ〜ん!」

 

 また抱き付こうとするココア。それを離そうとしてジリジリと僕の方に接近するチノちゃん。

 

「2人とも本当の姉妹みたい」

「本当に微笑ましいね。......僕が巻き込まれていなければ」

「チノちゃーん!」

「助けてくださいお兄ちゃん」

「そこにお兄ちゃんはいません」

「こっちの2人も本当の兄妹みたい」

「「......!」」

「にゃ!?」

 

 千夜やめて!火種を放り込まないで!

 

「やっぱり......レイちゃんがラスボス......!」

「違うが?」

「やっぱりレイさんが私のお兄ちゃんなのは世界の真理なんですよ」

「君は一体何を言ってるんだ?」

「......ともかく皆で集まるのは賛成だな」

「そうだわ、皆でプレゼント交換しない?」

「それ良いな!シャロは予定大丈夫か?」

 

 その発言に、何故かシャロが泣いていた。

 

「シャロ?」

「こ......今年は......大福にロウソクの夜じゃないのね......」

「「「「今までどんなクリスマスを......?」」」」

 

 その後もマーケット内を回ると、ココアが何かを感じ取ったようで。

 

「さっきから、何だか甘ーい匂いが」

「確かに」

「本当だ」

「あんこでも煮てるのかしら?」

「まさか」

「あそこじゃない?」

 

 シャロが指差した先にあったのは、フルーツや雪だるまや雪うさぎの形をしたマジパンだった。

 

「可愛いー!」

「マジパンですね。ケーキの上とかに乗ってる」

「だね」

「マジパンって何でマジパンって言うんです?」

「マジなパンだからね。本気で可愛い子ぶってるんだよ!」

「え?これパンなのか?」

「それは違うよ。マジパンは、すり潰したアーモンドと砂糖を練って作るお菓子だよ」

「え、えっと......ま......マジなんだから......マジなんだから種族の壁くらい越えられるんだよ!」

「無理しないで!」

 

 もうココアのライフは0よ!その後、僕たちはクリスマスグッズの店に来店した。

 

「わー綺麗!オーナメントってこんなに種類あるんだ!」

「うちはどれを飾ろうかしら。シャロちゃんの家も飾ってみない?華やかになるわよ?」

「今のままで良いわよ」

「でっかい天使像!」

「こんなのもあるんだな!」

 

 天使像を見てるココアとリゼ。すると千夜が何か閃いた。

 

「テーマは救世主の生まれた馬小屋!」

「馬小屋!?」

「ダメかしら?」

「ダメに決まってるでしょ!」

「キリストかな?」

 

 一方チノちゃんはどんなのを飾ろうか迷っている。

 

「レイちゃん、リゼちゃん、ちょっと良いかな?」

「ん?」

「どうした?」

 

 僕たちがチノちゃんに気付かれないようにコソコソ話す。

 

「実は私、クリスマスの夜にチノちゃんの枕元にプレゼントを置いてびっくりさせたいんだ」

「へえ!」

「ほうほう」

「でも、どういうのがチノちゃん喜ぶかな?」

「こう言うのはどうだ?」

 

 リゼが選んだのは牙を生やした怖いうさぎのぬいぐるみだった。

 

「別の意味でびっくりだね!」

「絶対ダメでしょ」

「冗談だよ。おっ、そのオルゴールとか良いんじゃないか?」

 

 僕たちは、メリーゴーランドのオルゴールを見付けた。

 

「わー、良いかも。これとぬいぐるみ一緒なら、万が一泣き出しちゃってもきっと笑顔になれるよ」

「ぬいぐるみは渡さなくていい」

「実は僕はもう用意しているんだな」

「そうなんだ!」

「僕なりの、とっておきのモノをね♪」

 

 その後、僕たちは外に出た。外では雪が降っていた。

 

「綺麗だな」

「ずっと空を見上げていると、吸い込まれちゃいそうです」

「フォフォフォ」

 

 そこにココアが遅れて来た。

 

「ココアさん、どこ行ってたんですか?」

「えへへ〜、ココアサンタからちょっと早いプレゼントだよ。手出して」

 

 僕たちは手を出した。

 

「はい」

 

 そしてココアが差し出したのは、小さな袋に入ったマジパンだった。

 

「これ私が気になってたやつ!」

「ココア......」

「私が食べたかったから」

「マジパンって結構甘ったるいよ?」

「でも、どうして急にプレゼントしてくれたの?」

「私、子どもの頃の夢はサンタさんだったからね」

「夢が多いな!」

「本当は皆の寝床に侵入して夢を運びたかったんだけど」

「怖い!」

「不審者にも程があるよ!」

「ねえさっき話してたクリスマスパーティー、ラビットハウスでやらない?」

「良いわね!」

「大丈夫かしら?チノちゃん」

「構わんとも!夜は貸し切りじゃ!」

「本当に良いん......良いの?」

「普段自分が働いてる所でパーティーなんて、何か不思議な感じだな」

「じゃあ、メグさんとマヤさんも誘って良いでしょうか?」

「わー、良いねえ!うっはー!楽しみ過ぎて眠れないかも!」

「クリスマス当日に倒れるわよ」

 

 千夜がココアに近付き、何かを小さく呟く。こちらからは聞こえなかったが、きっと良いことを言ったのだろう。

 

「じゃあこの後どこか行く?」

「屋台でお菓子を買いたいです」

「あと、イルミネーション!」

「全部行きましょう!」

「じゃあ走って行くよ!」

「行くぞ!」

「走ったら転びますよ!」

「みんな待ってよ!」

 

 僕たちはそれぞれの場所に戻った。

 

 

 

 

 

〔3〕

 

 ラビットハウスは多くのお客達で賑わっていた。外で行列が並んでいた。

 

「限定パンケーキお待たせ致しました」

 

 クリスマスの限定メニューのパンケーキ。ココアがパンケーキを作ってる。

 

「この後のパーティー、みんな来られるかな?」

「千夜もシャロも仕事忙しいからな」

「限定パンケーキ4つお願いします!」

「人の事心配してる場合じゃなかった」

「ココアさん、招待状にまた『うぇるかむかも〜ん』とか書いてませんよね?」

「大丈夫!今度は漢字にしたから!」

 

 招待状には『さぁ 聖なる夜の時間だ 来るがよい!』と書かれてた。何故か「夜」だけ赤くなっていた。

 

「大丈夫じゃない!」

「キッチン行ってきまーす」

 

 その後、僕はキッチンでパンケーキを焼いていた。

 

「師匠直伝の技———ここで発揮するとき!」

 

 僕は右手と左手のフライパンの中のパンケーキをテンポ良くひっくり返す。もう一度同じことを繰り返す。

 

「ふぅ......決まった......盛り付けしたら配膳に行くぞ!」

 

 僕は豪華な盛り付けをして、お客さまにお届けする。

 

「お待たせ致しました。限定パンケーキでございます」

 

 そんなこんなで時が経った。しばらくすると———

 

「「こんばんはー!」」

 

 うさ耳を着けたマヤちゃんと、トナカイの耳を着けたメグちゃんが来た。

 

「パーティーグッズは完璧だよー!ってあれ!?」

「ラビットハウスが混んでる!」

「珍しい!」

 

 珍しいとか言わないであげて?マヤちゃんの言う通り、ラビットハウスはほぼ満席状態だった。

 

「パンケーキが話題になったみたいなの」

「座って待ってて下さい。と言うかずっとそれ付けて来たんですか?」

「もち!」

「似合う?」

「もう!そんなの持って来て......気持ちを抑え切れないじゃない!」

「「ココア(さん)、仕事中だよ(です)!」」

 

 ココアは手をプルプル震えながらクラッカーを持っていた。しばらくすると、仕事を終えた千夜が来た。

 

「こんばんは。あら、大繁盛?」

「千夜ちゃん!マヤちゃんたちと席で待っててね」

「特製和菓子を持って来たんだけど......」

 

 白い箱を差し出す千夜。おい。これって———

 

「え?これ和菓子?」

「違う違う、メグ。そこは......」

「あ!こ......これってケーキやないかい!」

 

 そうメグちゃんがツッコむ。

 

「あー惜しい。もう少し勢いが欲しいわね」

「変にツッコませるんじゃない」

「お待たせしてすみません、お客さんなのに......」

「でも本当に忙しそうね」

「じゃあさ、お手伝いするよ!」

「お邪魔じゃなければ」

「邪魔なもんか。助かるよ」

「持つべきものは友と妹だね」

「妹はどこから出てきたのさ」

 

 そこにココアが限定パンケーキを持って来た。

 

「これがクリスマス限定パンケーキ!?」

「美味しそう!」

 

 限定パンケーキに見惚れてる2人。

 

「「これ食べてから頑張るよ!」」

「いきなりおさぼりさん!?」

「まぁまぁ。マヤちゃんメグちゃん召し上がれ」

 

 その後、仕事を終えたシャロが到着した。

 

「私、間に合いましたか!?」

「シャロ!間に合って良かったね」

「シャロ!走って来なくても良かったのに」

「えっ?なんでみんなお仕事ムードなの?」

 

 ここにいるみんなが仕事の手伝いをしてくれている。

 

「忙しいから手伝ってるのよ」

「よ......ようやくお仕事から解放されたと思ってたのに......」

 

 ガッカリしたシャロがその場で崩れる。

 

「ね、ねぇシャロ?大丈夫?」

「シャロちゃんは座ってて良いよ」

「座ってろ......ですって......?そんなの自分自身を許せないわ!」

「限界を超えて覚醒した!?」

「わーお......」

 

 仕事ムードに入ったシャロが本気を見せた。

 

「2番テーブル!ミックスサンドとアメリカン!限定パンケーキとカフェオレ!」

「は、はい!」

「3番テーブル!ナポリタンと限定パンケーキ!ブレンドツー!」

「ラジャー!」

「5番テーブル!限定パンケーキツー!カフェラテツー!ラテワードオプション!オーダーは『聖夜』と『愛』!」

「りょ、了解!」

「シャロさん凄い接客ぶりです......!」

「なんの!負けてらんないよ!」

 

 しばらくして———

 

「これでようやく本来の仕事に戻れるよ......」

「休憩してる暇はないぞ」

 

 疲れてるココアをメニュー表で軽く叩くリゼ。

 

「鬼教官!戦場の死神!うわぁぁぁぁぁん!」

「褒め言葉だ」

「がんばれー、みんな疲れてるんだから」

「ゆ、『夕焼けの糸』のお客様......」

 

 そこにナポリタン(?)を持って来たメグちゃん。

 

「夕焼け!?」

「メグ!それはただのナポリタンだ!」

「えっ!?」

「『聖なる山の頂き・赤と白の誘惑』、お待ちどうさま」

「何か凄いの来ちゃった!」

「甘兎に乗っ取られる......!?」

「あっ、ごめんなさい。いつもの癖で」

「即興で思い付くのもある意味凄いけどな」

「なんなら一夜でメニュー全部書き変えてても良いのよ?」

「させぬぞ!」

 

 やめてくれ!お願いだから!

 

「混乱を招くメニュー名変更は禁止!あと限定パンケーキを追加で4つ!」

「はーい」

「シャロちゃんがリゼちゃん以上に鬼教官!」

「でも、シャロさんが来てからお客さんの回転が良くなったね」

「よし!私達も気合を入れて働くぞ!」

「おー!」

「美味しかったー」

「ねー」

 

 そのとき、お客さまがパンケーキを完食したのを見て、シャロがリゼに目の光信号を送った。それ、どうやってんの?

 

「2番さん食後のエスプレッソ!」

「ラジャー!」

「つまみ食いしたいよー」

 

 マヤちゃんが光信号でメグちゃんに伝えるが———

 

「だーめ」

 

 優しい対応で即、断られた。だからどうやってんのそれ?

 

「こちら、ラテワードになります」

「「きれーい!」」

「どうやってやったんですか!?」

「企業秘密です♪」

「「はうっ!」」

「レイ!お客さまを誘惑するの禁止!」

「なんでさ」

 

 ただ笑顔向けただけだぞ。そろそろキッチンのヘルプ行くか。僕はキッチンに向かった。すると———

 

「千夜さん!」

 

 バテてる千夜と、焦っているチノちゃんがいた。

 

「どうしたのチノちゃん?何かアクシデントでも?」

「実はバターが切れてしまって」

「それで千夜がクリームを振って作ろうとしたのか......僕に任せて」

 

 僕は生クリームが入った瓶を持って高速で振る。

 

「もう少し......もう少し......出来た!」

 

 わずか1分でバターが完成した。

 

「よしっ!バター完成!」

「凄いですレイさん!」

「家事のほとんどは師匠が教えてくれた」

 

 こうして僕たちはパンケーキ作りを再開した。その後もラビットハウスはお客達が絶える事無く賑わってる。みんな仕事を頑張ってる。

 

「可愛いー!何これー?」

 

 ティッピーにすりすりする少女。

 

「このパンケーキ凄く美味しいです!」

「ありがとうございます」

 

 お客さまから感謝の言葉を貰ったチノちゃん。リゼが戦闘機のラテアートをもてなす。

 

「格好良い!」

「そ、そうですか?言って貰えれば何でも作りますよ」

 

 僕が「麗」のラテワードをもてなす。

 

「すごい!」

「ありがとうございます」

「メグちゃん、次のお皿用意おねがーい」

「はい!」

「ありがとうございましたー!」

 

 みんな、その後もお仕事を頑張る。カウンターからチノちゃんとティッピーが店内を見る。

 

「わしはもっと隠れ家的な静かな店を望んでいたんじゃがのう」

「こう言うのも楽しいです」

「悪くないでしょう?」

 

 手が余った僕も応える。

 

「ん?ん〜ふふふふふ」

 

 これにはマスターも同意。そして遂にラビットハウスが閉まり、いよいよクリスマスパーティが始まる。

 

「今日は働いたねー!」

「もうクタクタよー......」

「でも、なんか楽しかったなー!」

「やり切ったって感じよねー!」

 

 そしていつの間にか青山先生もいた。

 

「今日は、私とタカヒロさんでお料理を出すので楽しんで下さいね」

「「「「「「「「はーい!」」」」」」」」

 

 青山先生がキッチンへ向かう。

 

「チノちゃん!乾杯の挨拶して!」

「えっ!? ......」

 

 チノちゃんが周りを見ると、僕を含めみんなが笑顔でチノちゃんを見ていた。

 

「お、お疲れ様でした。乾杯!」

「「「「「「「カンパーイ!メリークリスマス!」」」」」」」

 

 そして様々な料理が運ばれた。ターキーやケーキ、更にサンドイッチやピザなど豪華なご馳走ばかりだった。

 

「凄ーい!」

「美味しそー!」

「クリスマスだからか、ご馳走たっぷりだね」

「凄いご馳走!夢じゃないわよね!?」

「シャロ、夢なんかじゃないよ」

「よし!ターキーを解体するか!」

「手伝うよ」

 

 リゼは懐からナイフを取り出した。僕も置いてあったナイフを手に取る。

 

「うちの『小麦色の誘惑』は、特別な隠し味を使ってるのよ」

「甘兎庵ではターキーにもそんな名前が付いているんですか」

「ねえねえ!交換したプレゼントもう開けても良い?」

「皆で一斉に開けましょう」

「せーの!」

 

 僕たちは一斉にプレゼントを開ける。

 

「わー!美味しそうなクッキー!」

「うさ耳パーカー!似合うかな私に?」

「わー!あの怖いうさぎだ!」

「レイさん監修の定跡本!」

「わーお市松人形かぁ」

 

 クリスマスパーティーが一気に賑やかになった。

 

「こんなに賑やかなラビットハウスは初めてじゃ」

「はっ!マスターの声がはっきり聞こえます!これが奇跡の夜!」

 

 こうして楽しいクリスマスパーティーが終わった。みんなそれぞれ帰って行く。

 

 

 

 

 

〔4〕

 

 Side Cocoa

 

 クリスマスイブの夜、外は雪が積もっていた。巨大なクリスマスツリーが光っている。みんなそれぞれ静かな夜に就寝している。しかし、私は違う。本番はここからだよ!私はチノちゃんにクリスマスプレゼントを置く為にサンタクロースになりきっていた。枕元にプレゼント置かなきゃ!お姉ちゃんとして。チノちゃん絶対サンタさんに来て欲しがってたもん。

 

『靴下は万が一のためです』

 

 そしてこっそりとチノちゃんの部屋に入った。チノちゃんはぐっすり寝ていた。チノちゃんが寝ているベッドに近付く。プレゼントを置いて———

 

 Side Out

 

 

 

 

 

 そして翌朝、今日はクリスマス。僕は目を覚ます。枕元には封筒が置かれていた。

 

「......手紙?」

 

 手紙には「自慢の弟子へ」と書かれていた。師匠からか。

 

『メリークリスマス、玲。これからも君の思うままに棋道を邁進しなさい。この続きは檜舞台の上で』

 

「......!師匠......!」

 

 このメッセージは師匠から僕への宣戦布告だ。師匠は確信している。玉座を獲りにくるのは僕なのだということに。

 

「......負けてたまるもんか」

 

 僕は師匠からのプレゼント(宣戦布告)を棚にしまい、チノちゃんの部屋をノックした。

 

「チノちゃん、おはよう。入っていい?」

『おはようございます......レイさん......どうぞ』

「失礼します」

 

 僕はチノちゃんの部屋に入った。

 

「メリークリスマス。プレゼントいっぱいだね」

「はっ!パンパン!」

 

 チノちゃんのクリスマス用の靴下がパンパンに入ってた。そしてその横に紙に包まれた縦長の箱が置いてあった。チノちゃんはすぐにパンパンに入ってたプレゼントを開ける。その中に入ってたのは———

 

「わー!私が欲しかった立体パズルと可愛いオルゴール!こっちは......」

 

 今度は横に置かれた縦長の箱を開ける。その中には———

 

「レイさんの......レイさんの直筆扇子!しかも『玲瓏(れいろう)』の二文字!」

 

 そう、僕のプレゼントは直筆扇子だった。「玲瓏」は棋界における僕の代名詞とも言える言葉で、僕が初めて名人位を獲得したときの揮毫で書いた言葉である。

 

「気に入った?」

「これ以上無いぐらいには!」

 

 良かった。

 

「それとココアさん!?」

「ぐっすりだね」

 

 チノちゃんの横でココアがぐっすり寝ていた。

 

「メリークリスマス......」

「「ふふっ♪」」

 

 そんなココアに微笑む僕とチノちゃんだった。その後、僕たちは着替えて、チノちゃんはホールにオルゴールと扇子を持って行き、オルゴールを流して扇子を開きパタパタあおぐ。

 

「おはよう」

「おはようございます」

「おはよー」

「おっ、それって」

「今年のサンタさんは3人来たみたいです」

 

 僕とココアとタカヒロさんか。チノちゃん、喜んでくれて良かった。

 

「1人はおっちょこちょいだったみたいですけどね」

「そうだね。誰かさんはおっちょこちょいだったね」

 

 するとパジャマ姿のココアが出て来た。

 

「大変だー!起きたら私の部屋にプレゼントでサンタさんが!」

「お前が驚いてどうする!?」

「本当におっちょこちょいです」

「えっ?何の話?」

「おっちょこちょいのサンタクロースです」

「本当にね」

 

 今年は楽しいクリスマスを過ごしたのだった。




この世界の将棋界の事情11
第46期棋帝戦終了後の当時の報道
『伯方七段、初タイトル棋帝獲得』
『伯方新棋帝、三連勝でタイトル奪取』
『史上最年少タイトルホルダー誕生』
当時の世間の反応
『彼ならばやってくれると信じていた』
『将棋界に革命が起きた』
『白井二冠と双璧を成す天才』

レイの弟子になるのは誰?

  • ココア
  • チノ
  • リゼ
  • 千夜
  • シャロ
  • その他
  • 誰も取らない
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