ご注文は名人ですか?   作:神近 舞

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今話からシリアス要素が入ります。ほのぼのごちうさ二次創作をご覧になりたい方は、撤退を視野に入れることを推奨します。


第2期編
第13羽 笑顔と仕草が美しいこれが私の自慢の兄です


 

〔1〕

 

気の遠くなるほど 長い永い夢を見ていた

気が小さくなるほど 暗い昏い闇に沈んだ

自分が許せないや 強く強く蝕んだけど

あなたが許せないや 弱く弱く拒んだけども

 

「もういいか」そう言えばこの身を楽にできるかな

「もういいよ」言わないで諦めたくないの

 

散々努力を続けて 夢破れ散った者たちよ

どうかどうかこの敗者の 唄をどうか聴いてほしい

今更努力を始めて 夢廃れ散った者たちよ

どうかどうかぼくのように 間違えないでくれ

 

今に始まったことじゃない 今に始まった物語

夢追い散った者たちの 夢を取り返す物語

 

「夢破れ散った者たちよ」作詞作曲: ARGENT(アルジャン)

 

 

 

 

 

〔2〕

 

 ある日のラビットハウス。ココアはチノの写真を撮りたがっていた。どうやら手紙と一緒に写真も実家に送ろうとしているらしい。

 

「チノちゃん!こっち向いて!」

「ハァイ☆」

 

 ココアの声に合わせて、後ろに向くティッピー。

 

「仕事があります......」

「笑ってー!」

 

 シャッターを何枚も切るココア。そして撮った写真を見る。ティッピー以外どれもブレてた。

 

「うーん!ブレてても可愛い!」

「それでいいの......?」

「リゼちゃんも撮るよ!」

「えぇ!? ちょっと!」

 

 バラを咥えて銃を構えるリゼ。ココアが写真を撮る。

 

「バラはいるのか?」

「えっ?気に入らない?だったら!首を傾けて、口に手を当てて!」

「こ......こうか?」

「ニコッ!」

「ニコッ♪」

「可愛いな」

 

 満面な笑みを見せたリゼ。ココアが何枚も撮る。

 

「すぐに消せー!」

 

 恥ずかしながらココアを勢い良く揺らすリゼ。

 

「これもダメなんてわがままだなあ〜!」

「リゼの満面な笑みに思わず撮っちゃったよ」

 

 僕はスマホでリゼの満面な笑みを撮っていた。

 

「......レイは良い、恥ずかしいけど......お前が気に入ってくれたのなら......」

「あぁ、そう?じゃあ遠慮無く保存するね?」

「私のときとは大違い!」

 

 僕は保存のボタンをタップする。

 

「じゃあレイちゃんも撮るよ!」

「ですよねー」

 

 僕はラテワードを作って、正面から笑顔を向けた構図を作る。

 

「......撮らないの?」

「......はっ!いけないいけない、ついつい見惚れちゃった」

「「私も」」

「なんでさ」

 

 シャッターを切るココア。

 

「これで良いの?」

「バッチリ!じゃあチノちゃんも!」

「わ......私は良いです......」

「そんなこと言わないでこっち見て!笑って!」

「コーヒー豆の在庫を確認しないと......」

 

 倉庫に向かうチノ。

 

「チノちゃん......」

「あまり無理強いするなよ?」

「恥ずかしがる事ないのに......」

「写真苦手な人だっているからさ」

「うーん......」

「いや......あれは恥ずかしがっていると言うより......」

 

 笑顔が難しいと思っていそうな感じだな。翌日、僕とココアは千夜と帰っている。街をカメラで撮るココア。

 

「その写真を実家に送るの?」

「うん!雪が残ってる街並みも良い感じ!千夜ちゃんも撮るよ!」

「ピース!」

 

 ココアはピースする千夜と写真を撮る。互いの頭の後ろからピースして写真を撮る。キリッとした顔で写真を撮る。

 

「レイちゃんも一緒に!」

「あぁ......うん」

「レイくんぎゅー」

「レイちゃんモフモフ〜」

「なんでさ」

 

 何故か僕を2人がサンドイッチしてココアが写真を撮る。2人はキメ顔をしていた。

 

「良いね!未来の甘兎庵女社長の貫録が出てきたよ!」

「ホントに?サインの練習本格的に始めた方が良いわね!この前雑誌の取材を受けたのよ」

「「取材?」」

「甘兎庵、大手チェーンへの第一歩!」

「雑誌ができたら見せてね!」

「もちろん!サインもするわ!」

 

 ポーズを取る千夜を撮るココア。その後、甘兎庵に帰った千夜とお邪魔してる僕たち。

 

「えっ?働いてる所を撮るの?」

「うん!お母さん着物とか好きだから喜ぶと思うの。だからいつも通りの姿撮らせてね」

「はーい。キリッ!」

 

 あんこが乗ってるテーブルに肘を付けて格好良くポーズを取る千夜。

 

「いつも通りでって言ったよね!」

「いつも通りとは?」

 

 今度は3つのお盆にお茶が入ったの湯呑みを乗せてバランスを取る。頭、右手、左手それぞれ1つずつ持ってる。僕は思わず写真を撮ってしまった。

 

「はっ!お盆三刀流!」

「それでこそいつもの千夜ちゃんだよ!」

「いつも通りって何だっけ......」

「チノちゃんも千夜ちゃんみたいに撮らせてくれたら良いのに......」

「照れてるだけよ」

「お姉ちゃんに照れる必要なんてないのに......もう一年近くも一緒にいるんだから......」

「あんまり無理強いしちゃダメよ?でもどうしても笑わせたい時は私が力になるわ」

「ありがとう!千夜ちゃん!さすが親友だね!」

「試したい漫才のネタがたまってるのよ!」

「「千夜(ちゃん)は漫才やりたいだけだよね......?」」

 

 次に僕とココアが向かったのはフルール・ド・ラパン。シャロが働いていた。しかし、シャロが困っていた。

 

「お客様......店員の写真撮影はやめてください!」

 

 カメラを太ももに向けられて困っていたのだった。

 

「どんな構図で撮っているんだよ......」

「お姉ちゃんたちバニーガール喜ぶと思って!」

「うちはそういう店じゃないんだけど!」

「シャロー、写真撮りたいからスマイルプリーズ」

「えっ!? ニコッ♪」

 

 僕はシャロの笑顔を写真におさめる。

 

「可愛く撮れたよ」

「あ、ありがと......」

「でも......さっき撮ったシャロちゃん、気品オーラが足りない気が......ちょっとこれ持って座ってくれる?」

「ん?」

 

 シャロにティーカップを持たせて座らせ、足を組ませ、お嬢様ポーズをさせる。

 

「それでこそいつものシャロちゃんだよ!」

「シャロをなんだと思っているんだよ」

 

 シャロは何故ココアが写真を撮ってるのか理由を訊く。

 

「チノちゃんの笑顔が撮りたいの?」

「うん......でも恥ずかしがってそっぽ向いちゃって......」

「さりげなく撮ったら?」

「私がカメラ持ってるだけで警戒しちゃって......」

「無理矢理撮ろうとしたんでしょ?」

「もう!懸賞金出すから撮ってきて!」

「懸賞金!?で......でも......お金の問題じゃなくて......」

「レイちゃんの女装写真を付けるから!」

「返せよ、僕の意思」

 

 ふざけんな。

 

「惑わされないんだから!」

「シャロも僕の女装なんかで動じるなよ」

「「動じるよ(わよ)!」」

「なんでさ」

 

 異口同音で言うな。その後、ラビットハウスに戻った僕とココア。

 

「あとはチノちゃんだけなの!ちょっとだけで良いから撮らせて!」

「そ......そう言われましても......」

「お願い!可愛い妹が出来たアピールをお姉ちゃんやお母さんにしたいの!」

「どんなアピールだよ」

「ですが......」

「チノ、ちょっとだけココアに協力してやったらどうだ?」

「少しだけですよ......」

「ホント!? ありがとう!」

 

 頑張ってとしか言えんな......。そしてココアはカメラをチノに向ける。チノはトレーで顔を半分隠してる。

 

「チノちゃん、もっと笑顔で!」

「難しい事言わないで下さい......」

「そうだ!どうせなら2人並んだ所を撮ってやるよ」

「それはアリかも」

「ホント!? チノちゃん、一緒なら恥ずかしくないよね?」

「は、はあ......」

 

 早速チノの隣にココアが立つ。

 

「チノちゃんに合わせるから無理に笑わなくても良いからね」

「そうですか......なら......」

「わしもチノに合わせよう」

「リゼちゃん!お願いね!」

「ああ、撮るぞー」

 

 2人の写真を撮るリゼ。写真を確認する。写ったのは———目が暗い2人の写真だった。

 

「これは陰気な喫茶店だな......」

「チノってこんなに笑顔じゃなかったっけ......」

「笑って下さい......お願いします......!」

 

 ココアは泣きながら懇願する。

 

「泣きながら言うなよ!」

「なんだか証明写真みたいですね」

 

 こっそりチノが笑ってた。

 

「「ココア!シャッターチャンスだ!」」

 

 だがココアは外に出てしまった。

 

「いない!」

「どこにいった!?」

「撮れなくて良いんです。ココアさんにとって私は我が子を谷に突き落とすライオンです。這い上がって来た時に笑顔の写真を撮らせてあげるんです。多分」

「ちなみに僕とペアだったら撮れるかな?」

「おっ、試してみるか?」

 

 僕のスマホをリゼに渡し、僕とチノで並んで撮ってみる。すると———

 

「普通に笑顔になれるのかよ!?」

「わーお満面の笑み」

 

 兄妹揃って笑顔の写真が撮れてしまった。ココア......ごめんよ。

 

「照れてるだけって正直に言えよ。くすぐったら笑うだろ?ほれほれ〜」

 

 するとリゼがチノの脇腹をくすぐる。チノは笑うことなく怖がっていた。

 

「やめて下さい......」

「ちょっ......それはマズいって......」

 

 しかし、リゼはすぐに止めた。

 

「罪悪感と言うか犯罪な気がして......私にはこれ以上は無理だ......」

「僕がやってたら余裕で通報案件だからね?」

「お兄ちゃんは通報しません。......後で仕返しするだけです」

「それはそれで怖いんだけど」

 

 しばらくすると、外に出たココアが千夜を連れて戻って来た。

 

「漫才コンビの相方連れてきたよ!コントでチノちゃんを笑わせるからね!」

「千夜!仕事中じゃないのか?」

「それはそれ。これはこれだから」

「「どれなの(ですか)!?」」

「私たち接客業なんだし笑顔は大事よね」

「じゃあ1枚もらおうかな?」

「良いわよー!撮りなさーい」

 

 悪魔のような笑顔で黒いオーラを出す千夜。

 

「ち......千夜ちゃん!? 良いね!良いですね!こんな眩しい笑顔見た事ないよ!」

 

 ツッコむどころかココアもボケて千夜の写真を撮る。

 

「どこがだ!」

「そこはツッコむ場面でしょうが!」

 

 そこに僕とリゼがツッコむ。

 

「「はい!ナイスツッコミ!」」

「「僕(私)も参加してたのか!?」」

「これであなたも漫才コンビの一員です!」

「何がだよ!」

「僕たちを巻き込むんじゃない!」

 

 すると微かだが、チノが笑った。

 

「ココアちゃん!」

「チノちゃん!」

 

 その瞬間、ココアがチノを撮った。

 

「こんな事までして、ココアさんは本当にしょうがないココアさんです」

「チノちゃんの笑顔撮れたよ!わーい!やったー!」

 

 チノは照れて顔を隠した。

 

「笑顔!笑顔!」

 

 写真を見るが、チノは笑顔じゃなく嘲笑をしていた。

 

「それ......笑顔じゃなくて......嘲笑だ......」

「何その高等テクニック......」

 

 

 

 

 

〔3〕

 

 翌日、僕たちいつメンはラビットハウスにて喫茶店の雑誌を見る心の準備をしていた。

 

「心の準備は出来た?行くよ!みんな!」

「OKよ」

 

 そしてココアが雑誌を開く。そこには甘兎庵の記事が載せられていた。

 

「おおー!」

「甘兎庵が雑誌に紹介されてる!」

「千夜さん素敵です!」

「すっごーい!こんなに大きな特集記事なんだね!」

「何もわざわざここで読まなくても」

「1人だと緊張で怖くて......」

「分かる!私も通知表1人で見るの怖くて......」

 

 2人は二学期の通知表を出した。

 

「二学期のだろ!? 早く見ろよ!て言うか学校に返せ!」

「僕はもう返しているのに......」

「「レイちゃん(くん)は格が違うんだよ(のよ)!」」

「何がだよ」

「でもこの甘兎庵の記事小さくないか?」

「ううん、良いの。お店を大きくするって夢の第一歩だから、小さくても嬉しい!」

「こっちにフルール・ド・ラパンも載ってるよ」

 

 フルール・ド・ラパンの記事も載っていた。

 

「えっ?いつの間に!?」

「うちより大きく載ってるわ!」

「今小さくても嬉しいって......!」

「おーい、本音が漏れてるぞー」

「ラビットハウスには取材に来てもらえてません......」

「周りのお店は載ってるのにのう......」

「いつかきっと来るよ!それよりも今いるお客さんのために真心をこめてコーヒーを淹れなきゃ!」

「今......私たちしかお客居ないけど......」

「言うな......何も......」

 

 そこに青山先生が来店した。

 

「人が少ない所は落ち着きます」

「救世主だー!」

「お久しぶりです、青山先生」

「お久しぶりです、レイさん」

 

 すると青山先生は雑誌を見た。

 

「あ、この雑誌、私のグルメレポートも載ってるんです。ほら」

 

 グルメレポートの記事に青山先生の写真が載っていた。

 

「そんなお仕事もしてたの!?」

「どれだけの副業をしているんですか貴女......」

「あ、レイちゃんのスナップ写真が」

 

 その次のページには、何故か僕のスナップ写真も載せられていた。

 

「Oh......」

「素敵よレイ!」

「そう言えば、この間お買い物してる時に撮られたんだった......。ん?このパン屋さんって......」

 

 スナップ写真の下には「ベーカリー保登」の記事が載せられていた。ん?保登?

 

「これ、私の実家のお店だよー!」

「そんな所まで取材を?ていうかパン美味しそう......」

「素敵そうな場所にあるのね」

「良い雰囲気です」

「そ......そうかな......?ん?」

 

 すると本に何かが零れ落ちた。

 

「何かティッピーが凄い悔しい顔してる!」

 

 ティッピーが悔し泣きしていた。マスター、心中お察しします。そんなことを考えていると、シャロが雑誌の一部を千夜に切り抜いてもらっていた。

 

「はい、シャロちゃん」

「あー......ありがとう......」

「シャロ、何を切り抜いてもらったの?」

「あっ!えっと......これは......その......!実は前から憧れていて......!」

「そうだったの!?」

 

 僕は驚愕していた。そこに載っていたのは筋肉執事喫茶の記事だったためである。

 

「シャロにそんな一面があったとは......意外だな......」

「いや......!そうじゃなくて!」

「暇です」

「チノちゃん、ラビットハウスが取材されなくて落ち込んでるのかしら?」

「チノちゃん......私に任せて!」

 

 何かを閃いたココア。

 

「チノちゃん!」

「はい?」

「これ見てごらん!四姉妹喫茶だよ!」

 

 四姉妹喫茶(笑)の絵を雑誌に貼っただけだった。って———

 

「どう反応したら!?」

「ちょっと待て。それ僕が却下したはずなんだけど......?」

「「「民主主義に則り賛成だよ(です)」」」

「泣きたい」

 

 僕は男なのに......。

 

「楽しい雰囲気のおかげで、今日もおいしいコーヒーが飲めそうです」

 

 席に座った青山先生。するとそのとき、青山先生が座っていた椅子が壊れて落ちてしまった。

 

「青山さん!」

「「大丈夫ですか!?」」

「良い椅子ですね......お店の歴史を身体で感じました。まさか!これはマスターのお叱りの意志!仕事しないから!?」

「あ......頭打ったのか!?」

「この椅子は......修復出来なさそう......新しいのに替えなきゃ......」

「こんなオンボロのお店じゃ取材が来ないのも納得です......」

「オンボロですまんのう......」

「そんな事ないわよ。このテーブルの傷一つにもお客さんとの思い出が詰まっているのよ」

 

 テーブルに愛情を込めるシャロ。

 

「それココアさんが付けたやつです」

 

 今度はティーカップに愛情を込める。

 

「......このカップだって、沢山のコーヒーを注がれて———」

「それココアさんが割ったので新調した奴です」

「ココアー!」

 

 怒ったシャロはココアをポカポカ叩く。

 

「何で怒られてるの!?」

「ココアはもっと自覚を持ってくれ......」

「年季が入ってることは、思い出があるって事よ」

「年季......ですか......」

「こうやると刻まれた思い出をお店自身が教えてくれるわ」

 

 千夜が壁に顔を付けて耳を澄ます。

 

「あー!ロマンチック!」

 

 チノはテーブルに顔を付けて耳を澄ます。

 

「第一章ラビットハウス誕生」

「あの......」

「何を始めるつもりなのか」

 

 すると、ラビットハウスの電話が鳴った。

 

「お客さんからかも!また来るって言ってくれてたしさ!」

 

 電話に出るリゼ。

 

「はい!ラビットハウスです!」

「ほら、リピーターさんはちゃんといるよ」

 

 チノを撫でるココア。すると———

 

「バカ!来るんじゃない!」

 

 突然怒ったリゼは電話を切る。

 

「来るなって言ってたけど......何があったの?」

「親父の部下達が、客が居ないなら自分達が行くって......」

「なんでうちの状況知られてるんですか......」

「リゼの家はどうなっているの......?」

 

 その日の夕方、僕とココアがテーブルを拭いてる。そこにタカヒロさんが来た。

 

「今日も一日お疲れ様。もう上がって良いよ」

「はーい!お疲れ様でした!」

「お疲れ様ですタカヒロさん」

「あっ、そうだ、レイ君、ココア君」

「「ん?はい?」」

 

 タカヒロさんが僕たちを呼び止めて「あること」を伝えた。

 

「......伝えなきゃ」

 

 僕は急いでチノの部屋に行く。

 

「チノ!」

「お兄ちゃん?どうしたんです?」

「実は———」

「迷える子うさぎがいるよ」

 

 すると後ろからココアが来た。右手にはうさぎのパペットを着けていた。

 

「チノちゃん腹話術上手だから私も練習してるんだ!チノちゃん元気かい?」

 

 パペットを動かしながら喋るココアだが、口が明らかに動いてる。

 

「おいおい......口動いてるじゃないか」

「わしの真似事など20年早いわ」

「流石だね!よーし、わしと腹話術で勝負じゃ」

「だから口動いてるって」

「ココアさんにはお爺さんの声は出せませんよ」

 

 そりゃそうだ。ココアの声的にあんなダンディーな声出せる訳がない。というかココアはまだチノの腹話術って信じてるのか......。

 

「チノちゃん!さっきお父さんから聞いたんだけどね」

「そうそうそれそれ、本題を忘れるところだった」

「何です?」

「「笑顔になれる報告があるよ!」」

 

 翌日、再びいつメンがラビットハウスに集まった。

 

「行くよー!みんな!」

「ああ......」

「お......OKよ」

「焦らさないでよ」

「......」

「せーの!」

 

 そしてココアが雑誌を開く。そこには、ラビットハウスの記事が載せられてた。写真には、僕とココアとチノとリゼの集合写真と共に何故か僕の個人写真が載せられており、横のページにはバータイムの記事とタカヒロさんの写真も載せられていた。

 

「わー!チノちゃんのお爺ちゃんの事が語られてるわ」

「苦労してこの喫茶店建てたのね」

「うんうん」

「僕だけ何故か単独インタビューもやったんだよね......」

「チノちゃんのお父さんの写真も!」

「バータイムの記事でかいな!って四姉妹って言ったの誰だ!?」

「正確には長女次女長男三女だよ.....」

 

 ......誠に遺憾だが誕生日的に。ココアの誕生日は4/10。僕の誕生日は7/24だから。

 

「えへへ!」

 

 するとチノが笑顔になった。その刹那、ココアがチノの笑顔の写真を撮った。

 

「何するんです!?」

「ふふー」

 

 そっぽ向いたチノ。だがいやでもなく笑った。

 

「本当にしょうがないココアさんです......」

 

 数日後の夕方、ホールには僕とチノがいた。

 

「チノちゃん!」

「はい?」

「どう?この写真立て。私の部屋に飾ろうと思って!」

 

 写真立てを見せたココア。僕とココアとチノのスリーショット写真が入っていた。

 

「そ......その写真立て......!」

「可愛いでしょ!お店の棚の奥にあったんだ!」

「そんなもの発掘したの?」

「そ......それ、私が昔作った物です......こんな出来損ない使わないで下さい!」

 

 チノは怒ってそれを取り上げる。

 

「出来損ないじゃないよ。そのライオンの木彫り細工可愛くて凄く好きだな」

「これはタンポポなんです......顔の付いたタンポポなんです......」

「Oh......」

「えっ!? か......か......可愛いよ......!ライ———タ......タンポポ......!」

「あはは......」

 

 

 

 

 

〔4〕

 

 Side ???

 

「———見つけた」

 

 アイツ、こんなところにいたんだ。こんなところでこんなに幸せそうにしている。

 

「気に入らない」

 

 アイツが幸せなのが気に入らない。アイツが笑っているのが気に入らない。アイツが———

 

「そうだ......アイツを絶望の底に突き落とせばいい」

 

 アイツがアタシから奪った分を......アタシが享受出来るはずだったものを......総て奪ってやる。

 

「アンタの絶望する顔が楽しみねぇ———玲」




伯方 玲の語られざる過去1
2009年7月24日、木組みの家と石畳の街にて誕生。
3歳で将棋のルールを理解し、プロ将棋棋士を意識するようになる。

レイの弟子になるのは誰?

  • ココア
  • チノ
  • リゼ
  • 千夜
  • シャロ
  • その他
  • 誰も取らない
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