〔1〕
理不尽なもんだ社会なんて
この世にひたすら憎悪する
理不尽なもんだ他人なんて
アイツをひたすら嫌悪する
人様神様社会様敬うだけでは生きづらい
人も神も社会も全部恨んで生きていくだけ
こんな世界に期待なんてすんな
あんなヤツらに希望なんて抱くな
ぼくをみない神がいるのなら
そんな神は要らない
「世界嫌悪」作詞作曲: ARGENT
〔2〕
とある日の芸術科目の授業。僕は音楽を、ココアと千夜は美術を取っているため、ここでは分かれることになる。現在は休み時間、クラスメイトと談笑をしている者ばかりだ。
「ハァ......」
「どうしたのマイさん?」
ため息をついたのは、僕の隣の席に座っているマイさん。自身のクラスで学級委員長を務めるほどのしっかり者であり、明るい雰囲気が特徴的な彼女だが、今日はなんだかしおれている。
「あぁ......レイ君......ちょっと悲しいことがあって......」
「悲しいこと?」
「これ......」
マイさんがスマホを向けて提示したのは———
「ARGENT、3月末まで活動休止?」
「そうなの......私、ARGENTの音楽を生き甲斐にしてたから......」
「そっか......それは悲しいね......」
この時期にARGENTが活動休止か......なんでだろうか......
「何か......不吉な予感がするな......」
学校が終わり、一緒に下校する僕とココアと千夜。
「北斎様は、美人画の他にマンガも描いていたのよ」
「へー!雑誌に連載してたのかな?」
「そのマンガじゃなくて......あら?」
「ん?わー!」
噴水広場にチマメ隊を見付けた。3人は咲いてる花を見ていた。
「チノちゃん!マヤちゃん!メグちゃん!」
「おっ!ココア!」
駆け寄って3人に抱き付くココア。
「可愛い妹たち!」
「やめてください!」
「みんな、何してたの?」
「千夜さん、こんにちは」
「うちの学校、芸術月間なんだ」
「「芸術月間?」」
「それで今度写生大会と創作ダンス発表会があって、写生で何描こうかなーって。街中なら何処でも良いの」
「はあ......写生大会にダンス、どちらも下手っぴなので念入りに準備しないと......」
「僕は絵では役に立てなさそうだね......理論なら教えられるんだけど」
「私、チノちゃんの絵好きだよ」
落ち込むチノを励ますメグちゃん。
「ありがとうございます」
「自信持って!チノちゃんの描く絵、とっても前衛的なんだから!」
「「だから悩んでるんでしょ(です)!」」
チノの絵は言い方を考えなければアバンギャルドだ。
「はあ......何を描こう......」
「私が描くならこんな構図かな?この風景いいな!名画確定だね!」
ココアが指で四角を作り、カメラに見立てて真ん中を見る。
「はっ!野良うさぎ発見!」
するとうさぎがおしっこした。
「あっ!おしっこした!私の名画が汚された気分!」
「さっきから何言ってんの?」
ココアは何を言っているんだ。
「千夜さん!」
「ん?」
「人物画だったら千夜さん絵になりそう!和風美人さんだし!」
「まあありがとう!私で良ければオプションサービスするわ」
千夜の想像では、兜を被り刀を肩に乗せている。
「兜って!難易度上昇してね!?」
今度は鎧姿を想像する。
「鎧の方が良いかしら?」
「無駄に難易度を上げないであげてよ」
「どうせなら喫茶店描いてみたいな!甘兎庵とか!」
「それならサービスでお店をデコレーションしてあげる。いらっしゃいませ!」
千夜は看板にイルミネーションがデコレーションしてる想像をする。
「千夜ちゃんは商売上手だね!」
「それ以前の問題では......?」
その後、チマメ隊と一緒に帰る僕たち。
「バイバイ!」
「またね!」
「グッバイ」
「またです」
「「じゃあね!」」
途中で千夜と別れた。
「創作ダンスは3人チームなの?」
「そう!私とメグとチノで!」
「まだ振付決まってないんだ」
「まあなんとかなるよ!」
「頑張ってね!チノちゃん、写生大会は何描くか決まった?」
「いえ......」
すると僕たちは、フルール・ド・ラパンを見つけた。
「フルール・ド・ラパン!うん!絵になると思うよ!」
「お洒落だねー!」
「はい、でも難しそうです。窓も多いし」
「建物はパースを掴めば上手く描けるって聞いた事あるよ」
「パース?」
「そうそう、パース。なあメグ!パースって何だっけ?」
「えっ!えーと......ココアちゃん、パースって何だっけ?」
「お答えしましょう!ちょっと待っててね......レイちゃん、パースって何だっけ?」
「えぇ......パースってのはね、チノたちは『一点透視図法』とか『二点透視図法』とかを授業で習ったことあるでしょ?それのことだよ」
「「「「なるほどー!」」」」
ココアー?これ中学で習うことだぞー?
「まあ早速描いてみよう!」
僕を除く4人が対象物の大きさを測るように。ペンの角度を90度に立てて、片目でフルールを見ている。
「このポーズ何?」
「画家っぽいポーズ」
「画家っぽい......」
「うん!」
「意味分かってやってるの?」
「ううん?」
「なんでさ」
「私達に風景画はまだ早いと思うんだ」
建物描くの面倒臭いんだな......。分かるぞ、その気持ち。
「果物や花瓶のデッサンから始めよう。何か面白い物無いかな?」
「ラビットハウスの中なら面白い物ありそうだね」
「コーヒーミルとか蓄音機ですか?」
「私の働いてる姿とかどう?」
「動いたらダメです!」
「可愛い妹たちのためなら、石膏像になる覚悟もあるよ!」
「「「えー......!」」」
何故だろう、サボるための口実にしか聞こえない......。3人はラビットハウスで絵を描く事に。マヤちゃんがペンを90度立てて片目で、グラスを拭いてるリゼを見る。
「うーん......これって何か意味あるの?」
「知らないでやってたのか?今からお前を描くぞっていう宣戦布告!なんて」
「じゃあティッピーに宣戦布告!」
信じてしまったメグちゃん。
「違うからねー?」
「ち......違うぞ......本当はモチーフの大きさを測るためにだな......」
そこで今度はティッピーを描く事に。
「ソワソワソワソワソワソワ......くせっ毛とか大丈夫か?」
「いつもと全く変わりません」
ココアが3人を見て、リゼがコーヒーミルで豆を挽いてる。僕は今日は非番なので、隅っこでコーヒーを飲みながら将棋の研究をしている。
「動いたら経験値にするぞ!」
「あはは......」
そして3人は、ティッピーの絵を描いたが———
「綿飴にしかならない......」
「シンプルなほど難しいんですね」
「第二形態とかないの?」
「進化出来る?」
「ティッピーを何だと思っているのか」
そして2枚目も描いたが、どれもイマイチだった。
「「「うーん......」」」
「リゼちゃんの絵も見てみたいな!ラテアート上手だし」
「えっ?美術は好きじゃないんだけど......」
リゼがティッピーを描く。
「こ......こんな感じかな?」
リゼが描いたティッピーは、毛先が綺麗で繊細なティッピーの絵だった。
「「「おー!」」」
「な......なんて繊細な毛先のティッピー!」
3人がリゼに教えてほしいと申し込む。
「コツ教えて!」
「私も教えて欲しいな!」
「こう言うのはちょっと......」
「お願いします!」
「そのくらいでお姉ちゃんぶってんじゃないよ!」
何故か描いて、と言ったココア本人が怒ってた。
「お前が描けって言ったんだろ!」
「理不尽極まりない」
「ちなみにレイちゃんはどうなのー?」
「えっ......僕かい......?恐ろしいモノを見ることになるよ......?」
「描いて描いてー!」
「......しょうがない」
仕方なく僕はティッピーを描いた。その結果———
「「「「「怖すぎる!」」」」」
恐怖の大王のようなティッピーが誕生してしまった。
「お兄ちゃん!何をどうしたらそうなるんですか!?」
「僕にも全く分からない......」
何故か僕が描いたモノは全て恐怖の大王を化すのである。描いた絵をリゼに見せるマヤちゃん。
「見て!」
「ギャグマンガか!?」
描いた絵をココアに見せるチノ。
「キュビズム!」
「......」
メグちゃんは僕に問う。
「レイお兄ちゃん、チノちゃんとマヤちゃんに比べて私の絵って普通?」
「いや?そんなことないと思うけど」
「はあ......私はメグさんの絵の方が好きです」
「お互いちょびっとだけ交換出来たら良いのにね」
「普通は何を描いても受け入れられるよ!フリーダム!」
「そっか!普通って凄いんだね!世界中が普通で満ちてたら良いのにな」
「普通なのに世界レベル!?」
「ちなみに僕の画力と少し交換してくれる人は......?」
「「「「「いやだ(です)」」」」」
「分かってたさ......そんなことぐらい......」
その後3人は、テーブルに置かれてるカップとティーポットとりんごのデッサンを描く。
「やっぱり......下手っぴです......」
自暴自棄になったチノ。すると聞き覚えのある声が聞こえた。
「個性という立派な色を持ってますよ」
「青山さん」
「青山先生!?」
「もっと堂々と見せて下さい。せっかく良い物を持ってらっしゃるんですから」
「あの......青山先生と呼ばせて下さい!」
「えっ?はい、呼ばれ慣れてますから」
「青山さんを見てお姉ちゃんらしい事を思い付いたよ」
「ん?」
「妹たちの才能を褒めて伸ばせば良いんだ」
「ほう」
「みんな頑張ってるね!私からの差し入れだよ」
ココアが3人にお茶を差し出す。
「ありがとう!ココアちゃん!」
「気が効くね!」
「今日は少しだけしっかりしてます」
「やったぁぁぁ!」
3人に褒められたココア。
「「逆だ......」」
そして3人が描いた絵を壁に飾る事に。
「今日描いた絵をお店に飾ってみたよ!」
「期間限定ですよ......」
「みんなの頑張りの温もりに包まれてるみたいだね」
「もっと真面目に描けば良かった......!」
「恥ずかしいな......」
「一番恥ずかしいのは......シャロだろ......」
そこに描かれていたのは多種多様なシャロ。
「お店描くの難しかったから」
「シャロが不憫だよ......」
数日後、チノが写生大会で描いた絵を見せる。
「あの......写生大会の時の絵見てもらえますか?」
「このラビットハウス!」
「凄く良い!」
「良いね!」
褒められて笑顔になるチノ。
「個性を貫いたのか!」
「見て!時代を変える力強い絵って評価が書いてある」
「ほう」
「わ......私はバリスタを目指すんです!画家にはなりませんよ!」
「あ、でも点数は低いんだ」
「趣旨が違うからな」
「私の信念の前では些細な事です」
「まぁ、描き続ければ上手くなるからさ」
「珍しくお兄ちゃんの言葉に説得力がありません」
泣きたい。
〔3〕
Side Rize
今日はレイが戦う旭日杯の準決勝及び決勝。午前中に準決勝が行われ、午後から決勝を行うという構成だ。私はたまたま会場の大盤解説会への参加権が当たり、休日で非番であったということもあってか東京会場にレイの応援に来ていた。レイの準決勝の相手は広島九段。現在玉将戦でシノギを削っている相手だ。もしレイが勝てば、白井竜皇VS春生玉座の勝者と決勝で戦うことになる。
『伯方名人鋭い一手ですね。広島九段は一気に厳しい局面に追い込まれました』
『ここから逆転するのは厳しそうですね......』
解説の皆瀬九段と進藤八段が状況を告げる。現況はレイ優勢で、角換わり腰掛け銀での進行だがレイの防御陣はほとんど無傷。一方広島九段の防御陣は崩壊しており、レイは未だ攻め駒を切らせていない状態だ。
『私には詰みが見つかりませんが......伯方名人は既に詰みを見つけているようで、自信有り気に一手一手を軽快に放っていますね』
『......なるほど、やっと分かりました。ここから13手詰めなんですよ』
そこからすぐに広島九段は投了し、レイは決勝に足を進めた。もう一方の対局も終わったようで、勝利したのは春生玉座だった。
「レイ......」
決勝に進むレイを見ていると、どこか遠くに行ってしまうように見えてしまう。
「......行かないでくれよ......レイ......」
Side Out
昼休憩の時間、僕に会いたいという人がおり、急遽会うことになった。
「なんでまたこのタイミングで......?」
「まぁまぁ、色々あるんだろうさ」
何かあったときのために皆瀬九段も着いて行ってくださった。その人物と対面すると———
「えっ......リゼ......?」
「や、やぁ......大盤解説会に当たってな」
「知り合いかい?」
「「友人です......」」
「そうか。ならば私はいない方が良さそうだな。それじゃあ伯方、時間までに来るんだぞ」
「了解です」
皆瀬九段はそのまま去っていった。
「ねぇ、リゼ。どうしてこのタイミングで———」
「レイ!」
「は、はい!」
唐突にリゼが大声で僕を呼ぶ。
「私は......レイにとっての何だ......?」
「僕にとって......?」
「私はレイを支えたい!私はレイを守りたい!私はレイの......心の拠り所になりたい......」
「リゼ......」
リゼは今まで溜めていたモノを解き放つかのように、自分の思いを吐露する。
「レイは1人で生きていけるぐらい強いかもしれない......それでも!私だけにでも辛さや苦しさを分かち合ってほしい!」
「......」
「私は......お前と対等になりたいんだ!お互いがお互いを支え合える存在に!」
「......!」
「だから......」
リゼは僕を抱きしめる。
「......諦めるな。踏み止まるな。前を向け。私が一緒についている」
「リゼ......ありがとう」
リゼからの鼓舞を受け、やる気に満ち溢れた僕。
「リゼがついているなら百人力だよ。......行ってくる」
「あぁ......行ってこい!」
負けられないな。そして、旭日杯決勝戦。対局相手は師匠。
「「お願いします」」
対局は角換わりで進行。防御陣と攻撃体制を構築する。僕は攻め時を悩んでいた。......こういうとき、リゼならどうするだろうか。
『味方を信じろ!攻撃あるのみだ!』
そうだ、リゼならきっとそうする。僕は師匠の防御陣の弱点を突くように攻撃を始める。僕の桂馬での一撃から始まった中盤戦は乱戦模様になり、互いの防御陣をすり減らす戦いに。
「......」
「......!」
師匠のマジックが炸裂した。その結果僕の防御陣は崩壊を始める。マズい......!どうすれば———
『......諦めるな。踏み止まるな。前を向け。私が一緒についている』
......!冷静になれ伯方 玲。師匠の攻撃は玉まで届くか?......届かない。僕の攻撃陣は師匠の防御陣を崩せるか?......いける。ここで攻撃を貫け!
「......!」
「......ッ」
師匠の防御陣が崩壊する。僕への攻撃をしている場合ではない状況に追い込んだ。......詰ませられる!
『「これで......終わりだ......!」』
ここからは簡単な17手詰めだ。師匠、気づいてますよね?
「......強くなったね。負けました」
「ありがとうございました......!」
僕は今期の旭日杯に優勝した。リゼとともに掴み取った勝利だった。
「伯方名人、旭日杯優勝おめでとうございます。決め手は何だったのでしょうか?」
「決勝の直前に私を鼓舞してくれた友人がいたんです。その友人の存在を思いながら戦った結果、掴み取ることの出来た勝利だと思います」
「素敵ですね。この優勝、最初に誰に伝えたいですか?」
「自分を支えてくださった全ての方々に伝えたいです」
リゼ......ありがとう。
〔4〕
Side Chino
数日後、私たちは、体育館で創作ダンスの練習をしていた。マヤさんはやる気だが、私とメグさんは体育座りしていた。
「メグもチノも創作ダンスの授業やる気無さ過ぎ!曲も振付も決まってないのうちらのチームだけだよ!」
「踊りで芸術性を表現しろと言われても、運動苦手な私ができる事は風に揺れる木くらいです」
「じゃあ私お花ー」
「後はマヤさんが風になれば......」
「テーマは『風にも負けず雨にも負けず』だねー」
ゆらゆら揺れる私とメグさん。花と木のように揺れる。
「クールじゃねー!」
風ではなく嵐になるマヤさん。
「ほらほら立って!じゃあウォーミングアップするよ。適当な曲流して」
ラジオで曲を流してウォーミングアップを始める。
「まずはウサギみたいにジャンプ!」
「「ぴょん!ぴょん!」」
うさぎのようにジャンプするマヤさんとメグさん。私はジャンプしない。
「そこですかさず......ムーンウォーク!」
「えー!?」
「そしてターン!」
ムーンウォークとターンを見事に披露するマヤさん。
「ム......ムーンウォーク......あっ!」
バランスを崩してしまい、倒れたメグさん。
「のんびりなのがメグさんの良いところです」
「どうしたんだよ!メグ!チノは踊ってすらいねー!」
「実は———」
「おっ!CD持って来たの?」
「父が持ってた物です」
私はお父さんが持ってたCDを持って来ていた。
「どれどれー」
早速再生する。オーケストラのような曲だった。
「へえー!良い曲じゃん!」
するとメグさんが突然、操られてるのかのように突然踊り出した。
「はっ!」
私は突然踊り出したメグさんに驚いた。
「この曲に魔法の力が......!」
「あー、メグはね、お母さんがバレエ講師だから昔習ってたんだ。知らなかった?」
「やっちゃった......」
恥ずかしがっているメグさん。
「成る程。身体に染み付いてるんですね」
「私もやってた」
「えっ!?」
「続かなかったけど」
私がバレエを踊れたらこの課題はクリア出来ていたかもしれない!
「あの......今からメグさんの家で習うのって大変なんでしょうか?」
「えっ!うちで?」
「バレエを混ぜた創作ダンスか。楽しそう!」
「お母さん喜ぶだろうなー!お試しでやってみる?」
「は......はい!」
「レオタードが無いなら水着でも良いよ」
「はい!」
「マヤちゃん!嘘教えちゃダメ!」
マヤさん......嘘だったんですか......?
Side Out
ラビットハウスに帰ったチノは、いつもと違ってた。
「今日は景色が高い気がするのう」
「つま先立ちで仕事します」
なんとチノはつま先で歩いてた。
「はー!」
「私、バレエを始めるんです」
「まさか......わしの喫茶店......捨てられるの!?」
「そんなことは無いでしょ」
「あの二人に追い付くんです!」
「ここの仕事ばっかりだったチノが習い事なんてな」
「今度、創作ダンスでバレエをするらしいからつま先で歩いてるんだって」
「成る程」
「も......もしもし......ち......千夜ちゃん!チノちゃんの身長がきゅ......きゅ......急に伸びたの!ううん......悪い物は食べてないはずだけど!」
千夜になにか電話をしているココア。......チノをよく見てみろ。あれから数日後。チノはバレエ教室でバレエを習い始めていた。講師はメグちゃんのお母さま。
「はいそのまま!アンドゥトロワ!アンドゥトロワ!」
片足を上げてバランスを取る。チノはだいぶ上達してきてる様子だった。
「はいそこまで。じゃあ休憩しましょう」
「ど......どうでしたか?」
「うんうん!慣れて来てるよ」
「たった数日でそれだけできれば大したもんだよ......」
「そ......そうですか......?」
「そうだよ!」
「チノ、上手になってるよ」
そこには寝転がって片足を上げているココアと、将棋の研究をしながら正座して見学している僕がいた。
「お兄ちゃん!? ココアさん!?」
「すげーくつろいでるし!」
「何故ここに?」
「最近凄く頑張ってるから差し入れだよ。メグちゃんのお母さんがぜひ見学してって言ってくれたの」
「僕は将棋の研究がてら、ココアと同様に見学しに来てるだけだよ。そして何故ココアがこんな体勢になってるのかと言うと———」
「試してたら......足つっちゃって......!」
「「「えっ!?」」」
休憩に入り、ココアが持って来た差し入れのクッキーとコーヒーをいただく。
「美味しい!」
「ラビットハウスのコーヒーも美味しいね!」
「痛かった......」
「そりゃあ痛かっただろうよ」
ようやく足が治ったココア。相当痛かったらしい。
「ダンスのテーマを喫茶店にするのは!?」
「喫茶店!」
「こうかな?コーヒー豆が挽かれてる様!」
挽かれるように回転するメグちゃん。
「なるほど!」
「コーヒーを淹れる様!お客様にコーヒーをお出しする様!」
「「「どうぞ!」」」
チマメ隊が3人同時にポーズする。
「生贄を捧げる儀式かな?」
「それは違うよ」
後日、今度はリゼが差し入れのケーキを持って来た。
「チマメ隊!今日は私が差し入れだぞ!」
「もっと手を伸ばしてー!」
「
何故か僕とココアもレッスンを受けていた。
「レイ!? ココア!?」
その後、今度は千夜とシャロが見学に来た。
「ココアちゃんに見学に誘われたのよ」
「しょうがないわね......バレエにはちょっと興味あるし」
教室に入る2人。
「失礼しまーす」
「足をまっすぐにー!」
「Un, Deux, Trois......」
僕たちと一緒にリゼもレッスンを受けていた。
「リゼ先輩!?」
「リゼちゃん!?」
その後、僕とリゼ、シャロ、メグちゃんが華麗な踊りを魅せた。マヤちゃんは悔しがっていた。
「既に私より上手い......」
「こっちの先輩も良いとこ見せてよ!」
「合点承知よ!」
「最高のパ・ド・ドゥをお見せするよ!」
「「アン!ドゥ!どっこいしょ......」」
綺麗に魅せるが、最後千夜が支え切れず、ココアの頭が床にぶつけてしまった。
「「見てられない!」」
「ココアたちはこうやりたかったのかな?Un, Deux, Trois!」
僕はシャロと一緒にグラン・パ・ド・ドゥを華麗に披露した。周りが拍手する。
「わー!2人共綺麗!」
「白と黒の白鳥かよ!」
「黒は黒鳥です。それとお兄ちゃんは
「決めるよ、シャロ」
「わ、分かったわぁぁぁぁぁ!」
僕がシャロを高速回転させた。
「すげー!目が追い付かない!」
回りすぎたシャロが倒れた。
「倒れた」
「あっ......ごめん......」
何故かシャロは幸せそうな顔をしていた。
「でも幸せそう!」
「もうレイはプロレベルだな」
「レイくん、シャロちゃん、是非うちの生徒にならないかしら」
それを見たメグちゃんのお母さまは僕とシャロをスカウトした。
「いえ......僕、一応将棋棋士ですので......」
「私お金が......あ!いえ!私はバイトが!」
「2人共才能あるわ。というか貴方、本当に伯方名人だったのね」
「僕、何度も言ってましたよね!?」
「メグのお母さんが忙しそうだから、私とリゼがココアと千夜のコーチするね」
「ビシバシいくからな!」
「「はい!コーチ!」」
「メグはチノ担当!」
「うん!うふふふ」
嬉しそうに笑うメグちゃん。そこ、代わってくれ。
「メグさん?」
「まず基本の足はこう!」
「「はい!」」
「やっと解放されたよ......」
「ホントはやりたかったな......」
「あはは......」
僕とシャロはメグちゃんのお母さまのスカウトから解放された。昔、シャロに「金銭援助したい」と言ったことがあったが———
『レイにそんなこと頼めない。そんな形でレイを頼りたくない』
と言われ断られた。以来、シャロにお金の話はしていない。
「見て見て!」
「「ん?」」
「後ろに滑りながら歩けるようになったよ!」
何故かムーンウォークを魅せるココア。
「バレエって凄いわー!」
「それムーンウォーク!」
「何してんの?」
「あははははは!もう!何がなんだかだよ!」
楽しそうに笑うメグちゃん。メグちゃんのお母さまはメグちゃんを見て微笑んだ。
「おっ!ここであんなに楽しそうなメグ、久し振り!」
「そうなんですか?」
「人前で踊るの恥ずかしくなって以来やめちゃったからさ。あがり症だし」
「でもバレエされてるメグさんは凄く素敵です。私もいつかあんな風になれるでしょうか?きっとメグさんは明日の創作ダンス発表も輝いてます」
「あれ!? 振付決めてなくね!?」
チマメ隊は創作ダンスの事をすっかり忘れていた。後日、創作ダンスを終えたチノが帰って来た。
「ただいまです」
「おかえり、チノちゃん!」
「おかえりー」
「創作ダンスの発表会どうだった?」
「まあまあです。来年はもっと上手く出来ると思います」
「そっか」
「うん!」
「チノなら上手く出来るさ。僕の妹だもん」
「はい!お兄ちゃん!」
「私の妹だよぉ!ん?ティッピー!?」
ティッピーは泣いていた。嬉し泣きのようだ。
「チノがバレエでしばらく喫茶店から離れてたからな」
「確かに......」
マスター......心中お察しします。
「ティッピー......大袈裟です」
「チノが帰ってきた......!」
「そうだ!私ピルエット出来るようになったんだよ!アン!ドゥ!トロゔぁ!」
ココアはピルエットをするが、壁にぶつかった。
「何してんの?」
するとチノがピルエットを綺麗にこなせた。
「いつか本当に履けるかもしれないな、トウシューズ」
「そうだと良いね」
また新しい経験を重ねたチノであった。
伯方 玲の語られざる過去3
5歳で2度目のアマチュア竜皇戦優勝を果たす(その後の竜皇ランキング戦6組は優勝し、挑戦者決定戦三番勝負敗退{対戦相手は広島七段[当時]})。
6歳の誕生日に家が放火され、両親が物故し孤児となる。
レイの弟子になるのは誰?
-
ココア
-
チノ
-
リゼ
-
千夜
-
シャロ
-
その他
-
誰も取らない