ご注文は名人ですか?   作:神近 舞

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第13羽〜第18羽を読んでいない人のための簡単なあらすじ
・春生 銀華(ぎんか)(アーティスト名: ARGENT(アルジャン))襲撃事件発生
・銀華はレイの師匠の実の娘で、レイの天才性を恨んでいた
・保登 モカ(ココアの姉)がラビットハウスに滞在する
・モカはARGENTの大ファンだった
・銀華はモカの手によって絆され、徐々にレイとの関係修復を図るようになる
以上!これからはほのぼのが帰ってきます。


第19羽 凛々しげなあの人はシャボン玉のように儚く消える

 

〔1〕

 

『公共杯決勝、伯方 玲名人と白井 創太竜皇の対局をお楽しみください』

 

 今日は公共杯決勝の放映日。星河戦のときと同じように、ココアとチノがテレビに張りついている。

 

「レイちゃんファイトー!」

「今回優勝したら一般棋戦グランドスラム達成ですよ!」

「あはは......」

 

 今期は金冠杯、星河戦、旭日杯を優勝しているため、この公共杯も優勝したら史上2人目の一般棋戦グランドスラムを達成することになる。僕は既に結果を知っているが、何も言わない。そして対局が始まった。対局は角換わり腰掛け銀で進行し、互いに小競り合いを行う。

 

「ここは銀......いや角......?うーん判断に困るなぁ......」

「どっちでいけば形勢を悪くしないんでしょうか......」

「......」

 

 その後、互いの防御陣を崩し合い、どちらが先に詰めろをかけるかという場面に突入。手番は僕にあり、形勢は僕優勢だが、このときの僕はまだ道が見つかっていなかった。

 

「5三金打!? そんなの出てきませんよ!」

「盤上の金で5三に行くのが自然だもんね......」

「......」

 

 僕は3分の考慮の末に、5三金打を指した。

 

「「えぇー!?」」

「......正直これが見えたのは奇跡だったね」

 

 その後程なくして、白井竜皇は投了。これで今期公共杯の優勝者は僕となり、史上2人目の一般棋戦グランドスラムを達成した。

 

「「レイちゃん(お兄ちゃん)、おめでとう(ございます)!」」

「ありがとう。......はぁ、また注目度が......」

 

 静かに対局出来ればなぁ......。無理だろうなぁ......。

 

 

 

 

 

〔2〕

 

 ある日のラビットハウス。千夜とシャロがマシュマロココアを飲んで満喫していた。

 

「このマシュマロココア美味しい!」

「良かった!」

「手伝おうか?」

「ありがとう。でも後これだけだから大丈夫だよ」

 

 皿を拭くココア。

 

「こっちは任務完了だ」

「お疲れ様!」

「おつかれー」

「ん?ココア......それ......」

「ん?」

「随分とシミが付いてるぞ」

 

 ココアの制服の胸元に、茶色のシミが付いてた。

 

「あれれ!お仕事頑張ってる証拠だね!」

「シャロのホットココアを味見しようとしたんだろ」

「何してんの?」

「そうなの?」

「ちゃんと洗うよ!すぐ乾きそうだし」

「麗らかで良い日和よね」

「間違いなく洗濯日和だね」

「それは困りましたね」

「チノちゃん!?」

「何かトラブルでも?」

「実は洗濯機が壊れてしまいまして、修理の人が来るのは明日になるらしいので」

 

 なんと洗濯機が壊れてしまって、何故かティッピーが真っ黒焦げになっていた。......まさか———

 

「洗濯するならコインランドリーに......あれ?ココアさん?」

 

 いつの間にかココアがいなくなっていた。その刹那、ドアが開くとココアが巨大なタライを持って来た。

 

「さあ!お洗濯しよう!」

「「手洗い(ですか)!?」」

 

 こうして、手洗い洗濯を始めることとなった。ラビットハウスの裏庭で、鼻歌を歌いながら制服を洗濯するココア。

 

「あの......ココアさん」

「チノちゃんもリゼちゃんも着替えておいでよ!まとめて洗ってあげるから!」

「あぁ」

「はいよ」

 

 早速私服に着替えに行くリゼ。僕は既に私服に着替えているため、すぐに渡せる。

 

「リゼさん!」

 

 また鼻歌歌いながら力強く洗濯するココア。

 

「というかココア......」

「そんな力いっぱいだと......」

「生地が傷んじゃうわよ!」

「シャロちゃん!?」

「あっ......」

 

 痺れを切らせたシャロが叫んだ。

 

「もう見てらんない!洗濯とはこうやるのよ!力を入れれば良いってもんじゃないの!こうやって汚れた部分を外向きにして両方の手でこう———」

 

 丁寧に洗濯の仕方を教えるシャロ。

 

「さすがシャロちゃん!私もやってみる!こんな感じ?」

「もっと力を抜いて!」

「はい」

「シャロさんが指導してくれるなら安心です」

「シャロちゃんは手洗いに慣れてるものね」

「褒められてもあんまり嬉しくない......」

「シャロは家事万能の良いお嫁さんになれるね」

「レイ!照れるから変なこと言うの禁止!」

「なんでさ」

「よっ!はっ!」

 

 洗ってる途中で泡が増えた。

 

「ココア、これ洗剤多過ぎない?」

「えっ?でもよく落ちるならいっぱいいるでしょ?」

「適量があるのよ!」

 

 中学の家庭科で習うことだと思うのだが。

 

「わー!こんなにシャボン玉が!」

「泡立て過ぎよ!」

「凄いです!こんなにたくさん!」

 

 空を見上げると、無数のシャボン玉が中に舞い上がってた。ココアが両手で輪っかを作り、息を吹きかけてシャボン玉を作った。千夜もココアと同様に手で輪っかを作り、息を吹きかけてシャボン玉を作った。この光景を見てついつい写真を撮った僕。

 

「どっちが多くのシャボン玉を作れるか勝負だね!」

「負けてられないわ!」

 

 急に勝負する気になったココアと千夜。

 

「「洗濯は!?」」

 

 すると今度はチノも洗濯する気になった。チノは私服になっていた。

 

「私にもシャボン玉の作り方を教えて下さい」

「チノちゃんまで!?」

「チノ!? 今僕たちがやるのは洗濯だよ!?」

「着替えて来たぞ。ん?」

 

 私服に着替えたリゼが制服を持って来た。

 

「あ、先輩」

「シャボン玉って、洗濯してたんじゃ?綺麗だけど」

 

 リゼが1個のシャボン玉を割った。すると———

 

「はっ!」

「えっ!?」

「私の渾身のシャボン玉が!儚いものね......私の人生も......きっと......」

 

 自分が作ったシャボン玉を割られたショックで気を失った千夜を支えるココア。何故か千夜の体が灰色になっていた。

 

「千夜ちゃーん!」

「本当に洗濯してるのか!?」

「さっきまで遊んでたよ」

「せ......先輩......そ......その制服洗いましょうか?」

「えっ?良いのか?」

「はい!」

 

 リゼの制服を丁寧に洗うシャロ。

 

「上手いもんだなー」

「リゼちゃんの制服、気合い入れすぎて破かないようにね」

「そんな失敗ありえな———はっ!」

 

 何かを見たシャロ。よく確認すると、リゼの制服の脇が破れてしまってた。シャロに戦慄が走った。

 

「まさか......気合いで......!」

「ああ、そこ、昨日引っ掛けて」

「これって軍法会議にかけられますか!?」

「「落ち着け!」」

「何言ってる!?」

「で、でも......!」

「大丈夫だ!」

「あれ?お兄ちゃん、ココアさんは?」

「ほにゃ?さっきまでいたのに......」

 

 いつの間にか、またココアがいなくなってた。ラビットハウスにてココアを探しに行く僕とチノは廊下を探索する。

 

「ココアさーん!ココアさーん!」

「ココアー!何処にいるのー?」

 

 すると2階から不思議な音が聞こえた。その音は階段を降りて来る。

 

「コ......ココアさん?」

「チノ、下がって。何か来る......」

 

 チノが僕の後ろに隠れる。

 

「レイちゃーん!チノちゃーん!助けてー!」

「「ん?」」

 

 突然階段から白い物体が現れた。

 

「わあぁぁぁぁぁ!」

「ほにゃあぁぁぁぁぁ!」

 

 悲鳴を聞いたみんなが急いで駆け付ける。

 

「どうした?レイ!チノ!」

「レイ?チノちゃん?」

「た......助けて下さい!」

「おい怪異め!チノに近付くな!」

 

 白い怪異に襲われそうなチノから僕が守り、警棒で怪異を押してる。

 

「わっ!お化けー!」

「わ......私美味しくないです!食べないで下さい!やめて下さい!」

「おい謎の怪異!諦めて消滅しろ!」

「成仏しなさい!」

「こら!チノから離れろ!」

 

 怪異を引っ張ると、中からココアが出て来た。

 

「あれ?みんなどうしたの?」

「カーテン?」

「ココアちゃん?」

「カーテンも洗おうと思ったんだけど重くて......」

「もう驚かさないで下さい!」

「パニックになったよ!というか、畳んで持ってくればよかったよね!?」

「えへへ、ごめんねレイちゃん、チノちゃん」

 

 ココアはカーテンを全部持って来た。

 

「このカーテン全部洗うの?」

「この量はきついんじゃないかしら?」

「大丈夫!手洗いの底力見せてあげるよ!」

「何処からその自信が出て来るのよ!」

「さあやるよ!」

 

 カーテンと水と洗剤が入ったビニールプールに僕たちが入る。

 

「行くよー!お洗濯ー!お洗濯ー!」

 

 足踏みしてカーテンを洗う。

 

「お洗濯ー!お洗濯ー!」

「お......お洗濯ー!」

「お......お......お洗濯ー!お洗濯ー!」

「何この流れ......」

 

 途中でチノがココアの足を踏んでしまった。

 

「すみません」

「チノちゃん軽いから全然痛くないよ!いっぱい踏んでも大丈夫!」

「もう踏みません」

 

 少々拗ねたチノ。

 

「アイタ、痛い......痛いって!......アイテッ!」

 

 何故かココア、チノ、リゼ、シャロに踏まれる僕。

 

「レイくん踏まれまくりねー」

「僕、何か悪いことした......?」

「「「「すけこまし(です)」」」」

「なんでさ!?」

 

 僕たちは楽しく歌いながら洗濯する。そして1時間後———

 

「もう1時間も洗ってるのに......」

「ぜ......全然終わらないな......」

「きりがない......です......」

 

 これだけ経ってもカーテンの洗濯が終わることが無く、僕たちの足に限界が来てしまった。

 

「そんな......人間の力じゃ機械に敵わないの......?」

「諦めちゃダメよ!力を合わせれば必ず勝てるわ!」

「千夜ちゃん......!みんな!私に力を貸して!」

 

 両手を挙げて太陽に力を求めるココア。

 

「もう貸してるから足を動かせ」

「全くです」

「某国民的アニメの必殺技かな?」

「ちょっと休憩しましょう」

「賛成!」

 

 僕たちは休憩に入った。千夜がお盆に乗せてある6杯の緑茶を持って来た。

 

「甘兎庵特製緑茶よ」

「おっ茶!お茶!」

「綺麗な色です」

「1個だけ青汁を混ぜてみました。みんなでドキドキを楽しみましょう」

「おいこら」

「余計な事を......」

「よーし!私、これね!」

「じゃあこれを」

「全くもう」

「悪意がないのが逆に怖いな」

「ほんとだよ......」

 

 それぞれが緑茶を取る。最後の1杯を千夜が取る。

 

「では、せーの!」

「「「「「「乾杯!」」」」」」

 

 乾杯して緑茶を飲む。すると千夜が崩れた。どうやら青汁を混ぜた緑茶を飲んだようだ。

 

「自滅した!」

「天罰だね」

 

 しばらくして、洗濯を再開する。

 

「そっち引っ張って」

「あっ、はい」

 

 洗ったカーテンを引っ張って干す。

 

「ようやく終わりが見えましたね」

「これでラストだね。汚れはみんな落ちたからね!」

 

 するとチノの制服のボタンが取れてしまった。

 

「はっ!」

「ボタンも落ちた......」

「き......きっと綻びてたんだよ!でもぬいぐるみは完璧な出来だよ!」

 

 その刹那、ぬいぐるみの目も取れてしまった。

 

「目ー!」

「目がぁ!目がぁ!」

 

 制服を見たチノは何かを思い付いた。

 

「この機会に制服をリニューアルしますか。お兄ちゃんの分も含めて」

「「リニューアル?」」

「なんで僕まで?」

「それならミニスカートの着物なんてどう?」

「絶対フリル付きのエプロンドレスよ!」

「ミニスカ......フリル......」

 

 リゼはミニスカとフリルを着てる自分を想像する。目がキラキラしてた。どうやら気に入ったらしい。

 

「私は着ぐるみが良いなー!ティッピーの!」

「夏は暑そうです」

「間違いないね......」

 

 ティッピーの着ぐるみを想像する。

 

「大丈夫!夏服もあるよ!」

 

 ティッピーの被り物を想像する。

 

「服ですらない!」

「頭だけかい」

「でもこの制服、それなりに愛着があるんだよな」

「それ分かります。私、今ではうさ耳がない仕事服は落ち着かなくって」

「洗脳されてる!」

「フルールの悪魔......?」

「先輩のフルールの制服、凄く似合ってましたよ」

「おっ......」

 

 確かに似合っていた。

 

「甘兎の制服だって」

「おっ......」

 

 そっちも似合っていた。リゼはかつて、父の日までにワインを買うために甘兎庵とフルール・ド・ラパンでバイトをしたことを思い出した。

 

「い......今まで出た案をローテーションで回すのは......」

「リゼちゃんもティッピーのコスプレしたいの?」

「それもありかも......はっ!いやちょっと待て!」

「それは違うよ......」

 

 こうして洗濯が終わって制服やカーテン、更にティッピーが優しい風に揺られてる。

 

「壮観だねー」

「飛ばされないようにね」

 

 その刹那、突然風が強くなりチノのハンカチが飛ばされた。

 

「言われたそばからハンカチが......!」

「ほいっとな」

 

 僕がハンカチをキャッチした。

 

「ありがとうございます」

「今、シャロちゃん家のパンツも飛ばされた気がするわ」

「そう簡単には飛ばされないわよ!」

「ん?」

「本当だったらそれはマズいなぁ......」

 

 翌日、ココアとチノが改造(・・)した制服を着て仕事を開始する。途中で千夜とシャロが来店した。2人は驚愕した。

 

「レ......レイ!」

「あら〜」

 

 何と僕たち4人の制服がミニスカとフリルになっていて、まるでアイドルのようだった。

 

「いらっしゃいましー!」

「恥ずかしいな......」

「一番恥ずかしいの僕だよッ!」

「今日仕事が終わったら直します。お兄ちゃん以外」

「返せよ、僕の意思」

 

 すぐに戻せ!

 

「レイ!」

「何も言わないで!」

「凄くプリティだわ!」

「だから嫌なんだよ!」

「負けてられないわ!」

「えっ!?」

 

 何故か千夜が負けていた。とりあえず早く元に戻してくれー!

 

 

 

 

 

〔3〕

 

 数日後、僕とココアとチノが買い物に出掛けてた。

 

「晩御飯何にしよっか?今日は何が安いんだっけ?」

「サンマが安いはずです」

「サンマかー」

「ココアさんはもっと魚を食べるべきです」

「魚は良いよ?刺身や塩焼きとか本当に美味しいんだから」

「カレーかな?」

「おいこら」

「話聞いてますか?カレーだったらそろそろ嫌いな野菜を克服するべきです。人参も食べて下さい」

「あっ」

「私は昨日アスパラを一口食べられました。だからもう十分です」

「十分......?」

「チノちゃん、チノちゃん!」

「ですから昨日アスパラを一口......」

「そうじゃなくてね」

「何ですか?」

「お姉ちゃんには敬語を使わなくて良いんだよ」

 

 そういえば、チノは僕にお兄ちゃんと言う割に敬語を使っているな。

 

「......ココアさんは誰に対してもタメ口ですね」

「僕が有名人って分かってもタメ口だったからね」

「私のモットーは会って3秒で友達だからね」

「ポジティブで羨ましいです。私はずっと周りに居たのはお客さんや年上の人ばかりだったので、癖が直らなくて」

「僕も師匠の家に入った頃はそうだったね......」

「そっか!じゃあ練習しよう」

「練習?」

 

 目の前に、千夜とシャロが歩いてた。

 

「あっ、チノちゃん、ココアちゃん、レイくん」

「3人も買い物?」

「うん。今日の晩御飯を買いに来たんだ」

「丁度良い所に!ほら、チノちゃん」

「は......はい......千夜さ......ちゃん......シャロさ......ちゃん......こ......こんにち......!」

「チ......チノちゃん?」

「トイレでも我慢しているの?」

 

 違う......違うんだ......。僕たちはマーケットに入り、事情を話した。

 

「そんな事だったの?チノちゃんらしいのが一番よ」

「無理する事無いわ」

「そうですか」

「そうそう、無理すること無いよ」

「ココアが言えることでは無い」

「けしかけたあんたが言う?」

「シャロちゃんだってリゼちゃんの前だとちょっと固くなるんだから」

「よ......余計なお世話よ!ほら先輩だもの!」

「柔らかくなるコツはどんな時でも笑顔だよ!ほら笑って!」

「愛想笑いで私に勝てると思ってるの?」

「愛想笑いなのに眩しい!」

「あはは......」

 

 シャロの愛想笑いは輝いてた。

 

「シャロさん、何を作るんですか?」

「カレーで良いかな」

「それならみんなで一緒に作って食べない?」

「「「ナイスアイデア(です)!」」」

「良いね。リゼは僕が誘っとくよ」

 

 マーケットから出ながらチノはタカヒロさんに電話した。

 

「はい、お父さん。そうです。シャロさんの家でみんなでご飯食べてから帰ります」

「沢山買ったわね」

 

 僕はリゼに電話をかける。

 

「リゼ、今大丈夫?」

『どうした?レイ』

「今シャロの家でカレーパーティーやろうって話になっててさ、リゼも来ない?」

『行く行く!絶対行くからな!』

「おっけー。現地で待ってるからね」

 

 僕は電話を切る。

 

「OKだって。いつメン大集合決定だね」

「よーし、カレーパーティーの始まりだー!」

 

 その夜、シャロの家でカレーを作る。

 

「隠し味に少しハチミツを」

「そしてすったりんごも入れる......」

「最後にこれだ!」

 

 リゼはチョコレートを出した。

 

「高そうなチョコレート!」

「親父の部下が持って来た土産だけど、甘いの苦手だからみんなで食べろって」

「わーい!いただきまーす!」

「いただきます」

「僕も1ついただきます」

 

 チョコを食べる僕たち。うん、美味しい。

 

「これを1粒」

 

 カレーにチョコを投入する。

 

「カレーにチョコレート?」

「味に深みが出るんだ」

「へえー」

「さすが先輩!」

「後はこのまま暫く煮込んで......ん?」

 

 チノを見てリゼが驚いた。チノの顔が何故か赤くなってフラフラしてた。

 

「チノ?」

「顔真っ赤!」

「ブランデー入りだったのね」

「嘘でしょ!?」

「全く、だらしない子ね!それでも私の妹なの!?」

 

 いきなりココアが怒鳴った。何故ならココアの顔が赤くなって酔っていた。

 

「ココアも!?」

「洋酒入りのお菓子で酔うなんてありえない!」

「カフェインで酔うやつが居たような......」

「シャロー、人のこと言えないぞー」

 

 ココアはまだ酔っていた。

 

「おほほー!そんな事ではロザリオを渡せなくってよ!おほほー!」

「高級な食べ物で性格までお嬢様に!」

 

 ココアはフラフラしてテーブルに顔を置いた。

 

「何かシャロちゃんの学校に行った夢を見たよ......」

「私の学校そう言うイメージ?」

「シャロはリゼと同じ学校の生徒だよ?」

 

 そしてココアが酔いから覚めた。

 

「あ、あれ?チノちゃんは?」

「お前がいきなり怒鳴るから逃げて行ったぞ」

「あっ......」

 

 するとドアが開く音が聞こえた。泣いてるチノが出て来た。

 

「ごめんね......お兄ちゃん......お姉ちゃん......良い子になるからもう怒らないで......」

「「「「「何ごとー!?」」」」」

 

 チノが酔い過ぎて甘えん坊な妹みたいになってしまった。

 

「ココアちゃんの思いがようやく通じたのね!」

「苦労の日々だったよ!こっちおいでおいで!」

 

 チノの目の前に座り、おいでと誘う。するとチノがココア目掛けて飛び出した。

 

「お姉ちゃーん!」

「チノちゃーん!」

「お兄ちゃーん!」

「見境無ーい!」

「僕かーい」

 

 だがココアではなく、ココアの後ろにいた僕に目がけて抱き付いたチノ。今度はリゼを見つめる。

 

「リゼお姉ちゃん......料理のお手伝いするよ」

「あ......あぁ。じゃあ使わなかった人参片付けてくれるかな?」

「うん!」

 

 人参を差し出したリゼ。

 

「はぁ〜......」

「争いたくなかったけど仕方無いね......」

「!?」

「お姉ちゃんの座を賭けて勝負だよ!」

「悪いが今回ばかりは譲れそうにないな」

 

 突然勝負を始めた2人。何しているんだか。その頃チノはシャロの膝枕で寝ていた。シャロはチノの頭を優しく撫でてる。側では千夜が優しく見守っている。

 

「シャロお姉ちゃん......千夜お姉ちゃん......」

「可哀想に......酔いから覚めた時、羞恥心で死にたくなるのよ」

「うふふ」

 

 説得力のありすぎる台詞だなぁ......。

 

「ラビットハウスではいつもこんな感じだよ」

「技決められてるのが?」

 

 ココアが笑顔になってリゼのCQCを喰らってる。そこにワイルドギースが部屋に入って来た。

 

「ワイルドギース!」

「うげ!?」

「君がワイルドギースかぁ。初めまして」

 

 ワイルドギースは僕を見て耳をピクッと動かして挨拶した。

 

「仲間に入りに来たの?」

「人参が欲しいの?」

「ダメよ!ご飯は各自調達って約束でしょ!」

 

 チノが持ってる人参を取り上げた。

 

「2人の間にも距離があるね」

「ゆっくりで良いのよ。目指せ!うさぎ愛され系女子!」

「好かれてるから困ってるのよ!」

「あはは......」

 

 するとチノが四つん這いでココアに近付く。

 

「チノちゃん?」

「お姉ちゃん......今の私の方が好き?」

 

 ......そういえば、あのとき敬語を使わなくて良いって言ってたよね......。もしかして、チノなりに気にしてたのか......?すると、ワイルドギースがシャロが持ってる人参目掛けて飛んだ。

 

「いやー!」

 

 ワイルドギースを投げるシャロ。

 

「ごめんねー!」

 

 シャロが投げたワイルドギースがチノの頭に直撃した。

 

「チノちゃーん!」

 

 泣きながらココアがチノを抱く。

 

「はっ!」

 

 ワイルドギースのおかげかチノが酔いから覚めた。

 

「ごめんね、ごめんね、チノちゃん!いつものチノちゃんが大好きだから!」

 

 それを聞いたチノの顔が真っ赤になった。

 

「あ......あの......別に酔ってないです......」

「ん?おー!愛の力で戻った!」

「い......今までの全部演技ですから......」

 

 ......これは完全に記憶が残っているな。恥ずかしいのだろう。

 

「演技ですからー!」

「あはは......」

 

 そんなこんなしてる間にカレーが出来上がった。

 

「「「「「わー!」」」」」

「「「「「「いただきまーす!」」」」」」

 

 カレーを食べる僕たち。

 

「「「「「美味しいー!」」」」」

「家庭でも出来る軍隊カレーだ!ん?」

 

 ココアとチノの皿には人参だけが残っていた。

 

「こら!人参も食べろ!」

「好き嫌いするなー」

「お父さん、お母さん、大目に見て?」

「お......お姉ちゃんの言う通りです。お兄ちゃん、食べてください」

 

 急に姉妹らしくなるこの2人。

 

「こう言うときだけ姉妹らしくなるな!」

「ほんとだよ」

 

 

 

 

 

 Side Cocoa

 

 そして私たちはカレーを完食した。

 

「いただきましたー」

「みんなで食べると美味しいわね」

「小分けにしといたから残ったの後で食べて」

 

 タッパーに小分けしたカレーを入れたリゼちゃん。

 

「ありがとうございます」

「先輩!一生かけていただきます!」

「大袈裟な......」

「今の関係の方が楽みたいね」

「ん?チョコも空になってます」

 

 ブランデー入りのチョコがもう無くなってた。

 

「レイちゃんが一番食べてたね」

「「「えっ!?」」」

「そういえば......レイくん今まで酔った反応していなかったような......」

「「「「ッ!?」」」」

 

 レイちゃん......まさか......!?

 

「ねぇ、レイちゃん!大丈夫!? 吐き気とか無い!?」

「......」

「......レイちゃん?」

 

 唐突にレイちゃんが立ち上がった。するとその刹那———

 

「......ココア!」

「はわっ!?」

 

 私はレイちゃんに壁ドンされていた。

 

「な、な、な、何してる!? レイ!ココアから離れろ!」

「あわわわわわ......お兄ちゃんがココアさんに奪われる......」

「ココアそこ代わ......じゃない、レイ!今すぐココアから離れなさい!」

「うふふ♪面白い展開になっちゃった♪」

 

 みんなが混乱している!? いや私もだけど!

 

「ココア......今日も可愛いよ......」

「あうぅ......」

 

 レイちゃんは私の顎をクイっとあげる。そしてレイちゃんは目をつぶって私に顔を近づけてきた———

 

「「「やめて(くれ)(ください)ー!」」」

「うふふふふふ♪」

 

 ......もう、そういうことで良いんだよね?私は目を閉じて、準備を整える。レイちゃん......おいで......?そう思った刹那、胸元に衝撃が加わる。私が目を開けると———

 

「スー......スー......」

「ね、寝てる......?」

 

 寝てる顔も可愛いな......でもね、レイちゃん。貴方は乙女の純情な心を弄んだね?

 

「......レイちゃんのおバカー!」

「ほにゃー!?」

 

 私はレイちゃんに思いっきりビンタした。倒れ伏したレイちゃんは「何が何だか分からない」と言いたげな表情をしていた。

 

「......えっ?何が起こったの?というかみんなの顔が怖いんだけど......」

「「「「レイ(ちゃん)(お兄ちゃん)」」」」

「な、何......?」

「「「「この、すけこまし!」」」」

「なんでさ!?」

 

 これ以降、私たちの間で「伯方 玲に飲酒させるべからず」という掟が生まれた。

 

 Side Out




伯方 玲の語られざる過去7
2020年1月28日、プロ入り後初敗北(相手は白井帝位{当時})。
同日、敗北によるショックにより涙で雪うさぎを溶かす事件発生。

レイの弟子になるのは誰?

  • ココア
  • チノ
  • リゼ
  • 千夜
  • シャロ
  • その他
  • 誰も取らない
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