〔1〕
Side Chino
「はい、香です。よろしくお願いします」
私はまたカオリとして、お兄ちゃんの対局を解説していた。今回は玉座戦挑戦者決定戦。お兄ちゃんVS白井竜皇の対局だった。一時白井竜皇優勢になるが、お兄ちゃんが白井竜皇の防御陣を特攻覚悟で破壊。その効果は抜群で、白井玉を追い詰めることに成功する。
「そして、108手目の3五香。ここが勝負手となりました」
ここから怒涛の王手ラッシュで白井竜皇に限定合駒を要求する。白井竜皇は最後に間違えてしまい、その隙を突かれ投了した。これで、玉座戦の挑戦者として春生玉座に挑むのはお兄ちゃんになった。
「今回はここまでです。高評価、チャンネル登録、コメント、よろしくお願いします」
私はいつものように収録と編集を終えてアップロードする。その刹那———
「チーノちゃーん!お風呂入ろー!って、アレ?」
「あ......あぁ......」
終わった。バレてしまった。いや、まだどうにかなるはず!
「それってパソコンだよね?レイちゃんとはまた違うやつの。何が入っているの?」
「......ネットの将棋対戦用ソフトしかありませんよ」
録音や将棋AI関係のソフトは鍵付きフォルダに厳重に保管してあるため、あまり知識の無いココアさんにはバレないだろう......。
「ふーん、本当だー。あれ?何かソフトが起動してる......」
「......!?」
それが分かるのは想定外すぎる!
「も、もう良いですよね!? 私のパソコン物色はおしまいです!」
「えー?お姉ちゃんに隠しごとかなー?」
「あっ、待って———」
「動画......エンコード......アップロード......?チノちゃん、これってどういうことかな?」
嗚呼、今度こそ終わった......。
Side Out
Side Cocoa
「えー!? レイちゃんの将棋の内容をネットで解説しているー!?」
「声が大きいです......」
私はチノちゃんの告白に驚いた。確かに、レイちゃんの対局がある日はチノちゃんが一切反応しない時間が確かに存在していたけれど、まさかネットで解説していたなんて。
「私......元々お兄ちゃんのファンだったんです。自分とほぼ変わらない歳なのに、自分のやりたいことを職にしている姿に憧れてて......」
「そうだったんだ......」
カオリとしてのチノちゃんは今のチノちゃんとはまた別の意味で生き生きとしていた。ただただ純粋にレイちゃんを応援したいという気持ちが伝わってくる。しかし———
「ただ......今は分からなくなってしまっているんです。お兄ちゃんとしての伯方 玲を見ているのか、将棋棋士としての伯方 玲を見ているのか......私はお兄ちゃんの負担になっていないか......」
きっかけは恐らくあの日の私の言葉だろう。レイちゃん自身を見て支えられたら良いな、ということでしか無かったんだけど———
「チノちゃんはしっかりとレイちゃん自身を見ていると思うよ?」
「......そうでしょうか?」
「うん。チノちゃんの尊敬しているお兄ちゃんが将棋棋士じゃなかったらお兄ちゃんじゃなくなるのかな?」
「......!そんなことありません!お兄ちゃんはお兄ちゃんです!」
「だったら、もう答えは出ているんじゃないかな?」
「あっ......」
「私はね?レイちゃんが好き。だけどそれは名人だからじゃない。伯方 玲ちゃんだから好きなんだよ。この気持ちは誰にも否定させない」
「......!私も!お兄ちゃんが大好きです!伯方名人だからじゃなくて、伯方 玲お兄ちゃんだから!」
「......あはっ!お互いライバルだね?」
「ココアさんには負けません......!」
「たとえ姉や妹としては負けても、そっちで負けるつもりはないよ?」
私たちは互いに宣戦布告した。後でリゼちゃんやシャロちゃんもそうだと分かったので、4人で「抜け駆け禁止」の牽制同盟を結び合った。
Side Out
〔2〕
キャンプが終わって数日後、いつメンがラビットハウスに集まっていた。
「キャンプに行った時の写真をお見せしまーす!」
それは、キャンプに撮った多くの写真を見るためであった。
「こんなに撮ってたのか!」
「凄く綺麗~!」
「撮るの上手ね」
「流石レイちゃんと私の妹~!」
「お前が撮ったんじゃないのかよ!」
「あはは......」
ほとんどの写真は僕とチノが撮った写真ばかり。するとココアは1枚の写真に気付いた。
「この素敵なお嬢さんは誰かな?」
その写真に写ってる人物は、麦わら帽子を被って、白ワンピースを着ているまるで絵に描いたような女性だった。
「何言ってんの?ココアでしょ」
「えっ!?」
この写真の人物はココアだった。
「本気で分からなかったのか?」
「これが私!? Me!?」
「これが君。Youだよ」
「驚き過ぎだろ」
みんなもココアの写真を見る。
「確かに大人びて見えるわね」
「今度1枚貰って良いかしら?」
「チノ才能あるよー!」
「奇跡の1枚です」
「あどけなさが無くなってて面白いね」
「ちょっとみんなまで!?」
「あはは......」
チノがこちらにカメラを向ける。
「チノちゃんカメラ?」
デジカメで撮るチノ。
「キャンプで写真撮ったらハマってしまって、みなさんをじっくり撮らせてもらえませんか?」
「今撮るのか?」
被写体をリゼに向ける。
「テーマは自然体です。いつも通りでどうぞ」
するとリゼが控え目なポーズをする。
「改めて言われると、難しいな......」
「チノちゃん!」
「ん?」
「ポーズ入れた方が楽しいよ!」
千夜とシャロの手を握って高く上げるココア。だがチノは不機嫌だった。
「あれ!? 凄い温度差を感じるよ!?」
「自然体って言ってたよね?」
今度はシャロと千夜にケーキと紅茶を差し出す。
「お2人はお喋りしている所を撮らせて下さい」
「OKよ!」
「はーい!」
シャロと千夜の後ろにココアが仕事をしてる。シャロが持ってるカップとココアの位置が重なって撮った。今度は千夜が持ってるフォークの先がココアと重なって写真を撮った。まるで刺されたかのように。これの連続でチノはココアに怒った。
「どうして邪魔してくるんですか!」
「えー!? 仕事してるのに怒られた!?」
「なんでそんなに重なることが出来るのか」
その後、チノが今までに撮った写真のギャラリーを見る。カップからココアが出て来る写真や、巨大なケーキを食べてる千夜とリゼの写真、まだ改造状態から戻してもらえない僕の制服を着た写真などなど。
「この写真面白いな!」
「正直僕の写真は消してほしい」
「「「「「ダメ(です)」」」」」
「知ってた」
「じゃあこんなのもどうかな?」
閃いたココア。被写体をティッピーに向ける。
「自然体」
「「ジャーン!」」
「「ジャーン!」」
「じゃ、ジャーン」
ティッピーの左右からリゼと千夜が出て来て、ティッピーの左右上からココアとシャロがジャンプして出て来て、ティッピーの真上から僕がジャンプして出て来たタイミングで撮る。シャロはジャンプしてバテる。写真は上手く撮れた。
「ジャンプ疲れた......」
「可愛い〜!」
「何しているんだ僕は......」
「おっと!いつまでもサボっていられないな!仕事に戻るぞ!」
だがチノがリゼの制服を掴んだ。
「私も撮って下さい......」
「えっ!?」
その後もチノは、楽しそうに写真を何枚も撮る。
「良いですね。渋いです!」
「今日はトリートメントしたからな」
テーブルに置かれてるティッピー。前の端っこには、筋肉のポスターが貼られてる。まるでティッピーの身体が筋肉の身体をしてるかのように。これはココアの入れ知恵である。するとココアは被写体をチノの後ろ姿に向けた。チノの後ろ姿にカメラを向けるココア、の後ろ姿にカメラを向けるリゼ。......ふふふ、油断しているね、リゼ?その後ろ姿にカメラを向ける僕、の後ろ姿にカメラを向けるシャロ。......なんだ、この状況。すると千夜が僕たちの正面を見事にシャッターを切った。
「ベストショット!」
「何がだ!?」
「やったな?千夜」
「ベストショットって......ん?」
するとシャロは携帯の時計を見て焦った。
「あっ!もうバイトの時間!」
「シャロさん大丈夫ですか?」
「最近ね、時間を忘れちゃうのよ......」
「シャロ!」
「あらあら」
「おやおや......」
「それは、どう言うことかな?」
「し......知らないわよ~!」
被写体をシャロに向けたチノだったが、ココアのせいで店から出てしまった。
「ココアさんが逃がしました」
「私が!?」
「これはココアの失態だなぁ〜」
「そこまで言う!?」
「もう少しだったのに......」
「そう言えば、なんでそんなに自然体にこだわるの?」
「わざわざ仕事場にまでカメラ持って来るなんて」
「普段のチノじゃ見られない行動だね」
「何か隠してないか?」
「お姉ちゃんたちに言ってごらん!」
するとチノが不意打ちにシャッターを切った。リゼは驚いたが、ココアは絶妙なタイミングでポーズした。
「ありゃま」
「うぅ......変な顔撮られた~......消してくれ〜......」
「いきなりキメ顔出来るなんて......」
「何その高等テクニック......」
千夜はその光景を見て微笑んだ。
「そろそろお店の掃除しますよ」
「はーい!楽しかったキャンプも終わって、私も一人の労働者に戻って行くよ」
「お前が労働を語るか」
「この中で一番働いてるの、僕かチノだからね?」
無論、真の一番は
「千夜はもう1杯コーヒー飲んで行くか?」
「そうね、いただこうかしら」
額縁を拭き掃除してるココア。すると額縁の裏から1枚の紙が出て来た。
「あれ?」
「どうした?」
「こんな所に何か挟んでたんだけど」
紙を広げる。そこに書かれたのは———
「シストの地図だ!懐かしいなぁ......宝物を見つけて中身を一つ自分のと交換するんだっけ」
「シスト?」
「フランスで人気のリアル宝探しゲームのこと。この街でもやってるんだよ。......僕は出自の関係上やってないけど」
「街にいくつ地図が隠されてるんでしょう?」
「私はたくさんクリアしたぞ」
「凄いわ!私はシャロちゃんと少しだけ」
「この街では、みんなやったことあるんだ......私もやってみたい......」
「......」
シストをやった事が無いココアは羨ましそうに思った。色々あった僕も少し羨ましいと思ってしまった。
「それじゃあ、今度一緒にやりますか?」
「えっ!? 良いの!?」
「はい。ではマヤさんとメグさんを誘って良いですか?」
「勿論だよ!お姉ちゃんとして頑張るよ!」
「どうせなら僕もやりたいな」
「お兄ちゃん!是非一緒にやりましょう!」
「私のときとテンション大違い!」
「あはは......」
明後日、僕たち5人でシストをする事になった。
「みんな!宝物は持って来たかな?」
「勇者の折れた剣!」
「宝石みたいなボタン!」
「難破船のボトルシップ」
「水晶で出来た漆塗りの王将の駒」
「良いね良いね!どれも冒険心をくすぐられるよ!」
「ココアちゃんは?何持って来たの?」
するとココアは自慢気にちっちゃいティッピーを取り出した。
「ティッピーの抜け毛で作った分身ティッピー!」
「一番いらねー!」
「なぬ!?」
ゴミじゃないか。こうしてシストを始める。宝探し開始だ。
「リゼも来れば良かったのに〜」
「リゼさんがお留守番してくれたから、今日来れたので」
「じゃあリゼに感謝だね!」
「帰ったら何かあげようかな」
「私、初心者だけど頑張って引っ張って行くからね!」
「頼もしいなー!私たちまだクリアしたこと無いしねー」
「そうなの?」
「そうなんだ!」
「確か一番最初は中学入学してすぐだったよね?」
「そうそう。あれがチノとの出会いだったな~!」
2人は回想する。それは、チノとマヤちゃんとメグちゃんが中学に入学した時のことだった。このときの3人はまだ知り合ってもなかった。
『はい。次の人。自己紹介をお願いします』
その場に立ってチノが自己紹介をする。
『はい。香風 智乃です。将来の夢は立派なバリスタです』
自己紹介を終えたチノ。このとき、マヤちゃんとメグちゃんはチノを不思議に思った。
『マヤちゃん。バリスタって何かな?』
『ゲームや映画で見た事あるよ。矢とか石とか撃ち込む兵器だ!すげー!』
『人生の壁をぶち壊したいのかな!?』
それは
『クールな感じだね』
『きっと腕の立つバリスタに違いない!』
そしてマヤちゃんとメグちゃんはチノに興味を持ってチノに話し掛ける。
『ねぇ。私たちの仲間になってよ!』
『さっきシストの地図を見つけたの!』
『な......何ですかいきなり......』
『バリスタの力が必要なんだ!』
『重要な戦力なんだよ!』
『チノが仲間に加わった!』
『『てってれー!』』
これが3人の出会いだった。回想終了。
「へぇ〜そんな事があったんだ!初耳〜!」
「それ以来仲良しだよね~!」
「変な勘違いしててごめんね」
「まぁ、それでチノに友だちが出来たなら良かったさ」
「お兄ちゃん......」
「そのときのシストはそんなに難しかったの?」
「えっとねー」
「マヤちゃんがすぐ寄り道して......」
「メグさんが違う遊びを提案して」
「チノがもう疲れたって言って」
「誰のせい?」
「誰のせいだ?」
「誰のせいでしょうか?」
ダメだこりゃ。
「でも今回は大丈夫!お姉ちゃんとレイちゃんがついてるからね!」
「お兄ちゃんはまだしも、ココアさん方向音痴でしたよね!」
「本当に大丈夫なのか」
「大丈夫だよ!ちゃんとこの地図見てれば行けるよ!この絵を全部組み合わせ......」
早速地図を見て考える。
「そこから導き出される......王冠......」
「うさぎ......お店......分かりました!有名な帽子屋さんのことじゃ!」
「それだよチノ!」
「分かった!甘兎庵であんみつ食べろってことだね!」
「ん!?」
「それは違うよ」
しかし、ココアの思考は違っていた。
「凄ー!さすがココア!その発想は常人じゃ出来ないよ!」
「流石だねー!」
「ただあんみつ食べたいだけでしょ!ココアさんがいかに甘い考えか証明してみせます!」
「僕も助太刀しよう、妹よ!」
「お兄ちゃん!」
僕とチノは情熱に燃えてるのだった。だいぶ歩いて多くの家が建ってる真ん中まで来た。
「秘密の抜け道を使お。そっちの方が近道だよ!」
「冒険してるみた~い!」
「こんな道もあったんだね」
「昔の宝探しの時に見付けたの。あの時は葉っぱで塞がれてて......」
以前、草で生い茂った扉の目の前で止まってしまったあの時。
『近道なのに通れない......』
『やっとここまで来たのに......』
『ここでチノの!』
『出番だね!』
『これがバリスタの力!』
指からバリスタビーム(?)を発射させたチノ。生い茂った扉が破壊された。回想(?)終了。
「あれは凄かったなー!」
「チノちゃんそんな事出来たの!?」
「捏造です」
「出来てても大迷惑だよ」
「私と出会う前はそんな魔法が使えたのかと思ったよ!」
「バリスタはコーヒーを淹れる職業ですから......マヤさんたちは、いつも適当な事ばかり言っていつも脱線ばかり......」
「この街って本当に綺麗だよね」
「そうですね」
「だね」
「寄り道したくなる場所ばっかりだし」
「そうですね」
「間違い無い」
「寄り道するとそれだけ沢山遊べるよね。もしかしてチノちゃんと会った頃の2人は———」
「「もっと仲良くなりたくて脱線ばっかりしてたのかな?」」
思わずココアとシンクロする。
「そう......!」
楽しそうに話をしてるマヤちゃんとメグちゃんを見て何かを感じたチノ。
「お兄ちゃん......ココアさん......今度はちゃんとみんなでクリアしたいです!」
「だね!」
「うん!」
「チノー!」
「チノちゃーん!」
「公園の方に何かあるような気がする!」
「2人ともサボってないで頑張って行きますよ!」
するとチノは、マヤちゃんとメグちゃんの腕を掴んで歩く。3人は笑顔になった。
「お兄ちゃんもココアさんも行きますよー!」
「「はーい!」」
そして公園の近くまで来た。するとココアが看板を見付けた。
「あっ!これチノちゃんが言ってた帽子屋の看板じゃない?」
それはシストに書かれている帽子屋の看板と同じだった。メグが宝箱を持って来た。
「植木の影に隠れてた宝箱が置いてあったよ!」
「ナイス!」
「チノちゃん凄い!」
ティッピーを撫でる。
「よーし!開け!」
宝箱を開けるが、中は空っぽだった。
「あれ?」
「何でー!?」
「ねぇ。ここまでの道のりを覚えてる?たくさんの物を愛して、ちょっぴり憎んで。魂に刻まれた思い出と絆。それが......宝だよ!」
「やっぱりココアは中二病なのかい?」
「側面に新しい地図がくっ付いてました!」
「やっぱりー!」
「おかしいと思ったよ!」
「あっ!わ、私も知ってたよ!わざとだよわざと!」
「嘘だ」
新しい地図を見付けた僕たちは、その地図を頼りに目的地へと足を運んだ。
「地図によるとこの先にお宝があるみたいだけど......」
「子どもしか通れない......」
宝がある場所へ通ずる穴を見付けたが、穴が小さかった。だがその穴はチノたち3人が入れるくらいの大きさだった。無事に通れたチマメ隊。ちなみに何故か僕も通れた。あれか?身長は高くてもヒョロいからか?
「通れてしまった」
「ギリギリだったね~」
「余裕だ......」
「なんで僕通れたんだ......?」
「お兄ちゃんもしかしてココアさんたちよりもほそ———」
「チノ、それ以上はいけない」
それ以上、議論してはいけないんだ。
「ココアさんは通れないんじゃ......」
「この先は選ばれしホビット族だけが通れる道!私がここでティッピーと追手を食い止めるよ!妹たちよ!私の屍を越えていけ〜!」
「何してんの?あと僕、男だし」
「そうだったんだ!」
「楽しそうです」
「先に行くかー!」
「そうだね......」
目の前には、まるでおとぎの世界のような光景が広がっていた。
「綺麗......」
「中々神聖な場所だねー!」
「ここの何処かに宝箱が......あっ!」
目の前の壁の穴に置かれてる宝箱を見付けた僕とチマメ隊。
「これです!中身は......」
宝箱を開けるとそこに入ってたのは。勲章のピンバッジやうさぎのオモチャ、貝殻などが入ってた。
「おお!勲章ピンバッジ!格好良い!」
「色んな人がここを訪れてたんだねー!」
「後は、甘兎庵の割引券?」
「肩たたき券まであります」
「フルールの割引券もあるね」
「みんなー大丈夫ー?」
遠くからココアの声が聞こえた。
「早く戻らないとココアさん置いて来たままです......」
「ストップ!」
するとマヤちゃんがチノを止める。
「今日の宝探しは昔より楽しんでたよね?」
「レイお兄ちゃんとココアちゃんのおかげなのかな?」
「「ちょっと妬いたよ?」」
「お......お兄ちゃんはともかく、ぜ、絶対気のせいです!」
「ふふっ」
全力で否定するチノ。
「ここはホビットの憩いの場~!」
「そんな!私だって体は大きくても心は小ちゃいんだから!」
「ダメじゃないか」
「アハッ!心が小ちゃかったらダメじゃん!」
「ココアちゃんもホビットだったら良かったのに」
「結局ココアさんはクリア出来ませんでしたね。宝箱を動かすのは置いた本人しか出来ないルールですし......」
「あっ!レイ兄ちょっと離れてて!」
「はいよー」
僕はチマメ隊から遠ざかる。
「その事でね」
「考えがあるんだけど」
「「私たちでね!」」
2人はチノにある提案をした。
〔3〕
その日の夜。僕は少し困っていた。それはモカさんからの手紙だった。
『レイくんへ。実は、ココアが送って来る写真はおもしろばかりなので、もう少し普通の写真をお願い出来るかな?P.S. 私のとっておき写真をあげるから、レイくんのとっておき写真が欲しいな〜?』
といって、あのモカさんからは想像出来ない扇状的な雰囲気を醸し出している写真だった。
「......どうしよう。僕で遊んでいることは容易に想像出来るけど、どれ送ろう......女装写真でも送ってお茶を濁すか......」
僕が機械で自分の女装写真を現像し、返答やその他写真とともに封筒に入れようとした刹那———
「「レイちゃん(お兄ちゃん)!」」
「にゃ!?」
突然、僕の部屋にココアとチノが入ってきた。封筒はテーブルの鍵付き棚に鍵をかけて収納した。
「レイちゃんのお部屋チェックだよ!」
「お兄ちゃん、もしやましいものを持っていたら———」
「......持っていたら?」
「明日レイちゃんは私とチノちゃんと一緒にお風呂に入ってもらいます!」
「なんでさ!?」
意味が分からない!そして誰も得しないじゃないか!
「「私たちが得するよ(します)!」」
「先読みされた!?」
色々と理解不能なんだが?
「ふむ......何も無いね」
「こっちも金庫以外は何も無いです」
「......何も無いよ」
嘘だ。例の写真が僕の懐に隠れている。
「ふむ......隙あり!」
「なっ!?」
ココアは僕をくすぐり始めた!
「ちょ......やめっ......あうっ......」
「「......」」
「な......何......?」
「レイちゃん......存在がえっちなのでアウト!」
「なんでさ!?」
理不尽だ!
「あれ?コレは?」
「あっ......」
先程のくすぐり攻撃で例の写真が落ちてしまっていた。
「お姉ちゃん......?レイちゃん、説明」
「......実は」
僕はモカさんとの文通の話を暴露した。モカさん、すみません。このときの2人の顔は冷たかった。
「「......レイちゃん(お兄ちゃん)の......おバカー!」」
「ぐにゃー!」
僕は2人から同時に腹パンを喰らった。えっ?明日?僕の尊厳が木っ端微塵になったとだけ言っておく。後日、チノはラビットハウスで僕とココアとリゼにシストの地図を渡した。
「お兄ちゃん、ココアさん、リゼさん、これを」
「これは......」
「この前お留守番して貰ったお礼に私達が隠しました。今度は私が留守番しますので3人も」
「私たちに挑戦状だな!」
「前は私だけクリア出来てないからね!受けて立つよ!」
「今ここで3人の力を合わせるときだ!」
「「「おー!」」」
「頑張って下さいね」
Side Mocha
私は郵便屋さんからたくさんの手紙を受け取った。
「ご苦労様ー!」
私の前には、実家であるベーカリー保登があった。手紙を受け取り、急いでお母さんに報告する。
「お母さーん!見て見て!来たよー!」
「何?どうしたの?」
「ココアとチノちゃんとレイくんから」
早速写真を見る。ココアやチノちゃんやレイくんが撮ってきた写真を見て私はホッコリする。
「良い!凄く良い写真だよ〜!チノちゃん、レイくんありがとう!」
「元気そうで安心したわ」
......ん?誰だろ、この写真。
「これ......誰?」
「あなたの妹よ」
「えぇ!? My Sister!?」
貴婦人のようなココアを見て驚いた私。レイくんにはとっておきの写真を渡したんだけど、喜んでくれたかなー?ん?この手紙と写真は?
「か......可愛い......!人間国宝かしら......!?」
これがレイくん......凄いわ......!
『お世話になっております。玲です。オーダー通りの写真を添付しました。今度はそちらにも訪問させていただきます。P.S. 次からは私のレイちゃんにこんなことしないでね?byココア』
「コ、ココア......?」
一体どうしちゃったのかしら......?今度はココアの写真を見る。
「こっちに帰って来ないかな〜?じゃないと、また私から会いに行っちゃうぞ?やっぱり、ココアが送って来る写真は面白いものばっかり!こう言うのも大好きだけど」
そしてココアからの手紙を読む。
『お姉ちゃん久し振り。元気ですか?お姉ちゃんに大事なお知らせがあります』
「何かな~?」
『私から内緒でレイちゃんとチノちゃんを奪おうとしたので1ヶ月お姉ちゃんとは文通しません!P.S. レイちゃんにこれ以上変なイタズラしたら二度と口を聞きません!』
「そんなつもり無いのに~!ココア~!」
こうしてココアとの文通を禁止させられた私はショックした。安易に変なことしなければ良かった......。
Side Out
後日、シストが無事クリア出来た僕たちは、カフェでお宝を見せ合いっこをする。
「それじゃあみんな!手に入れたお宝を見せてごらん!」
「この勲章。これ小さい時に集めてたんだ」
「やっぱり!リゼはそれを選ぶって思ってたよ!」
「マヤが入れたやつだったのか~!」
「私はトゥーシューズのキーホルダーよ。可愛い」
「いつでも華麗に舞えるようにお守りだよ~」
「じゃあバレリーナみたいにくるくる回りながら接客できるかしら~?」
「落ち着かない喫茶店ね......私はこの可愛い小さな本よ。ん?」
その小さな本の中に何かが挟んであった。
「これは一体......?」
「それ青山さんのだー!」
「もう一回みんなで遊べるな!」
それは青山先生からのシストの地図だった。
「良かったわねシャロちゃん」
「またぁ?しょうがないわね......」
「レイのは何だったんだ?」
「ココアは?」
「......これだね」
「この変な顔の人の写真!」
僕は自分の和服の後ろ姿の写真を、ココアは自分の変顔写真を出した。
「......完全に自分だな」
「それ自分じゃない......?」
「......だよね。僕が宝ってこと?チノ......」
「Me!? それは私が宝ってことだよね......チノちゃん......」
だがチノはぐっすり寝ていた。
「お店を......もっと盛り上げないと......」
寝言を行ってるチノに、僕とココアが耳元で呟く。
「「お兄ちゃん(お姉ちゃん)に任せなさい」」
「うん......」
僕とココアの声を聞いたのか返事をした。チノは起きた。僕とココアはすぐ椅子に座った。
「あれ......?お兄ちゃん......ココアさん......私寝てました......?」
「さぁ?」
「そう?」
「何か声が聞こえたような......」
「何も言ってないよ?」
「同じく」
「ココア聞いてくれよ、さっきシャロがさぁ」
「え?なになに?」
「リ、リゼ先輩!? もう千夜のせいでしょ!」
「あら?私はメグちゃんたちと紅茶飲んでたわよねー?」
「「ねー!」」
「チノちゃんもこのクッキー食べる?」
「むぅ〜、いただきます」
「ふふっ」
僕はみんなと歩むこの尊い日常が大好きだ。だからこそ、僕は戦い続ける。死に物狂いで研鑽し、負けん気で勝負に挑む。......負けたくない。
伯方 玲の語られざる過去12
2024年6月12日、名人戦七番勝負4勝2敗により、名人初獲得。
2025年3月16日、棋帝連続5期獲得により、永世棋帝資格獲得。
レイの弟子になるのは誰?
-
ココア
-
チノ
-
リゼ
-
千夜
-
シャロ
-
その他
-
誰も取らない