第25羽 にっこりカフェのルビーダイヤモンド
〔1〕
Side Cocoa
「はい、香です。よろしくお願いします。本日は帝位戦第二局、伯方帝位VS鏑木八段の対局を解説致します」
私はチノちゃんに無理を言って「カオリの撮影風景を見させてほしい」とお願いした。チノちゃんは将棋ソフトの盤面と形勢判断と音声を撮影し、淡々とレイちゃんと鏑木八段の対局を解説していく。
「決め手となったのは、伯方帝位の72手目となる5四歩です。この一手で角道を開けた上で銀桂の攻めの活路になる上に、相手の防御陣の弱点を突く好手となっています」
チノちゃんが解説していく上で疑問が浮かんだ。「あの手」を指せば、鏑木八段側にも勝機があったように見えたからだ。
「これにより、鏑木八段は投了。伯方帝位が2勝となり、防衛まであと2勝となりました」
......うん。やっぱりそうだ。67手目から形勢がレイちゃんに傾いたんだ。
「今回はここまで。高評価、チャンネル登録、コメント等、よろしくお願いします」
チノちゃんは録音終了ボタンをクリックして、収録を終える。
「チノちゃんチノちゃん、あの手は解説しなくて良かったの?」
「......?あの手とは?」
「鏑木八段側から67手目で5五角と打ち込む手だよ」
「......?それはただの悪手では?」
「違うよ。67手目で5五に角を打つとね......」
私は手の意図を説明し、数手ほど進めていく。すると、みるみる内に形勢が鏑木八段優勢に変わっていく。
「ほらね?」
「......今度から解説はココアさんと一緒にしましょう」
それ以降、私はカオリの姉「
Side Out
〔2〕
Side Aoyama
ここは木組みの家と石畳の街。この街には、多くの野良うさぎが住んでおり、多くの人々が住んでいる長閑な街。
「今日も暑いですねぇ〜。ラビットハウスでアイスコーヒー日和です」
私は小説家の青山ブルーマウンテン。この街にある小さな喫茶店、ラビットハウスの常連客。
「あら?」
看板を見ると『冷やしコーヒーはじめました』と書かれてあった。
「冷やしコーヒー?」
ラビットハウスへ入店。
「こんにちは〜」
「へいらっしゃい!美味しいコーヒー冷えてるよ!」
そこではココアさん、チノさん、リゼさん、レイさんの全員が浴衣を着ていた。
「甘兎庵と間違えましたー!」
Side Out
「間違ってないよ!」
「浴衣姿じゃ何も反論出来ないよ?」
僕たちは浴衣からいつもの制服に着替え終えた。僕の制服は未だに春の改造状態のままだ。
「やっぱりこの制服が一番落ち着きます」
「浴衣は見た目が涼しそうで良いと思ったんだけどな〜」
「そう!そこだよ!お客さんに何度も『その服暑くない?』って聞かれてきたよ」
「みんなの制服長袖長スカートだもんね。......僕はミニスカの恥ずかしい衣装のままだけど......。リゼは何回聞かれたの?」
「今年はまだ2回だ」
「ココアは?」
「私は4回!」
「23回」
「ティッピーの優勝!」
「もこもこだからね......」
「せめて、上着とリボンを取ってみるか」
その後、マヤちゃんとメグちゃんの2人が店に入る。
「冷やしコーヒー2丁ー!」
「キンキンに冷えております」
上着とリボンを外したココアたち。
「あれ?新しいバイトの人!? ココアたちは!?」
「ピンク、紫、水色がいないね!」
「色で認識されてる......」
その後。
「キンキンに冷えておるわい」
冷やしコーヒーをティッピーがストローで飲んでる。
「やはりベストは必要ですね」
「イメージカラーは大事だよ?」
「色々なカラーの制服があるのが、ラビットハウスの良い所だからね」
「色んな色......」
「じゃあ今まで通り、この制服で......」
「さすがに真夏でも長袖は暑いよね?何か良い案は......」
「そうだよ!無ければ作れば良いんだよ!」
「「「えっ!?」」」
「私たちで作る......」
「今こそ私たち4人の力を合わせるときだよ!」
「そ、そうか!」
「涼しくするぞー!頑張って夏の制服を作るぞー!」
「「おー!」」
「お、おー」
「何かこの喫茶店」
「暑苦し〜!」
「これを機に僕の改造制服も無かったことに———」
「「「それはダメ(です)」」」
「そろそろ怒っていい?」
僕ばかり恥辱に耐えるのは違うだろう!後日。夏服の材料を買いに行ったが———
「ふにゃ〜......」
「ココアさん夏バテです!」
「早くも燃え尽きたか......」
「まだラビットハウスを出てから数分しか経ってないよ......」
そこにジュースを買って来たリゼが、ココアの頬にジュースを当てた。
「ほわぁ!」
「ほら」
「ありがとう......」
「まずは半袖シャツと、薄手のスカートを買おう。既製品で良いだろう。その後、ベストを作るための生地を買いに......うわっ!?」
さっきのジュースを頬にお返しをされた。
「お前本当は元気だろ!?」
「そんな事ないよぉ......」
そう言いながらココアはベンチに倒れてしまった。
「ありゃま......本当に調子悪いなら、背負ってあげるから乗りなよ」
「嫌だそんな!チノちゃんの前で!ダメだよ〜。恥ずかしいよぉ〜」
そう言いながらココアは僕の背中に乗った。
「言ってる事とやってる事が逆だ......」
「全くもう......」
「全く、世話の焼けるやつだなぁ......」
このとき、こっそりとココアがチノに手招きした。チノがココアの背中に乗って、何故か僕が2人を背負う事に。......キツい。女性に重いなんて言えない。
「......さすがに意味が分からない」
「ほら2人とも。レイから降りろ」
商店街に来たが......
「はぁ......はぁ......」
僕は2人を抱えた影響でバテてしまった。
「お兄ちゃんがバテました」
「私たちを背負ってくれたばっかりに......」
「レイしっかりしろ。ジュース買って来たぞ」
「ありがとう......さて、呉服店に来たのは良いけど......」
今日の呉服店はセールをやっていて、女性客が押しかけていた。
「今日はセールでごちゃごちゃしてる......」
「もう一度この中に連れてはいけませんね.....」
「レイ、お前は休んでろ」
「ううん......まだ大丈夫......」
僕はフラフラになりながらも呉服店へ向かう。呉服店前に着いたが、女性客が邪魔で入れない。そして僕は弾かれた。
「お兄ちゃん!」
「もう止めろ!お前の体力が限界だぞ!」
「ま......負けない!僕は何が相手でも負ける訳にはいかないんだ......!」
「玉砕する気か!」
そこに1人の救世主が———
「シャロ......!?」
それはシャロだった。
「レイは下がっていて!これは私の戦場よ!」
「半袖シャツと......スカートをお願い......」
「分かったわ!」
シャロは女性客の中を軽々と掻い潜った。
「凄い......!」
「頼もしい!」
シャロが掻い潜っている間に———
「あら?ココアちゃんたちも来てたのね?」
千夜がやって来た。
「千夜ちゃん!」
「ここで何してるの?」
「実はね———」
シャロが戻って2人に訳を話した。
「成る程〜。ラビットハウスの夏の制服を」
「シャツとスカートを確保して来たわ!」
「ありがとう!」
「シャロちゃん!」
「凄いパワーでした!」
「素晴らしい戦いだった!」
「みんなで力を合わせて夏の制服を作るって素敵ですね!」
「仲が良くて羨ましいわ〜」
「2人もお揃いの夏制服を作れば良いんだよ!」
「私、甘兎庵で働く気ないし」
「えっ!?」
その発言で千夜の心に傷が出来てしまった。
「うわあぁぁぁん!」
「ちょっと!何なの!?」
泣きながら去って行く千夜をシャロが追う。
「忙しいやつらだな......」
セールが終わった呉服店に入る。生地を色々見る。
「この水色、今と変わりなくて好きです」
「私も良い紫見つけた!」
「僕も良さげな紅色を見つけたよ」
そう、僕のイメージカラーは紅色。常に紅色のネクタイを着けていたのだ。......途中から紅色ベストとリボンに変わったが。
「......ピンクがない」
「「「えっ!?」」」
「品切れ?」
「まさか!そんな訳あるか!」
「まだ何処かにあるはずだよ!」
「ピンクじゃないココアさんって!」
ピンクの生地を見付けたが———
「これは蛍光ピンク!」
「こっちはドット柄!」
「もはや市松模様!」
「控えめにスパンコールとかどう?」
「目立つ気満々だな......」
「何も控えてないし、眩しすぎるよ......」
するとチノがココアの手を握り———
「ココアさん!諦めてはいけません!他の店も探してみましょう!」
「チノちゃん......そうだね!」
他の店をくまなく探したが、ピンク色だけが無かった。遂にはチノまでもバテてしまった。公園で休憩する事に。
「はぁ......はぁ......」
「チノちゃん大丈夫!?」
「大丈夫です......少し疲れただけです......早く次の店に......」
「無理しちゃダメだよ!」
「困ったなぁ......何軒回っても、理想のピンクが見付からない......」
「入荷を待ってたら夏が過ぎてしまいます......」
「ん?チノ、そのメモ帳見せて?」
僕はチノの持ってるメモ帳を見る。
「あっ、それは......」
描かれていたのは、ココアの夏服のデザインだった。だが絵が下手だった。
「多分......そういうことなのか......?」
「ちょっと理解する時間をくれ......」
「これ凄く可愛いよ!」
「もしかして、徹夜したのか!?」
「うん......」
「それで余計に疲れて......」
「無理は禁物だよ?」
「......」
「よし!お姉ちゃんに任せなさい!」
「えっ!?」
「ほらほら!ウェルカムカモ〜ン!」
ココアはチノに背中を見せて手招きする。
「何ですかそれ!」
「チノ、たまには甘えたらどうかな?」
「お兄ちゃん......」
夕方。
「確かに頂いたわ!あなたの夏休みも私のもの!」
「待てー!怪盗ラパーン!」
「私の夏休みを返せー!」
近所の少女たちが怪盗ラパンごっこをしていた。
「やっぱり降ろして下さい」
「ダメダメ♪」
「でも、早く理想のピンク色の生地を探さないと......スパンコールは嫌ですが......」
「焦らなくても良いんだよ」
「さっきも言ったけど、無理は禁物」
「何とかなーる♪何処かにあーる♪」
「何処かに......」
「そう!何処かに!......あれ?」
「どうした?」
「何か閃いた?」
ラビットハウスの倉庫にて。
「倉庫に何の用ですか?」
「えっとね......何か前に見た気がするんだよね」
「何を?」
「手品セット!じゃなくて」
「何で手品セットが!?」
「母の趣味です」
「訳が分からないよ」
チノのお母さま......どんな人だったんだ......。
「うさぎのおもちゃ〜!」
カタカタ動くうさぎのおもちゃ。
「ヒィッ!?」
「母と昔遊んだおもちゃです」
「ワシが買った」
貴方の仕業か。
「でも、これはちょっと整理した方が良さそうですね。ごちゃごちゃです」
「ああ......」
「夏休み中に整理しなきゃ」
「あった!ホラこれ!」
なんと、倉庫にピンク色の生地を発見した。
「前に倉庫で見た気がしたんだよねぇ〜!」
「り、理想のピンクです!」
「チノのお母さんが遺してくれた生地か!」
「これでココアさんのベストが作れますね!」
「お母さま助かりました!」
何処かから『チノをよろしくね〜』という女性の声が聴こえた気がした。
「うぅぅぅ......お"があさーん!ありがどぉぉぉー!」
「「チノ(私)のお母さんだよ(です)」」
「コ、ココア!裏地を見ろ!」
「っ!」
「ん?」
裏地にうさぎの絵があった。
「これは......!?」
「うさぎ柄!?」
「リバーシブルだから問題ありません!」
早速制服を作る事に。チノの部屋に入り、夏服製作開始。
「じゃあ早速寸法を測るぞ!」
「「イエッサー!」」
「あっ!10年後はナイスバディになる予定だから緩めにお願いね♡」
「10年も着るのか!?」
「でもココア、10年もラビットハウスで働くの?」
「あっ」
「えへへ〜。ついうっかり」
「将来の事はちゃんと考えてるぞ」
「くすっ」
夏服製作が続き———
「ん?」
ココアとリゼが眠ってしまった。
「おや、寝ちゃったみたいだね」
僕とチノは寝ているココアとリゼにブランケットを被せた。
「10年後......どんな私たちになってるのかな?」
「確定はしていないけれど......きっと、楽しい日々を過ごしていると思うよ」
「......!はい!」
僕らの未来は明るいはずだ。
〔3〕
数日後。
「今日のラビットハウスは一味違うよー!いらっしゃいませー!」
「並び終えました!」
「小隊整列完了!」
「こっちはOKだよ!」
「更に古着も整列完了だ!」
「コーヒーを捨てた雑貨ラビットハウス開店だよ〜!」
「捨てとらーん!」
さすがに捨ててないよ......。古物市は多くのお客さまたちで賑わっている。
「他のお店は活気が出て来たね〜!」
「ほにゃ!? こっちは暗い顔だ!?」
当のチノとリゼは暗い顔をしていた。
「これ需要あるんでしょうか......」
カタカタ動く兎のおもちゃ。
「色々持って来たが、無駄だったかな......」
「2人とも笑顔笑顔!」
「暗い表情だとお客さま誰も来ないよ?」
そこに、1人のお婆さまがいらっしゃった。
「これ、手作りなの?器用ね〜。孫に買って行くわ」
軍隊うさぎ1羽とボトルシップと僕特製宝石細工を買ってくれた。
「「あ、ありがとうございます!」」
「うん!良い笑顔!」
「う、売れた!」
「売れました!あの、こっちは大丈夫そうですし。折角なので他のお店も見て来て下さい」
「良いの!?」
「そうだな。レイとココアは古物市が初めてなんだろ?」
「やったー!」
「僕も良いの?」
「気にするな。ここは私たちに任せろ」
「おっけー」
僕はココアと2人で古物市を回ることになった。
「他の店も凄いね」
「感性に突き刺さる物ばかり!これは何日居ても飽きないよ!」
「そうだね。......ん?」
「あれ!千夜ちゃん!」
「ココアちゃん!? レイくんも!」
荷物を持ってる千夜と偶然会った。
「随分満喫してるね!」
「あ、これはね———」
「千夜ぁぁぁ!また掘り出し物よ〜!」
「「シャロ(ちゃん)!?」」
「レイ!? ココア!? 取り乱した......」
「うふふ。うちのお嬢様ったら、古物市になると張り切っちゃうから......」
「今日は素敵な陶器と出会う日。だらしない姿で挑めないの」
「お嬢様の余裕を感じるよ!」
「お嬢様って......」
「さっ。千夜、次行くわよ」
「ふぅ......ちょっと休んで良いかしら......」
その刹那、千夜がフラついてさっきシャロが買ったカップを落とした。
「千夜!? ロイヤルラビットのティーカップゥ!」
シャロのスライディングキャッチ。
「必死!」
「凄い愛だ!」
僕がスライディングキャッチしたロイヤルティーカップの安否を確かめる。
「シャロ、ティーカップ無事みたいだよ」
「よ......良かった......」
「......大丈夫?」
僕がスライディングで倒れたシャロを起こしてあげた。
「ありがとう......」
「シャロちゃん......私よりカップの方が大事なのね......」
「あーもう!面倒臭いわね!」
「あはは......」
「さあさあ!見てって見てって!お買い得だよ!」
「あのお店は活気があるね〜」
「叩き売りよ。話術や交渉で購買意欲を煽っているのよ」
「一種のテクニックね」
「格好良い!私も出来るかな!?」
「叩き売りの基本と言ったら......よってらっしゃい。見てらっしゃい」
ハリセンで叩き売りを真似する。
「マイハリセン持って来れば良かった!」
「「マイハリセンって......」」
「えっ!? シャロちゃん自分のハリセン持ってないの!?」
「えっ!?」
「相方なら持っててもらわないと......」
「持つかぁぁぁ!」
「レイちゃんも私の相方として持ってなきゃダメだよ?」
「なんでさ」
「違うでしょ!」
「そうだよ。シャロ、もっと言って———」
「レイの相方は私よ!」
「それは違うよ」
収拾がつかない。ココアとシャロは謎に僕の相方議論を始めてしまったし、千夜はこの状況を止める気が無いのか、笑顔で静観しているし......おや?
「これ......良いかも」
僕はあるお宝を見つけ、購入した。僕が戻ったタイミングで謎の議論は終わったらしい。
「あっ!そろそろチノちゃんの所へ戻らないと」
「えっ!? 先輩たちも来ているの?」
「何処ら辺で売ってるのかしら?」
「付いて来て!チノちゃんとリゼちゃん良い笑顔で売り子やってるから!」
チノとリゼの所に戻ってみると。
「どんよりしてるー!?」
「Oh......」
2人がどんよりした顔をしていた。
「あらあら」
「えっ!? 売れ残ってるの僕の宝石細工とチノのお母さまの遺産だけ!?」
「ガラクタしか見えないでしょうか......」
「こんなに素敵なのに......」
「素敵?」
「アピール力が足りないんだわ!」
僕とココアと千夜とシャロの4人がハリセンを握った。
「見せてやりましょう!私たちの叩き売りを!」
「「「おぉぉぉぉぉ!」」」
「ど突き漫才かぁぁぁ!」
叩き売り開始。
「いらっしゃいませー!」
「ん?」
「このうさぎのおもちゃ、表情が良いでしょ?職人のこだわりを感じるわ」
「そう言われると......じゃあ下さいな」
「ありがとうございます」
「100?それじゃあ今日の私の夕飯はもやし炒めだわ!」
「じゃあ200で!」
「よし売った!」
「2体セットじゃなきゃ必殺技が出来ないよ!」
「わーい!売って売って!」
「毎度ありー!」
「このカットがこだわりなんですよ......」
「5万で買いますわ!」
「ありがとうございます!」
「4人が輝いて見えます......」
「本当に喫茶店の店員か......?」
「バイトじゃがな」
「はっ!僕は一体何を......」
「よし!私も負けずに呼び込みだ!」
負けるまいと思ったリゼが呼び込みを始める。
「あっ!あわわ......私は何を......」
「チノ、僕と一緒に呼び込みしよう?」
「そ、そうですね」
「レイ!チノ!大変だ!お母さんとはぐれたらしい!!」
「うわあぁぁぁぁぁん!」
「えっ!?」
「なんだって!?」
リゼが泣いてる迷子の女の子を連れて来た。
「お母さん捜して来る!レイとチノはこの子のことをよろしく!」
「分かった!なるべく早くお願いね!......どうしたの?泣かないで?お母さんが来るまでお兄さんたちと遊ぼう?」
「......う......うん......うん?」
「ん?どうしたの?」
「お姉ちゃんじゃなくてお兄ちゃんなの?」
「......そうだよ」
泣きたい。こういうときは自分の女顔が恨めしい。
「えっと......そんなに泣くと、目がうさぎさんみたいになっちゃいますよ?」
「う......うさぎさん......?」
「そ、そうです!えっと......こんな風に」
チノはカタカタ動く兎のおもちゃを女の子に見せた。
「それ......目が赤くない......」
「そ、そうですね。こ、この兎さんは笑う事も出来るんです」
「えっ?」
兎のおもちゃをカタカタ動かす。
「......変なの!ふふふ!」
「フフッ。変ですよね」
ようやく女の子が笑ってくれた。
「はい。差し上げます」
「え?良いの!?」
うさぎのおもちゃを女の子にプレゼントした。僕は女の子を撫でる。
「ようやく笑顔になったね。女の子は笑顔が一番可愛いよ」
「あっ、あうう......」
何故か女の子は照れたような表情を見せる。
「お兄ちゃん」
「ん?」
「私よりもちっちゃな子を誘惑しないでください」
「なんでさ!?」
「おーい!レイー!チノー!」
「「リゼ(さん)!」」
「見つかったぞー!」
女の子の母親を連れて来た。
「お母さーーーん!」
「良かったね......」
「お兄ちゃん!お姉ちゃん!ありがとー!」
女の子は母親と手を繋いで行った。
「お兄ちゃん......うぅっ......」
「お姉ちゃん......!」
「良かったな!チノ!」
「お母さまのおもちゃ、気に入ってもらえて良かったね」
「はい!気に入ってくれました!」
「あの子なら大切にしてくれそうじゃのう」
「はい!」
「ですね」
その夜。ラビットハウスにて。
「みんな、お疲れー!」
「「「「「お疲れ様ー!」」」」」
いつメンで古物市の打ち上げが始まった。
「あっ!そうだ!お店番してたチノちゃんとリゼちゃんにプレゼントがあるんだ!」
「あ、ありがとう!」
「綺麗だったからいっぱい買って来たよ!」
ココアが買って来たものは———
「ドアノブ!?」
カラフルなドアノブコレクションだった。
「冷静になると悟るのよ。不要な物が増えていく理由を」
「あるあるね」
「ドアノブマニアの人がいるとは......」
「ん?アンタ!それ!」
「リゼちゃんの古着買ったの♪」
「ハアァァァァァ!?」
「新鮮な気持ち〜」
何とリゼの古着を買ったのだ。
「くぅっ......!わ......私も......」
「シャロも買おうとしてくれたのか?」
「あっ!いえ......先輩のですとその......サイズ、合いませんし」
「僕ので良かったらサイズ小さめの余ってたけど、どうかな?」
「「「「えっ!?」」」」
「あら♪」
シャロはともかく、ココアとチノとリゼは何故動揺したんだ?実際に着てみた結果———
「はぁ......このシャツ......レイの匂い......」
「シャロー!?」
シャロが気を失ってしまった。なんでさ。
「じゃあ私の着れなくなった服はチノちゃんに!」
「似合いませんよ......」
「ピンク似合うよ!きっと!」
「似合いません......」
仕方無く試着してみると。
「ほら似合う!私もチノちゃんの服ちょーだい」
「それだとただの交換です!」
「レイー。チノー。今日の成果を計算してみたぞ」
「ありがとうございます」
「こんな感じになった」
「Oh......」
ラビットハウスより売上が良い......!? これにはチノも動揺していた。
「気負い過ぎよ?」
「私に任せて!これでお店を盛り上げるから!」
「手品セット!それ売れ残ったんですか!?」
売れ残ったマジシャンキット。
「違う違う。気に入ったから私が買ったんだよ〜」
「えっ?」
売れ残ったのではなくココアが買ったのだった。
「今日はモノにも歴史があることを学んだよ。この手品道具の歴史を、私が新しく作りたいの!」
「歴史......」
「まぁ好きなようにやってみるが良い」
「ティッピーの許可も下りた事だし!始めちゃうよー!」
マジックショー開演。
「それではココアのマジックショータイーム!」
「頑張れー!」
「では!この杖に注目!」
「新しい歴史が始まってしまいます......」
「鳩か!? 鳩が出るのか!?」
「ライオンが良いわね♪」
「食べられちゃうわよ!」
「この杖が伸びて......」
杖に念じると———ゴスッ!!
「グハッ!」
ココアの鳩尾にダイレクトアタック。
「鳩じゃなくて鳩尾だったね......」
文章にしないと上手さが伝わらないが。
「説明書読んだのにな......よぉし!もう一度だよ!」
「次は期待して良いんだな?」
「ココアちゃんなら、また期待に応えてくれるわ!」
「それ失敗なんじゃ......」
「あはは......」
「この帽子から花が出たら拍手お願い!そーれ!」
杖で帽子を叩くと、帽子から花が出て来た。
「わぁ!」
その夜。僕の部屋にて。
「ココア、チノ、来たみたいだね」
「「レイちゃん(お兄ちゃん)?」」
2人が入って来た。僕の手には紙袋が持ってあった。
「どうしたんですか?」
「僕も古物市で買って来た物をプレゼントしたくて」
紙袋からある物を取り出した。
「これだよ」
「おぉー!」
「わぁ......!」
可愛らしいピンク色と水色のワンピースだった。
「これ見て2人とも気に入るかなって思って」
「とっても可愛い!」
「可愛いワンピース......」
「今はもう夜だし、明日着てみたらどうかな?2人とも、おやすみ」
「「ありがとう(ございます)!」」
2人は部屋から出た。翌朝の僕の部屋。
「レイちゃんおっはよー!」
「おはようございます」
「おはよう2人とも———可愛い!」
僕は2人を見て喜んだ。僕が昨日買ったワンピースを着てたからだった。
「2人ともそのワンピース!」
「はい。着てみました。どうですか?」
「似合ってるかな?」
「可愛いよ2人とも!天使みたいだよっ!」
「「やったー!」」
後日、ラビットハウスにて。
「夏仕様〜♪」
ポニーテールのティッピーがウキウキしてる。
「どうかな?新しい夏の制服!」
「良いです!似合ってます!」
「あぁ!悪くないな!」
「良いね!」
遂に、ラビットハウスの夏制服が完成したのだ。
「私がこの制服を初めて着た時と同じ反応......」
「?」
「そうだっけ?」
「3人とも似合ってるよ!」
「で、でも。このデザイン変じゃないですか?あんまり自信無くて......」
「10年は着たいくらい良いよ!」
「じゃあ10年経ったらまたチノにデザインしてもらおうかな〜?」
「なんで僕のはもっと過激になっているのさ」
「「「私たちの趣味だ(だよ)(です)!」」」
「よぉし、今すぐ将棋を指そう。ボコボコにしてあげるよ」
ふざけやがって。
「よし!開店の準備だ!」
「今日も手品で盛り上げるよー!」
「あ、あの!お兄ちゃん!ココアさん!リゼさん!」
「ん?何?チノちゃん」
「どうしたの?」
「......これからも......よろしくお願いします!」
「こちらこそ!」
「よろしく!」
「お願いね!」
僕たち全員が一礼した。
「これからも一緒に頑張ろうね!チノちゃん!」
「はい!」
こうして、ラビットハウスの新しい物語が始まった。
伯方 玲の意外な特技1「宝石細工」
カット技術や加工技術等は本職にこそ劣るものの、それなりに綺麗な加工ができる。ダイヤやルビー、サファイア、エメラルド、水晶等を加工できる。
レイの弟子になるのは誰?
-
ココア
-
チノ
-
リゼ
-
千夜
-
シャロ
-
その他
-
誰も取らない