ご注文は名人ですか?   作:神近 舞

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第3期編、開幕です。


第3期編
第25羽 にっこりカフェのルビーダイヤモンド


 

〔1〕

 

 Side Cocoa

 

「はい、香です。よろしくお願いします。本日は帝位戦第二局、伯方帝位VS鏑木八段の対局を解説致します」

 

 私はチノちゃんに無理を言って「カオリの撮影風景を見させてほしい」とお願いした。チノちゃんは将棋ソフトの盤面と形勢判断と音声を撮影し、淡々とレイちゃんと鏑木八段の対局を解説していく。

 

「決め手となったのは、伯方帝位の72手目となる5四歩です。この一手で角道を開けた上で銀桂の攻めの活路になる上に、相手の防御陣の弱点を突く好手となっています」

 

 チノちゃんが解説していく上で疑問が浮かんだ。「あの手」を指せば、鏑木八段側にも勝機があったように見えたからだ。

 

「これにより、鏑木八段は投了。伯方帝位が2勝となり、防衛まであと2勝となりました」

 

 ......うん。やっぱりそうだ。67手目から形勢がレイちゃんに傾いたんだ。

 

「今回はここまで。高評価、チャンネル登録、コメント等、よろしくお願いします」

 

 チノちゃんは録音終了ボタンをクリックして、収録を終える。

 

「チノちゃんチノちゃん、あの手は解説しなくて良かったの?」

「......?あの手とは?」

「鏑木八段側から67手目で5五角と打ち込む手だよ」

「......?それはただの悪手では?」

「違うよ。67手目で5五に角を打つとね......」

 

 私は手の意図を説明し、数手ほど進めていく。すると、みるみる内に形勢が鏑木八段優勢に変わっていく。

 

「ほらね?」

「......今度から解説はココアさんと一緒にしましょう」

 

 それ以降、私はカオリの姉「桂梨(ケイリ)」として撮影に一緒に参加するようになった。

 

 Side Out

 

 

 

 

 

〔2〕

 

 Side Aoyama

 

 ここは木組みの家と石畳の街。この街には、多くの野良うさぎが住んでおり、多くの人々が住んでいる長閑な街。

 

「今日も暑いですねぇ〜。ラビットハウスでアイスコーヒー日和です」

 

 私は小説家の青山ブルーマウンテン。この街にある小さな喫茶店、ラビットハウスの常連客。

 

「あら?」

 

 看板を見ると『冷やしコーヒーはじめました』と書かれてあった。

 

「冷やしコーヒー?」

 

 ラビットハウスへ入店。

 

「こんにちは〜」

「へいらっしゃい!美味しいコーヒー冷えてるよ!」

 

 そこではココアさん、チノさん、リゼさん、レイさんの全員が浴衣を着ていた。

 

「甘兎庵と間違えましたー!」

 

 Side Out

 

 

 

 

 

「間違ってないよ!」

「浴衣姿じゃ何も反論出来ないよ?」

 

 僕たちは浴衣からいつもの制服に着替え終えた。僕の制服は未だに春の改造状態のままだ。

 

「やっぱりこの制服が一番落ち着きます」

「浴衣は見た目が涼しそうで良いと思ったんだけどな〜」

「そう!そこだよ!お客さんに何度も『その服暑くない?』って聞かれてきたよ」

「みんなの制服長袖長スカートだもんね。......僕はミニスカの恥ずかしい衣装のままだけど......。リゼは何回聞かれたの?」

「今年はまだ2回だ」

「ココアは?」

「私は4回!」

「23回」

「ティッピーの優勝!」

「もこもこだからね......」

「せめて、上着とリボンを取ってみるか」

 

 その後、マヤちゃんとメグちゃんの2人が店に入る。

 

「冷やしコーヒー2丁ー!」

「キンキンに冷えております」

 

 上着とリボンを外したココアたち。

 

「あれ?新しいバイトの人!? ココアたちは!?」

「ピンク、紫、水色がいないね!」

「色で認識されてる......」

 

 その後。

 

「キンキンに冷えておるわい」

 

 冷やしコーヒーをティッピーがストローで飲んでる。

 

「やはりベストは必要ですね」

「イメージカラーは大事だよ?」

「色々なカラーの制服があるのが、ラビットハウスの良い所だからね」

「色んな色......」

「じゃあ今まで通り、この制服で......」 

「さすがに真夏でも長袖は暑いよね?何か良い案は......」

「そうだよ!無ければ作れば良いんだよ!」

「「「えっ!?」」」

「私たちで作る......」

「今こそ私たち4人の力を合わせるときだよ!」

「そ、そうか!」

「涼しくするぞー!頑張って夏の制服を作るぞー!」

「「おー!」」

「お、おー」

「何かこの喫茶店」

「暑苦し〜!」

「これを機に僕の改造制服も無かったことに———」

「「「それはダメ(です)」」」

「そろそろ怒っていい?」

 

 僕ばかり恥辱に耐えるのは違うだろう!後日。夏服の材料を買いに行ったが———

 

「ふにゃ〜......」

「ココアさん夏バテです!」

「早くも燃え尽きたか......」

「まだラビットハウスを出てから数分しか経ってないよ......」

 

 そこにジュースを買って来たリゼが、ココアの頬にジュースを当てた。

 

「ほわぁ!」

「ほら」

「ありがとう......」

「まずは半袖シャツと、薄手のスカートを買おう。既製品で良いだろう。その後、ベストを作るための生地を買いに......うわっ!?」

 

 さっきのジュースを頬にお返しをされた。

 

「お前本当は元気だろ!?」

「そんな事ないよぉ......」

 

 そう言いながらココアはベンチに倒れてしまった。

 

「ありゃま......本当に調子悪いなら、背負ってあげるから乗りなよ」

「嫌だそんな!チノちゃんの前で!ダメだよ〜。恥ずかしいよぉ〜」

 

 そう言いながらココアは僕の背中に乗った。

 

「言ってる事とやってる事が逆だ......」

「全くもう......」

「全く、世話の焼けるやつだなぁ......」

 

 このとき、こっそりとココアがチノに手招きした。チノがココアの背中に乗って、何故か僕が2人を背負う事に。......キツい。女性に重いなんて言えない。

 

「......さすがに意味が分からない」

「ほら2人とも。レイから降りろ」

 

 商店街に来たが......

 

「はぁ......はぁ......」

 

 僕は2人を抱えた影響でバテてしまった。

 

「お兄ちゃんがバテました」

「私たちを背負ってくれたばっかりに......」

「レイしっかりしろ。ジュース買って来たぞ」

「ありがとう......さて、呉服店に来たのは良いけど......」

 

 今日の呉服店はセールをやっていて、女性客が押しかけていた。

 

「今日はセールでごちゃごちゃしてる......」

「もう一度この中に連れてはいけませんね.....」

「レイ、お前は休んでろ」

「ううん......まだ大丈夫......」

 

 僕はフラフラになりながらも呉服店へ向かう。呉服店前に着いたが、女性客が邪魔で入れない。そして僕は弾かれた。

 

「お兄ちゃん!」

「もう止めろ!お前の体力が限界だぞ!」

「ま......負けない!僕は何が相手でも負ける訳にはいかないんだ......!」

「玉砕する気か!」

 

 そこに1人の救世主が———

 

「シャロ......!?」

 

 それはシャロだった。

 

「レイは下がっていて!これは私の戦場よ!」

「半袖シャツと......スカートをお願い......」

「分かったわ!」

 

 シャロは女性客の中を軽々と掻い潜った。

 

「凄い......!」

「頼もしい!」

 

 シャロが掻い潜っている間に———

 

「あら?ココアちゃんたちも来てたのね?」

 

 千夜がやって来た。

 

「千夜ちゃん!」

「ここで何してるの?」

「実はね———」

 

 シャロが戻って2人に訳を話した。

 

「成る程〜。ラビットハウスの夏の制服を」

「シャツとスカートを確保して来たわ!」

「ありがとう!」

「シャロちゃん!」

「凄いパワーでした!」

「素晴らしい戦いだった!」

「みんなで力を合わせて夏の制服を作るって素敵ですね!」

「仲が良くて羨ましいわ〜」

「2人もお揃いの夏制服を作れば良いんだよ!」

「私、甘兎庵で働く気ないし」

「えっ!?」

 

 その発言で千夜の心に傷が出来てしまった。

 

「うわあぁぁぁん!」

「ちょっと!何なの!?」

 

 泣きながら去って行く千夜をシャロが追う。

 

「忙しいやつらだな......」

 

 セールが終わった呉服店に入る。生地を色々見る。

 

「この水色、今と変わりなくて好きです」

「私も良い紫見つけた!」

「僕も良さげな紅色を見つけたよ」

 

 そう、僕のイメージカラーは紅色。常に紅色のネクタイを着けていたのだ。......途中から紅色ベストとリボンに変わったが。

 

「......ピンクがない」

「「「えっ!?」」」

「品切れ?」

「まさか!そんな訳あるか!」

「まだ何処かにあるはずだよ!」

「ピンクじゃないココアさんって!」

 

 ピンクの生地を見付けたが———

 

「これは蛍光ピンク!」

「こっちはドット柄!」

「もはや市松模様!」

「控えめにスパンコールとかどう?」

「目立つ気満々だな......」

「何も控えてないし、眩しすぎるよ......」

 

 するとチノがココアの手を握り———

 

「ココアさん!諦めてはいけません!他の店も探してみましょう!」

「チノちゃん......そうだね!」

 

 他の店をくまなく探したが、ピンク色だけが無かった。遂にはチノまでもバテてしまった。公園で休憩する事に。

 

「はぁ......はぁ......」

「チノちゃん大丈夫!?」

「大丈夫です......少し疲れただけです......早く次の店に......」

「無理しちゃダメだよ!」

「困ったなぁ......何軒回っても、理想のピンクが見付からない......」

「入荷を待ってたら夏が過ぎてしまいます......」

「ん?チノ、そのメモ帳見せて?」

 

 僕はチノの持ってるメモ帳を見る。

 

「あっ、それは......」

 

 描かれていたのは、ココアの夏服のデザインだった。だが絵が下手だった。

 

「多分......そういうことなのか......?」

「ちょっと理解する時間をくれ......」

「これ凄く可愛いよ!」

「もしかして、徹夜したのか!?」

「うん......」

「それで余計に疲れて......」

「無理は禁物だよ?」

「......」

「よし!お姉ちゃんに任せなさい!」

「えっ!?」

「ほらほら!ウェルカムカモ〜ン!」

 

 ココアはチノに背中を見せて手招きする。

 

「何ですかそれ!」

「チノ、たまには甘えたらどうかな?」

「お兄ちゃん......」

 

 夕方。

 

「確かに頂いたわ!あなたの夏休みも私のもの!」

「待てー!怪盗ラパーン!」

「私の夏休みを返せー!」

 

 近所の少女たちが怪盗ラパンごっこをしていた。

 

「やっぱり降ろして下さい」

「ダメダメ♪」

「でも、早く理想のピンク色の生地を探さないと......スパンコールは嫌ですが......」

「焦らなくても良いんだよ」

「さっきも言ったけど、無理は禁物」

「何とかなーる♪何処かにあーる♪」

「何処かに......」

「そう!何処かに!......あれ?」

「どうした?」

「何か閃いた?」

 

 ラビットハウスの倉庫にて。

 

「倉庫に何の用ですか?」

「えっとね......何か前に見た気がするんだよね」

「何を?」

「手品セット!じゃなくて」

「何で手品セットが!?」

「母の趣味です」

「訳が分からないよ」

 

 チノのお母さま......どんな人だったんだ......。

 

「うさぎのおもちゃ〜!」

 

 カタカタ動くうさぎのおもちゃ。

 

「ヒィッ!?」

「母と昔遊んだおもちゃです」

「ワシが買った」

 

 貴方の仕業か。

 

「でも、これはちょっと整理した方が良さそうですね。ごちゃごちゃです」

「ああ......」

「夏休み中に整理しなきゃ」

「あった!ホラこれ!」

 

 なんと、倉庫にピンク色の生地を発見した。

 

「前に倉庫で見た気がしたんだよねぇ〜!」

「り、理想のピンクです!」

「チノのお母さんが遺してくれた生地か!」

「これでココアさんのベストが作れますね!」

「お母さま助かりました!」

 

 何処かから『チノをよろしくね〜』という女性の声が聴こえた気がした。

 

「うぅぅぅ......お"があさーん!ありがどぉぉぉー!」

「「チノ(私)のお母さんだよ(です)」」

「コ、ココア!裏地を見ろ!」

「っ!」

「ん?」

 

 裏地にうさぎの絵があった。

 

「これは......!?」

「うさぎ柄!?」

「リバーシブルだから問題ありません!」

 

 早速制服を作る事に。チノの部屋に入り、夏服製作開始。

 

「じゃあ早速寸法を測るぞ!」

「「イエッサー!」」

「あっ!10年後はナイスバディになる予定だから緩めにお願いね♡」

「10年も着るのか!?」

「でもココア、10年もラビットハウスで働くの?」

「あっ」

「えへへ〜。ついうっかり」

「将来の事はちゃんと考えてるぞ」

「くすっ」

 

 夏服製作が続き———

 

「ん?」

 

 ココアとリゼが眠ってしまった。

 

「おや、寝ちゃったみたいだね」

 

 僕とチノは寝ているココアとリゼにブランケットを被せた。

 

「10年後......どんな私たちになってるのかな?」

「確定はしていないけれど......きっと、楽しい日々を過ごしていると思うよ」

「......!はい!」

 

 僕らの未来は明るいはずだ。

 

 

 

 

 

〔3〕

 

 数日後。古物市(ブロカント)にて。古物市はいわゆるフリーマーケットのようなものだ。

 

「今日のラビットハウスは一味違うよー!いらっしゃいませー!」

「並び終えました!」

「小隊整列完了!」

「こっちはOKだよ!」

「更に古着も整列完了だ!」

「コーヒーを捨てた雑貨ラビットハウス開店だよ〜!」

「捨てとらーん!」

 

 さすがに捨ててないよ......。古物市は多くのお客さまたちで賑わっている。

 

「他のお店は活気が出て来たね〜!」

「ほにゃ!? こっちは暗い顔だ!?」

 

 当のチノとリゼは暗い顔をしていた。

 

「これ需要あるんでしょうか......」

 

 カタカタ動く兎のおもちゃ。

 

「色々持って来たが、無駄だったかな......」

「2人とも笑顔笑顔!」

「暗い表情だとお客さま誰も来ないよ?」

 

 そこに、1人のお婆さまがいらっしゃった。

 

「これ、手作りなの?器用ね〜。孫に買って行くわ」

 

 軍隊うさぎ1羽とボトルシップと僕特製宝石細工を買ってくれた。

 

「「あ、ありがとうございます!」」

「うん!良い笑顔!」

「う、売れた!」

「売れました!あの、こっちは大丈夫そうですし。折角なので他のお店も見て来て下さい」

「良いの!?」

「そうだな。レイとココアは古物市が初めてなんだろ?」

「やったー!」

「僕も良いの?」

「気にするな。ここは私たちに任せろ」

「おっけー」

 

 僕はココアと2人で古物市を回ることになった。

 

「他の店も凄いね」

「感性に突き刺さる物ばかり!これは何日居ても飽きないよ!」

「そうだね。......ん?」

「あれ!千夜ちゃん!」

「ココアちゃん!? レイくんも!」

 

 荷物を持ってる千夜と偶然会った。

 

「随分満喫してるね!」

「あ、これはね———」

「千夜ぁぁぁ!また掘り出し物よ〜!」

「「シャロ(ちゃん)!?」」

「レイ!? ココア!? 取り乱した......」

「うふふ。うちのお嬢様ったら、古物市になると張り切っちゃうから......」

「今日は素敵な陶器と出会う日。だらしない姿で挑めないの」

「お嬢様の余裕を感じるよ!」

「お嬢様って......」

「さっ。千夜、次行くわよ」

「ふぅ......ちょっと休んで良いかしら......」

 

 その刹那、千夜がフラついてさっきシャロが買ったカップを落とした。

 

「千夜!? ロイヤルラビットのティーカップゥ!」

 

 シャロのスライディングキャッチ。

 

「必死!」

「凄い愛だ!」

 

 僕がスライディングキャッチしたロイヤルティーカップの安否を確かめる。

 

「シャロ、ティーカップ無事みたいだよ」

「よ......良かった......」

「......大丈夫?」

 

 僕がスライディングで倒れたシャロを起こしてあげた。

 

「ありがとう......」

「シャロちゃん......私よりカップの方が大事なのね......」

「あーもう!面倒臭いわね!」

「あはは......」

「さあさあ!見てって見てって!お買い得だよ!」

「あのお店は活気があるね〜」

「叩き売りよ。話術や交渉で購買意欲を煽っているのよ」

「一種のテクニックね」

「格好良い!私も出来るかな!?」

「叩き売りの基本と言ったら......よってらっしゃい。見てらっしゃい」

 

 ハリセンで叩き売りを真似する。

 

「マイハリセン持って来れば良かった!」

「「マイハリセンって......」」

「えっ!? シャロちゃん自分のハリセン持ってないの!?」

「えっ!?」

「相方なら持っててもらわないと......」

「持つかぁぁぁ!」

「レイちゃんも私の相方として持ってなきゃダメだよ?」

「なんでさ」

「違うでしょ!」

「そうだよ。シャロ、もっと言って———」

「レイの相方は私よ!」

「それは違うよ」

 

 収拾がつかない。ココアとシャロは謎に僕の相方議論を始めてしまったし、千夜はこの状況を止める気が無いのか、笑顔で静観しているし......おや?

 

「これ......良いかも」

 

 僕はあるお宝を見つけ、購入した。僕が戻ったタイミングで謎の議論は終わったらしい。

 

「あっ!そろそろチノちゃんの所へ戻らないと」

「えっ!? 先輩たちも来ているの?」

「何処ら辺で売ってるのかしら?」

「付いて来て!チノちゃんとリゼちゃん良い笑顔で売り子やってるから!」

 

 チノとリゼの所に戻ってみると。

 

「どんよりしてるー!?」

「Oh......」

 

 2人がどんよりした顔をしていた。

 

「あらあら」

「えっ!? 売れ残ってるの僕の宝石細工とチノのお母さまの遺産だけ!?」

「ガラクタしか見えないでしょうか......」

「こんなに素敵なのに......」

「素敵?」

「アピール力が足りないんだわ!」

 

 僕とココアと千夜とシャロの4人がハリセンを握った。

 

「見せてやりましょう!私たちの叩き売りを!」

「「「おぉぉぉぉぉ!」」」

「ど突き漫才かぁぁぁ!」

 

 叩き売り開始。

 

「いらっしゃいませー!」

「ん?」

「このうさぎのおもちゃ、表情が良いでしょ?職人のこだわりを感じるわ」

「そう言われると......じゃあ下さいな」

「ありがとうございます」

「100?それじゃあ今日の私の夕飯はもやし炒めだわ!」

「じゃあ200で!」

「よし売った!」

「2体セットじゃなきゃ必殺技が出来ないよ!」

「わーい!売って売って!」

「毎度ありー!」

「このカットがこだわりなんですよ......」

「5万で買いますわ!」

「ありがとうございます!」

「4人が輝いて見えます......」

「本当に喫茶店の店員か......?」

「バイトじゃがな」

「はっ!僕は一体何を......」

「よし!私も負けずに呼び込みだ!」

 

 負けるまいと思ったリゼが呼び込みを始める。

 

「あっ!あわわ......私は何を......」

「チノ、僕と一緒に呼び込みしよう?」

「そ、そうですね」

「レイ!チノ!大変だ!お母さんとはぐれたらしい!!」

「うわあぁぁぁぁぁん!」

「えっ!?」

「なんだって!?」

 

 リゼが泣いてる迷子の女の子を連れて来た。

 

「お母さん捜して来る!レイとチノはこの子のことをよろしく!」

「分かった!なるべく早くお願いね!......どうしたの?泣かないで?お母さんが来るまでお兄さんたちと遊ぼう?」

「......う......うん......うん?」

「ん?どうしたの?」

「お姉ちゃんじゃなくてお兄ちゃんなの?」

「......そうだよ」

 

 泣きたい。こういうときは自分の女顔が恨めしい。

 

「えっと......そんなに泣くと、目がうさぎさんみたいになっちゃいますよ?」

「う......うさぎさん......?」

「そ、そうです!えっと......こんな風に」

 

 チノはカタカタ動く兎のおもちゃを女の子に見せた。

 

「それ......目が赤くない......」

「そ、そうですね。こ、この兎さんは笑う事も出来るんです」

「えっ?」

 

 兎のおもちゃをカタカタ動かす。

 

「......変なの!ふふふ!」

「フフッ。変ですよね」

 

 ようやく女の子が笑ってくれた。

 

「はい。差し上げます」

「え?良いの!?」

 

 うさぎのおもちゃを女の子にプレゼントした。僕は女の子を撫でる。

 

「ようやく笑顔になったね。女の子は笑顔が一番可愛いよ」

「あっ、あうう......」

 

 何故か女の子は照れたような表情を見せる。

 

「お兄ちゃん」

「ん?」

「私よりもちっちゃな子を誘惑しないでください」

「なんでさ!?」

「おーい!レイー!チノー!」

「「リゼ(さん)!」」

「見つかったぞー!」

 

 女の子の母親を連れて来た。

 

「お母さーーーん!」

「良かったね......」

「お兄ちゃん!お姉ちゃん!ありがとー!」

 

 女の子は母親と手を繋いで行った。

 

「お兄ちゃん......うぅっ......」

「お姉ちゃん......!」

「良かったな!チノ!」

「お母さまのおもちゃ、気に入ってもらえて良かったね」

「はい!気に入ってくれました!」

「あの子なら大切にしてくれそうじゃのう」

「はい!」

「ですね」

 

 その夜。ラビットハウスにて。

 

「みんな、お疲れー!」

「「「「「お疲れ様ー!」」」」」

 

 いつメンで古物市の打ち上げが始まった。

 

「あっ!そうだ!お店番してたチノちゃんとリゼちゃんにプレゼントがあるんだ!」

「あ、ありがとう!」

「綺麗だったからいっぱい買って来たよ!」

 

 ココアが買って来たものは———

 

「ドアノブ!?」

 

 カラフルなドアノブコレクションだった。

 

「冷静になると悟るのよ。不要な物が増えていく理由を」

「あるあるね」

「ドアノブマニアの人がいるとは......」

「ん?アンタ!それ!」

「リゼちゃんの古着買ったの♪」

「ハアァァァァァ!?」

「新鮮な気持ち〜」

 

 何とリゼの古着を買ったのだ。

 

「くぅっ......!わ......私も......」

「シャロも買おうとしてくれたのか?」

「あっ!いえ......先輩のですとその......サイズ、合いませんし」

「僕ので良かったらサイズ小さめの余ってたけど、どうかな?」

「「「「えっ!?」」」」

「あら♪」

 

 シャロはともかく、ココアとチノとリゼは何故動揺したんだ?実際に着てみた結果———

 

「はぁ......このシャツ......レイの匂い......」

「シャロー!?」

 

 シャロが気を失ってしまった。なんでさ。

 

「じゃあ私の着れなくなった服はチノちゃんに!」

「似合いませんよ......」

「ピンク似合うよ!きっと!」

「似合いません......」

 

 仕方無く試着してみると。

 

「ほら似合う!私もチノちゃんの服ちょーだい」

「それだとただの交換です!」

「レイー。チノー。今日の成果を計算してみたぞ」

「ありがとうございます」

「こんな感じになった」

「Oh......」

 

 ラビットハウスより売上が良い......!? これにはチノも動揺していた。

 

「気負い過ぎよ?」

「私に任せて!これでお店を盛り上げるから!」

「手品セット!それ売れ残ったんですか!?」

 

 売れ残ったマジシャンキット。

 

「違う違う。気に入ったから私が買ったんだよ〜」

「えっ?」

 

 売れ残ったのではなくココアが買ったのだった。

 

「今日はモノにも歴史があることを学んだよ。この手品道具の歴史を、私が新しく作りたいの!」

「歴史......」

「まぁ好きなようにやってみるが良い」

「ティッピーの許可も下りた事だし!始めちゃうよー!」

 

 マジックショー開演。

 

「それではココアのマジックショータイーム!」

「頑張れー!」

「では!この杖に注目!」

「新しい歴史が始まってしまいます......」

「鳩か!? 鳩が出るのか!?」

「ライオンが良いわね♪」

「食べられちゃうわよ!」

「この杖が伸びて......」

 

 杖に念じると———ゴスッ!!

 

「グハッ!」

 

 ココアの鳩尾にダイレクトアタック。

 

「鳩じゃなくて鳩尾だったね......」

 

 文章にしないと上手さが伝わらないが。

 

「説明書読んだのにな......よぉし!もう一度だよ!」

「次は期待して良いんだな?」

「ココアちゃんなら、また期待に応えてくれるわ!」

「それ失敗なんじゃ......」

「あはは......」

「この帽子から花が出たら拍手お願い!そーれ!」

 

 杖で帽子を叩くと、帽子から花が出て来た。

 

「わぁ!」

 

 その夜。僕の部屋にて。

 

「ココア、チノ、来たみたいだね」

「「レイちゃん(お兄ちゃん)?」」

 

 2人が入って来た。僕の手には紙袋が持ってあった。

 

「どうしたんですか?」

「僕も古物市で買って来た物をプレゼントしたくて」

 

 紙袋からある物を取り出した。

 

「これだよ」

「おぉー!」

「わぁ......!」

 

 可愛らしいピンク色と水色のワンピースだった。

 

「これ見て2人とも気に入るかなって思って」

「とっても可愛い!」

「可愛いワンピース......」

「今はもう夜だし、明日着てみたらどうかな?2人とも、おやすみ」

「「ありがとう(ございます)!」」

 

 2人は部屋から出た。翌朝の僕の部屋。

 

「レイちゃんおっはよー!」

「おはようございます」

「おはよう2人とも———可愛い!」

 

 僕は2人を見て喜んだ。僕が昨日買ったワンピースを着てたからだった。

 

「2人ともそのワンピース!」

「はい。着てみました。どうですか?」

「似合ってるかな?」

「可愛いよ2人とも!天使みたいだよっ!」

「「やったー!」」

 

 後日、ラビットハウスにて。

 

「夏仕様〜♪」

 

 ポニーテールのティッピーがウキウキしてる。

 

「どうかな?新しい夏の制服!」

「良いです!似合ってます!」

「あぁ!悪くないな!」

「良いね!」

 

 遂に、ラビットハウスの夏制服が完成したのだ。

 

「私がこの制服を初めて着た時と同じ反応......」

「?」

「そうだっけ?」

「3人とも似合ってるよ!」

「で、でも。このデザイン変じゃないですか?あんまり自信無くて......」

「10年は着たいくらい良いよ!」

「じゃあ10年経ったらまたチノにデザインしてもらおうかな〜?」

「なんで僕のはもっと過激になっているのさ」

「「「私たちの趣味だ(だよ)(です)!」」」

「よぉし、今すぐ将棋を指そう。ボコボコにしてあげるよ」

 

 ふざけやがって。

 

「よし!開店の準備だ!」

「今日も手品で盛り上げるよー!」

「あ、あの!お兄ちゃん!ココアさん!リゼさん!」

「ん?何?チノちゃん」

「どうしたの?」

「......これからも......よろしくお願いします!」

「こちらこそ!」

「よろしく!」

「お願いね!」

 

 僕たち全員が一礼した。

 

「これからも一緒に頑張ろうね!チノちゃん!」

「はい!」

 

こうして、ラビットハウスの新しい物語が始まった。




伯方 玲の意外な特技1「宝石細工」
カット技術や加工技術等は本職にこそ劣るものの、それなりに綺麗な加工ができる。ダイヤやルビー、サファイア、エメラルド、水晶等を加工できる。

レイの弟子になるのは誰?

  • ココア
  • チノ
  • リゼ
  • 千夜
  • シャロ
  • その他
  • 誰も取らない
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