〔1〕
玉座戦第四局。開催場所は陣屋。この旅館では数々の将棋界に関わる物語が相次いで起こった。そして、ここにまた一つ新たな歴史が刻まれようとしていた。現局面は僕に形勢が傾いている。師匠の玉をあと少しで捕まえられる、そんな状況だった。僕の防御陣はほとんど損傷しておらず、詰みには程遠い状況だ。
「......玲」
「はい?」
師匠の手番になっているタイミングで師匠に話しかけられる。
「私の時代はどうやら終わったようだ。これからの将棋界の時代の名は『伯方 玲』だ」
「———」
こんなタイミングでそんなことを言われるとは思っていなかった。
「僕は未だ未熟者です。そんな僕が......将棋界を背負えるでしょうか?」
「玲になら出来る。君は私の自慢の弟子だ。不可能すらも可能にする力が、君にはある」
そう言って、師匠はある一手を指した。これは———
「玲、今の君なら、この意味が解るはずだ」
これは......この局面は......かつて師匠との個人的な対局で結局決着が着かなかった局面だ。だが、今の僕には解る。
「はい......僕はコレが......完全に解りました」
そう言って、僕は新たな一手を紡ぐ。そうやって丁寧に紡がれていった物語の先は———
「......負けました」
「ありがとうございました......!」
僕の勝利だった。こうして、今期の玉座戦は3勝1敗で僕が玉座を奪取。史上3人目の六冠となった。この戦いは将棋界の世代交代を決定的なモノにした対局として、後世に語り継がれることになった。
〔2〕
ある日。シャロはチラシ配りのため公園に来ていた。しかし、野良うさぎ達に怯えていた。
「チ......チノちゃん......まだ......?」
「間合いを計ってるんです」
「あはは......」
野良うさぎたちはシャロや僕の周りに集まり、チノがその野良うさぎたちにゆっくりと近付く。
「不用意に近付くと、モフる前に逃げられます」
「なんで僕やシャロにお願いしたのさ?」
あれか?うさぎに好かれやすいからか?だとしたら少しシャロが可哀想に見えて来た。
「今です!とりゃあぁぁぁぁぁ!」
チノはダッシュして野良うさぎたちに飛び込もうとしたが、転んでしまってシャロにぶつかった。
「チノ!? シャロ!? 2人とも大丈夫!?」
「す、すみませんシャロさん!」
「あれ?チノ!よく見て!」
「えっ?」
周りを見ると、野良うさぎたちはチノを見て逃げなかった。
「うさぎが......逃げない......?」
チノは1羽の野良うさぎを抱っこ出来た。
「うさぎが逃げない!うさぎが逃げない!」
野良うさぎをモフモフでき、チノが興奮した。
「これは夢!?」
「ジェラシー......!」
「抱っこ出来たの初めてです!お兄ちゃんやシャロさんと一緒だからモフモフでき———うわぁー!」
一方のシャロは、野良うさぎたちに囲まれて気絶中だった。
「シャローーーーー!」
「ちょ、ちょっと待ってて下さい!」
僕とチノは急いでシャロから野良うさぎたちを退かした。
「あ......ありがとう......」
「失礼します!」
「えっ?」
「チノ?」
何故かチノがシャロの隣に寝転んだ。すると他の野良うさぎたちが集まって来た。
「Oh......」
「っ!? 助けてレーーーーーイ!」
「シャロ!今助けるからねー!」
色々な災難に遭ったシャロであった。
Side Chino
ある日の中学校にて。生徒たちの髪がキラキラ光っていた。
「何か最近、雰囲気変わった子が増えた?」
「卒業アルバムの撮影が近いから、みんなオシャレしてるんだよ」
「卒業......」
「私たちも頑張ってみる?」
「たった1日のために?まっさか〜!」
「全くです」
私たち3人は一斉にポーズを取った。
「どんな時でも自然体!」
「それがチマメ隊!」
そのとき、私たちは思ってもみなかった。まさか裏切り者が現れる事になろうとは......。
Side Out
『負けました』
『ありがとうございました』
とある土曜日。この日、僕は関東奨励会の対局模様を見ていた。有力な棋士の卵の対局を見ておくことで、自身の対策に繋がるからだ。
「おっ、名人様も見に来たのか?」
「
現在の奨励会の幹事、
「今の奨励会は活気付いているよ。これも名人様のおかげかもな」
「いや、僕は全然......将棋を広く普及してくださっている皆さまのおかげですよ」
「謙遜するんじゃないよっ、塩撒くぞ伯方!」
「僕、幽霊とか化け物の類じゃないんで」
「将棋の化け物のくせによく言うよ、全く......」
しかし......こうして見てみると、本当に教え甲斐のある子がたくさんいる。......僕もいつか、弟子を持つ日が来るのだろうか。
『レイちゃん!』
『お兄ちゃん!』
『レイ!』
『レイくん!』
『レイっ!』
......!どうして彼女たちの顔が思い浮かんだのだろうか。彼女たちは友人だろう?そうじゃないのか伯方 玲。そんなことを考えていると、紫藤七段から声がかかる。
「伯方、お前何か悩んでいるだろ?」
「......えっ?」
「悩んでいる......と言うより迷っている、が正解か?何を迷っているかは分からんが、先輩として1つアドバイスしてやろう」
「はぁ......」
「今、お前は人生の岐路に立っている。迷っていることをしっかりと自覚して、後悔の無い選択をしろ。俺に言えるのはこれだけだ」
「......」
迷っていることを自覚して、後悔の無い選択をする......か。確かに、今重要なのはソレなのかもしれない。僕は帰りの列車に乗っているときもずっと思考にふけていた。
「......弟子、か」
ラビットハウスにて。
「ちょっと伸びたかな?アルバム撮影の時に目が隠れちゃったら困るし」
「......?」
キッチンにて。
「いつも通り自分で......」
「チノ、髪切るの?」
「はい。卒業アルバム撮影のために前髪を」
「じゃあ、僕が切ってあげようか?」
「良いんですか!? ......ん?」
「ほにゃ?何だろ、あのフワフワしたうさぎは?」
テーブルの上にフワフワしたうさぎがいた。
「ほ〜れ!どうじゃ〜?」
その正体は、ふわふわにトリミングされたティッピーだった。
「お爺ちゃん!?」
「マスター!? その毛並み、どうしたんですか!?」
「ココアがトリミングしたんじゃ!」
「「えぇぇぇぇぇ!?」」
「全くココアのやつと来たら、こんな大袈裟にサラサラにしおって。ワシは毛玉を取りたかっただけなのに」
「この手触り、モフモフへの情熱が発揮されている!」
「モフモフに対する愛ゆえの結果なのかな......?」
「もしや、ヘアカットも上手!? いえ、うさぎ限定かも!」
そこにココアが帰って来た。
「ただいまぁ〜!」
「ココア、おかえりなさい」
「私の髪もトリミングして下さい!」
「......えぇぇぇ!?」
ココアはベランダでチノの髪をカットすることに。
「痒い所はございませんか?」
「美容院ごっこですか?」
「今日は肌寒いですね。ブランケットをどうぞ」
「ありがとうございます」
「雑誌、こちらに置いておきますね。温かいコーヒーをお持ちしましょうか?何ならおやつにパンも焼きますよ?」
「髪を切るんじゃないの?早くした方が良いよ?」
「はぁ〜い!」
「チノ、もしココアが失敗したら、僕がやるよ」
「お願いします」
「大丈夫だよレイちゃん!私を信じて?」
「あー......うん......」
何故だろう、物凄く不安だ......。ココアはチノの髪を櫛で整える。
「こうしてると、家族って感じしない?」
「美容院は何処へ?」
「えへへ。私も実家にいた時は、お姉ちゃんに切ってもらったなぁ〜って」
「そう言えばココアさんも髪伸びてますね」
「最近伸ばしてるんだぁ〜。少しでもお姉ちゃんに近付けたらなぁ〜って」
「モカさんと同じ髪型かぁ......存外違和感無いかも」
「伸ばしたからってモカさんのようになれる訳では———あっ!」
「本日はどうなさいますか?毛先を少し揃えます?」
「絶対素敵にカットしてくれると信じてます!ココアさんの好きにしてください!」
「えっ!? 何そのプレッシャー!? もう信頼してくれてるんだよね?お姉ちゃん嬉しいよ!さぁお嬢さん!覚悟しな!」
「時代劇かな?」
「絶対素敵なカットにするからね!」
「ねぇ、ココア。無理は禁物だよ?」
「大丈夫!お姉ちゃんに任せなさーい!」
なんだろう......嫌な予感しかしない。
「ココアさん、緊張してます?」
「でも失敗したらピコハンで叩いて!」
「何故にピコハンなのか」
「普通のカットで良いので失敗しないで下さい!」
「それはそう」
ココアは順調にチノの髪をカットしていく。
「お客さん、進学先、お兄ちゃんとお姉ちゃんの通ってる学校に決めたんだって?」
「そうです」
「お姉ちゃんと一緒に登校して、学校も一緒で、放課後はラビットハウスのお手伝いして、おはようからおやすみまでお姉ちゃんと一緒だね!」
「やっぱり違う学校にするかも」
「えっ!?」
そのショック故か、ココアはうっかりチノの前髪を切ってしまった。
「Oh......」
ココアはピコハンをチノに差し出した。
「今言うべき冗談ではありませんでした......」
「お詫びに私も散髪してぇぇぇ!」
「伸ばす宣言は何処へ!?」
「やっぱり私は私だし......髪を伸ばしても、お姉ちゃんになれる訳じゃないんだね......」
「でも、いつもの髪型も好きですよ?」
「えっ?」
キッチンにて。タカヒロさんが皿を洗っていた。
「お疲れ様です、タカヒロさん」
「ん?」
前髪が同じ状態の僕とココアとチノが出て来た。
「おや」
「えへへ〜」
「お揃いかい?」
「いえ。失敗しました」
「僕はチノとココアの2人同時にやられた結果です」
「そんなことないよ!チノちゃんは上手だよ!」
「そうだね。3人ともよく似合ってるよ?」
「っ!」
「こうして見ると、本当の兄妹・姉妹みたいだね」
「えへへ〜!」
Side Chino
翌日の中学校にて。......自然体って言ってたのに、2人になんて言おう......。
「チノー!おっはよー!」
「おはよー」
「おはようございま———えっ!?」
2人の髪も自然体になっていた。マヤさんはヘアピン、メグさんはストレートに。
「2人ともそれ!」
「ひ、秘密〜......」
「ちょっと色々ありまして......」
「なんか大人っぽいです!」
「そ、そう?それを言うんだったらチノまで」
「素敵な雰囲気だよ〜?」
「わ、私は偶然の結果です......」
「2人とも気合入れて来るって思ってたからね〜」
「そんなつもり無かったんだけど〜......」
「前髪くらい、すぐ伸びますし」
「「「あはははは!......裏切り者ーーーーー!」」」
この中の裏切り者は、全員であった。
Side Out
〔3〕
ある日。
「ラビットハウスのパン祭り!」
「パスタもありまーす!」
「美味しいコーヒーもあります!」
「是非ともお越し下さいませー!」
「パパンパンパンパン祭り〜!」
今日はラビットハウスのパン祭りのチラシ配り。そこでシャロと偶然会った。
「シャロちゃん!」
「またパン祭りやるのね?」
「食欲の秋で食べ放題だよ!」
「今回は来れそうか?」
「そうですね......貰ったメロンパン、美味しかったなぁ〜」
「あっ、今度のパン祭りは私の新作コーヒーも———」
「っ!」
「うにゃ!?」
「パン祭りですかぁ〜。今回は、お邪魔しますね」
ローアングルから僕とシャロを眺めてる青山先生を発見。
「また目線を下にーーー!」
「青山破廉恥マウンテン先生!」
「酷い言われようです......」
同性はおろか、異性をローアングルで眺める人なんて、こんな呼び名で十分だろう。
「青山先生ーーー!原稿ーーーーー!」
遠くから真手さんが破廉恥先生を追って現れた。
「あ!凛ちゃんさんだ!パパンパンパンパン祭りだよ〜!」
「歌うな!」
「それどころじゃないでしょ!」
「スーーーーー」
「食べ放題?そうですね。時間が空けば......」
「パン祭り来たら、青山さん捕まえられるよ!」
「行きます!」
「そんな理由で!?」
「あの、コーヒーも———」
「パパンパンパンパン祭りでしたっけ?絶対行きますから!」
「楽しみですね〜!」
花壇から破廉恥先生がこっちを見てる。
「あ!そんな所に!」
「先生!待てぇぇぇぇぇ!」
「本当に来れるのか?」
「......来れると良いね」
「あれ?チノちゃんは?」
「あ!あそこ!」
公園の上で座り込んでるチノを発見した。
「チノちゃーーーん!」
「どうしたのチノ———って、ほにゃ!?」
何故かチノが草を口に咥えて不良っぽくなっていた。
「ワイルドギースを乗せてグレてる!?」
「ワイルドギースに憑依された......ってコト!?」
「ラビットハウスはパン屋さんじゃない......だぜ!みんなコーヒー嫌いなん......だぜ!」
「ワイルドチノちゃん!?」
「不良チノだーーー!」
「嫌ー!さっきまでの純粋で可愛いチノを返してー!」
「っ!? ......嫌なんだぜ!」
「も、元に戻るんだぜ!」
「新しい腹話術!?」
「草食べるなーーー!」
「あらあら。みんなどうしたの?」
今度はあんこを抱っこした千夜が現れた。
「千夜ちゃん!チノちゃんにワイルドギースが憑依して———」
「それならあんこも, Ride on」
「ちょ......」
千夜はワイルドギースを持って、あんこをチノの頭に乗せた。
「チノちゃんで遊ばないの!」
「あっ!」
するとチノの目が変わり、無言になってしまった。
「今度はあんこみたいになった!?」
「まぁ!降霊術だわ!」
「あんこ生きてるでしょ!?」
「チノちゃんカムバーック!」
「お願いー!戻って来てよ我が妹よー!」
「フ......フフ......」
チノは笑い堪えながら立ち上がった。
「「「「「?」」」」」
「す、すみません......ちょっとイタズラしちゃいました」
「ビックリしたよー......イタズラで良かったよ全く......」
そう言って僕はチノの頭を撫でる。
「も〜!本気で拗ねちゃったのかと思ったよー!」
そう言って、ココアはチノを抱きしめる。
「やんちゃになったわね〜」
「ココアに似てきたなぁ......」
「末恐ろしい子ですね......」
「うんうん」
「?」
ラビットハウスのパン祭り。
「お客さん、来てくれると良いなぁ......」
「珍しく弱気だな」
「この前実家に帰った時、お姉ちゃんとの実力の差を思い知らされてね......」
「ココアがそんなだと、私まで不安になってくるだろ?」
「ココアさんのパンも、リゼさんのパスタも、お兄ちゃんの料理も美味しいから大丈夫です」
「僕とチノが保証するから安心して?」
「レイ......チノ......」
「そこにレイちゃんとチノちゃんのコーヒーがあって最強だね!」
「うんうん......あれ?僕だけやること多くない?」
「「「今更(ですか)?」」」
「泣きたい」
これから労働量減らしてやる!
「全く......今更フォローしても遅いですよ」
「あれ?まだ拗ねてる?」
「拗ねてないん......だぜ」
「チノ、後で慰めてあげるから」
「......よろしく......だぜ」
「ワイルドギースの影響が残ってるね......」
その刹那、店のドアが開いた。
「っ!」
「お腹空かせて来たよーーー!」
「店中のパンを食べ尽くすぞーーー!」
みんなが来てくれた。
「おいおい、食べ尽くすなよ〜」
「マヤちゃんのお腹がいっぱいになるのが先か、パンをこねる私の腕が限界を迎えるのが先か、勝負だよ!」
「望む所だ!」
「席にご案内して下さい」
「ほんとだよ」
その後、お客さまが増えて来た。
「ん〜。パンの良い匂い〜」
「こしあんパンもつぶあんパンもある!ココアちゃん本気ね!」
「ご注文は何にしますか?」
「メロンパンとクロワッサン。後、一緒にコーヒー貰える?」
「シャロ!? 正気かい!?」
「カフェインで酔っちゃっても良いの?」
「今日は飲みたい気分なの」
「ウフフ。バータイムのセリフみたい」
「私も飲みたい気分だよ〜」
「私は抹茶を」
「ありませんが?」
「コーヒーで飲みなさいよ!」
「私はカプチーノにしようかな?」
「私はモカチーノ!」
「「ココアは仕事しろ!」」
僕とチノの手によって、オリジナルコーヒーが完成。
「「お待たせしました」」
コーヒーの上に花の形のホイップクリームと、ティッピーのクッキーが付いてる。
「何か可愛いの来たー!」
「スペシャルブレンドコーヒーです」
「ホイップでお花作ってるー!」
「今日のために頑張ってブレンドしてみました」
「僕も頑張ったよー」
「飲むのが勿体ないわぁ〜」
「ゆっくり味わって頂きましょ?」
スペシャルブレンドコーヒーをシャロが飲む。すると———
「っ!うわあぁぁぁぁぁ!」
天空から落ち......花畑の上で天使になった。
『美味しい〜。何て良い香りなの〜?』
『ホラ。シャロちゃんも花冠』
そこに天使の僕とココアとチノが来た。
『何時もお疲れ様です』
『シャロ、僕の手をとって?』
『手?』
僕の手を握った。そこに天使になったリゼと千夜も加わり。
『ランランラララ〜ン♪カフェインで〜目がランラン〜♪カフェインを巡れ〜♪』
『暖かみを感じる〜』
イメージ終了。
「これが......天国......」
当の本人はふわふわしていた。何だったんだ、今のイメージ。
「シャロがふわふわしちゃった......」
「このコーヒー、何入れたの?」
「気持ちを込めただけです!」
「同じく」
「あの!スペシャルブレンド、私にも1つ!」
「真手さん!」
「コーヒー苦手って聞いてたけど......」
「......て、天国が見たくて......!」
「シャロの反応は特別だから!」
「あの子は特殊なんです!虚数解なんです!」
「レイ......普通に辛辣だな......」
「編集者としての好奇心ですね」
真手さんがスペシャルブレンドを飲んでみる。
「......!美味しい!」
「っ!」
「コーヒー自体に苦味や酸味が少ないし、クリームのおかげで凄く飲みやすいです」
「周りにコーヒー苦手な人や、あまり飲めない人が多いので」
「違いが分からない人もいますから」
シャロとかココアとかその代表例だからね。
「そっかぁ。飲みやすくしてくれてるんですね!確かに。チノさんとレイさんの温かみを感じます」
「温かみ......あ、ありがとうございます!」
「ありがとうございます」
「頑張った甲斐があったな!」
「チノ!」
「お兄ちゃん!」
僕とチノはハイタッチした。
「このスペシャルブレンド、定番メニューにしよう!そしたら凛ちゃんさんが常連になってくれるかも!」
「はい!これがあれば、青山先生の徹夜にも付き合えます!」
「んーーーーー?」
青山先生の目のハイライトが消失した。
「青山先生......終わったな......」
「頑張って!青山さん!」
1人の少女が、スペシャルブレンドコーヒーを見ていた。
「......ママ!私もお花のコーヒー飲みたい!」
「まだ早いでしょ?」
「あの。良かったら、ココアにしてお持ちします」
「良いんですか?お願いします!」
「お花作る所、見てもいい?」
「いいですよ」
チノがスペシャルブレンドコーヒーを作る。
「上手だねぇ〜!」
「ありがとうございます」
「お花以外は作れる?」
「そうですね。モフモフのうさぎさんなら作れるかも」
「モフモフ!? 見た〜い!」
「チノちゃんがお姉ちゃんに見えるよ」
「レイやココアに似て来たなぁ」
「......そうだと良いな」
「チノちゃんがレイちゃんや私に似てるなら、私は今の私で良いかな?」
「?」
「てへへ〜。何でもない!ん?あっ!お花失敗したやつだ!」
失敗したスペシャルブレンドコーヒーがあった。
「私も飲んでみよう」
ココアは失敗したスペシャルブレンドを飲んでみる。
「......あれ?普段のブレンドとの違いが分からない」
「ココアさんは最初からコーヒーの区別出来てないじゃないですか」
「それはそう」
「違うよ!だってレイちゃんとチノちゃんのコーヒーは、最初から全部すっごく美味しいもん!」
———。
「っ!......」
「レイちゃん?チノちゃん?」
「いや......何でもない」
「いえ、気を遣ってくれてるのかと思ってました......」
「ココアちゃん!注文いいかしら?」
「あっ!はーい!」
「チノちゃん、レイお兄ちゃん、何か良いことあった?」
「顔がニヤけてる〜」
「ニヤけてません!」
「......大人をからかうんじゃありません」
「「えへへ」」
夕方。パン祭りが終わり、後片付け。
「今日のパン祭りも大盛況だったし!」
「うん!3人のおかげだよ!やっぱり私たち最強4姉妹!」
「何ですか?それ」
「僕は男なんだけど?」
「レイとチノのコーヒーも大好評だ!」
「え?」
「ラテアートもちっちゃい子たちに大人気だったし!」
「うんうん!チノは立派なお姉ちゃんになれてたよ?」
「お姉ちゃん......私が......」
「うん!頑張ったな!チノお姉ちゃん!」
「偉い偉い!」
「大変良く出来ました!」
僕たち3人がチノを撫でる。すると、チノが僕の腕を掴んだ。
「か、からかわないで下さい!表の看板を下げて来ます!行きますよお兄ちゃん!」
「はいはい」
ラビットハウス入り口前にて。
「すぅ〜......はぁ〜......お兄ちゃん、おじいちゃん、私は少し変われたんでしょうか?」
「そうじゃなぁ」
「温かみって、何でしょう......?うさぎにだって、1人だと逃げられてしまうのに......」
「チノ、振り返ってみなよ」
「んぇ?......ん?あっ!」
チノが後ろを振り向くと、1羽の野良うさぎがこっちを見ていた。ゆっくりと手を伸ばし、野良うさぎを撫でた。野良うさぎは逃げずに撫でさせてくれた。
「「......いらっしゃいませ!」」
伯方 玲の意外な特技6「イメージ投影」
人の抱いているイメージを自分事のように投影思考することが出来る。その人自身が確固たるイメージを持っていないとそのイメージを視認することが出来ないため、夢などの曖昧なものは投影できない。
レイの弟子になるのは誰?
-
ココア
-
チノ
-
リゼ
-
千夜
-
シャロ
-
その他
-
誰も取らない