ご注文は名人ですか?   作:神近 舞

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今回以降、毎日投稿は無いものと思ってください。ストックは常にございません。今回からオリジナル要素てんこ盛りです。P.S. サイレントで更新していることがあります。稀に場面追加とかもあるかも......?


第6羽 目と目を合わせるお話

 

〔1〕

 

 Side ???

 

「はい、(カオリ)です。よろしくお願い致します」

 

「【ただの伯方名人のファン】カオリの将棋解説チャンネル」それは私が運営している動画アカウントだ。アマチュア段位レベルしか棋力の無い私だが「解説がわかりやすい」と評判で、チャンネル登録者数は20万人を越えていた。

 

「本日は帝位戦第一局、白井帝位対伯方名人の対局を解説致します」

 

 この対局の良かったところは伯方名人の終盤の香銀角を活かした攻めだろう。攻撃に一切の無駄が無く、最後は香打ちの時点で17手詰め。見事に伯方名人が1勝を挙げた一局だった。

 

「今回伯方名人が1勝し、後3局勝てば帝位奪取となります。白井帝位にとってこの1敗は痛いところでしょう。次の第二局は———日に行われますので乞うご期待、といったところですね」

 

 次に私は恒例となる伯方名人スケジュールを挙げる。

 

「名人戦は4勝1敗で白井竜皇に対して防衛。叡帝戦は挑戦者決定トーナメント準決勝にて真辺九段に敗退。棋匠戦は挑戦者決定トーナメント決勝にて春生九段に敗退。帝位戦は進行中で現在1勝0敗。玉座戦は挑戦者決定トーナメント二回戦にて皆瀬九段に敗退。竜皇戦はランキング戦1組3位戦にて鏑木八段に敗退。玉将戦、棋帝戦は挑戦者待ちとなっております。一般棋戦の方は、公共杯にて進藤八段との対局が組まれています」

 

 最後に私は全タイトル戦の状況を挙げる。

 

「名人戦は4勝1敗で伯方名人が防衛、A級をはじめとした順位戦がスタート。叡帝戦は3勝2敗で後藤叡帝が防衛、現在段位別予選がスタート。棋匠戦は白井棋匠の2勝1敗。帝位戦は伯方名人の1勝0敗。玉座戦は挑戦者決定戦に突入し、春生九段か皆瀬九段のどちらかが挑戦者となります。竜皇戦は挑戦者決定トーナメントが中盤に差し掛かり、誰が挑戦権を得てもおかしくない状況になってます。玉将戦は二次予選が、棋帝戦は挑戦者決定トーナメントがスタートしています」

 

 私は動画を締めくくる。

 

「最後まで動画をご覧くださり、ありがとうございます。高評価、チャンネル登録、コメントのほど、よろしくお願いします」

 

 私は声の収録を終え、編集した動画に合うように音声を調整する。これが終わったらエンコードを行って投稿だ。

 

「......ふぅ、終わった」

 

 動画が無事に投稿されたことを確認した私は、すぐさまノートパソコンとマイク等の機材を隠す。

 

「......これだけはレイさんにバレる訳にはいきません」

 

 そう、この動画アカウントの主は私、チノなのだ。

 

 Side Out

 

 

 

 

 

 ラビットハウスには3人のバイトがいる。この春から下宿している僕とココア、そしてリゼさんだ。

 

「お待たせしました」

 

 リゼさんがお客様にコーヒーを差し出す。

 

「ごゆっくり」

 

 リゼさんがその場を離れたそのときだった。

 

「ねぇねぇ、あのツインテの子可愛くない?」

「可愛い。ツインテ超似合ってる!」

 

 女性客たちの話を聞いたリゼさんは、窓で自分の髪を整える。

 

「良いか?ああ言う客の冷やかしは、気にするなよ......気にするなよ?」

「リゼちゃんったら窓ガラスを鏡代わりに」

 

 可愛いって言われて嬉しかったんだろうなぁ......。そのとき、リゼさんはある物を見て驚いた。

 

「な、何だ!? その頭は!?」

 

 それはツインテールをしているティッピーだった。

 

「ティッピーは今イメチェン月間中なんだって!ツインテ可愛いね!」

「さっきのはどっちに対してだ!?」

 

 駆け足で裏に入ったリゼさん。

 

「気にするなって言ってたのに」

「乙女心は複雑みたいです」

「あはは......」

 

 そんな一騒動が終わった後、同じお客様たちからこんな話が聞こえる。

 

「ねぇ、あの黒髪の人」

「あぁ、背の高いあの人よね」

 

 この中で黒髪と言えば僕しかいない。僕がどうかしたのだろうか———

 

「お姉さまって呼んでいいかしら......」

「踏んでもらいたいわね......」

 

 ......。

 

「レイさんが凹んでます......お姉さまって何ですか?」

「チノちゃんは知らなくて良いよ......あはは......」

 

 ......泣きたい。

 

 

 

 

 

〔2〕

 

 今日はラビットハウスが休みの日。そして僕の対局も無い日。部屋のカーテンを開けると、天気は満開の快晴だ。......今日は暇だな。

 

「ふむ......今日はやることがないから研究か勉強を———」

「レイちゃんおっはよー!」

 

 唐突にココアが僕の部屋を開けてきた。

 

「......おはよう。ノックぐらいしてくれないか?」

「ごめんねー。ただ一緒にお散歩したくて......」

 

 ふむ、散歩か。研究ばかりやっても煮詰まるばかりだしな。

 

「......いいよ。ただ着替えるから数分待ってくれないかい?」

「......?レイちゃんの着替えシーンの撮影ならおまかせあれ!」

「なんでさ」

 

 出てってくれ。強引にココアを追い出して数分後、外出用の服に着替える。

 

「おぉー!レイちゃん外行きの服もオシャレだね!」

「褒めても何も出ないよ」

 

 ナデナデをプレゼントしよう。僕がココアの頭を撫でると嬉しそうな表情を浮かべる。

 

「えっへへー♪チノちゃんも呼んでくるね!」

 

 チノちゃんには承諾をもらっているのか?そう思っていると、ココアが唐突にチノちゃんの部屋のドアを開けた。

 

「お散歩に行こー!」

「休みの日は家でのんびりしたいです。あと少しで、作りかけのボトルシップが完成するんです」

「そうなんだ。チノちゃんは手先が器用なんだね」

「それなら、公園で作って、川に浮かべて流そうよ!」

「ボトルシップって、何か分かってますか?」

「ココア、ボトルシップは工芸品だぞ?」

「チノちゃんチノちゃん」

 

 ココアがチノちゃんを隅に誘導すると何かを耳打ちする。

 

「このままだと私がレイちゃんを独り占めしちゃうけど、いいのかなぁ?」

「......ッ!ココアさんには負けません!」

 

 なんだ?ここからだと小さすぎて聞き取れない。

 

「私も行きます!」

「そうこなくっちゃ!」

「......いいの?大丈夫?ボトルシップそろそろ完成なんでしょ?」

「気にしないでください。今日はたまたま、外に出る気分だったので」

 

 ......そういうことにしておくか。なんやかんやあって、チノちゃんも一緒に外出することに。

 

「この坂道からは、街が一望出来ます」

「うわぁー!良い眺めー!」

 

 坂道の天辺から街が見える。良い景色だ。

 

「自転車があったら、チノちゃんかレイちゃんを後ろに乗せて、この坂を滑走するの!」

「二人乗りはダメですよ?」

「それ以前に坂は危ないよ」

「あっ!その前に、自転車の乗り方教えて貰わなきゃね」

「「「えええぇぇぇぇぇ!?」」」

 

 思わずマスターまで反応してしまっている。

 

「私、夕日の中で何度も倒れながら特訓するのが憧れで」

「話がコロコロ変わりますね......」

「僕は......公共交通機関に慣れちゃったからなぁ......」

「飛行機も乗るんでしたっけ」

「そうだね......しかもビジネスクラス」

 

 慣れって本当に怖い。そんなこんなで、次のチノちゃんオススメスポットに向かう途中———

 

「あっ!リゼちゃんだー!」

「洋服を選んでますね」

 

 洋服店で服を選んでるリゼさんを発見した。

 

「リゼちゃんって感じの服だねー」

「私達があまり着ない系統の服です」

「あっ!」

 

 するとリゼさんは一着の服を見て目を輝かせていた。しかし、その服を見て葛藤していた。

 

「何やら葛藤しているようですなー」

「そっとしておきましょう」

「あまりリゼさんの邪魔にならないようにしなきゃね」

 

 僕たちが次に向かったのは、のどかな風が吹いてる公園。ベンチに3人とも座ってる。

 

「ぽかぽかして気持ち良いねー」

「はいー。何だか甘い香りもするし」

「そう言われてみれば......おっ、クレープ屋があるね」

 

 横に視線を向けると、奥にクレープ屋の屋台があった。

 

「ココア、チノちゃん、ここは僕に奢らせてよ」

「良いんですか?」

「私が払おうと思ったのに......」

「まぁまぁ、ここは社会人からの餞別ってことで」

 

 僕たちはクレープ屋の屋台に向かった。そこに居た店員は———

 

「シャロちゃん!?」

「ん?ココア!? レイにチノちゃんまで!?」

 

 シャロだった。こんなところで珍しい。恐らく金銭事情絡みなんだろうな......。

 

「シャロはクレープ屋でもバイトしているんだね」

「シャロちゃん多趣味だねー」

「そ!そうよ!多趣味よ!悪い!?」

「あぁあぁクリームが......」

 

 シャロは出来上がったイチゴクレープを僕たちに差し出した。

 

「はい、お待たせ」

「ありがとー!頂きまーす!」

 

 僕たちがクレープを食べる。

 

「んー!美味しい!はい。シャロちゃんもあげる」

 

 クレープをシャロにあげようとするココア。

 

「私、仕事中よ?」

「まぁまぁ一口だけでも」

 

 シャロが仕方なくクレープを頂こうとしたその刹那。ベシャ!と何かが落下してクレープがグチャグチャになってしまった。落ちて来たのはあんこだった。

 

「また空からあんこが!? よりによって、クレープの上に落ちなくたって!ねえシャロちゃん?」

「......」

 

 シャロはココアよりショックしている。......心中お察しします。

 

「......クレープ1つ。シャロに奢るよ」

「......えっ?でも———」

「まぁまぁ、僕が奢りたかったから奢った。それでいいじゃないか」

「......ありがと」

「僕のクレープはココアにあげるよ。お腹いっぱいだから」

「ありがとう......」

 

 そんなやり取りをしているとそこに———

 

「待ってー!」

 

 駆け足であんこを追い掛けている千夜が来た。

 

「やっと......追い付いた......」

「千夜ちゃん!またカラスにあんこさらわれたんだ」

 

 また?何度もさらわれているってこと......?

 

「何時もと制服が違います」

「気付いた?今月は、レトロモダン月間なのー!」

 

 千夜の制服はオレンジ色で、頭にリボンを着けている。

 

「甘兎庵もその内、フルール・ド・ラパンよりいかがわしくなるんじゃない?」

「そう......それなら......脱ぐわ」

「ここで脱がないでよ!」

「......レイちゃん?見てないよね?」

「見てない!見てない!」

 

 チノちゃんの両目を隠すココア。それと同時に顔をそらす僕。......なんだこれ。その後、僕たちは公園でうさぎと戯れていた。

 

「モフモフ天国最高ー!」

「ココアへの懐き度合いすごいね......」

「良いんですよ、私にはティッピーがいますから......」

 

 チノちゃんが自暴自棄になってしまった。

 

「きっと、チノちゃんは口とか毛並みとかがうさぎに似ているから、同族嫌悪されてるんだよ」

「意味分かって言ってます?」

「何のフォローにもなってないよ......?」

 

 すると、ココアはチノちゃんに抱き付く。

 

「それなら!私がチノちゃんをモフモフすれば、寂しくなくて解決だねー!」

「何も解決してませんが」

「それココアだけが得してるよね」

 

 そんなこんなしてると、僕が初めて聞く声が聞こえた。

 

「あー!チノじゃーん!」

「マヤさん、メグさん」

「映画観に行ってたのー」

「そうでしたか」

 

 どうやらチノちゃんのお友達のようだ。

 

「喫茶店の仕事が休みだって知ってたら、誘ったのにー」

「今度チノちゃんも一緒に行こうねー」

「チノ、隣にいるのは?」

「私の兄です」

「違うが?」

 

 ココアがいたら嫉妬しそうだな。......あれ?ココアの反応が無い?......まぁ、いいや。

 

「チノちゃんのお友達ですかね。いつもチノちゃんがお世話になってます。チノちゃん家の居候の伯方 玲です」

「この前話してたお兄ちゃんみたいな人かー!私マヤだよー!」

「メグですー。よろしくお願いします」

「マヤちゃんとメグちゃんだね。よろしく」

 

 お兄ちゃんみたいな人?隣を見るとチノちゃんがドヤ顔になってる。なんでさ。

 

「ところで、どんな映画を観てきたんです?」

「私は、アクション物が良いって言ったんだけど、メグがさー」

「今流行ってる映画でねー、すっごく泣けるんだー!パンフレットも買っちゃったー」

 

 パンフレットを見せるメグちゃん。『うさぎになったバリスタ』という映画だった。チノちゃんとマスターは「他人事とは思えないタイトル!?」とか思ってそうだ。

 

「あれ?ココアさん?」

 

 あっ、気付いた?

 

 

 

 

 

 Side Cocoa

 

 私は一羽のうさぎを追い掛けていた。

 

「待って待ってー!」

 

 そして、うさぎが止まってる隙を見て捕まえた。

 

「捕まえたー!」

「珍しい色のうさぎですねー」

 

 ベンチに1人の女性がいた。何者!?

 

「良かったらどうぞ」

「良いんですか?」

 

 私は女性の隣に座る。

 

「お散歩ですか?」

「はい。閃きを求めてさまよっているんです」

「閃き?」

「私、小説家なんです」

「小説家さん!格好良い!ペンネームは何て言うんですか?」

「『青山ブルーマウンテン』と言います」

 

 不思議な名前だ。レイちゃんがいたら確実にツッコんでいただろう。

 

「書いた小説が最近映画化したりしました」

「凄い!」

 

 私も、街の国際バリスタ将棋棋士としてパンを焼きながら小説家の道を生きるのも良いかもしれない。

 

「ココアさーん?」

「ココアーどこだーい?」

 

 この声は!レイちゃんとチノちゃん!

 

「レイちゃん達が探してる!」

「それではまた、さまよってきます」

「行ってらっしゃい」

 

 青山さんはまたさまよいに行った。丁度そこにレイちゃん達が来た。

 

「探したんだよ?」

「ごめんごめん」

「ココアさんは知らない人と気軽に話せるんですね」

「チノちゃんも喫茶店のお客さんと話せてるよ?」

「いきなり世間話はしませんし。話すのは、得意じゃないです......」

「でもさっきの友達とは楽しそうに話してたよ?」

「あの2人が積極的に話しかけてくれなかったら友達になれてなかったです」

「そんなことないよ!私にチノちゃんの腹話術の技術かレイちゃんの棋力があれば世界を狙ってたのに!」

「「頑張ってね(ください)」」

 

 何故か2人に温かい目で見られた気がした。

 

 Side Out

 

 

 

 

 

 そして夕方になった。

 

「次は何処へ行こうか?」

「そうですね......リゼさん?」

「はい!?」

 

 チノちゃんの声に反応した女性が戸惑っている。その女性は、髪を下ろして別人みたいになってるリゼさんだった。

 

「人違いでした、失礼しました」

「え?」

「ん?」

「さっき見かけた時と服も髪型も違うもんね」

「まぁ、そうだね......でも」

「ん?でもリゼちゃんって言ったら振り向いたよ?」

「あ!き、聞き間違えました......私、その......ロゼと言う名前なので......」

 

 リゼさん、さすがにそれでは誤魔化せませんよ......。

 

「そうですか。でもびっくりです。ロゼさんによく似た人がうちの喫茶店にいるんです」

 

 誤魔化せてるー!?

 

「ほ、本当?是非行ってみたいわ」

「ラビットハウスというお店です。お待ちしています」

「ええ、いつか必ず。じゃあ」

 

 その場を歩き去るロゼさん(リゼさん)。

 

「私人見知りするんですが、今の人は何故かいきなり会話が出来ました」

「やったね、チノちゃん!」

「もしかしてこれはココアさんの影響!?」

 

 いや、あれはリゼさんだから!気付いて!? こうして僕たちの散歩が終わり、夜のラビットハウス。僕は研究用のパソコンを起動して研究の準備をしていた。すると、ドアのノックが聞こえた。

 

「ん?はーい?」

 

 ドアを開けたのはチノちゃんだった。

 

「あっ。チノちゃんどうしたの?」

「今日は何だか落ち着きません。お話していたい気分です。でもレイさんが迷惑なら......」

「いいよ。どうせ研究するだけだったから。なんなら見てみるかい?」

「いいんですか!?」

「どうせなら一局指そうよ。チノちゃんがどれだけ強くなったか見てあげる」

「お、お願いします......!」

 

 その後、僕はチノちゃんと有意義な時間を過ごした。チノちゃんはこの短期間でアマ三〜四段相当まで強くなっていた。飲み込みが良いのかもしれない。

 

 

 

 

 

〔3〕

 

 翌日のラビットハウスにて、それは起こった。

 

「遅れてごめん!制服が無かったんだけど、ん?」

 

 そこでココアは見た。チノちゃんのクラスメートのメグちゃんがココアの制服を着ていて店の手伝いをしていた。

 

「あ!おかえりなさーい!」

「私の制服!? もしかして私リストラ!?」

「ん?」

「おーいチノー!レイ兄ー!このモコモコしたの可愛いなー!倒したら経験値入りそー!」

 

 リゼさんの制服を着て、ティッピーを頭に乗せているマヤちゃんもいた。

 

「マヤちゃんそれモンスターじゃないから。EXP入らないから。某RPGじゃないから」

「リゼちゃん!? いつの間にこんなにちっちゃく......」

「ちっちゃ!?」

「あれ?よく見たら違う?」

「リゼって、この制服の持ち主?」

 

 すると制服からモデルガンを取り出した。

 

「ヴァァァァァ!?」

「クローゼットにこれがあったけど、その人、裏の仕事も引き受けてるの?」

「リゼちゃん!大変な物を置き忘れてるよー!」

「マヤさん!ティッピー返して下さい!」

「チノちゃん、ごめんね遅くなって。ところで2人は昨日の......」

「私のクラスメートです。手伝ってくれてるんですよ」

「マヤだよー!」

「メグですー!」

「そっかー!ありがとー。マヤちゃん、メグちゃん」

「お礼なんか良いってー。ね!メグ」

「楽しいし、制服も可愛いしねー」

「2人とも良く似合ってるよ!あともう2色増えたら悪と戦うのも夢じゃないよ!」

「マジでー!? 私ブラックが良いー!」

「私ホワイトー!」

「何と戦うんですか?」

「ライバル店かな?」

 

 ただの営業妨害じゃないか。

 

「えへへ〜」

「えっと......ココアさん?」

「あ!私の事は、お姉ちゃんって呼んでね!」

「おい、私欲」

 

 目をキラキラさせてるココア。さすがに欲深すぎるぞ。

 

「メグちゃん、気にしなくて良いからね?」

「ほらー!まずはチノちゃんが皆のお手本を見せて?はい!お姉ちゃんって!」

「どうしてこの流れで呼んでもらえると思ったんですか?」

「レイちゃんもSAY!お姉ちゃん!」

「同学年でしょうが」

「チノちゃん羨ましいな〜。こんな優しそうなお兄さんやお姉さんと一緒に暮らせて」

「ッ!?」

 

 メグちゃん!騙されてるよ!彼女は姉ではない!あと僕も兄ではない!

 

「いえいえ。姉らしい事は何も出来ませんが、これパンのお裾分けだよ!」

 

 懐からパンが入ったバスケットを取り出した。

 

「いつの間に!?」

「わぁ〜!ありがとうございます!」

 

 パンを一口かじるメグちゃん。

 

「お料理も上手!どうしてこんな素敵な人だって教えてくれなかったの!?」

「「ココア(さん)はパンしかまともに作れないんだよ(ですよ)!?」」

 

 丁度そこに扉が開く音とともにリゼさんが来た。

 

「すまない!部活の助っ人に駆り出されて!ん?」

「あっ!リゼちゃん!紹介するね!」

 

 マヤちゃんとメグちゃんをココア自身に寄せた。

 

「私の新しい妹達です!」

「嘘をつくな」

「察しが良くて助かります」

「そうだ!私とした事が、あれを無くしたみたいで、誰か見てないか!?」

「もしかしてこれ?あとコンバットナイフも入ってたけど、こっち?」

「にゃぁぁぁ!?」

 

 今度はモデルガンだけでなく、コンバットナイフも取り出した。僕は絶叫した。これにはチノちゃんも怯え、ティッピーは怒った。

 

「リゼー!うちに物騒な物を持ち込むのでない!」

「素人が扱える物じゃない。返せ」

「そのセリフ格好良い!リゼって、役者目指してるの?それとも、ミリオタ?」

「ん?レイさん、ミリオタって何ですか?」

「ミリタリーオタクの意味。簡単に言うと、軍事的な物が趣味な人のこと」

「そうなんですか」

「そうそう」

「私も!CQCとか出来るよ!」

 

 CQCという単語を聞いて戦慄するリゼさん。大方マヤちゃんを軍事関係者かなにかだと思っているんだろうなぁ......。

 

「マヤちゃんったら、またテレビの影響を受けてる」

 

 リゼさんに近付きマヤちゃんがじっくり見る。

 

「リゼって、立ち振る舞いが普通の女の人とは違うねー!憧れちゃうなー!」

「やっぱり私って浮いてる!?」

「ココアちゃんは私の目標にするねー!」

「そんな事初めて言われたー!」

「ねえチノ?」

「は、はい」

「チノはどっちに憧れてるの〜?」

「憧れ......強いて言えば......レイさんとシャロさん?」

「「ですよね!」」

 

 さすがに正面からそう言われるとちょっと照れる。

 

「ねえチノ!今日はこのまま手伝って良い?」

「は、はい。勿論」

「ありがとー!じゃあ私コーヒー淹れて来るねー!」

「あっ!私もやってみたーい!」

 

 その言葉を受け、ココアとリゼさんはテーブル席に座る。

 

「リゼちゃんと一緒にお客さんしていようかな?」

「何か新鮮だなー!」

 

 そこにメグちゃんがコーヒーを持って来た。

 

「はい。どうぞー」

「ありがとー。あっ!メグちゃん、コーヒー豆は生のまま食べない方が良いよ?」

「えへへ!知ってるよー!」

「親の影響を受けると、殺伐とした考え方が身に付いて大変だよなー。お互い」

「お互い?」

 

 4人同士の会話を見てるチノちゃん。

 

「おじいちゃん、レイさん、この気持ち、何なんでしょうか?」

「んー」

「何だろうね。考えてみよう」

 

 翌日、僕とチノちゃんは甘兎庵に来店した。

 

「はい。どうぞー」

 

 お茶を差し出す千夜。

 

「ありがとうございます」

「ごめんね千夜、仕事中に。チノちゃんが相談したいって言ってきてさ」

「ううん。あんこに会うついででも、チノちゃんが私に相談してくれて、嬉しいわ」

「千夜さん......」

「それで、そのお友達がどうしたの?」

「時々お店に来るようになって、ココアさんとリゼさんの妹のようになってて」

 

 ......千夜が、シャロに教えたら何て言うのか?と想像してそうな顔だな。

 

「それに、モヤモヤするんです......」

「チノちゃん嫉妬してるんだね」

「嫉妬......?誰にですか?」

 

 まさかの自覚無し!? チノちゃんはあんこを頭に乗せた。

 

「ココアさんは、年下だったら誰でも良いんです」

 

 誤解を招く発言だなぁ。

 

「リゼさんはマヤさんに親近感を覚えてしまったみたいですし、メグさんもマヤさんも、まるで私の事を忘れてしまってるみたいでした......」

「......そっか」

 

 すると千夜が、チノちゃんの肩に手を乗せた。

 

「チノちゃん、寂しいんならいっそのこと、うちの子になっちゃいましょ!」

「余計ややこしい事に......」

「意味分からないことになっちゃうよ」

「あの〜、もしかして、ラビットハウスさんのお孫さんでしょうか?」

 

 チノちゃんの後ろから女性の声が聞こえた。席を立って確認してみる。綺麗な人だ。

 

「そうですが」

「僕はその居候です」

「伯方名人がですか?」

「一身上の都合で......まぁ......」

「おじいちゃんのお知り合いですか?」

「ラビットハウスには、学生だった頃よくお邪魔していました。でも最近は、心の準備が」

「心の準備......ですか?」

「モヤモヤしてしまう気持ち、分かります。とても大切な人達に囲まれているんですね」

「私、どうしたら良いのか分からないんです。こんな気持ち初めてで......」

「初めてですか?だったら、良い事なのかもしれません」

「良い事?」

「きっと、心が教えてくれているんだと思います。貴女は、貴女が思っている以上に、その人たちの事が好きなんだって。すみません、差し出がましい事を。では、私はこれで」

 

 彼女は原稿用紙をバッグに入れて、お会計を済ませて店から出た。

 

「私ったらダメね。チノちゃんの相談にちゃんと乗れなかったわ」

「僕もだよ。チノちゃんごめんね」

「そんな事ないです。聞いて貰えて心が軽くなりました」

 

 そんな会話をしていると誰かが来店した。フルール・ド・ラパンの制服姿のシャロだった。携帯の画面を向けてパニック状態だった。

 

「レレレレレレイとリリリリリリゼ先輩にいいいいい妹が出来たってどう言う事ぉぉぉぉぉ!? レイ!説明してよぉぉぉぉぉ!」

「メールしたんですね......」

「シャロがパニックになってるじゃないか......」

「フフッ♪」

 

 シャロが可哀想である。一方、ラビットハウスではココアが何かを考えてた。

 

「ねえリゼちゃん、私、チノちゃんがあの2人と仲良くしてるのを見てたら、嬉しいんだけど、ちょっと寂しくなっちゃったんだ。きっと、私の知らないチノちゃんの一面を、いっぱい見ているんだろうな」

「ココア......私だってそう言うの、分からなくも無いぞ?私だけ、ここに住み込んでない訳だし......」

「ん?何か言った?」

「何も言ってない!」

「えへへ。何て言ったの?」

「何も言ってない!」

 

 そんな2人の会話を、こっそり聞いていた僕たち。

 

「おじいちゃん、レイさん、モヤモヤしてたのは、私だけじゃなかったみたいです」

「んー」

「そうだね。誰にだって悩むことはあるから気にしなくて良いんだよ。さぁ、チノちゃん。仕事をやろうか」

「はい」

 

 僕たちはホールに出た。

 

「おかえりー!」

「開店準備始めるか!」

「はい!」

「ええ!」

 

 僕たちは開店の準備を始めた。

 

「やっぱり、この4人で仕事してる時が一番落ち着くねー!」

「そうかもな」

「リゼちゃんがコーヒー豆を挽いたり、レイちゃんが料理して、チノちゃんがお客さんに運んで、私は......日向ぼっこ?」

「さぼるな!」

 

 働いてくれ。




この世界の将棋界の事情6
将棋棋士「伯方 玲」の1〜2年目成績
第33期竜皇戦: ランキング戦6組優勝
→挑戦者決定三番勝負勝利(2-0)により七番勝負進出
→3勝4敗(○○○●●●●)で広島竜皇に挑戦失敗
→ランキング戦1組昇級
第78期順位戦: C級2組全勝によりC級1組昇級
第79期順位戦: C級1組全勝によりB級2組昇級
第05期叡帝戦: 挑戦者決定三番勝負敗退(1-2)
第06期叡帝戦: 挑戦者決定トーナメント準決勝敗退
第61期帝位戦: 挑戦者決定リーグ残留
第68期玉座戦: 挑戦者決定トーナメント1回戦敗退
第91期棋匠戦: 二次予選決勝敗退
第46期棋帝戦: 挑戦者決定トーナメント全勝で五番勝負進出
→3勝0敗(○○○ーー)で真辺棋帝より棋帝奪取
第70期玉将戦: 挑戦者決定プレーオフ敗退
第13期旭日杯: 優勝
第14期旭日杯: 本戦トーナメント決勝敗退
第28期星河戦: 本戦ブロック戦全勝→優勝
第70期公共杯: 優勝
第51期新鋭戦: 優勝
第09期青鋭戦: 優勝
第04期昇竜杯: 優勝

レイの弟子になるのは誰?

  • ココア
  • チノ
  • リゼ
  • 千夜
  • シャロ
  • その他
  • 誰も取らない
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